免疫細胞がもたらす青年期ラットの性差

 免疫細胞がもたらす青年期ラットの性差に関する研究(Kopec et al., 2018)が公表されました。最近の研究で、免疫細胞の一種であるミクログリアが脳回路の発達過程に寄与している、と明らかになりました。個体の誕生直後に、ミクログリアがニューロン間の情報伝達の接点として機能するシナプスを貪食する(「飲み込む」)ことにより、乳仔の脳内に形成される余分なシナプスをそぎ落とす、というわけです。ミクログリアの特性には性差があるとされますが、このミクログリアの作用により個体の行動とその後の発達がどのように変化するのか、今も研究が続けられています。

 この研究は、雄ラットが青年期に近づくと、遊び行動(たとえば、飛び掛かる、相手を押さえつける、転がって仰向けになるなど)が一時的に急増することを発見しました。また、ミクログリアが脳内の化学的「報酬」シグナルであるドーパミンを検出するシナプスを貪食することで、雄の遊び行動が急増する時期が終わる、と明らかにしました。このシナプスは、C3と呼ばれる除去のための分子で標識されていました。雌ラットの場合には、青年期に社会的遊び行動の急増は起きませんが、この研究は、やはりミクログリアが遊び行動に影響を与えているものの、ドーパミンを検出するシナプスの貪食によるものではない、と考えています。

 ミクログリアが雌ラットの遊び行動をどのように変化させるのか説明するには、さらなる研究が必要であり、ヒトにおいてミクログリアが社会行動を調節しているのかどうかも解明されていません。これに対してこの研究は、こうした知見がヒトのティーンエイジャーの脳と性特異的発達を解明するための手掛かりとなり、成人期初期に発症する脳疾患や性差が認められる脳疾患に関する手掛かりが将来的にもたらされるかもしれない、と考えています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【神経科学】青年期ラットの社会的遊びの性差は免疫細胞が作り出している

 脳内の免疫細胞は、青年期の雄マウスの「むちゃくちゃな」社会行動を制御していることを明らかにした論文が、今週掲載される。この知見は、性特異的行動と成体になる直前の脳の発達の仕方について解明を進める上で役立つ。

 最近の研究で、免疫細胞の一種であるミクログリアが脳回路の発達過程に寄与していることが発見された。ミクログリアが、個体の誕生直後に、ニューロン間の情報伝達の接点として機能するシナプスを貪食する(「飲み込む」)ことによって、乳仔の脳内に形成される余分なシナプスをそぎ落とすというのだ。ミクログリアの特性には性差があるとされるが、このミクログリアの作用によって個体の行動とその後の発達がどのように変化するのかは今もなお研究が続けられている。

 今回、Ashley Kopec、Staci Bilboたちの研究グループは、雄ラットが青年期に近づくと、遊び行動(例えば、飛び掛かる、相手を押さえ付ける、転がって仰向けになるなど)が一時的に急増することを発見した。また、ミクログリアが脳内の化学的「報酬」シグナルであるドーパミンを検出するシナプスを貪食することで、雄の遊び行動が急増する時期が終わることを明らかにした。このシナプスは、C3と呼ばれる除去のための分子で標識されていた。雌ラットの場合には、青年期に社会的遊び行動の急増は起こらないが、著者たちは、やはりミクログリアが遊び行動に影響を与えている(ただし、ドーパミンを検出するシナプスの貪食によるものではない)と考えている。

 ミクログリアが雌ラットの遊び行動をどのように変化させるのかを説明するには、さらなる研究が必要であり、ヒトにおいてミクログリアが社会行動を調節しているのかどうかも解明されていない。これに対して、著者たちは、こうした知見がヒトのティーンエイジャーの脳と性特異的発達を解明するための手掛かりとなり、成人期初期に発症する脳疾患や性差が認められる脳疾患に関する手掛かりが将来的にもたらされるかもしれないと考えている。



参考文献:
Kopec AM. et al.(2018): Microglial dopamine receptor elimination defines sex-specific nucleus accumbens development and social behavior in adolescent rats. Nature Communications, 9, 3769.
https://doi.org/10.1038/s41467-018-06118-z

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