眼窩前頭皮質と経済的選択

 眼窩前頭皮質と経済的選択の関係についての研究(Ballesta et al., 2020)が公表されました。18世紀、ダニエル・ベルヌーイ(Daniel Bernoulli)やアダム・スミス(Adam Smith)や、ジェレミー・ベンサム(Jeremy Bentham)は、経済的選択は主観的価値の計算と比較に従う、と提唱しました。この仮説は、現代の経済理論や行動経済学研究にも引き継がれていますが、行動学的指標では結局のところ、この説を充分に実証できません。

 この説に合致する事例として、経済主体が選択を行なう時に、眼窩前頭皮質(OFC)のニューロンが提示された物品と選択した物品の主観的価値を符号化する、という観察結果があります。価値を符号化する細胞は複数の要素を統合し、各細胞群の活動のばらつきは選択のばらつきと相関しており、ニューロン集団の活動変化は判断の形成を示唆しています。しかし、これらの神経過程と選択の間に因果関係があるかどうかは不明です。より一般的には、経済的選択と脳の価値信号を結びつける証拠は、依然として相関的なものでしかありません。

 本論文は、OFCのニューロン活動が経済的選択の原因になっていることを示します。この研究は、アカゲザル(Macaca mulatta)で2つの電気刺激実験を行ないました。弱い電流刺激は個々の提供物の主観的価値を増大させ、選択に予測可能なバイアスをかけました。逆に、強い電流刺激は主観的価値の計算と比較の両方を乱し、選択のばらつきを増大させました。これらの結果は、OFCで符号化された主観的価値を評価と選択に結びつける因果の連鎖を実証した、と言えます。現代人の経済的選択には深い進化的基盤があると考えられ、その観点からの研究の進展も注目されます。


参考文献:
Ballesta S. et al.(2020): Values encoded in orbitofrontal cortex are causally related to economic choices. Nature, 588, 7838, 450–453.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2880-x

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