加齢による学習と記憶の能力の低下の要因となるタンパク質

 学習と記憶を妨げるタンパク質についての研究(Smith et al., 2015)が公表されました。加齢とともに新しいニューロンの誕生は減っていき、学習と記憶の能力も次第に低下していきます。これまでの研究で、若いマウスから輸血すると、記憶障害が少し回復し、老化した脳のニューロンの機能が改善されることが明らかになっていました。この研究は、免疫機能に関連するタンパク質β2ミクログロブリン(B2M)に着目し、成体の脳における加齢性機能障害との関連を検証しました。

 その結果は、ヒトでもマウスでも高齢の個体ではB2Mレベルが高く、加齢とともに増加していくことが明らかになりました。さらに、B2Mを欠失したマウスでは加齢性の記憶力の喪失が起きませんでしたが、若いマウスにB2Mを注射すると、全身性投与でも脳への直接投与でも、学習・記憶課題の成績が低下し、新たに生じたニューロンの成長が抑制されることも明らかになりました。また、若いマウスの独立したコホートで、B2Mによって引き起こされた学習・記憶障害が30日後には認められなくなったことから、B2Mの認知機能低下に対する作用は可逆的なものではないか、と考えられています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


血液中の老化促進因子が記憶を損なう

 血液中を循環し、加齢によって増加するタンパク質の1つが、学習と記憶を妨げているとの報告が寄せられている。これは、マウスとヒトで得られた知見で、このタンパク質を標的にすれば、加齢による記憶力の喪失を防げるかもしれない。

 加齢とともに、新しいニューロンの誕生が減っていくと同時に、学習と記憶の能力も次第に低下していく。以前の研究で、若いマウスから輸血すると、記憶障害が少し回復し、老化した脳のニューロンの機能が改善されることが分かっている。加齢とともに血中に蓄積して記憶を妨げる因子が同定できれば、記憶力の喪失を防ぐ治療が可能になるかもしれない。免疫機能に関連するタンパク質β2ミクログロブリン(B2M)は血液中に蓄積していくが、成体の脳で加齢性機能障害にどのように関わっているのかについては、これまで調べられていなかった。

 Saul Villedaたちは、ヒトでもマウスでも高齢の個体ではB2Mレベルが高く、しかも加齢とともに増加していくことを明らかにした。B2Mを欠失したマウスでは加齢性の記憶力の喪失が起こらないが、若いマウスにB2Mを注射すると、全身性投与でも脳への直接投与でも、学習、記憶課題の成績が低下し、新たに生じたニューロンの成長が抑制された。若いマウスの独立したコホートで、B2Mによって引き起こした学習、記憶障害が30日後には認められなくなったことから、B2Mの認知機能低下に対する作用は可逆的なものだと考えられる。



参考文献:
Smith LK. et al.(2015): β2-microglobulin is a systemic pro-aging factor that impairs cognitive function and neurogenesis. Nature Medicine, 21, 8, 932–937.
http://dx.doi.org/10.1038/nm.3898

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