氷河期と間氷期初期に起きた大気中の二酸化炭素の急増

 氷河期と間氷期初期に起きた大気中の二酸化炭素の急増に関する研究(Nehrbass-Ahles et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。この研究は、EPICA(ヨーロッパ南極氷床コア計画)のドームC南極氷床コアから得た大気中二酸化炭素濃度の新しい記録を用いて、これらの急激な二酸化炭素放出は地球の気候‐炭素結合システムでは一般的な現象で、大西洋南北熱塩循環(AMOC)の強さの変動におそらく関係している、と示しました。

 この結果は、地球温暖化により大西洋の循環に同じような影響が及べば、今後も同じように大気中二酸化炭素が急増する可能性を示唆しています。寒冷な最終氷期に百年単位で二酸化炭素が大気中に勢いよく放出されたことは、明らかになっています。こうした二酸化炭素急増は、これまでの間氷期の温暖な気候条件では起こらなかった、と考えられていますが、それを調査するのに必要な大気中の二酸化炭素変動についての千年未満単位の記録は、過去約6万年分しか存在せず、最終氷期以前には及びません。

 この研究は、古代の南極氷床に閉じ込められていた45万~33万年前頃の高解像度二酸化炭素記録を提示し、寒冷な気候の時期も温暖な気候の時期も顕著な二酸化炭素放出があったことを明らかにした。この研究は、こうした放出事象は自然な炭素循環の一般的特徴であるものの、時間分解能と精密度が不充分な二酸化炭素記録では検知されなかった可能性がある、と指摘しています。さらに、このパルス的放出事象が、氷床融解によるAMOCの崩壊に関係していることも指摘されています。人為的な気候変動による同様の氷床融解がAMOC崩壊を引き起こせば、今後も大気中二酸化炭素は急増する可能性がある、とこの研究は指摘します。こうした二酸化炭素の急増は、人類の活動にも大きな影響を及ぼしたと考えられるので、人類進化史の観点からも注目されます。


参考文献:
Nehrbass-Ahles C. et al.(2020): Abrupt CO2 release to the atmosphere under glacial and early interglacial climate conditions. Science, 369, 6506, 1000–1005.
https://doi.org/10.1126/science.aay8178

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