原勝郎の古代~中世日本史認識

 以前、原勝郎『日本中世史』を取り上げましたが(関連記事)、その古代~中世日本史認識は、その後の日本人の歴史認識に大きな影響を及ぼしたように思います。原の古代~中世日本史認識をまとめると、以下のようになります。

 古代日本は中華文明を輸入し、律令国家体制と、一見すると華麗な文化を築きましたが、中華文明の影響は皮相・局所的で、社会全体の健全な発達には有害でした。都の貴族層は腐敗・堕落して実務能力を喪失し、その文化も堕落して見るべきものは少なかったのが実情でした。こうした不健全な古代社会を一新した鎌倉幕府の基盤は、他地域と比較して中華文明の影響が小さく、粗野でありながら健全さを保持していた東国社会にありました。このような日本史の流れは、ローマ帝国の腐敗・崩壊と野蛮視されていたゲルマンなどの粗野な民族との勃興という、西洋史の古代から中世への展開に擬えられます。

 これは近代黎明期の日本の「脱亜入欧」精神を強く反映した歴史認識と言えそうですが、こうした歴史認識は現代日本社会においても根強いのではないか、と思います。もちろん現在では、原の歴史認識がそのまま通用するわけではありません。ただ、縄文時代から一貫した「日本」の存在を措定して賛美し続けるような近年の「愛国的」見解と比較すると、ずっとまともかな、とは思います。原の『源氏物語』への評価はかなり厳しいのですが、「世界最古の長編小説」とか「1000年も前の女性の文学作品が残っている」とか言って日本賛美ネタとして消費するだけの言説と比較すると、はるかに奥深いとは思います。

"原勝郎の古代~中世日本史認識" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント