最古の人類系統かもしれないヨーロッパのヒト科化石

 これは5月27日分の記事として掲載しておきます。中新世のヨーロッパのヒト科化石と人類系統との類似性、および当時の環境についての研究が報道されました。AFPでも報道されています。一方の研究(Fuss et al., 2017)は、ギリシア(Pyrgos Vassilissis Amalia)とブルガリア(Azmaka)で発見された既知のグラエコピテクス属化石の歯根を改めて分析し、アウストラロピテクス属・アルディピテクス属など絶滅した人類系統や現代人と比較した結果、グラエコピテクス属はチンパンジー(およびボノボ)系統と分岐した後の人類系統に属する可能性が高い、との見解を提示しています。ギリシアで発見されたグラエコピテクス属化石はフレイベルギ種(Graecopithecus freybergi)と、ブルガリアで発見されたグラエコピテクス属化石は種区分未定とされています。

 もう一方の研究(Böhme et al., 2017)は、グラエコピテクス属化石の年代(ギリシアの化石は7157000年前頃、ブルガリアの化石は724万年前頃と推定されています)を含む737万~711万年前頃の環境を推定しています。この頃、アフリカ北部では砂漠が拡大し、ヨーロッパの地中海沿岸では寒冷化が進行して草原が拡大しました。グラエコピテクス属化石の年代は、最古の人類系統とされるサヘラントロプス属よりも古くなりそうで(関連記事)、現生類人猿の系統と現代人系統を含むヒト科系統の主要な分岐は、アフリカ北部での砂漠の拡大やヨーロッパの地中海沿岸地域の草原の拡大といった環境変化を背景として、アフリカ以外の地で起きたのではないか、との見解が示唆されています。

 たいへん注目される研究ですが、グラエコピテクス属と分類されている化石はまだたいへん少ないので、この研究の見解が直ちに有力説になるのではなく、今後も検証・議論が続いてくことになりそうです。かりに、グラエコピテクス属化石がチンパンジー系統と分岐した後の人類系統に分類され、推定年代も妥当なのだとしても、チンパンジー系統と人類系統との分岐も含めて、ヒト科系統の主要な分岐がアフリカで起きた可能性もじゅうぶん考えられると思います。グラエコピテクス属化石はチンパンジー系統と分岐した後の人類系統の一つであり、森林環境だけではなく開けた草原環境への適応能力にもなかなか優れており、アフリカからヨーロッパへと進出したものの、その後の気候変動や他種との競合などが原因で絶滅した、というわけです。ともかく、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Böhme M, Spassov N, Ebner M, Geraads D, Hristova L, Kirscher U, et al. (2017) Messinian age and savannah environment of the possible hominin Graecopithecus from Europe. PLoS ONE 12(5): e0177347.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0177347

Fuss J, Spassov N, Begun DR, Böhme M (2017) Potential hominin affinities of Graecopithecus from the Late Miocene of Europe. PLoS ONE 12(5): e0177127
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0177127

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