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中公新書編集部編『日本史の論点 邪馬台国から象徴天皇制まで』

2018/09/23 08:27
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2018年8月に刊行されました。本書は古代・中世・近世・近代・現代の5部構成で、それぞれ複数の論点が取り上げられています。古代と近世には簡略な概説もあります。古代は倉本一宏氏、中世は今谷明、近世は大石学氏、近代は清水唯一朗氏、現代は宮城大蔵氏の担当です。以下、各論点を備忘録的に述べていきます。



◎古代

●論点1「邪馬台国はどこにあったのか」
 この20年ほどは、邪馬台国は畿内にあった、もっと具体的には纏向遺跡だった、との見解が一般でもすっかり有力になった感があります。しかし本論考は、邪馬台国が当時の日本列島における最有力の権力だったという前提を疑うべきだ、と指摘します。この指摘は、以前からの私の見解とも通ずるので、同意します。本論考は、文献に見える邪馬台国は環濠集落で纏向遺跡とは異なるとして、邪馬台国は九州北部の倭国連合で、畿内には別の勢力(倭王権)が存在した、との見解を提示しています。この倭国連合において、邪馬台国は聖権力、伊都国が俗権力を代表していた、と本論考は推測しています。邪馬台国の具体的な所在地については、現在の福岡県久留米市・八女市・みやま市の一帯と推測されています。

●論点2「大王はどこまでたどれるか」
 倭王権成立の指標として、箸墓古墳と相似形で規模のより小さな古墳が日本列島各地で築造されたことが挙げられています。倭王権盟主墳と考えられる前方後円墳は、大和盆地南東部→大和盆地北部→河内の古市古墳群および和泉の百舌鳥古墳群と移りますが、本論考は、盟主墳の場所と権力の中心は別のもので、盟主墳は外国使節を意識して場所が選定された、と推測しています。これら初期倭王権盟主墳の被葬者については、安易に記紀の「天皇」に比定してはならない、と本論考は注意を喚起しています。「皇統譜」の成立はおそらく7世紀になってからで、大王位の血縁的世襲も6世紀になってからだろう、と本論考は指摘しています。

●論点3「大化改新はあったのか、なかったのか」
 本論考は、改新詔が大宝令の修飾を受けていることは明らかであるものの、原詔があったのは確かだろう、との見解を提示しています。ただ本論考は、改新詔が原詔をどこまで伝えているか、判断は難しい、とも指摘しています。それでも本論考は、乙巳の変に続いて一連の改革が進められたことは確実と指摘しています。本論考は乙巳の変の背景として、国際情勢の変動を挙げています。隋と唐という巨大な王朝の成立にどう対応すべきなのか、方針に違いがあったのではないか、というわけです。本論考は、乙巳の変を、大臣が独裁権力を握る高句麗方式を目指した蘇我入鹿と、女王を立てて、有力王族に権力を振るわせたうえで、地位の低い権臣が背後で権力を握るという新羅方式を目指した中臣鎌足(鎌子)との対立という図式で把握しています。乙巳の変で主導権を握っていたのは、父も祖父も即位したわけではない軽(孝徳)ではなく、中大兄と中臣鎌足だろう、と本書は推測しています。ただ、それならば中大兄の母である大王の皇極が弟の軽に位を譲る必要はあったのか、との疑問は残ります。

●論点4「女帝と道鏡は何を目指していたのか」
 道鏡を天皇に即位させよ、との宇佐八幡神の神託がくだった、とされる事件は、皇族ではない人物が天皇に即位したかもしれないということで、特異な事例として注目されます。じゅうらい、この事件は道鏡主導だった、と語られていたのですが、近年では、称徳天皇の主導である、との見解が有力です。本論考は、奈良時代の天皇は天武皇統というより持統皇統で、それに拘った結果として即位した未婚の孝謙天皇の後継者をめぐる争いが、政治を混乱させていった、との見通しを提示しています。孝謙天皇は天皇大権を把握できないまま譲位し、藤原仲麻呂を打倒して重祚します(称徳天皇)。称徳天皇の治世でも、皇位継承が不安定な状況に変わりはなく、称徳天皇は、自身の主導する専制体制下で、仏教と天皇との共同統治体制を構想した、と本論考は推測しています。仏教と神祇思想が混淆した「天」により定められた人物であれば天皇に即位できると考え、道鏡を天皇に即位させようとした、というわけです。しかし、この構想は貴族層に受け入れられず、称徳天皇は後継者を決定しないまま死去します。

●論点5「墾田永年私財法で律令制は崩れていったのか」
 墾田永年私財法により律令制は崩壊していった、との見解がかつては有力でしたが、本論考は、墾田永年私財法により律令国家の土地所有体制が後退したのではなく、むしろじゅうらいは充分に把握できていなかった未墾地と新墾田を土地支配体制のなかに組み込めた、と指摘しています。これにより、日本全体の水田の面積が増大していきました。そもそも、律令制は唐に倣ったもので、当時の日本社会の実情とは異なっており、平安時代中期に成立した王朝国家こそ、日本的な古代国家と評価されています。

●論点6「武士はなぜ、どのように台頭したのか」
 武士の起源について、都との関わりも深く、初期の「武家の棟梁」とされる人物が、中央貴族の血筋で、地方に勢力を有しつつも完全には土着せず、官職や邸宅など都にも基盤を置いていた、と指摘されています。こうした平安時代の軍事貴族は、在地に大きな基盤を有していたわけではなく、軍事行動にさいてしても、朝廷から公認されなければ大規模な兵力を動員することも困難でした。平安時代末期の戦乱(いわゆる源平合戦)においてさえ、有力者たちの兵力のほとんどは国衙の指揮下にありました。平安時代の武士は、強訴を行なう寺社勢力への対策や、地方の紛争の解決に武士は不可欠な存在となっていき、やがて中央の政治に大きな影響力を有するようになります。本論考は、こうして「武士的なもの」が中世以降に日本史の主流となり、武士を善、貴族を悪とする価値観や、草深い東国の大地を善、腐敗した都を悪とする地域観が現代日本社会にも生き続けている、と指摘します。もちろん本論考も、「古代的・都的・貴族的なもの」がよいことばかりではないことも認めていますが、降伏してきた女性や子供も皆殺しにしてしまう発想は、儒教倫理を表看板にしている古代国家ではあり得ず、そうした古代的価値観は中世以降には京都の没落貴族にしかなかった、と指摘しています。本論考は近世以降についてとくに言及していませんが、そうした価値観に武士勢力が気づく(再発見する)のが近世という見通しを提示することも、可能かもしれません。


◎中世

●論点1「中世はいつ始まったか」
 日本史において中世がいつ始まったのかという議論は、明治時代における近代史学の導入により始まりました。当初は、まず封建制が日本に存在したのか、議論になり、続いて、中世・近世といった呼称が登場しました。こうした議論は南北朝正閏問題を機に下火となり、再び盛んになったのは第二次世界大戦後でした。戦後、封建制の担い手は武士との認識が主流となり、中世は鎌倉時代から始まる、とされました。その後、権門体制論の提唱とそれをめぐる議論など研究が進展し、現在では、後三条天皇の即位と院政の始まりが時代の画期として認識されるようになっています。本論考は、寺社の強訴や地方の争乱など、天皇と摂関による統治体制では対応できない状況の出現が、院政を定着させたのだ、と論じています。

●論点2「鎌倉幕府はどのように成立したか」
 鎌倉幕府の成立時期に関しては、大別すると、1180年の南関東における軍事政権の成立から1192年の源頼朝の征夷大将軍就任までの6説あり、東国国家論的立場と権門体制論的立場のどちらを支持するかで異なってくる、と本論考は指摘します。現在有力なのは、守護・地頭の任命権などを獲得した1185年の文治勅許を画期とする説です。御家人制は鎌倉幕府の基礎となりましたが、これとヨーロッパの封建制との類似性が、明治時代より注目されてきました。

●論点3「元寇勝利の理由は神風なのか」
 文永の役と弘安の役で、日本は暴風雨により何とかモンゴルを退けることができ、戦闘では圧倒されていた、との見解が戦後歴史学では主流でしたが、本論考は、文永の役の戦闘は1日だけではなく日本軍は善戦しており、弘安の役ではモンゴル軍が日本軍の防衛線を前に本格的に上陸することすらできなかった、と指摘しています。このように、日本側の奮戦を過小評価した理由として、信頼性の低い史料に依拠していたことが指摘されています。

●論点4「南朝はなぜすぐに滅びなかったのか」
 本論考は、鎌倉幕府滅亡後、南北朝合一までの期間も室町幕府の形成期として把握する見解に、違和感を示しています。確かにこの期間の大半は北朝が南朝よりも圧倒的に優勢で、地方政権にすぎないとも言えるかもしれない南朝を全国政権と並べるのはおかしいとしても、南北朝の動乱を無視することにも違和感がある、というわけです。劣勢な南朝が50年以上命脈を保った理由として、幕府側が分裂の危機を内包していたことが大きかっただろう、と指摘されています。

●論点5「応仁の乱は画期だったか」
 応仁の乱は日本史上における画期だったと内藤湖南は主張しましたが、権門体制や五山の崩壊など、確かにそうした側面が認められる、と本論考は指摘します。しかし一方で、大きく変容しつつも室町幕府は存続するなど、応仁の乱は画期といえども、その在り様は多角的・多面的だと本論考は指摘します。戦国時代の始まりについては、応仁の乱よりも明応の政変を画期とする見解が近年では有力で、戦国時代の終わりについては、まだ見解が集約されていない、と本論考は指摘します。

●論点6「戦国時代の戦争はどのようだったのか」
 戦国大名の研究について、室町時代の守護との連続性を強調する傾向が見られる、と指摘しています。鎌倉時代と室町時代に得た権限をさらに発展させ、室町時代には不充分だった家臣団統制を強化していった、というわけです。本論考は、戦国大名の出自としては守護代が多かったことを指摘しています。戦国時代の戦争については、攻城戦が長引いていったように、兵農分離が進み、鉄砲の普及により変わっていった、と指摘されています。この論点6については、本書の解説がどこまで妥当なのか、今後時間のある時に検証していこうと考えています。


◎近世

●論点1「大名や旗本は封建領主か、それとも官僚か」
 江戸時代の武士が封建領主というよりは官僚的性格の強い存在になっていたことが、給米取りが主流になっていったことや、大名の江戸在住が一般的になっていたことや、とくに初期には改易が珍しくなかったことなどから主張されています。また、家は身分役割に応じて厳然と存在したものの、個人の水準では比較的身分地域間の流動性が高かった、と指摘されています。

●論点2「江戸時代の首都は京都か、江戸か」
 首都は君主(天皇)の所在地ではなく、内政外交の中心地なのだから、江戸時代の首都は京都ではなく江戸である、と主張されています。また、近現代の東京一極集中は江戸時代の有り様を継承しており、明治政府の最大派閥は薩摩でも長州でもなく旧幕府官僚だった、指摘されています。

●論点3「日本は鎖国によって閉ざされていた、は本当か」
 近年では一般にも知られるようになったと思いますが、江戸時代には完全に国が鎖されていたわけではなく、長崎・薩摩・対馬・松前経由で「外国」と通じており、人々が「外国」の情報に接していたことが指摘されています。さらに本論考では、幕末の「開国」とはいっても、新たに開かれた4港は幕府の直轄領で、「鎖国」の延長だった、と指摘されています。

●論点4「江戸は「大きな政府」か、「小さな政府」か」
 江戸幕府は基本的に「大きな政府」ではあったものの、5代将軍綱吉期や田沼意次が主導した時期のように、「小さな政府」を志向することもあった、と指摘されています。幕府は「大きな政府」と「小さな政府」の間を揺れ動いていた、というわけです。諸藩においても同様でしたが、「名君」と称されるような藩主の多くは「大きな政府」を志向した、と指摘されています。

●論点5「江戸の社会は家柄重視か、実力主義か」
 8代将軍吉宗期が江戸時代の転機だったと指摘されています。じゅうらい、家ごとに職務遂行上の規定が継承されていたのですが、吉宗期に公文書システムが整備され、業務がずっと効率的になった、と指摘されています。本論考はこれを、近代官僚制の前提と評価しています。

●論点6「「平和」の土台は武力か、教育か」
 江戸時代には教育が普及していき、識字率も向上したことで広範な階層での意思疎通が可能になるとともに、近代における義務教育の前提にもなった、と指摘されています。江戸時代の識字率向上の前提として、織田信長による兵農分離の進展が挙げられていますが、この評価については今後も時間を作って少しずつ調べていくつもりです。

●論点7「明治維新は江戸の否定か、江戸の達成か」
 明治維新の要因としては、国内の矛盾・対立の激化よりも、対外圧力の方が重要だっただろう、と指摘されています。本論考では江戸時代と明治時代との連続性が強調されており、その前提として、江戸時代を通じて日本では均質化が進行し、ナショナリズム的観念が形成されていたからと指摘されています。


◎近代

●論点1「明治維新は革命だったのか」
 幕末の攘夷については、全国的に共通した意思で、より長期的な視点の「大攘夷」とより短期的視点の「小攘夷」があり、「小攘夷」の立場の諸勢力が「大攘夷」へと変わっていった、と指摘されています。幕末の政治的功績については見直しが進められており、たとえば薩摩藩では、西郷隆盛や大久保利通だけではなく、小松帯刀の功績が大きかった、と指摘されています。幕府でも、開国を進めたのは井伊直弼の強権ではなく、その配下の現実的な若手幕臣で、井伊直弼は配下に押し切られた、と指摘されています。江戸時代と近代の連続性の問題については、地域秩序の面では非連続性が見られるものの、社会全体では高い連続性があった、と指摘されています。本論考はとくに、江戸時代における広範な知的ネットワークを重視し、それが近代化の前提となったことを指摘しています。ものであったとされていたもの

●論点2「なぜ官僚主導の近代国家が生まれたのか」
 近代日本はプロイセンを模範に国家建設を進めたとされていましたが、議会制度におけるイギリスなど、各分野で広範な国々が模範とされた、と指摘されています。また、近代日本の法体系は政治的紛争を極小化する柔軟な構造を有し、行政の裁量権が大きかったので、議会を中心とした民主主義が育ちにくくなった、とも指摘されています。大日本帝国憲法下の統治体制についても柔軟性が指摘されており、権力が分立していましたが、それは属人的な調整に大きく依存しており、元老が減少していった後に問題となってきます。

●論点3「大正デモクラシーとは何だったのか」
 「大正デモクラシー」は第二次世界大戦後に「発見」されました。大正デモクラシーでは政治参加の拡充、具体的には選挙権の拡大が目指され、普通選挙(とはいっても、女性の参政権はないわけですが)が実現しますが、これは第二次護憲運動の直接的成果というよりは、すでに政府内において広範に普通選挙の実現は必然視されていた、と指摘されています。大正デモクラシーの限界としては、普通選挙実現後の大きな目標と理想を描くにまではいたらなかったことが指摘されています。

●論点4「戦争は日本に何をもたらしたか」
 近代日本は多くの戦争を経験しました。西南戦争では近代国民軍の成功が強く印象づけられました。日清戦争では国民意識の高揚が見られました。日露戦争では、メディアの役割が増大するとともに、戦傷者の増大が獲得した利益への固執をもたらしました。第一次世界大戦で、日本はイギリスをはじめとして他国から中国への野心を疑われ、これは国際政治における失敗でした。太平洋戦争に関しては、行政権の拡大と戦後への継承が指摘されています。

●論点5「大日本帝国とは何だったのか」
 大日本帝国の拡大原理は安全保障にあったものの、権益の拡大という経済目的と結びついたことで、無限の膨張を引き起こした、と指摘されています。大日本帝国統合の中心とされた天皇は、大日本帝国憲法の権力分立構造に抱合され、天皇親政の建前と天皇不親政の実態との間で、天皇も制御できない国家が形成されました。


◎現代

●論点1「いつまでが「戦後」なのか」
 「もはや戦後ではない」という1956年度『経済白書』の一節は、戦災からの復興という需要が一段落した日本にとって、今後どのようにして経済成長が可能なのか、という危機感の発露であった、と指摘されています。また、「戦後」の終焉に関して、高度経済成長期までに見られたような、成長や近代化を無批判に肯定する時代精神が終わった、1970年代を重視する見解も取り上げられています。

●論点2「吉田路線は日本に何を残したか」
 日米安保により安全保障を達成し、軽武装・経済重視で高度経済成長の基礎を築いた、と吉田茂の路線は高く評価されています。しかし、吉田が首相の座を退き、鳩山一郎や岸信介といった戦前の実力者が復権して首相に就任した頃には、吉田の時代は終わった、とみなされていました。しかし、岸の次の首相の池田勇人は吉田直系で、池田とその次の首相の佐藤栄作の時期に高度経済成長期を迎えたことで、戦後の基礎を築いた大政治家としての吉田の評価は定まりました。

●論点3「田中角栄は名宰相なのか」
 近年の意識調査では、田中角栄は戦後日本を象徴する政治家として認識されています。本論考は、田中が日中国交「正常化」といった功績を残した一方で、ロッキード事件に代表される金権政治が批判され、竹下派にも引き継がれた金権政治による二重支配といった「田中的政治」の克服が1990年代以降に強く主張され、田中派の流れをくむ派閥も小泉内閣以降に影響力が低下していった、と指摘しています。「田中的」政治で批判された金権政治については、公共事業が再分配的役割を果たした側面もあるものの、恣意的だったことも指摘されています。

●論点4「戦後日本はなぜ高度成長できたのか」
 高度経済成長の前提として、財閥解体や農地改革などといった戦後の諸改革が指摘されています。一方で、こうした戦後の諸改革について、一般的には被占領国となったことが契機とされていますが、戦中の総力戦体制との連続性を指摘する見解も取り上げられています。また、対外的には、自由貿易体制の恩恵を受けたことが指摘されています。また近年では、人口ボーナスという観点も重視されています。高度経済成長期の内需と外需の貢献度に関しては、貿易立国という一般的な日本像とは異なり、他の主要国との比較でも、輸出よりも国内需要が大きかった、と指摘されています。

●論点5「象徴天皇制はなぜ続いているのか」
 戦後の天皇は日本国・日本国民統合の象徴で、その地位は日本国憲法に規定されているように、日本国民の総意に基づいていることが指摘されています。それと関連して、国民統合は絶え間ない努力により初めて持続的・安定的となることが指摘されています。また、天皇の地位は日本国民の総意に基づいているので、旧皇族の復帰・即位により国民の支持が失われれば、そこで天皇制が終わるかもしれない、との懸念が取り上げられていることも注目されます。
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本村凌二『教養としての「ローマ史」の読み方』第3刷

2018/09/16 05:53
 2018年5月にPHP研究所より刊行されました。第1刷の刊行は2018年3月です。本書は王政期から滅亡へといたるローマ史を時系列で語りつつ、通史というよりは、王政期から滅亡までのローマの歴史を規定した要因を探るという、問題史としての性格を強く打ち出しています。初期ローマであれば、同じ地中海地域の都市国家として始まりながら、なぜローマとギリシアは異なる政治体制を選択したのか、といった問題です。著者の他の著書を読んでいれば、目新しい点はあまりないかもしれませんが、相変わらず読みやすく、ローマの歴史的展開の背景に関する考察は興味深いものですし、ローマ史の復習にもなります。楽しく読み進められました。

 民主政に進んだギリシア(アテネ)と、共和政に進んだローマの違いは、構成員たる市民間の格差が比較的少なく平等だったギリシア(もちろん奴隷はおり、居住民の間の格差は大きかったわけですが)と、当初より格差の存在したローマという、社会構造の違いが大きかったのではないか、と指摘されています。本書は、ギリシアを「村落社会」、ローマを「氏族社会」と呼んでいます。ローマが大国になれてギリシア(アテネ)が大国になれなかった理由としては、ギリシアが独裁・貴族政・民主政という政体の三要素のどこかに偏り過ぎたのにたいして、ローマは共和政のなかに独裁(二人の執政官、時として独裁官)・貴族政(元老院)・民主政(民会)の要素をバランスよく含んでいたからだ、と指摘されています。

 また、ローマが大国になれた要因として、「公」への意識、つまり祖国ローマへの強い帰属意識があったことも重視されています。貴族層では「父祖の遺風」、平民層では「敬虔なる信仰心」がその背景にあった、と本書は指摘します。ローマ市民は、同時代の他地域の人々からは、敬虔だと思われていました。このような意識に基づき、何度も負けては立ち上がり、他国を征服していった共和政期ローマを、「共和政ファシズム」と呼んでいます。

 500年にわたって共和政を維持してきたローマが帝政へと移行した背景として本書が重視するのは、ローマ市民の意識の変容です。支配地が増え、平民は重い軍役で没落する一方、元老院を構成する貴族層は征服地の拡大により富裕になっていき、貧富の差が拡大します。この階級闘争的な過程で、「公」よりも自己愛・身内愛といった「個」を優先する意識が強くなっていきます。それと同時に、ローマにおいて以前から存在した、有力者によるより下層の人々の保護という、保護者(パトロヌス)と被保護者(クリエンテス)との関係が拡大・強化されていきます。これが、ポエニ戦争後100年以上にわたる内乱の一世紀およびその後の帝政の基盤になった、と本書は指摘します。この保護者と被保護者の関係が、最終的には頂点に立つ一人の人物たる皇帝に収斂される、というわけです。

 帝政期も当初は暴君がたびたび出現して混乱しますが、いわゆる五賢帝の時代には安定し、ローマの領土も最大となります。本書は、プラトンが唱えた「賢者による独裁」という理想に最も近い事例として、この五賢帝を挙げています。五賢帝の時代が終焉し、セウェルス朝を経てローマは軍人皇帝時代を迎えます。しかし本書は、軍人皇帝時代は単なる混乱期ではなく、分割統治・皇帝直属の機動軍の創設といった改革が模索され、進んだ時期とも把握し、在位期間が短く多くが殺害された皇帝たちのなかで、ウァレリアヌスとガリエス父子やアウレリアヌスのように、高く評価されるべき皇帝がいたことも指摘しています。本書は軍人皇帝時代の特徴として、支配層が変容していったことも指摘しています。ローマの支配層は当初、古くから続く元老院貴族でした。内乱の一世紀〜帝政初期にかけて、イタリアの新興貴族層が台頭し、帝政の支持基盤となります。軍人皇帝時代には、それまでの文人的な元老院貴族から武人層へと政治的主導権が移っていった、というのが本書の見通しです。軍人皇帝時代の諸改革の延長戦上に、ディオクレティアヌスによる安定があったのでしょう。

 軍人皇帝時代を経て専制君主政期になると、ローマ帝国においてキリスト教が確固たる基盤を築き、やがて現在のような大宗教にまで拡大します。本書はローマ帝国においてキリスト教が普及した理由として、社会下層からじょじょに広がったというよりも、皇帝による保護の方が大きかったのではないか、と指摘しています。キリスト教が国教化されてすぐ、ローマ帝国は分割され、二度と再統一されることはありませんでした。西ローマが分割後100年も経たずに滅亡したのにたいして、東ローマが1000年以上続いた理由として、西ローマでは都市が衰退していたのにたいして、東ローマでは都市が衰退していなかったからだ、と本書は指摘します。東ローマは西ローマよりも経済状況がよかったから長期にわたって存続したのだ、というわけです。

 このように、ローマ帝国は東西に分裂したと言われますが、本書はもっと長い視点でローマ帝国の分裂を把握しています。ローマ帝国は、オリエント・ギリシア・ラテンという三つの世界を統合しました。ローマ帝国の分裂後、これらの地域は最終的に、イスラム教・ギリシア正教・カトリックに分裂していきます。ローマ帝国の統合前と分裂後の各地域はおおむね対応しているのではないか、というわけです。本書はその要因として、言語の違いを挙げています。オリエント世界のセム語系・ギリシア世界のギリシア語・ラテン世界のラテン語および後に加わったゲルマン語です。

 ローマ帝国の滅亡に関して、本書は単なる衰亡ではなく、三つの側面から把握しています。一つは伝統的な史観とも言える経済的衰退で、社会資本が劣化していきます。本書はその背景として、奴隷制社会では奴隷に面倒なことをやらせるので、技術革新・経済成長への動機が乏しくなりがちであることを挙げています。次に、こちらも伝統的な史観と親和的と言える、国家の衰退です。本書はこの過程を、皇帝権力の低下→異民族の侵入→軍隊の強化→徴税強化による皇帝権力の低下という悪循環で把握しています。最後に、文明の変質です。本書はこれを、人々の意識が共同体から個人へと変容し、弱者を切り捨てるような平等な個人間の関係から、強者による弱者の保護を前提とする社会への変容と把握しています。本書はローマ帝国の分裂・滅亡を、単なる衰退ではなく、人々が異なる価値観を受け入れて時代に対応していった、古代末期という概念で把握すべきではないか、と提言しています。
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岡本隆司『世界史序説 アジア史から一望する』

2018/09/09 08:35
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2018年7月に刊行されました。本書は、東洋史研究者による新たな世界史構築への第一歩となる提言といった感じです。気宇壮大ではありますが、各分野の専門家からは、突っ込みが多いかもしれません。しかし、著者もそんな懸念は百も承知でしょうし、歴史学の研究が細分化され精緻になっていくなか、こうした試みは必要でしょう。また、じっさい、歴史学の研究者の間で「世界史」への意欲がなくなったわけではなく、近年では、グローバルヒストリーという概念が提唱されています。

 しかし本書は、グローバルヒストリーのような近年の「世界史」も、依然としてヨーロッパ、もっと限定すれば西ヨーロッパ中心主義で、アジア史のことをよく理解できていない、と強く批判します。ヨーロッパ史の研究の蓄積により構築されてきた概念で、アジア史をどれだけ正確に理解できるのか、と本書は疑問を呈しています。著者の他の一般向け書籍を何冊か読んできましたが、本書冒頭のヨーロッパ中心主義への批判はあまりにも攻撃的で、正直なところ困惑してしまいました。日本人のイギリス史研究者が論じるグローバルヒストリーにおいて、日本語の研究が参照されず、英語文献に依拠していることなど、著者にはグローバルヒストリーの現状に強い不満があるようです。

 そのような問題意識を前提として、本書はおもにアジア史を対象に議論を展開しています。本書のアジア史に関する見解については、本書が依拠する研究者の見解を少しは読んでいたこともあり、大きな違和感というか、意外な感はありませんでした。本書が重視するのは、モンゴル帝国の興隆とその後の崩壊をもたらした「14世紀の危機」で、「シルクロード」とも称されるユーラシア内陸部の経路から海上経路へと、経済の重心が移っていきました。こうした状況を前提として、「大航海時代」とその後のヨーロッパ勢力の覇権が到来します。本書はヨーロッパにおける近代化の条件として、官民一体の「法の支配」を挙げ、イギリスの果たした役割がきわめて大きかった、と指摘します。さらに本書は、そうした条件はヨーロッパ、とくにイギリスにおいてこそ成立したのであって、アジアでは成立し得なかったとして、ヨーロッパとアジアの違いを強調しています。

 本書は世界史とはいっても、前近代のサハラ砂漠以南のアフリカ・オセアニア・アメリカ大陸への言及は皆無といってよく、本書の意図からしてそれは当然なのかもしれませんが、世界史と銘打っている以上、やはり多少は言及があってもよかったのではないか、と思います。本書の見解で個人的に注目したのは、儒教はリアルな人間関係に基づく教義しか有さない中原の土俗的な論理で、仏教の広汎さ・精妙さ・深奥さには及びもつかない、との評価です。やはり、儒教にはある程度以上の普遍性はあっても、キリスト教・イスラム教はもちろん、仏教にも遠く及ばないのではないか、と思います。また、西欧中心主義はあらゆる学問の本質に埋め込まれている、との指摘も注目されます。前近代日本史の構造・展開は東アジア史、さらにはアジア史との共通性が少なく、むしろ西ヨーロッパと近似していた、との本書の見解については、今後も考え続けていきたいものです。
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橋昌明『武士の日本史』

2018/09/02 07:17
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2018年5月に刊行されました。本書は武士を視点に据え、通俗的な日本史像・武士像を見直しています。著者は武士見直し論の代表的研究者の一人で、本書は著者の武士論の一般向け集大成といった感もあります。著者の他の著書をそれなりに読んできたので、私にとって本書の見解はとくに意外ではなかったのですが、古代から現代までを射程に入れ、武士成立論から武具や武士の道徳の変遷と多岐にわたって議論が展開されているので、改めて情報を整理できるとともに、新たに得た知見も多く、たいへん有益でした。

 著者の専門は中世史でもとくに前期なので、近世史や近現代史に関する本書の認識に関しては、専門家からは色々と異論があるかもしれません。それでも、門外漢には、本書の価値を大きく損ねるほどの瑕疵はなかった、と思えました。成立期を中心とした武士見直し論は一般層にもそれなりに浸透しているように思いますが、古代後期〜中世前期は、戦国時代や幕末や近現代ほど一般層の関心は高くない時代でしょうから、本書の見解が意外というか新鮮に思えた読者は少なくいかもしれません。ただ、本書でも指摘されているように、著者の武士成立論には都偏重との批判も依然として多いようです。また、平氏政権を「六波羅幕府」と規定する著者の見解への賛同者は少ないようです。本書を読むうえで、これらの点は注意しておかねばならないでしょう。

 元々著者の武士見直し論は、武士成立における都の役割の重視といった古代〜中世前期の問題に限らず、広く日本史像と武士像を見直す視野の広いもので、本書最大の魅力もその点にあると思います。本書は思想史、さらには日本人の武士に関する認識の変遷にもかなりの分量を割いており、武士の在り様や規範が中世初期と近世とで大きく異なるのに、近代以降の日本では、近世以降の武士道徳を基盤に近代になって創出されたような武士像・武士道徳が、広く国民の規範として持ち出され、日本人の意識を規定している、と指摘します。そうした規範が巨大な負の影響を及ぼしたという側面は多分にあるでしょうから、安易に「サムライ**」などと言ってしまう現代の社会風潮にたいして、懐疑的な視線を向けることは絶対に必要でしょう。
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佐藤弘夫『「神国」日本 記紀から中世、そしてナショナリズムへ』(後編)

2018/08/29 18:16
 前編の続きです。後編では文庫版の追加分を取り上げ、雑感を述べることにします。本書執筆の背景には、異形のナショナリズムと排他主義の勃興、大規模な汚染や大量破壊兵器といった近代が生み出した問題にたいする危機意識がありました。文庫版では、親本よりもこの問題意識が強く打ち出されています。近代化の延長線上にある現代の危機的状況の解決・克服には、近代そのものを相対化できる視座が不可欠で、それは前近代にまで射程を延ばしてこそ可能ではないか、というのが本書の見通しです。以下、親本での内容とかなり重なりますが、文庫版の追加分について備忘録的に取り上げていきます。


 中世には機能の異なる二種類の仏がいました。一方は、生死を超越した救済に民族(的概念に近い分類)・国の別なく衆生を導く普遍的存在で、姿形を持ちません。もう一方の仏は、具体的な形を与えられた仏像で、日本列島の住民を特別扱いし、無条件に守護する存在です。日本の仏は人々を彼岸(他界)の本仏に結縁させる役割を担っていますが、それ自体が衆生を悟りに到達させる力は持ちません。日本に仏教が導入された当初の古代において、死後の世界たる浄土は現世と連続しており、容易に往来できました。このような仏教受容は、人間が神仏や死者といった超越的存在(カミ)と同じ空間を共有する、という古代的なコスモロジーを背景としていました。

 こうした古代的な一元的世界観は、10〜12世紀に転換していきます。超越的存在にたいする思弁が深化して体系化されるにつれてその存在感が増大し、その所在地が現世から分離し始めます。人間の世界(現世)から超越的存在の世界(他界)が自立して膨張します。この延長線上に、現世と理想の浄土が緊張感をもって対峙する二元的な中世的コスモロジーが成立します。至高の救済者が住む他界こそが真実の世界とされ、現世は他界に到達するための仮の宿という認識が一般化しました。言語や肌の色の違いを超えて人々を包み込む普遍的世界が、現実の背後に実在すると広く信じられるようになりました。日本の神や仏像など、現世に取り残されたカミは、衆生を他界に導くために現世に出現した、彼岸の究極の超越的存在(本地仏)の化現=垂迹として位置づけられました。

 日本では古代から中世においてこのようにコスモロジーが転換し、仏教、とりわけ浄土信仰が本格的に受容されます。教理として論じられてきた厭離穢土欣求浄土の思想や生死を超えた救済の理念が、閉じられた寺院社会を超えて大衆の心をつかむ客観的情勢がやっと成熟したわけです。仏教や浄土教が受容されたから彼岸表象が肥大化したのではなく、他界イメージの拡大が、浄土信仰本来の形での受容を可能にしました。コスモロジーの変容が仏教受容の在り方を規定する、というわけです。現世を超えた個々人の救済をどこまでも探求する「鎌倉仏教」誕生の前提には、こうした新たなコスモロジーの形成がありました。このコスモロジーの転換の要因について、本書は人類史の根底にある巨大な潮流を示唆していますが、いずれ本格的に論じたい、と述べるに留まっています。

 神国がしきりに説かれるようになる中世は、多くの人が現世を超えた心理の世界を確信していた時代でした。日本の神は仏(仏像)と同じく、それ自体が究極の真理を体現するのではなく、人々を他界に送り出すことを最終的な使命として、現世に出現=垂迹した存在でした。神の存在意義は衆生を普遍的な救済者につなぐことにあったわけです。こうした世界観では、現世的存在で、他界の仏の垂迹にすぎない神に光を当てた神国の論理は、他国を見下し、日本の絶対的な神聖性と優位を主張する方向らには進みませんでした。神に託して日本の優越性が主張されるのは、世俗的な水準の問題に限られており、真実の救済の水準では、国や民族(的概念に近い分類)といった修行者の属性は意味を失いました。中世の神国思想は普遍的な世界観の枠組みに制約されていたわけです。日本が神国であるのは、彼岸の仏がたまたま神という形で出現したからで、インド(天竺)はそれが釈迦で、中国(震旦)はそれが孔子や顔回といった学者(聖人)だったので、神国とは呼ばれませんでした。

 中世的なコスモロジーは14〜16世紀に大きく転換していきます。不可視の理想世界にたいする現実感が消失し、現世と他界という二元的世界観が解体し、現世が肥大化していきます。人々が目に見えるものや計測できるものしか信じないような、近代へとつながる世界観が社会を覆い始めます。生死を超えた救済に人々を誘う彼岸の本地仏の存在感は失われ、現世での霊験や細々とした現世利益を担当する日本の神や仏像の役割が増大し、日本と外国を同次元においたうえで、日本の優位を主張するさまざまな神国思想が近世(江戸時代)には登場します。

 近世的神国思想では、背景にあった普遍主義の衰退にも関わらず、日本優位の主張が暴走することはありませんでした。その歯止めになっていたのは、一つには身分制でした。国家を果実にたとえると、身分制社会は、ミカンのようにその内部に身分や階層による固定的な区分を有しており、それが国家権力により保証されています。一つの国家のなかに利害関係を異にする複数の集団が存在し、国家全体よりも各集団の利害の方が優先されました。モンゴル襲来にさいして神国観念が高揚した中世においても、モンゴルと対峙した武士勢力に純粋な愛国心があったわけではなく、自らが君臨する支配秩序の崩壊にたいする危機意識と、戦功による地位の上昇・恩賞が主要な動機でした。自分の地位に強い矜持を抱き、命をかけてそれを貫こうとする高い精神性はあっても、愛する国土を守るために侵略者に立ち向かうといった構図は見当たらず、それが中世人の普通の姿でした。愛国心がないから不純だと考えるのは、近代的発想に囚われています。中世の庶民層でも国家水準の発想は皆無で、モンゴル襲来は、日本の解体につながるからではなく、日常生活を破壊するものとして忌避されました。

 近代国家は、内部が区分されているミカン的な近世社会から、一様な果肉を有するリンゴ的社会へと転換しました。近代国家は、全構成員を「国民」という等質な存在として把握します。この新たに創出された国民を統合する役割を担ったのが天皇でした。神国日本は悠久の伝統を有する神としての天皇をいただく唯一の国家なので、他国と比較を絶する神聖な存在であり、その神国の存続と繁栄に命を捧げることが日本人の聖なる使命とされました。普遍主義的コスモロジーが失われ、全構成員たる国民が神国の選民と規定された近代国家の成立により、神国日本の暴走に歯止めをかける装置はすべて失われました。第二次世界大戦での敗北により状況は一変しましたが、ナショナリズムを制御する役割を果たす基本ソフト(コスモロジー)が欠けているという点では、現在も変わりません。

 社会の軋轢の緩衝材としてのカミが極限まで肥大化し、聖職者によりその機能が論理化され、普遍的存在にまで高められたのが中世でした。現世の根源に位置する超越者は、民族・身分に関わりなく全員を包み込む救済者でした。近代化にともなう世俗化の進行とカミの世界の縮小により、人間世界から神仏だけではなく死者も動物も植物も排除され、特権的存在としての人間同士が直に対峙する社会が出現しました。近代社会は、人間中心主義を土台としていたわけです。この人間中心主義は基本的人権の拡大・定着に大きな役割を果たしましたが、社会における緩衝材の喪失も招きました。人間の少しの身動きがすぐに他者を傷つけるような時代の到来です。現在の排他的な神国思想は、宗教的装いをとっていても、社会の世俗化の果てに生まれたもので、その背後にあるのは、生々しい現世的な欲望と肥大化した自我です。自分の育った郷土や国に愛情と誇りを抱くのは自然な感情ですが、問題はその制御です。現在の危機が近代化の深化のなかで顕在化したものであれば、人間中心主義としての近代ヒューマニズムを相対化できる長い射程のなかで、文化・文明を再考することが必要です。これは、前近代に帰れとか、過去に理想社会が実在したとかいうことではなく、近代をはるかに超える長い射程のなかで、近現代の歪みを照射することが重要だ、ということです。


 以上、本書の見解について備忘録的に詳しく取り上げてきました。そのため、かなりくどくなってしまったので、改めて自分なりに簡潔にまとめておきます。神国思想は、神としての天皇を戴く日本を神国として、他国に対する絶対的優位を説いた、(偏狭な)ナショナリズムで、鎌倉時代のモンゴル襲来を契機に盛り上がりました。平安時代後期〜モンゴル襲来の頃まで、日本は釈迦の生まれた天竺からはるかに隔たった辺境の小島(辺土粟散)にすぎない、という末法辺土思想が日本では浸透しており、神国思想は神道的優越感による仏教的劣等感の克服でした。

 本書は、このような近現代日本社会における(おそらくは最大公約数的な)神国思想認識に疑問を呈し、異なる解釈を提示します。神国思想は、古代・中世・近世・近現代で、その論理構造と社会的機能が大きく変容しました。古代のコスモロジーは、人間が神仏や死者といった超越的存在と同じ空間を共有する、というものでした。しかし、古代の神は人間にとって絶対的で理不尽な存在で、人間には祟りをもたらし、予測不能で非合理的な命令をくだしました。また、古代の神は一ヶ所に定住せず、祭祀の期間にだけ現れ、終わると立ち去るような、気ままに遊行を繰り返す存在でした。これも、古代の神の人間にとって理不尽ではあるものの、絶対的存在でもあったことの表れなのでしょう。古代の神は氏族に占有されており、広く大衆に開かれているわけではありませんでした。しかし、律令国家形成の頃より、次第に神は一ヶ所に定住する傾向を強めていきます。中央集権を志向した律令国家により、神々も統制されていくようになったわけです。このなかで、皇祖神たる天照大神を頂点とする神々の整然とした秩序が整備され、天皇は国家そのものとされ、神々が守護すべき対象とされました。古代的神国思想では、仏教的要素は極力排除され、天皇が中核的要素とされました。

 こうした整然とした古代的秩序は、律令制度の変容にともない、平安時代前期に大きく変わります。神社にたいする国家の経済的支援は減少し、神社は皇族や有力貴族・寺院などとともに、荘園の集積に乗り出し、経済的基盤を確立しようとします(荘園公領制)。この過程で、古代的な整然とした神々の秩序は崩壊し、神々の自由競争的社会が到来します。これが古代から中世への移行で、古代から中世への移行期を経て、中世にはコスモロジーも神国思想も大きく変容します。古代から中世への移行期に、神の立場が大きく変わります。かつては一ヶ所に定住せず、人間に祟り、理不尽な命令をくだす絶対的な存在だったのが、一ヶ所に定住し、人間の信仰・奉仕に応じて賞罰をくだす、より合理的存在となります。神の一ヶ所への定住は、集積された各所領の正当性の主張に好都合でした。また、仏像にならって神の像も作られるようになります。古代から中世への神の変化は、合理化・定住化・可視化と評価されます。

 さらに、仏教の浸透、神々の仏教への融合により、かつては人間と神などの超越的存在とが同じ空間を共有していたのに、超越的存在の空間としての彼岸の観念が拡大し、理想の世界とされ、現世たる此岸と明確に分離します。こうしたコスモロジーは、仏教信仰と教学の深化により精緻になっていきました。そこで説かれたのが本地垂迹説で、普遍的真理たる彼岸の本地仏と、その化現である垂迹としての神や仏(仏像)という構図が広く支持されるようになりました。古代において人間にとって絶対的存在だった神は、普遍的真理ではあるものの、あまりにも遠く、人間には覚知しにくい彼岸と、現世の存在たる人間とを結びつける、本地仏より下位の存在となりました。この垂迹は、天竺(インド)・震旦(中国)・日本という当時の地理的認識における各国では、それぞれ異なる姿で現れました。天竺では釈迦、震旦では孔子、日本では神々というわけです。日本が神国との論理は、中世においては、垂迹が神であるという意味においてであり、日本が天竺や震旦より優位と主張する傾向もありましたが、それは垂迹の水準でのことで、本質的な主張ではありませんでした。中世の神国思想は、仏教的世界観を前提とした普遍的真理に基づいており、モンゴル襲来のようなナショナリズム的観念の高揚を契機に主張されるようになったのではありませんでした。じっさい、中世において神国思想が盛んに説かれる契機となったのは、院政期の寺社相論と鎌倉時代のいわゆる新仏教(とくに専修念仏)排撃で、モンゴル襲来よりも前のことでした。このような中世的神国思想は、他国にたいする絶対的優位を説く方向には進みませんでした。また、中世には天皇の権威も低下し、神国思想において天皇は自身が守護の対象というより、体制維持の手段でした。

 しかし、神国思想の前提となるコスモロジーが変容すれば、神国思想自体も大きく変わっていきます。14世紀以降、日本では中世において強固だった彼岸─此岸の構造が解体していきます。彼岸世界の観念は大きく縮小し、此岸たる現世社会が拡大していき、人々が彼岸世界に見ていた普遍的真理も衰退していきます。こうした傾向は江戸時代に明確になり、ナショナリズム的観念の肥大を阻止していた普遍的真理が喪失されたコスモロジーにおいて、自国の絶対的優越を説く主張への歯止めはもはや存在していませんでした。江戸時代(近世)には、さまざまな思想・宗教的根拠で他国にたいする日本の絶対的優位が主張され、天皇がその中核となっていきました。しかし、身分制社会の近世において、身分や階層による固定的な区分の、利害関係を異にする複数の集団が存在していたため、国家全体よりも各集団の利害の方が優先され、神国思想の他国にたいする暴走に歯止めがかけられていました。近代日本は、近世の神国思想を継承しつつ、(近世以降に日本「固有」で「純粋な」信仰として解釈された)神祇以外の要素を排除し、近現代日本社会における(最大公約数的な)神国思想認識が確立しました。近代日本は、全構成員を「国民」という等質な存在として把握します。この新たに創出された国民を統合する役割を担ったのが天皇でした。普遍主義的コスモロジーが失われ、全構成員たる国民が神国の選民と規定された近代国家の成立により、神国思想の暴走に歯止めをかける装置はすべて失われました。


 短くと言いつつ、長くなってしまい、しかもさほど的確な要約にもなっていませんが、とりあえず今回はここまでとしておきます。神国思想の論理構造と社会的機能の変遷を、世界観・思想・社会的状況から読み解いていく本書の見解は、12年前にはたいへん感銘を受けましたし、今でもじゅうぶん読みごたえがあります。ただ、当時から、古代が一元的に把握されすぎているのではないか、と思っていました。もっとも、諸文献に見える思想状況ということならば、本書のような把握でも大過はない、と言えるのかもしれませんが。一向一揆などいわゆる鎌倉新仏教系と支配層との対立的関係が強調されすぎているように思われることも、気になります(関連記事)。戦国時代の天道思想(関連記事)と中世のコスモロジーとの整合的な理解や、今後の日本社会において神国思想はどう活かされるべきなのか、あるいは否定的に解釈していくべきなのかなど、まだ勉強すべきことは多々ありますし、今回はほとんど本書の重要と思った箇所を引用しただけになったのですが、今回は長くなりすぎたので、それらは今後の課題としておきます。
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佐藤弘夫『「神国」日本 記紀から中世、そしてナショナリズムへ』(前編)

2018/08/29 18:13
 講談社学術文庫の一冊として、2018年6月に講談社より刊行されました。本書の親本『神国日本』は、ちくま新書の一冊として2006年4月に筑摩書房より刊行されました。本書の親本を刊行直後に購入して読み、たいへん感銘を受けたので、何度か再読したくらいです。最近、また再読しようと思っていたところ、講談社学術文庫として文庫版後書が付け加えられて刊行されたことを知り、購入して読み進めることにしました。しっかり比較したわけではないのですが、本文は基本的に親本から変更はないようです(誤字の訂正はあるかもしれませんが)。以前、本書を改めて精読したうえで、当ブログで詳しく取り上げるつもりだ、と述べたので(関連記事)、それから4年以上経過しましたが、この機会に以下やや詳しく本書の内容について述べていきます。本当は一つの記事でまとめたかったのですが、備忘録として本書の重要な指摘を網羅的に引用していったら、1記事の文字数制限(2万字以下)に引っかかったので、この前編では親本の分までの内容を取り上げ、後編で文庫版の追加分を取り上げ、雑感を述べることにします。


 本書はまず、現代日本社会における神国・神国思想の認識について論じます。現代日本社会では、神国思想についてある程度共通の認識はあるものの、その内実には揺らぎもあり、何よりも、好きか嫌いか、容認か否定かという立場が前提となって議論が展開されています。しかし、日本=神国の主張が実際にいかなる論理構造なのか、立ち入った考察がほとんどない、と本書は指摘します。神国思想の内容は議論の余地のないほど自明なのか、と本書は問題提起します。神国思想の論理を解明すべき学界では、神国思想は当初、公家政権側が自己正当化のため唱えた古代的思想と評価され、その後、鎌倉時代の公家政権を中世的とみなす見解が有力となり、神国思想も中世的理念と規定されました。しかし、神国思想が古代的か中世的かといった議論はあっても、それぞれの特色についてはまだ統一的見解が提示されていない、と本書は指摘します。本書は、まず現代日本社会における神国・神国思想についての認識を概観し、その認識への疑問を提示した後に、鎌倉時代を中心に神国思想の形成過程と論理構造を解明し、古代とどう異なるのか、鎌倉時代に確立した後はどう展開していったのか、展望します。

 近代の神国思想を代表するのは『国体の本義』で、神としての天皇を戴く日本は他の国々や民族を凌ぐ万邦無比の神聖国家とされました。天皇とナショナリズムこそ近現代日本社会における神国・神国思想認識の核心です。その『国体の本義』は、神の子孫故に外国(異朝)と異なる、との『神皇正統記』の一節を引用します。『神皇正統記』はまず、次のように説明します。この世界(娑婆世界)の中心には須弥山があり、その四方には四大陸が広がっていて、南の大陸を贍部と呼びます。贍部の中央に位置するのが天竺(インド)で、震旦(中国)は広いといっても、天竺と比較すれば「一片の小国」にすぎません。日本は贍部を離れた東北の海中にあります。日本は、釈迦の生まれた天竺からはるかに隔たった辺境の小島(辺土粟散)にすぎない、というわけです(末法辺土思想)。こうした理念は、末法思想の流行にともない、平安時代後期には社会に共有されました。

 13世紀後半のモンゴル襲来を契機に台頭する神国思想と末法辺土思想は、真っ向から対立する、との見解が学界では主流でした。神国思想は、末法辺土思想を克服するために説かれたのだ、というわけです。それは、「神道的優越感」による「仏教的劣等感」の「克服」と解釈されました。しかし、中世における神国思想の代表とされる『神皇正統記』にしても、日本を辺土粟散と位置づけていました。本書は、神国思想が外国を意識してのナショナリズムだったのか、疑問を呈します。神国思想のもう一つの核である天皇も、中世には儒教的徳治主義や仏教の十善の帝王説の立場から相対化されており、天皇を即自的に神聖な存在とする『国体の本義』とは異なります。

 神国思想の解明にさいしてまず重要なのは、日本における神です。日本の神は現代では、日本「固有」もしくは「土着」の存在として認識されています。しかし、古代と現代とでは、神のイメージは大きく異なります。次に、神国思想を「神道」の枠内にとどめず、より広い思想的・歴史的文脈で見ていかねばなりません。日本を神国とする主張は日本の神祇(天神地祇=天地のあらゆる神々)の世界と密接不可分ですが、中世において圧倒的な社会的・思想的影響力を有していたのは仏教でした。また、陰陽道・儒教など多様な宗教世界の全体的構図を視野に入れねばなりません。こうした視点から、本書は中世、とくに院政期と鎌倉時代を中心に、古代から現代にいたる神国思想の変遷とその論理構造を解明していきますが、その前に、そうした変遷と論理構造の前提となった世界観の変容が解説されます。


 本書は、古代における天皇号の確立を重視します。これにより、ヤマト政権の大王とは隔絶した権威が確立され、天皇が神聖化されるにともない、天照大神を頂点とする神々と神話の体系的秩序が形成されました。じゅうらいは、各氏族がそれぞれ神話と祖先神を有していました。律令体制の変容(本書では古代的な律令制支配の「解体」と表現されています)にともない、平安時代後半には、国家の支援を期待できなくなった大寺院が、摂関家や天皇家といった権門とともに荘園の集積を積極的に進め、古代から中世へと移行していきます。有力神社も、荘園を集積したり、不特定多数の人々に社参や参籠を呼びかけたりするようになります。律令制のもとで神社界の頂点にあった伊勢神宮も、御師が日本各地を回り、土地の寄進を募っていました。

 こうした変動は、伊勢神宮を頂点とする神々の序列にも影響を与えました。国家から以前のような保護を受けられなくなった代わりに、相対的に自立した各神社は、浮沈存亡をかけて競争するようになります。日吉神社を中心とする山王神道関係の書物では、山王神こそ日本第一の神と主張され、公然と天照大神を頂点とする既存の神々の秩序に挑戦しました。本書はこうした状況を、神々の世界における自由競争・下剋上と表現しています。春日社(春日大明神)や熊野本宮や石清水八幡宮なども、既存の神々の秩序に挑戦しました。伊勢神宮でも、経済力をつけてきた外宮が、天照大神を祭る内宮の権威に挑戦します。

 こうした神々の世界における自由競争・下剋上的状況で、天照大神というか伊勢神宮内宮の側も、「自由競争」に参加せざるを得なくなります。しかし本書は、これは天照大神にとって悪いことばかりではなかった、と指摘します。かつての天照大神は諸神の頂点に位置づけられていたものの、非皇族が参詣することも幣帛を捧げることも認められておらず、貴族層の間ですら詳しくは知られていませんでした。確固たる秩序の古代から「自由競争」の中世へと移行し、天照大神は伊勢神宮内宮の努力により、日本において広範な支持・基盤を得るようになります。人々の祈願に気軽に声を傾けるようになった天照大神の一般社会における知名度は、古代よりも飛躍的に上昇します。こうした神の性格の変化は天照大神だけではなく、程度の差こそあれ、どの有力神でも同様でした。有力な神々は、各氏族(天照大神の場合は皇族)の占有神から開かれた「国民神」としての性格を強めていった、というわけです。

 このように中世に神々の性格が変容するにつれて、神々は主権者として特定の領域に君臨し、排他的・独占的に支配する存在と主張されるようになります。寺院でも、寺領荘園が「仏土」と称されるようになります。こうした寺社領への侵犯は、仏罰・神罰として糾弾されました。古代にも一定の領域を神の地とする観念は存在しましたが、あくまでも抽象的・観念的で、中世のように可視的な境界線と具体的な数値で示されるものではありませんでした。さらに、古代と中世以降とでは、神への印象が大きく異なっていました。古代の神は常に一定の場所にいるわけではなく、人間の都合だけで会える存在ではありませんでした。古代の神は基本的に、祭りなど特定の期間にだけ祭祀の場に来訪し、それが終わればどこかに去ってしまうものでした。神が特定の神社に常駐するという観念が広く社会に定着するのは、せいぜい律令国家形成期以降でした。一方、中世の神は遊行を繰り返す存在ではなく、常に社殿の奥深くにあって現世を監視し続け、神社やその領地の危急時には、老人・女性・子供などの具体的姿で現世に現れて人々に指示をくだす存在でした。中世の神々は、人々に具体的な姿で現れ、信仰する者には厚い恩寵を与え、自らの意思に反する者には容赦ない罰をくだす、畏怖すべき存在でしたが、全知全能の絶対者ではなく、多彩で豊かな情感を有し、時には神同士の戦闘で傷つき、弱音を吐くこともありました。


 このように、古代と中世とでは、神の性格が大きく変容します。本書は次に、そうした変容がいかなる論理・契機で進行したのか、解説します。神祇界における古代から中世への移行で重要なのは、上述した国家的な神祇秩序の解体と神々の自立でしたが、もう一つ重要なのは、仏教との全面的な習合でした。主要な神々はすべて仏の垂迹とされ、仏教的なコスモロジーの中に組み込まれました。中世の神国思想は、こうした濃密な神仏混淆の世界から生まれました。仏教伝来後しばらく、神と仏が相互に内的な関係を結ぶことはありませんでした。朝廷の公的儀式でも、仏教は原則として排除されていました。しかし、奈良時代になると、日本の神々が仏法の守護神(護法善神)として位置づけられ、神社の周辺に神宮寺と呼ばれる寺院が建立されるようになります。神は煩悩に苦しむ衆生の一人として仏教に救済を求めていた、と信じられるようになります。

 しかし、この時点での主役はあくまでも神社に祀られた神で、寺院はまだ神を慰めるための付随的な施設にすぎませんでした。平安時代後半以降、神宮寺と神社の力関係は逆転します。王城鎮守としての高い格式を誇る石清水八幡宮では、元々はその付属寺院(神宮寺)にすぎなかった護国寺が逆に神社を支配するようになります。日吉社と延暦寺、春日社と興福寺、弥勒寺と宇佐八幡宮などのように、伊勢神宮を除く大規模な神社の大半が寺家の傘下に入り、その統制に服するようになります。こうした神社と寺院の一体化が進行するなか、思想的な水準でも神と仏の交渉が著しく進展します。神仏を本質的には同一とし、神々を仏(本地)が日本の人々の救済のために姿を変えて出現したもの(垂迹)とする本地垂迹説が、日本全域に浸透し、各神社の祭神は菩薩・権現と呼ばれるようになります。鎌倉時代には、ほとんどの神の本地が特定され、天照大神の本地は観音菩薩や大日如来とされました。


 平安時代に本地垂迹説が日本を席巻した背景として、10世紀頃から急速に進展する彼岸表象の肥大化と浄土信仰の流行がありました。死後の世界(冥界・他界)の観念は太古よりありましたが、平安時代前半まで、人々の主要な関心はもっぱら現世の生活に向けられており、来世・彼岸はその延長にすぎませんでした。しかし、平安時代半ば以降、しだいに観念世界に占める彼岸の割合が増大し、12世紀には現世と逆転します。現世はしょせん仮の宿で、来世の浄土こそ真実の世界なのだから、現世の生活のすべては往生実現のために振り向けられなければならない、との観念が定着しました。古代的な一元的世界にたいする、他界─此土の二重構造を有する中世的な世界観が完成したわけです。当時、往生の対象としての彼岸世界を代表するのは、西方の彼方にあると信じられていた、阿弥陀仏のいる西方極楽浄土でした。しかし、それに一元化されているわけではなく、観音菩薩の補陀落浄土・弥勒菩薩の兜率浄土・薬師仏の浄瑠璃世界・釈迦仏の霊山浄土などといった、多彩な他界浄土がありました。とはいえ、真実の世界たる彼岸の存在という確信は、どれも変わりませんでした。

 浄土往生に人生究極の価値を見出した平安時代後半以降の人々にとって、どうすればそれを実現できるのかが、最大の関心事でした。法然の出現前には、念仏を唱えれば往生できるといった簡単な方法はなく、試行錯誤が続いていました。そうした中で、最も効果的と考えられていたのは、垂迹たる神への結縁でした。平安時代後半から急速に普及する仏教的コスモロジーにおいて、日本は此土のなかでも中心である天竺から遠く離れた辺土と位置づけられました。しかも、平安時代後半には末法の世に入った、と信じられていました。こうした中で、末法辺土の救済主として垂迹が注目されるようになります。垂迹たる神が平安時代後半以降の日本に出現したのは、末法辺土の衆生を正しい信仰に導き、最終的には浄土へ送り届けるためでした。そのため、垂迹のいる霊地・霊場に赴いて帰依することが、往生への近道と考えられました。

 仏との親密化・同体化にともない、日本の伝統的な神々は仏教の影響を受け、その基本的な性格が大きく変容していきます。上述したように、日本の神は、律令国家成立の頃より、定まった姿を持たず、祭祀の期間にだけ現れ、終わると立ち去るような、気ままに遊行を繰り返す存在から、一つの神社に定住している存在と考えられるようになりました。律令国家は、天皇をつねに守護できるよう、神を特定の場所に縛りつけました。また、かつては定まった姿を持たない神が、9世紀になると、仏像にならって像を作られるようになります。このように、律令国家成立の頃よりの神の大きな変化として、可視化・定住化の進展が挙げられます。

 もう一つの神の重要な変化は「合理化」です。かつて神々が人間にたいして起こす作用は、しばしば「祟り」と呼ばれ、その時期と内容、さらにはどの神が祟りを下すのかさえ、人間の予知の範囲外とされました。祟りを鎮めるためには、いかに予測不能で非合理な命令でも、神の要求に無条件に従うしかありませんでした。しかし、平安時代半ば頃から、神と人間の関係は変容し始めます。たとえば、返祝詞の成立です。朝廷からの奉献された品々を納受とそのお返しとしての王権護持からは、もはや神が一方的に人間に服従を求める立場にはないことを示しています。神々は人間にとって「非合理的的」存在から「合理的」存在へと変容したわけです。神々の「合理化」は、神の作用を「祟り」から「罰」と表現するようになったことからも窺えます。罰は賞罰という組み合わせで出現する頻度が高く、賞罰の基準は神およびその守護者たる仏法にたいする信・不信でした。神が初めから明確な基準を示しているという意味で、罰と祟りは異質です。神が人間にたいして一方的に(しばしば「非合理」的な)指示を下す関係から、神と人間相互の応酬が可能な関係へと変容したわけです。こうした神々の「合理化」の背景として、本地垂迹説の定着にともなう神仏の同化がありました。本地垂迹説は、単に神と仏を結びつけるのではなく、人間が認知し得ない彼岸世界の仏と、現実世界に実在する神や仏や聖人とを結合する論理でした。救済を使命とする彼岸の仏(本地)と、賞罰権を行使する此土の神・仏・聖人(垂迹)という分類です。垂迹たる神は自らが至高の存在というわけではなく、仏法を広めるために現世に派遣されたので、その威力も神の恣意によるものではなく、人々を覚醒させるために用いられるべきものでした。神の「合理化」はこうして進展しました。古代ローマでも、当初の神は「理不尽」で「非合理的な」存在でした。

 本地垂迹説の流布は、仏と神がタテの関係においてのみならず、ヨコの関係においても接合されたことを意味します。垂迹たる現世の神・仏・聖人の背後には本地たる仏・菩薩がいますが、その本地も究極的には全宇宙を包摂する唯一の真理(法身仏)に溶融するものと考えられていました。個々の神々も本質的には同一の存在というわけです。法身仏の理念は、「神々の下剋上」的風潮において、完全な無秩序に陥ることを防ぐという、重要な機能を果たしました。仏教的な世界像では、現実世界(娑婆世界)の中心には須弥山がそびえ、その上空から下に向かって、梵天・帝釈天・四天王の住む世界があり、その下に日本の神々や仏像が位置づけられていました。日本の神は聖なる存在とはいっても、世界全体から見ればちっぽけな日本列島のごく一部を支配しているにすぎません。また、こうした序列のなかで、仏教や日本の神祇信仰だけではなく、道教の神々も取り入れられ、その順位は日本の神仏よりも上でした。それは、道教的な神々が日本の神仏よりも広範な地域を担当していたからでした。中世の神々の秩序においては、仏教から隔離された純粋な神祇世界に、相互の結合と神々の位置を確認するための論理は見出されませんでした。中世において、日本の神々は仏教的世界観の中に完全に身を沈めることで初めて、自らの安定した地位を占められました。こうして、天照大神を頂点とする強く固定的な上下の序列の古代から、神々が横一線で鎬を削りつつ、仏教的な世界観に組み入れられ、ゆるやかに結合した中世へと移行します。


 こうした古代から中世への思想状況の変容を背景に、本書は古代と中世の神国思想の論理構造と違いを解説していきます。『日本書紀』に初めて見える神国観念は、神国内部から仏教などの外来要素をできるだけ排除し、神祇世界の純粋性を確保しようとする指向性を有している、イデオロギー的色彩の濃厚なものでした。これには、新羅を強く意識した創作という側面も多分にあります。一方、院政期の頃より、神の国と仏の国の矛盾なき共存を認める神国観念が浮上します。仏教の土着化と本地垂迹説の普及を背景として、神仏が穏やかに調和する中世的な神国思想の出現です。

 『日本書紀』の時点では神国観念はそれほど表面に出ておらず、神国という用語が初めてまとまりをみって出現するのは9世紀後半で、その契機は新羅船の侵攻でした。古代の神国思想は、新羅を鏡とすることで確定する領域でした。その後、平安時代中期に日本の観念的な領域(東は陸奥、西は五島列島、南は土佐、北は佐渡の範囲内)が確定し、神国もこの範囲に収まりました。この範囲は、後に東方が「外が浜」へ、西方が「鬼界が島(現在の硫黄島?)」へと移動(拡大)したものの、基本的にはずっと維持されました。もっとも、これらの範囲は近現代のような明確な線というよりは、流動的で一定の幅を有する面でした。また、こうした日本の範囲は、濃厚な宗教的色彩を帯びていました。この範囲を日本の前提として、奈良時代から9世紀後半までの神国観念は、天照大神を頂点とし、有力な神々が一定の序列を保ちながら、天皇とその支配下の国土・人民を守護する、というものでした。本書はこれを「古代的」神国思想と呼んでいます。古代的神国思想の特徴は、仏教的要素が基本的にはないことです。古代において、公的な場での神仏分離は徹底されており、むしろ平安時代になって自覚化・制度化されていきました。

 古代的神国観念から中世的神国観念への移行で注目されるのは、院政期の頃より日本を神国とする表現が急速に増加し始めることです。神国は、古代の神国思想では、天照大神を頂点とする神々により守護された天皇の君臨する単一の空間が、中世の神国思想では、個々の神々の支配する神領の集合体が想定されていました。また、古代では一体とされていた「国家」と天皇が中世には分離します。中世の神国思想の前提には、上述の本地垂迹説がありました。彼岸と此岸の二重構造的な世界観を前提とし、遠い世界の仏が神として垂迹しているから日本は神国なのだ、という論理が中世の神国思想の特色でした。つまり、古代の神国思想とは異なり、中世の神国思想では仏は排除されておらず、むしろ仏を前提として論理が構築されていました。

 その意味で、上述した、神国思想は平安時代後期から広まった仏教的世界観に基づく末法辺土意識を前提として、その克服のために説きだされた、との近現代日本社会における認識は根本的に間違っています。日本が末法辺土の悪国であることは、本地である仏が神として垂迹するための必要条件でした。神国と末法辺土は矛盾するわけでも相対立するわけでもなく、相互に密接不可分な補完的関係にありました。中世の神国思想は、仏教が日本に土着化し、社会に浸透することにより、初めて成立しました。

 また、中世的神国思想は、モンゴル襲来を契機として、ナショナリズムを背景に高揚し、日本を神秘化して他国への優越を強く主張する、との近現代日本社会における認識も妥当ではありません。まず、日本の神祇を仏教的世界観に包摂する論理構造の神国思想は、国土の神秘化と他国への優越を無条件に説くものではなく、むしろ普遍的真理・世界観と接続するものでした。また、釈迦も孔子や日本の神々や聖徳太子などと同様に他界から派遣された垂迹であって、本地仏とは別次元の存在でした。中世的神国思想は、日本とインド(天竺)を直結させ、中国(震旦)を相対化するものではありませんでした。本地垂迹説の論理は、娑婆世界(現世)の二地点ではなく、普遍的な真理の世界と現実の国土を結びつけるものでした。ただ、中世の神国思想に、日本を神聖化し、他国への優越を誇示する指向性があり、鎌倉時代後半からそれが強くなっていったことも否定できません。しかし本書は、神国思想が仏教的理念を下敷きにしていたことの意義を指摘します。

 日本は天竺・震旦とともに三国のうちの一国として把握され、日本が神国であるのは、たまたま仏が神として垂迹したからで、天竺と震旦が神でないのは、神ではなく釈迦や孔子が垂迹したからでした。そのため、日本の聖性と優越が強調されたとしても、それは垂迹の次元でのことでした。日本に肩入れする神仏は垂迹で、日本と敵対する国にも垂迹はいました。垂迹たちの背後には共通の真理の世界が存在し、その次元ではナショナリズム的観念には意味がありませんでした。中世の僧侶が日本を礼賛して日本の神仏の加護を願いつつ、たびたび震旦・天竺行きを志したのも、本地垂迹説の「国際的な」世界観が前提としてあったからでした。上述した、『神皇正統記』における、日本神国で他国(異朝)とは異なる、との主張も、単純に日本の優越性を説いたものではなく、本地としての仏が神として垂迹し、その子孫が君臨しているという意味での「神国」は日本だけだ、と主張するものでした。『神皇正統記』では、日本賛美傾向もあるものの、日本が広い世界観の中に客観的に位置づけられており、その日本観はかなりの程度客観的です。


 中世的神国思想は、モンゴル襲来を契機として、ナショナリズムを背景に高揚し、日本を神秘化して他国への優越を強く主張する、との近現代日本社会における認識は、中世的神国思想がどのような社会的文脈で強調されたのか、との観点からも間違っています。中世において神国思想がある程度まとまって説かれる事例としては、院政期の寺社相論・鎌倉時代のいわゆる新仏教排撃・モンゴル襲来があります。すでにモンゴル襲来前に、「対外的」危機を前提とせずに、中世的神国思想が強調されていたわけです。中世において、神仏が現実世界を動かしているとの観念は広く社会に共有されており、寺社勢力が大きな力を振るったのはそのためでした。院政期に集中的に出現する神国思想は、国家的な視点に立って権門寺社間の私闘的な対立の克服と融和・共存を呼びかけるため、院とその周辺を中心とする支配層の側から説かれたものでした。神国思想の普遍性が活かされているのではないか、と私は思います。

 いわゆる鎌倉新仏教、中でも法然の唱えた専修念仏は、伝統仏教側から激しく執拗な弾圧を受けました。そのさい、しばしば神国思想が持ち出されました。専修念仏者が念仏を口実として明神を敬おうとしないのは、「国の礼」を失する行為で神の咎めに値する、と伝統仏教側は糾弾しました。神々の威光は仏・菩薩の垂迹であることによるのだから、神々への礼拝の拒否は「神国」の風儀に背く、というわけです。末法辺土の日本では存在を視認できない彼岸の仏を信じるのは容易ではないので、末法辺土の日本に垂迹して姿を現した神々・聖人・仏像などへの礼拝が必要とされました。伝統仏教側は、神々の「自由競争」・「下剋上的状況」のなか、礼拝・参詣により人々の関心を垂迹たる神々や仏像のある霊場に向けさせようとしました。しかし法然は、念仏により身分・階層に関わりなく本地の弥陀の本願により極楽往生できる、と説きました。誰もが、彼岸の阿弥陀仏と直接的に縁を結べるのであり、彼岸と此岸を媒介する垂迹は不要どころか百害あって一利なしとされました。法然の思想には本来、現実の国家・社会を批判するような政治性はありませんでしたが、荘園支配のイデオロギー的基盤となっていた垂迹の権威が否定されたことは、権門寺社にとって支配秩序への反逆に他ならず、垂迹の否定は神国思想の否定でもありました。そのため、専修念仏は支配層から弾圧されました。

 モンゴル襲来の前後には、神々に守護された神国日本の不可侵を強調する神国思想が広く主張されました。本書はこれを、ナショナリズム的観念の高揚というより、荘園公領体制下で所領の細分化による貧窮化などの諸問題を、神国と規定してモンゴル(大元ウルス)と対峙させることで覆い隠そうとするものだった、と指摘しています。院政期の寺社相論や鎌倉時代のいわゆる新仏教排撃で見られたように、中世の神国思想はモンゴル襲来よりも前に盛り上がりを見せており、対外的危機を前提とはしていませんでした。寺社相論も鎌倉新仏教への弾圧もモンゴル襲来も、権門内部で完結する問題ではなく、国家秩序そのものの存亡が根底から揺らぐような問題だったため、神国思想が持ち出された、と本書は論じます。中世において、国家全体の精神的支柱である寺社権門の対立は、国家体制の崩壊に直結しかねない問題でした。専修念仏の盛り上がりも、寺社権門の役割を否定するものという意味で、国家的な危機と認識されました。もちろん、モンゴル襲来はたいへんな国家的危機で、支配層たる権門の再結集が図られるべく、神国思想が強調されました。イデオロギーとしての神国思想はむしろ、内外を問わず、ある要因がもたらす国家体制の動揺にたいする、支配層内部の危機意識の表出という性格の強いものでした。

 神国思想は本来、日本を仏の垂迹たる神々の鎮座する聖地と見る宗教思想でしたが、支配層の総体的危機において力説されたように、政治イデオロギーの役割も担わされました。すべての権力が天皇に一元化していく古代とは異なり、中世社会の特色は権力の分散と多元化にありました。多元的な権力から構成される社会において、諸権門をいかに融和させるかが重要な課題となり、神国思想もそうした中世の国家体制を正当化するイデオロギーとして支配層から説きだされた、と本書は推測しています。神国思想が強調されたのは、個別の権門が危機に陥った時ではなく、国家秩序全体の屋台骨が揺らいでいるような時でした。ただ、中世、とくに前期においては、神国思想は民衆を支配するイデオロギーとして強く機能したわけではありませんでした。中世の民衆を束縛した理念は、荘園を神仏の支配する聖なる土地とする仏土・神領の論理だった、と本書は推測しています。国思想は、じっさいの海外交渉ではなく支配層の危機意識の反映だったので、抽象的でした。その背景となる仏教的世界観自体がきわめて観念的性格の強いものだったので、神国思想はなおさら抽象的にならざるを得ませんでした。天竺・震旦・日本から構成される三国世界との認識も観念的で、日本仏教との関わりの強い朝鮮半島が欠落していました。


 本書は次に、神国思想における天皇の占める位置の変遷を解説します。古代では天皇は神国思想の中核的要素でしたが、中世の神国思想では天皇の存在感は希薄です。古代の神国思想は天皇の安泰を目的としましたが、中世では、天皇は神国維持の手段と化し、神国に相応しくない天皇は速やかに退場してもらう、というのが支配層の共通認識でした。その前提として、天皇の在り様の変化があります。律令国家の変容にともない、天皇の在り様も大きく変わります。天皇の政治権力は失墜しますが、形式上は最高次の統治権能保有者たる「国王」であり続けました。それは、他の権力では代替できない権威を天皇が有していたからでした。それに関しては、大嘗祭に象徴される古代から現代まで一貫する権威があった、という説と、即位灌頂のような仏教的儀式に代表される、それぞれの時代に応じた権威があった、という説が提示されています。

 一方、院政期になると天皇がさまざまな禁忌による緊縛から解き放たれて、神秘性を失ってしまう、との見解もあります。天皇は現御神の地位から転落した、というわけです。天皇は、より高次の宗教的権威である神仏の加護なくして存立し得ず、罰を受ける存在でもある、との観念も広く見られるようになりました。つまり、天皇の脱神秘化が進み、天皇はもはや内的権威で君臨できなくなったので、即位灌頂のような新たな仏教的儀式に見られるように、外的権威を必要としたのではないか、というわけです。しかし本書は、天皇に対する仮借なき批判が一般的だったことから、新たな儀式の効果には限界があった、と指摘します。そもそも、即位灌頂は秘儀とされていて、特定の皇統で行なわれていただけで、よく知られていませんでした。即位灌頂き一般的な天皇神秘化の儀式ではなく、特定の皇統による自己正当化の試みの系譜ではないか、と本書は指摘しています。

 古代の神国思想は天皇の存在を前提として正当化することが役割でした。神々の守るべき国家とは天皇でした。中世には、国家的寺社が自立し天皇は権門の一員となりました。しかし、分権化の進行する中世において、とくに体制総体が危機にある時は、天皇が諸権門の求心力の焦点としての役割を果たすには、ある程度聖別された姿をとることが必要でした。古代には天皇が神孫であることは天皇個人の聖化と絶対化に直結していましたが、中世には神孫であることは即位の基礎資格でしかなく、天皇の終生在位を保証しませんでした。これは、中世には古代と異なり、天皇の観念的権威の高揚が天皇個人の長久を目的としておらず、国家支配維持の政治的手段だったことと密接に関連しています。そのため天皇が国王としての立場を逸脱したとみなされた場合は、支配層から批判され、交代が公然と主張されました。天皇は中世には体制維持の手段と化したわけです。古代には国家とは天皇そのものでしたが、中世の国家概念には国土や人民といった要素が含まれるようになり、国家はより広い支配体制総体を指す概念となりました。神孫であることだけでは天皇位を維持できないので、中世の天皇は徳の涵養を強調する場合もありました。

 より高次の宗教的権威が認められ、個人としては激しく批判されることもあった天皇が必要とされ続けたのは、一つには、神代からの伝統と貴種を認められた天皇に代わるだけの支配権力結集の核を、支配層が用意に見つけられなかったからです。権力の分散が進行する中世において、混乱状況の現出を防ぐために、権門同士の調整と支配秩序の維持が重要な課題として浮上しました。天皇が国家的な位階秩序の要を掌握していたのは、単に伝統だからではなく、支配層全体の要請でもありました。したがって、天皇位の喪失は、天皇家という一権門の没落にとどまらず、支配層全体の求心力の核と、諸権門を位置づけるための座標軸の消失を意味していました。既存の支配秩序を維持しようとする限り、国王たる天皇を表に立てざるを得ないわけです。そのため、体制の矛盾と危機が強まるほど、天皇の神聖不可侵は反動的に強調されねばならず、故にそうした時には神国思想も強調されました。

 天皇が必要とされたもう一つの理由は、中世固有の思想状況です。中世では地上の権威を超える権威たる本地仏が広く認められていたので、天皇ではない者が本地仏と直接結びつく可能性もありました。日蓮や専修念仏には、そうした論理の萌芽が認められ、天皇家と運命共同体の公家にとって、天皇に取って代わる権威は絶対に認められないので、新興仏教に対抗するために天皇と神国を表に出しました。武家政権も、中世前期においては荘園体制を基盤とし、垂迹たる神仏への祈祷に支えられていたので、垂迹を経由せず彼岸の本仏と直接結びつくような、日蓮や専修念仏の信仰を容認できませんでした。武家政権が神国思想を否定することは、鎌倉時代の段階では不可能でした。


 このように、神国思想は固定化された理念ではなく、歴史の状況に応じて自在に姿を変えてきました。神国思想はしばしば、普遍世界に目を開かせ、非「日本的」要素を包摂する論理としても機能しました。「神国」の理念を現代に活かすのであれば、安易に過去の「伝統」に依拠せず、未来を見据え、世界を視野に収めてその中身を新たに創造していく覚悟が求められます。日本を神国とみなす理念は古代から近現代に至るまでいつの時代にも見られましたが、その論理は時代と論者により大きな隔たりがありました。その背景には、神国思想の基盤となる神観念の変貌とコスモロジーの大規模な転換がありました。モンゴル襲来以降の神国思想も、決して手放しの日本礼賛論ではありませんでした。中世の神国思想の骨格は、他界の仏が神の姿で国土に垂迹している、という観念にありました。普遍的存在である仏が神の姿で出現したから「神国」というわけです。インド(天竺)や中国(震旦)が神国ではないのは、仏が神以外の姿をとって現れたからでした。

 現実のさまざまな事象の背後における普遍的な真理の実在を説く論理は、特定の国土・民族の選別と神秘化に本来なじみません。中世的な神国思想の基本的性格は、他国に対する日本の優越の主張ではなく、その独自性の強調でした。中世的な神国思想は、仏教的世界観と根本的に対立するのではなく、それを前提として初めて成立するものでした。中世的神国思想において、天皇はもはや中心的要素ではなく、神国存続のための手段でした。神国に相応しくない天皇は退位させられて当然だ、というのが当時の共通認識でした。中世的神国思想には普遍主義的性格が見られます。中世の思潮に共通して見られる特色は、国土の特殊性への関心とともに、普遍的世界への強い憧れです。現実世界に化現した神・仏・聖人への信仰を通じて、誰かもが最終的には彼岸の理想世界に到達できる、という思想的状況において、中世の神国思想は形成されました。

 中世後期(室町時代)以降、日本の思想状況における大きな変化は、中世前期(院政期・鎌倉時代)に圧倒的な現実感を有していた他界観念の縮小と、彼岸─此岸という二重構造の解体です。古代から中世への移行期に、現世を仮の宿と考え、死後の理想世界たる浄土への往生に強い関心を寄せる世界観が成立しました。しかし、中世後期には浄土のイメージが色褪せ、現世こそが唯一の実態との見方が広まり、日々の生活が宗教的価値観から解放され、社会の世俗化が急速に進展します。仏は人間の認知範囲を超えたどこか遠い世界にあるのではなく、現世の内部に存在し、死者が行くべき他界(浄土)も現世にある、というわけです。死者の安穏は遥かな浄土への旅立ちではなく、墓地に葬られ、子孫の定期的な訪れと読経を聞くことにある、とされました。神は彼岸への案内者という役割から解放され、人々の現世の祈りに耳を傾けることが主要な任務となりました。この大きな社会的変化は、江戸時代に完成します。このコスモロジーの大変動は、その上に組み上げられたさまざまな思想に決定的転換をもたらしました。彼岸世界の衰退は、垂迹の神に対して特権的地位を占めていた本地仏の観念の縮小を招き、近世の本地垂迹思想は、他界の仏と現世の神を結びつける論理ではなく、現世の内部にある等質な存在としての仏と神をつなぐ論理となりました。その結果、地上のあらゆる存在を超越する絶対者と、それが体現していた普遍的権威は消滅しました。中世において、現世の権力や価値観を相対化して批判する根拠となっていた他界の仏や儒教の天といった観念は、近世では現世に内在化し、現世の権力・体制を内側から支えることになりました。

 彼岸世界の後退という大きな変動が始まるのは14世紀頃で、死後の彼岸での救済ではなく、現世での充実した生が希求されるようになりました。もっとも、客観的事実としての彼岸世界の存在を強力に主張し、彼岸の仏の実在を絶対的存在とする発想は、中世を通じておもに民衆に受容されて存続しました。一向一揆や法華一揆は、他界の絶対的存在と直結しているという信念のもと、現世の権力と対峙しましたが、天下人との壮絶な闘争の末に、教学面において彼岸表象の希薄な教団だけが正統として存在を許されました。江戸時代にはすべての宗教勢力が統一権力に屈し、世俗の支配権力を相対化できる視点を持つ宗教は、社会的な勢力としても理念の面でも消滅しました。神国思想も、近世には中世の要素を強く継承しつつも、大きく変わりました。近世の神国思想では、本地は万物の根源ではなく「心」とされました。本地は異次元世界の住人ではなく、人間に内在するものとされました。また、近世の神国思想では、垂迹は浄土と現世を結ぶ論理とは認識されておらず、中世の神国思想の根底をなした遠い彼岸の観念は見られません。近世の神国思想では、本地垂迹は他界と現世とを結ぶのではなく、現世における神仏関係となっていました。

 中世的神国思想の中核は、他界の仏が神として日本列島に垂迹している、という理念でした。現実の差別相を超克する普遍的真理の実在にたいする強烈な信念があり、それが自民族中心主義へ向かって神国思想が暴走することを阻止する役割を果たしていました。しかし、中世後期における彼岸表象の衰退にともない、諸国・諸民族をともかくも相対化していた視座は失われ、普遍的世界観の後ろ盾を失った神国思想には、日本の一方的な優越を説くさいの制約は存在しませんでした。じっさい、江戸時代の神道家や国学者は、神国たる日本を絶賛し、他国にたいする優越を説きました。中世的な神国思想では日本の特殊性が強調されましたが、近世の神国思想では、日本の絶対的優位が中核的な主張となりました。

 古代においても中世前期においても、神国思想には制約(古代では神々の整然たる秩序、中世では仏教的世界観)があり、自由な展開には限界があった、という点は共通していました。しかし、近世においては、権力批判に結びつかない限り、神国思想を制約する思想的条件はありませんでした。近世には、思想や学問が宗教・イデオロギーから分離し、独立しました。近世の神国思想は多様な人々により提唱され、日本を神国とみなす根拠も、さまざまな思想・宗教に基づいていました。共通する要素は、現実社会を唯一の存在実態とみなす世俗主義の立場と強烈な自尊意識です。近世の神国思想の重要な特色としては、中世では日本=神国論の中心から排除されていた天皇が、再び神国との強い結びつきを回復し、中核に居座るようになったことです。中世において至高の権威の担い手は、超越的存在としての彼岸の本地仏でした。中世後期以降、彼岸のイメージが縮小し、中世には天皇を相対化していた彼岸的・宗教的権威が後退していきます。近世の神国思想において、本地垂迹の論理は神国を支える土台たり得ず、日本が神国であることを保証する権威として、古代以来の伝統を有する天皇が持ち出されました。

 明治政府は神国=天皇の国という近世の神国思想の基本概念を継承しますが、神仏分離により、外来の宗教に汚されていない「純粋な」神々の世界のもと、神国思想を再編しました。近代の神国理念には、(近世以降に日本「固有」で「純粋な」信仰として解釈された)神祇以外の要素を許容する余地はなく、中世の仏教的世界観も、近世の多様な思想・宗教も排除されました。天皇を国家の中心とし、「伝統的な」神々が守護するという現代日本人に馴染み深い神国の理念は、こうした過程を経て近代に成立しました。近代の神国思想には、日本を相対化させる契機は内在されていませんでした。独善的な意識で侵略を正当化する神国思想への道が、こうして近代に開かれました。

 現代日本社会における神国思想をめぐる議論について、賛否どちらの議論にも前提となる認識に問題があります。日本=神国とする理念自体は悪ではなく、議論を封印すべきではありません。自民族を選ばれたものとみなす発想は時代を問わず広範な地域で見られ、神国思想もその一つです。排外主義としてだけではなく、逆に普遍的世界に目を開かせ、外来の諸要素を包摂する論理として機能したこともありました。神国思想は日本列島において育まれた文化的伝統の一つで、その役割は総括すべきとしても、文化遺産としての重みを正しく認識する義務があります。一方、神国思想を全面的に肯定する人々には、他者・他国に向けての政治的スローガンにすべきではない、と本書は力説します。そうした行為は、神国という理念にさまざまな思いを託してきた先人たちの努力と、神国が背負っている厚い思想的・文化的伝統を踏みにじる結果になりかねません。神国思想は、一種の選民思想でありながら、一見すると正反対な普遍主義への指向も内包しつ、多様に形を変えながら現代まで存続してきました。仏教・キリスト教・イスラム教などが広まった地域では、前近代において、普遍主義的な世界観が主流を占めた時期があります。宇宙を貫く宗教的真理にたいする信頼が喪失し、普遍主義の拘束から解放された地域・民族が、自画像を模索しながら激しく自己主張をするのが近代でした。自尊意識と普遍主義が共存する神国思想に関する研究成果は、方法と実証両面において、各地域における普遍主義と自民族中心主義の関わり方と共存の構造の解明に、何らかの学問的貢献ができる、と予想されます。
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筒井清忠編『昭和史講義 【軍人篇】』

2018/08/26 06:47
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2018年7月に刊行されました。筒井清忠編『昭和史講義─最新研究で見る戦争への道』(関連記事)と筒井清忠編『昭和史講義2─最新研究で見る戦争への道』(関連記事 )と筒井清忠編『昭和史講義3─リーダーを通して見る戦争への道』(関連記事)の続編となります。いずれも好評だったのか、続編が刊行されたのは喜ばしいことです。編者による「まえがき」は、昭和時代の陸軍の派閥抗争についての完結な解説になっており、参考になります。本書もたいへん有益だったので、続編が望まれます。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。


●筒井清忠「昭和陸軍の派閥抗争─まえがきに代えて」P9〜34
 太平洋戦争が始まる直前までの昭和期の陸軍の動向が、派閥抗争という視点で解説されています。この期間で有名なのは統制派と皇道派ですが、両者はそもそも、総力戦体制を志向し、長州閥、さらにはそれを継承したとも言える準長州閥の宇垣一成を批判する、革新志向勢力と言えます。それが、革新志向勢力に歓迎された荒木貞夫陸相の政治力のなさへの対応などから統制派と皇道派に分裂して派閥抗争が激化していき、二・二六事件で皇道派は没落します。しかし、その後は統制派の天下になったのかというと、旧統制派内でも派閥抗争が続き、とても統制派の支配下にあるとは言えない状況でした。本論考は、こうした派閥抗争の要因として、個人の役割も無視できないものの、中堅幕僚グループの動向・雰囲気が大きかったのではないか、と指摘しています。満洲事変で強硬策を主張した石原莞爾が日中戦争では不拡大策をとろうとしても下から突き上げられて失敗し、日中戦争で強硬策を主張した武藤章が対米開戦を回避しようとしても下から突き上げられて失敗したように、陸軍の下剋上的雰囲気のなかで、中堅幕僚グループからの突き上げが、将官級の動向を制約したのではないか、というわけです。中堅幕僚グループのそうした動向には、功名心もあったのでしょう。


第1講●武田知己「東条英機─昭和の悲劇の体現者」P35〜52
 東条英機の政治家としての限界が解説されています。東条にとっての政治とは、あくまで上下関係や威嚇を背後に進められる軍隊式の意思決定・伝達方式に基づいての、自らの意向・主張の貫徹を意味した、と本論考は指摘します。つまり東条には、異なる利害関係や世界観を総合させ、新たな社会や政治を共に創造していくという観点が欠けていた、というわけです。東条は米英の非妥協的姿勢を開戦の要因と主張し続けましたが、それも東条の政治観に起因するものでした。ただ、本論考は、こうした限界は東条個人に限らず昭和期の政治中枢に共通する問題だった、とも指摘しています。


第2講●庄司潤一郎「梅津美治郎─「後始末」に尽力した陸軍大将」P53〜70
 梅津美治郎は幼年学校時代から成績優秀で、陸軍で出世していきました。梅津が出世していった頃、陸軍では派閥抗争が激化していきましたが、梅津は終始一貫して無派閥を貫きました。梅津は冷徹と評された人物でしたが、それだけ自分を抑制できた、ということなのでしょう。本論考はそうした個性の梅津を、「後始末」に尽力したと評価しています。二・二六事件からノモンハン事件、さらには終戦という日本にとっての一大転機に、梅津は「後始末」を無難に行ない、昭和天皇から厚く信頼された、と本論考は指摘します。


第3講●波多野澄雄「阿南惟幾─徳義即戦力」を貫いた武将」P71〜86
 阿南惟幾は、成績優秀というわけではなかったものの、物静かで礼節を弁えた人物で、その人格は高く評価されていたようです。そのような個性の人物だけに、阿南は軍人の政治への関与には消極的というか、批判的だったようです。その阿南が戦局の傾いた時期に陸相に任命された理由として、高潔な人格とともに、精神主義を一貫して唱えていたこともあったようです。傾いた戦局の打開には、阿南の精神主義が必要と考えられた、というわけです。まあ、貧すれば鈍する、といった感じではありますが。阿南は陸相として強硬な主張を続けましたが、辞表を提出しなかったことからも、すでに長期的な抗戦は無理と判断していただろう、と推測されています。


第4講●高杉洋平「鈴木貞一─背広を着た軍人」P87〜104
 頭脳明晰な鈴木貞一は陸軍で順調に出世していきましたが、舞台勤務の経験は少なく、中央でのデスクワークの多い異色の軍人でした。そもそも、鈴木は鴨緑江の森林開発を志して一高から東大に進学しようと考えていたそうです。鈴木の陸軍での立場は、皇道派と統制派の対立が激化すると悪化していき、陸軍での出世は望めなくなりました。鈴木は統制派の永田鉄山の思想に共鳴していたものの、皇道派の荒木貞夫にも同情的で、派閥抗争を調停しようとしたものの、失敗します。しかし、以前から政治志向の強かった鈴木は近衛文麿とも親交があり、その縁で政界に進出し、第二次近衛内閣では企画院総裁に任命されます。ここでの鈴木は、対米開戦に賛成とも反対ともとれるような態度を示し、後世のみならず同時代の人々からも評判が悪かったのですが、本論考は、鈴木の曖昧な態度は、対米妥協も戦争もせず、経済制裁は甘受するという「臥薪嘗胆論」を排除するという点では一貫していた、と指摘します。


第5講●高杉洋平「武藤章―─「政治的軍人」の実像」P105〜122
 武藤章は日中戦争前から開戦後間もない頃までは強硬策を主張し、対中戦争回避・不拡大論を主張した石原莞爾と対立しました。その武藤も、中国戦線でのナショナリズムの高揚を見て、自分の判断が間違っていたと悟ります。武藤は日中戦争終結のため、「国防国家」の建設に邁進します。武藤の構想は、議会と政党に肯定的で、一党体制に否定的という点で、通俗的な印象とは異なるかもしれません。しかし本論考は、武藤の構想には政党が軍部の要求を受け入れることを前提としている点など、矛盾も内包されていた、と指摘します。武藤が対米開戦に反対していたことは一般にもそれなりに知られているでしょうが、その重要条件とされた対中方針に関しては、武藤でも妥協には限界があり、陸軍内部の強硬な反対がなくとも難しかっただろう、と指摘されています。


第6講●戸部良一「石原莞爾─悲劇の鬼才か、鬼才による悲劇か」P123〜140
 石原莞爾が「鬼才」とも言うべき優れた頭脳の持ち主だったことは間違いないでしょう。しかし、その頭脳が日本にもたらした結果は、評価が難しいところではあるものの、少なくとも手放しで賞賛されるようなものではとてもなかったことは、間違いないと思います。石原は満洲事変での「目覚ましい活躍」と二・二六事件での「断固たる討伐方針」により陸軍内、さらには国民の間で声望を高めました。しかし、満洲事変では陸軍に「下剋上」的雰囲気を定着させ、後に日中戦争では自らが「下剋上」的雰囲気の前に敗退することになりましたし、二・二六事件にさいしても、反乱軍への共感が強くあり、当初から「断固たる討伐」一辺倒ではなかったようです。


第7講●戸部良一「牟田口廉也─信念と狂信の間」P141〜160
 本論考が指摘するように、牟田口廉也はきわめて評判の悪い軍人で、現在でも擁護する人は皆無に近く、批判・罵倒される一方だと言えるでしょう。インパール作戦の大失敗により、牟田口の悪評は決定的となりましたが、戦後のある時期まで、牟田口はその悪評に反論することなく、沈黙を守りました。しかし、イギリス人が牟田口にインパール作戦について問い合わせたところ、牟田口は自分の作戦を弁護するものと考え、以後は死去までの数年間、熱心に自分の正当性を訴えました。しかし本論考は、牟田口のこの認識は幻想だった、と指摘しています。きわめて評判の悪い牟田口ですが、本論考を読むと、日中戦争勃発のさいに重要な役割を果たしたとはいえ、インパール作戦までは将官に昇進しても不思議ではない普通の軍人といった印象を受けます。やはり、戦局が傾いてしまうと、貧すれば鈍するというか、以前からの精神主義的傾向が強く表に出てしまい、大惨事を招来した、ということなのでしょう。


第8講●渡邉公太「今村均―─「ラバウルの名将」から見る日本陸軍の悲劇」P161〜178
 今村均は、太平洋戦争中のジャワとラバウルにおける占領政策が寛容で、高潔な人格だったこともあり、日本国内のみならず、被占領国の住民、さらには敵軍にまで高く評価されました。今村がこのような評価を得るにいたった背景として、本論考は今村が陸軍で主流派ではなかったことを指摘しています。そのため、日中戦争以降、軍令・軍政には関わらず、現地軍の指揮官を務め、結果として高い評価を得た、というわけです。今村が陸軍主流派ではなかった背景として、昭和期陸軍の「下剋上」的雰囲気を苦々しく思い、派閥抗争にも関わらなかったこともありますが、今村が幼年学校から士官学校へという陸軍エリートの通常コースではなく、中学校から士官学校へという異端的進路を選択したこともあるのではないか、と本論考は指摘しています。


第9講●畑野勇「山本五十六─その避戦構想と挫折」P179〜196
 山本五十六は戦後になって海軍良識派の一人と評価されるようになりましたが、それは海軍非主流派だったことを意味する、と本論考は指摘します。昭和期、太平洋戦争まで海軍で大きな影響力を有したのは、長く軍令部長(軍令部総長)を務めた伏見宮博恭王で、山本の伏見宮博恭王への進言内容から、本論考は山本の意図を推測しています。山本の究極の目標は対米戦回避で、戦争への物的準備と一体ではあったものの、せめて長期戦だけは避ける、という強い信念が山本にはありました。太平洋戦争冒頭のハワイ襲撃も、米国民の戦意を挫く、という意図がありました。しかし、海軍主流派が山本に期待したのは、あくまでも作戦上の観点からの統率力だった、と本論考は指摘しています。


第10講●相澤淳「米内光政─終末点のない戦争指導」P197〜214
 日中戦争初期に海軍大臣だった米内光政の対中方針が検証されています。米内の海軍兵学校での成績は平凡でしたが、日本にとって中国との関係が重要になっていくなか、中国での指揮官勤務を買われて、連合艦隊司令長官や海軍大臣に抜擢されたのではないか、と推測されています。米内は日本軍が中国を屈服させることの難しさから、対中穏健論者で、蒋介石と会見したこともあることから、蒋介石政権に敵対的な勢力を支援するのではなく、蒋介石を中国の交渉相手にすべきと考えていました。その米内が、日中戦争勃発後間もなく、対中強硬派に転じます。本論考はその理由として、中国軍が上海の日本総領事館や日本の軍艦を爆撃し、蒋介石が対日強硬路線を選択したと判断したことや、当時の上海では日本軍より中国軍の方が優勢で、日本軍の増派が必要と考えられたことや、中国への「一撃」、とくに首都である南京を陥落させることで、蒋介石政権を凋落させられるのではないか、と判断したことが挙げられています。


第11講●森山優「永野修身─海軍「主流派」の選択」P215〜236
 永野修身は海軍重鎮として昭和期に重要な役割を果たし、太平洋戦争開戦直前から戦争中期まで軍令部総長を務めました。本論考は、対米開戦にいたる過程での永野の果たした役割、責任を検証しています。永野は対米戦で勝機があるとはまったく確信していませんでしたが、対米開戦決定にさいして、これを推進する役割を果たしました。本論考はその理由として、対米戦を避けた場合に起きる事態を永野が懸念したからで、その点で一見すると主張の揺れ動いていた永野の判断は一貫していた、と指摘します。その懸念とは、何よりも海軍の体面であり、また海軍と陸軍との対立でした。戦争の目算が立たないと言えば体面が失われるということもありましたが、何よりも、石油が枯渇して米海軍に攻められれば、日本海軍は戦わずして降伏するわけで、永野はこれを懸念していました。また、陸軍との対立回避も永野にとって大前提でした。こうした永野の判断が、戦機は今だが、3年後の勝利は不明という無責任な発言でした。米海軍が攻めてくるという妄想も含めて目先の困難を避けるあまり、大局を見失って破滅するという、大日本帝国を体現する人物だった、と本論考は永野を評価しています。


第12講●手嶋泰伸「高木惣吉─昭和期海軍の語り部」P237〜252
 高木惣吉は健康上の問題から艦隊勤務での活躍は望めず、海軍では軽視されていた情報収集などの業務に従事することになります。高木は、伝統的に陸軍よりも政治への介入が弱かった海軍の政治的立場が弱いことから、政治情報の収集に努め、海軍の政治的立場の向上を企図します。こうした政治活動や、太平洋戦争後期以降の終戦工作により、高木は貴重な政治的情報を多く収集し、戦後には「昭和期海軍の語り部」となり得ました。しかし本論考は、高木の活動が海軍の政治的立場の強化や終戦に果たした役割は小さく、高木の政治的力量には限界があった、と指摘しています。


第13講●畑野勇「石川信吾─「日本海軍最強硬論者」の実像」P253〜270
 石川信吾は海軍における対米開戦強硬論者とされていますが、本論考によると、対米開戦について強い決意を抱き、首尾一貫していたわけではなさそうです。石川は陸軍・政財界にまで広がる交友関係を築き、そうした政治的志向もまた、石川の人物像を印象づけましたが、本論考は、石川の幅広い交友関係は職務上の不遇感を払拭するためのものだった、と推測しています。また、それとも関連して、石川の戦後の回想には、失敗・錯誤・重大事態における逡巡などの率直な記述が見られず、自己顕示が目立つ、とも指摘されています。


第14講●筒井清忠「堀悌吉─海軍軍縮派の悲劇」P271〜298
 堀悌吉には平和主義的なところがあり、そのため世界主義者・共産主義者と周囲に思われたこともありましたが、本書は堀の平和主義志向の前提として、郷里の国東半島(大分県)における、篤い神仏への信仰と、三浦梅園から始まる大分県(当時は豊前の一部と豊後)合理的思索があったのではないか、と指摘しています。堀は条約派として大きな功績を残し、そのために艦隊派から敵視されて海軍を去ることになりました。本論考はその背景として、堀を執拗に攻撃した末次信正などの個人の問題として把握するのではなく、第一次世界大戦後の国際協調の時代における軍人の不遇とそれへの反発・鬱憤、昭和恐慌下で財閥元老重臣層が既得権者として攻撃されるようになり、条約派が既得権側と同一視されるようになったことなど、広範な社会的動向があったことを指摘しています。
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竹中亨『ヴィルヘルム2世 ドイツ帝国と運命を共にした「国民皇帝」』

2018/08/12 08:29
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2018年5月に刊行されました。「あとがき」にあるように、ヴィルヘルム2世は、傲慢で独善的、癇性で衝動的、自信過剰で自己顕示欲が強烈という、とても個人的には付き合いたくはない人間です。しかし本書は、ヴィルヘルム2世には柔弱で依存心の強いところもあった多面的で矛盾した人物で、人格的矛盾こそ最大の人格的特徴だった、と指摘しています。このようなヴィルヘルム2世の人格形成の要因として、誕生時に起因する左腕の障害が一因ではないか、と本書は推測しています。この障害を克服すべく、母親から厳しい教育を強いられたヴィルヘルム2世は、母親と母親に言いなりの傾向にある父親を激しく嫌うようになります。

 イギリス王家出身の母親(ヴィクトリア女王の長女)は、イギリスを模範として疑わない理想主義的なところがあり、その母親への反発から、ヴィルヘルム2世はイギリスを激しく攻撃したこともあります。しかし、ヴィルヘルム2世には生涯にわたってイギリスへの敬慕があり、イギリスは重要なアイデンティティの一部を形成していました。一方でヴィルヘルム2世は、イギリス的な自由主義傾向の強い両親への強い反発から、祖父のヴィルヘルム1世を敬慕し、祖父もまた、自由主義的な息子夫婦(ヴィルヘルム2世の両親)への不満から、孫に期待をかけていました。このように、ヴィルヘルム2世の中では、イギリス的要素とプロイセン的要素とが混在しており、本書はこの点でもヴィルヘルム2世の矛盾した人格を強調しています。

 大宰相のビスマルクは、自由主義への警戒からヴィルヘルム2世に接近し、当初は両者の関係は良好でした。しかし、ヴィルヘルム2世の場当たり的な外交方針は、緻密なビスマルクの外交方針を破綻させるものであり、両者の関係は悪化していきます。けっきょく、ヴィルヘルム2世は即位後、宰相のビスマルクを罷免します。両者の衝突は、外交方針の違いというだけではなく、皇帝専制を志向するヴィルヘルム2世と、実質的な政権運営者としての宰相たるビスマルクとの対立でもありました。しかし、宰相のビスマルクを罷免しても、近代国家において皇帝が専制的に政治を運営するのは事実上不可能で、ヴィルヘルム2世がじっさいに政治に及ぼした影響は、報道などから受ける印象と比較してずっと小さいものでした。さらに、上述した個性から窺えるように、ヴィルヘルム2世は衝動的で、皇帝専制政治を志向するとはいっても政務に熱心とは言えず気まぐれで、これがドイツ帝国の政治を迷走させたところは多分にあるようです。

 本書からは、ヴィルヘルム2世のこのような個性が、宿敵のフランスだけではなく、イギリスとロシアも敵に回すという不利な状況で第一次世界大戦を迎え、ついには敗北して帝政が崩壊するにいたった過程において、一定以上の役割を果たした、と窺えます。しかし本書は、ヴィルヘルム2世を、単に気まぐれで政治的にはドイツ帝国に悪影響を及ぼした暗君として描くのではなく、ヴィルヘルム2世の強い自己顕示欲に基づく行動が、各領邦の強い自立性により成立していたドイツ帝国の一体性を強めていき、ドイツ人の国家としての統合が進んだ、という側面も指摘しています。本書は、日本語で読めるヴィルヘルム2世の簡潔な評伝として、今後長く読み続けられていく良書と言えるでしょう。
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飯倉章『1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか ドイツ・システムの強さと脆さ』

2018/08/05 11:02
 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2017年12月に刊行されました。本書は第一次世界大戦におけるドイツの敗北を検証しています。第一次世界大戦でドイツは最終的に敗北し、帝政は崩壊したのですが、西部戦線ではイギリスとフランス、東部戦線ではロシアを相手に4年以上戦い、時に大勝することもありました。もっとも、ドイツは当時まだ(かろうじて)大国の一つだったオーストリア=ハンガリー帝国と、かつての大国だったオスマン帝国と同盟関係にありましたし、1917年の革命で混乱したロシアでは、最終的に権力を掌握したボリシェヴィキ政権がドイツと講和しましたが、それを考慮に入れても、イギリス・フランス・ロシアを相手に4年も戦い続けたドイツの強さは驚異的だと思います。

 本書は、ドイツの強さには「ドイツ・システム」があり、それは脆さにもなっていて、EUで「ドイツの独り勝ち」とも言われる現代にも、「ドイツ・システム」に起因する強さと脆さが同居している、と指摘しています。しかし、ドイツ史に疎い私からすると、家父長制的な権威主義文化に起因する「ドイツ・システム」の強さと脆さとはいっても、正直なところ、俗流的な比較文化論の枠組みにあるのではないか、と思えました。本書は、現代ドイツのサッカー代表チームに関しても「ドイツ・システム」で説明しており、サッカーにまったく興味がなく(ただ、競技自体には興味がありませんが、利権・腐敗構造にはそれなりに関心があります)、高校までの体育の授業での経験から大まかなルールを知っている程度の私にとっては、本書の見解の妥当性がどの程度のものなのか、判断できないのですが、サッカーに詳しい読者はどのように考えるのでしょうか。

 本書は、プロイセン主導による統一ドイツ帝国(とはいっても、オーストリアは除外されているわけですが)の支配構造として、皇帝(国王)・首相・参謀総長のトライアングルという図式を提示し、これが第一次世界大戦後半には崩れてしまい、ドイツの敗戦へとつながった、との見通しを提示しています。しかし、正直なところ、このトライアングルの成立から安定期を経て崩壊期にいたるまで、「ドイツ・システム」という本書の提示する枠組みでの説明が、成功しているようには思えませんでした。確かに、第一次世界大戦におけるドイツの判断の過ちは興味深い事例ではあるものの、本書の解説からは、かなりの程度普遍的な失敗でもあるように思えました。色々と不満を述べてきましたが、ドイツ視点の第一次世界大戦史の一般向け書籍としては、本書は当たりだと思います。
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David Reich『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(追記有)

2018/07/29 09:46
 デイヴィッド=ライク(David Reich)著、日向やよい訳で、NHK出版から2018年7月に刊行されました。原書の刊行は2018年3月です。著者は古代DNA研究の大御所で、当ブログでも、著者の関わった論文をかなり取り上げてきたはずですが、具体的な数を調べるほどの気力はありません。それはともかく、古代DNA研究の大御所(とはいっても、まだ40代半ばですが)が原書執筆時点(脱稿は2017年後半?)で交雑の観点からの人類史をどのように把握しているのか、たいへん注目して読み始めました。

 本書は、まず古代DNA研究の概要を解説し、次に、現生人類(Homo sapiens)以外でDNAが解析されているネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のデニソワ人(Denisovan)を取り上げた後、現生人類がアフリカから世界中へと拡散する過程で、どのような移住・交雑により現代の各地域集団が形成されてきたのか、解説します。古代DNAをどう解析するのか、さらには交雑の有無をどのように判別するのか、具体的に解説されていてたいへん有益です。さらに本書は、古代DNA研究が現代社会においてどのような意義を有するのか、人種問題などを取り上げ、今後の展望を提示しています。

 本書も認めるように、古代DNA研究の進展には目覚ましいものがあるので、本書の見解のうちいくつかは、今後修正・否定されていくでしょう。しかし、個別の見解については「短い寿命」のものもあるとしても、古代DNA研究の意義や手法の解説は、長く読まれていくものになっていると思います。2018年時点での古代DNA研究の一般向け書籍として、間違いなくお勧めの一冊です。本書で取り上げている研究で、当ブログにて取り上げたものも少なからずあるのですが、見落としていた観点もありましたし、未読の本・論文が多数取り上げられているので、たいへん有益でした。また、このような大部の一般向け書籍の日本語版では、参考文献が省略されることもあるのですが、本書ではしっかりと掲載されており、それでいて税込み2700円なのですから、たいへんお買い得だと思います。索引があればもっとよかったのですが、さすがにこの価格でそこまで望むのは難しいように思います。以下、本書の内容について、私の雑感も挟みつつ、備忘録的に述べていきます。


 現在では、現生人類とネアンデルタール人との間に交雑があったことは通説となっています。しかし以前は、両者の交雑に否定的な見解が主流でした。著者も当初、ネアンデルタール人と現生人類との交雑に否定的だったそうです。私が見落としていたことでは、非アフリカ系現代人に遺伝的影響を及ぼした現生人類とネアンデルタール人との交雑の推定年代が、54000〜49000年前頃まで絞り込まれていることが挙げられます。

 人類進化史におけるデニソワ人の位置づけについてはまだ確定したとは言えない状況でしょうが、本書では、デニソワ人を南方系(アウストラロ-デニソワ人)と北方系(シベリア-デニソワ人)とに区分し、両者の推定分岐年代は40万〜28万年前頃で、南方系デニソワ人とオセアニア系現代人の祖先集団とが交雑した、と推測しています。これは私の以前からの考えとも近いので(関連記事)、同意します。ユーラシア東部系現代人のデニソワ人由来のDNAと、オセアニア系現代人のデニソワ人由来のDNAが、同じ集団に由来するのかは不明、と本書は述べていますが、本書執筆後に公表された研究で、オセアニア系現代人は南方デニソワ人のみからDNAを継承しているのにたいして、東アジア系現代人は南方系デニソワ人のみならず北方系デニソワ人からもDNAを継承している、との見解が提示されています(関連記事)。

 デニソワ人は、現生人類・ネアンデルタール人・デニソワ人の共通祖先と140万〜90万年前頃に分岐した(まず間違いなく)ホモ属の系統と交雑した、と推測されています(関連記事)。本書は、このホモ属系統を超旧人類と呼んでおり、デニソワ人にミトコンドリアDNA(mtDNA)をもたらしたかもしれない、と推測しています。もっとも、本書も言及しているように、この問題に関しては異なる解釈も提示されています(関連記事)。本書は、超旧人類・現生人類・ネアンデルタール人・デニソワ人の共通祖先集団はアフリカからユーラシアへと最初に拡散したホモ属であるエレクトス(Homo erectus)で、その一部がアフリカに戻って現生人類系統へと進化した可能性を提示しています。

 本書はその状況証拠として、アフリカでのみこれらの系統がずっと進化したと仮定すると、アフリカからユーラシアへの大規模な移住が4回(180万年以上前の最初の出アフリカ、超旧人類の出アフリカ、ネアンデルタール人とデニソワ人の共通祖先の出アフリカ、現生人類の出アフリカ)必要なのにたいして、ユーラシアで進化したと仮定すると、大規模な移住は3回で、より節約的であることを挙げています。直接的な証拠としては、スペインで発見され96万〜80万年前頃と推定されているホモ属化石のアンテセッサー(Homo antecessor)に、現生人類とネアンデルタール人双方の特徴が見られる、ということが挙げられています。

 現生人類系統が、前期〜中期更新世の長い期間、ユーラシアに存在した可能性は一定以上あるでしょうが、まだ決定的ではなく、今後の研究の進展を俟つしかないでしょう。私は、現生人類とネアンデルタール人双方の特徴が見られる100万年前頃のホモ属化石が、今後アフリカで発見される可能性はかなり高いのではないか、と予想しています。つまり、守旧的かもしれませんが、現生人類系統へとつながる人類進化の主要な舞台はずっとアフリカだったのではないか、というわけです。

 著者も関わっていながら、本書の執筆に取り入れるのには間に合わなかった、ネアンデルタール人に関する主要な研究としては、クロアチアでアルタイ地域のネアンデルタール人並の高品質なゲノム配列を報告した論文と(関連記事)、高品質ではないものの、後期の西方ネアンデルタール人の複数の新たなゲノム配列を報告した論文があります(関連記事)。クロアチアのネアンデルタール人は、非アフリカ系現代人の主要な遺伝子源となった出アフリカ集団と交雑したネアンデルタール人集団と、アルタイ地域のネアンデルタール人集団よりも近縁と推測されており、その意味でも大いに注目されます。


 次に本書は、現生人類がアフリカから世界中へと拡散し、各地域でどのように現代へとつながる集団が形成されていったのか、解説しています。本書が強調しているのは、現代の各地域集団が太古からずっとその地域に居住し続けたわけではなく、集団間の複雑な移住・交雑により形成されていき、その集団間の関係は、現代のヨーロッパ系と東アジア系よりも遠いことが珍しくなかった、ということです。末期更新世〜前期完新世にかけての各地域集団が、そのままの遺伝的構成で現代まで続いていることはまずなく、「純粋な」民族・地域集団は存在しない、というのが本書の基調の一つになっています。

 古代DNA研究の進展により明らかになってきたことに、直接的に人類遺骸から確認されているわけではないものの、かつて存在したと考えられる、想定上の集団(ゴースト集団)があります。このゴースト集団は、その遺伝的構成がそのまま現代に伝わっているわけではないものの、現代人に大きな遺伝的影響を残している、と推測されています。その一例が、ユーラシア西部系現代人の主要な祖先集団の一つとなった基底部ユーラシア人で、ネアンデルタール人からの遺伝的影響をほとんど受けていない、と推測されています。直接的に遺骸が確認されているわけではないので、基底部ユーラシア人がどのような範囲に拡散していたのか不明ですが、本書は、アフリカ北部に存在した可能性を指摘しています。

 インド・ヨーロッパ語族はポントス-カスピ海草原(中央ユーラシア西北部から東ヨーロッパ南部までの草原地帯)の遊牧民であるヤムナヤ(Yamnaya)文化集団の5000年前頃以降からの拡散により広範囲に定着した、との見解が本書では提示されています。しかし、インド・ヨーロッパ語族はすでにアナトリア半島で4500〜4400年前頃には用いられていたと考えられるのに、古代アナトリア半島ではヤムナヤ文化集団の遺伝的影響は確認されず、中央・南アジアにおけるユーラシア西部集団の遺伝的影響は、ヤムナヤ文化集団の拡散の結果ではなく、ユーラシア草原地帯の南方にいたナマズガ(Namazga)文化集団の拡散の結果ではないか、との見解が提示されています(関連記事)。もちろん、ヨーロッパにおけるヤムナヤ文化集団の遺伝的影響の大きさは否定できず、少なくともヨーロッパでは、ヤムナヤ文化集団がインド・ヨーロッパ語族を定着させたのかもしれませんが、インド・ヨーロッパ語族に関する本書の見解は、近いうちに大きく修正されることになるかもしれません。

 インド(南アジア)に関しては、私が他地域よりもさらに不勉強なため、本書の解説は大いに参考になりました。現代インド人は大きく北方系と南方系に分かれます。両者とも、インドに農耕をもたらしたと考えられるイラン方面からの農耕民の遺伝的影響を受けています。北方系は、イラン系農耕民とおそらくはヤムナヤ文化集団である草原地帯集団との遺伝的影響がほぼ半々となっています。ヤムナヤ文化集団は5000年前頃以降に南方にも拡散して、インド北部に定着して先住のイラン系農耕民集団と融合しました。南方系インド人は、在来の狩猟採集民とイラン系の初期農耕民集団とが融合して成立し、その遺伝的影響の比率は約3:1となります。ただ、上述したように、ヤムナヤ文化集団がインドに拡散したのか、疑問が呈されていますし、インドの古代DNA研究はDNAの保存に適していない気候条件もあり、あまり進んでいないので、詳細は今後の研究を俟つ必要があります。インド社会における族内婚については、イギリス支配下で始まったのではなく長い歴史があり、ジャーティ集団間の遺伝的違いは、たとえばヨーロッパや中国と比較して大きくなっていて、インドは巨大な集団というよりは、多くの小集団で構成されている、と指摘されています。

 東アジアに関しては、興味深い見解が提示されています。著者がまだ刊行していないデータに基づくと、チベット人のDNAの2/3は、東アジアの初期農耕民で現代では子孫を残してはいるものの、その遺伝的構成そのものは失われてしまった、「黄河ゴースト集団」に由来し、残りの1/3は、チベット在来の狩猟採集民集団に由来する、と推測されています。ただ、本書では言及されていませんが、東アジアにおける現代人の形成については、現代の漢人系に連なる集団の拡散という視点だけではなく、紀元後以降の、魏晋南北朝時代や五代十国時代などにおける北方遊牧民の南下の影響も、とくに男系において無視できないほどあったのではないか、と思います。


 第10章では、おもに異なる集団間の交雑における性的バイアスが解説されています。この問題については当ブログでも取り上げたことがありますが(関連記事)、配偶行動における優勢な集団の男性と劣勢な集団の女性という組み合わせは、人類史では珍しくなかったようです。有名なのはアメリカ大陸で、コロンビアのアンティオキア地方の住民のY染色体の約94%がヨーロッパ系なのにたいして、mtDNAの約90%はアメリカ大陸先住民系です。こうした性的バイアスは、社会的地位の高い集団では低い集団よりもユーラシア西部系の比率が高いインドや、アフリカ中央部におけるバンツー語族集団とピグミー集団との事例(配偶行動では前者の男性と後者の女性という組み合わせが一般的で、両者の子供はピグミー集団で育てられます)や、ヨーロッパにおけるヤムナヤ文化集団の拡大にさいして、ヤムナヤ文化集団の男性由来のY染色体の比率が、ゲノムの残りの部分の比率から推測されるよりもずっと高いことなど、一般的だったようです。本書は、こうした不平等は人類の特性の一部として受け入れるしかない、と諦めるのではなく、「内なる悪魔」と戦う努力をやめないことこそ、人類の勝利と実績の多くをもたらしたのだ、と指摘しています。

 第11章では、古代DNA研究と人種問題との関係について、かなりの分量が割かれています。本書が強調しているのは、人類集団間において些細とは言えない遺伝学的差異がある、ということです。これは、人類集団間には実質的な生物学的差異はなく、集団内の個人間の差異の方がずっと大きい、とする「正統派的学説」とは異なります。さらに言えば、「政治的正しさ」に反していると解釈されても不思議ではありません。じっさい著者は、「正統派的学説」の側から疑問を呈されたり、「忠告」を受けたりしたそうです。

 それもあってか本書は、人類集団間において些細とは言えない遺伝学的差異があるとはいっても、ナチスに代表されるようなかつての人種主義とは異なる、と強調し、やや詳しく解説しています。本書は、ナチスが想定していたような「純粋な」人種は存在せず、人類集団は移住・交雑により形成されてきた、との見解を改めて強調します。そのうえで本書は、人類集団間の遺伝学的差異の研究は、ナチス的な人種観を否定し、治療にも役立つものであり、また、奴隷として連行されてきた人々や、外来集団に抑圧されてきた先住民集団のアイデンティティの確立にも資するものだ、と指摘します。

 本書は、人類集団間において実質的な遺伝学的差異があるのに、「正統派的学説」の立場から、それを無視したり、研究を抑制したりするようなことが続けば、集団間の実質的な遺伝学的差異の確たる証拠を提示された時に右往左往して対処できなくなるし、また抑圧により生じた空白を似非科学が埋めることになり、かえって悪い結果を招来するだろう、と懸念を表明しています。本書は、大半の特性は個人間の違いがあまりにも大きいのだから、「黒人」だから音楽の才能があるとか、ユダヤ人だから頭がよいとかいったステレオタイプに固執するのではなく、どの集団の誰であり、ある特性において能力を発揮できるような環境を整備することが必要だ、と提言しています。

 私は以前から、民族・地域集団で「能力」に有意な差のある事例が多いだろう、と考えていたので(とはいっても、「能力」の定義・測定条件が問題となってくるので、単純な比較はむりだと考えていますが)、本書の提言には全面的に同意します(関連記事)。本書は人類における生物学的性差もはっきりと認めており、現実に存在する差異を受け入れ、時には利用さえしながら、よりよい場所を目指して奮闘することが大事だと思う、と提言しています。こちらの提言にも私は同意します。

 第12章では、古代DNA研究の今後の課題として、4000年前頃〜現代までの密度を高めることが挙げられています。4000年前頃以降となると、たとえばブリテン島のように、現代のその地域の集団と類似した遺伝的構成になっていることが多く、更新世〜完新世中期までのように、大きく異なる遺伝的構成の集団間の交雑により新たな集団が形成されるわけではないので、より小さな違いを見つける手法を用いることが必要だ、と指摘されています。

 確かに、本書の見解の多くは、今後急速に古くなっていくのでしょうが、それでも、現時点でこのような大部の一般向け書籍が刊行されたことには、大きな意義があると思います。本書の個々の見解の多くは今後急速に修正・否定されていくとしても、本書は長く参照し続けられる、古典的な一冊になるのではないか、と思います。本書からは多くのことを学べて、私にとってはこれまでの読書人生でもとくに印象に残る有益な一冊となりました。原書の刊行からわずかな期間で日本語版が刊行されたことにも感謝しています。


参考文献:
Reich D.著(2018)、日向やよい訳『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(NHK出版、原書の刊行は2018年)


追記(2018年8月21日)
 インドに関して、その後Twitterで本書の内容を少し述べたので、まとめておきます。Twitterにて、「アーリア人やドラヴィダ人が西北部から進入する前には、インドに中国南部より広がった東アジア系の民族が居住していた」との指摘を受けました。篠田謙一氏は「アーリア系のインド人やドラヴィダ人は、ミトコンドリアDNA(母系でのみ伝わる)から見れば、アジア人の仲間だ」発言していたそうです。私はインド史について無知なので、恥ずかしながら、以前に読んだ山崎元一『世界の歴史6 古代インドの文明と社会』(中央公論社、1997年)P 17〜18にて、ドラヴィダ系民族は6000年前頃にハイバル峠などインド北西部の諸峠を越えてインドに入った、とあるのをすっかり忘れていました。20年以上前はこれが有力説だったのでしょうか。

 しかし、本書が指摘するように、現代インド人の初期の遺伝学的研究では、インドのmtDNAハプログループの大半はインド独特のもので、母系についてはインドで長い間隔離されていた、と推測されています。篠田氏の2007年刊行の著書『日本人になった祖先たち』(関連記事)でも、インドで優勢なmtDNAハプログループMは、インドより東の地域のハプログループMとは明らかに系統が異なり(そのうちインドで最大のM2は他系統との推定分岐年代が7万〜5万年前頃)、初期にインドに到達した人類集団が、他地域からの遺伝的影響をあまり受けずに独自の集団を形成していった、と推測されています(P73〜75)。仮に篠田氏が「アーリア系のインド人やドラヴィダ人は、ミトコンドリアDNA(母系でのみ伝わる)から見れば、アジア人の仲間だ」と発言していたとしても、その真意が「アーリア人やドラヴィダ人が西北部から進入する前には、インドに中国南部より広がった東アジア系の民族が居住していた」だったとはとても考えられません。そもそも、そのような証拠はもちろんありませんし、そうした主張のまともな参考文献もないだろう、と思います。おそらく篠田氏は(上記の発言が本当だとすると)、インドではmtDNAハプログループMが優勢で、Mはインド以東のアジア(とオセアニアとアメリカ大陸)にしか存在しないので、ユーラシア西部系よりも東アジア(やオセアニアやアメリカ大陸)系により近縁だという意味で、上記のような表現にしたと思われます。

 一方、現代インド人の初期の遺伝学的研究でY染色体DNAハプログループに関しては、かなりの割合がユーラシア西部集団との密接な関係にある、と示されました。現代インド人のY染色体DNAやmtDNAに関する初期の遺伝学的研究は、現在そのままの水準で通用するわけではないにしても、本書の解説から考えると、なかなか的確だったように思われます。本書は、2018年8月時点では、現代インド人の形成史に関して、最新の研究成果を上手く一般層に提示できている、と言えるでしょう。もちろん、本書の内容も今後修正されていくでしょうが、とりあえず、できるだけ本文を補足する形で本書の内容を改めて完結にまとめてみます。

 インド(というか南アジア)には更新世に現生人類が拡散してきました。この狩猟採集民集団(PHGI)は、ユーラシア西部系よりは現代中国人も含む東アジア系に近いものの、東アジア系とは明らかに何万年も隔たっており、現代インド(南アジア)人には遺伝的影響を残していますが、他地域への遺伝的影響は弱い、と推測されています。PHGIはインドで長い間、比較的孤立して進化してきたようです。現代インド人形成史の研究では以前、PHGIの子孫集団が4000年前頃以降にユーラシア西部集団と交雑し、現代インド人が形成された、と考えられていました。しかし、PHGIの子孫集団が9000年前頃以降にインドに拡散してきたイラン初期農耕民と交雑した、と明らかになりました。この9000〜4000年前頃にPHGIの子孫集団とイランからの農耕民との交雑により、「祖型南インド人(ASI)」が成立しました。ASIの成立における遺伝的影響の比率は、在来のPHGIの子孫集団とイランからの初期農耕民とで約3:1と推定されています。ASI系統とドラヴィダ語との高い相関関係から、ASIの形成はドラヴィダ語の拡散過程でもあった、と推測されています。

 4000年前以降、ユーラシア中央草原地帯遊牧民がインドに南下し、途中で遭遇したイラン初期農耕民と近縁の集団と交雑して「祖型北インド人(ANI)」が成立しました。ANI の成立における遊牧民と農耕民との遺伝的影響は半々程度だった、と推定されています。ただ、ANIは均一ではなく、その下位集団における遊牧民と農耕民との遺伝的比率は様々で、ANIとASIの複雑な交雑により現代インド人は形成された、と推測されています。ドラヴィダ系民族は6000年前頃にハイバル峠などインド北西部の諸峠を越えてインドに入った、との上述した20年以上前の有力な?見解は、ドラヴィダ系が、PHGIの子孫集団に早期新石器時代のイラン方面からの1/4程度の遺伝的影響の結果成立したASI系統を基層としてる点で部分的には妥当ですが、大元はインド在来のPHGIなので、大きく修正せざるを得ないでしょう。

 本書は、インダス文化の担い手に関する仮説の点でも注目されます。まだインダス文化の担い手のDNA解析は公表されていないようですが、本書は三つの仮説を提示しています。最初は、イラン系初期農耕民の子孫が担い手であまり交雑しておらず、ドラヴィダ語を話していた、というものです。次は、イラン初期農耕民とPHGIの子孫集団との交雑がすでに生じて成立していたASI系統が担い手で、ドラヴィダ語を話していた、というものです。最後は、ユーラシア中央草原地帯遊牧民とイラン系初期農耕民の子孫との交雑の結果成立したANI系統が担い手で、インド・ヨーロッパ語を話していた、というものです。最後の仮説は、10年前(2008年)に刊行された堀晄『古代インド文明の謎』の見解と類似しており(関連記事)、正直なところ、当時はやや懐疑的だったのですが、最新の遺伝学的研究でもその可能性が指摘されているのは、興味深いと思います。
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タイトル 日 時
玉木俊明『ヨーロッパ繁栄の19世紀史 消費社会・植民地・グローバリゼーション』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2018年6月に刊行されました。本書はヨーロッパの「ベルエポック(良き時代)」がどのように成立したのか、さらにはその内実と影響を論じています。著者の他の著書としては、『ヨーロッパ覇権史』(関連記事)や『先生も知らない世界史』(関連記事)を当ブログで取り上げましたが、そのため、本書の見解で戸惑うことはありませんでした。大きな問題を取り上げているだけに、個々の分野の専門家からは突っ込みがあるかもしれませんが、なかなか興味深く読み進められました。 ...続きを見る

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2018/07/22 06:28
松田洋一『性の進化史 いまヒトの染色体で何が起きているのか』
 新潮選書の一冊として、新潮社から2018年5月に刊行されました。本書はヒトを中心とした性の進化史を染色体、とくに性染色体の観点から解説しています。一般向けを意識したのか、やや繰り返しが多くてくどいところもありますが、それは丁寧な解説ということでもあり、良書だと思います。本書は一般向けであることを意識してか、おもにヒトを取り上げていますが、ヒト以外の哺乳類だけではなく、爬虫類・鳥類など多様な生物を取り上げており、性の進化史がじつに多様であることを改めて思い知らされます。生物における多様な性の決定... ...続きを見る

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2018/07/15 12:51
柿沼陽平『劉備と諸葛亮 カネ勘定の『三国志』』
 文春新書の一冊として、文藝春秋社から2018年5月に刊行されました。劉備と諸葛亮を中心に、『三国志』の時代を経済と民衆への負担という観点から見直しています。『三国志』の時代から1000年以上経過して成立した『三国志演義』を源とする、さまざまな小説・漫画・映像作品・ゲームにより、現代日本社会では『三国志』の時代はきわめて人気の高い歴史分野となっています。その人気の要因は、やはり魅力的な英雄たちの言動なのでしょう。本書は、そうした「英雄史観」的な『三国志』像、とくに、劉備と諸葛亮を民衆に配慮した「... ...続きを見る

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2018/07/08 08:01
亀田俊和編『初期室町幕府研究の最前線 ここまでわかった南北朝期の幕府体制』
 日本史史料研究会監修で、歴史新書の一冊として洋泉社より2018年6月に刊行されました。本書は4部構成で、各部は複数の論考から構成されています。本書で提示された見解のなかには、すでに他の一般向け書籍で知ったものもありましたが、初期室町幕府についてはよく知らなかったので、多くの知見を得られました思います。初期室町幕府についての近年の研究動向を手軽に知ることができ、たいへん有益だと思います。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位で... ...続きを見る

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2018/07/01 06:33
森恒二『創世のタイガ』第3巻(講談社)
 本書は2018年6月に刊行されました。第1巻と第2巻がたいへん面白かったので、第3巻も楽しみにしていました。第3巻は、タイガと現生人類(Homo sapiens)の少女ティアリとの出会いから始まります。タイガは、仲間の女性がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)に襲われていると勘違いして助けに行ったのですが、襲われていたのはティアリだった、というわけです。タイガは、言葉が通じないながらも、自分の根拠地に案内してくれいないか、とティアリに頼み、タイガに恩を受けたティアリ... ...続きを見る

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2018/06/24 07:33
兵頭裕己『後醍醐天皇』
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店から2018年4月に刊行されました。本書は、同時代から現代まで評価の分かれる後醍醐天皇について、それらの評価を踏まえて統一的に理解しようとしています。本書は後醍醐の伝記というだけではなく、後醍醐とその治世がどのように評価されてきたのか、その評価が後世にいかなる政治思想的影響を及ぼしたのか、という観点を強く打ち出しています。中世のみならず、近世・近現代をも視野に入れた、射程の長い後醍醐論と言えるでしょう。 ...続きを見る

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2018/06/17 07:09
原田隆之『サイコパスの真実』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2018年4月に刊行されました。サイコパス関連の一般向け書籍は少なくないでしょうし、中には大きな話題になったものもあります。しかし、どうも胡散臭そうだったこともあり、これまでサイコパス関連の一般向け書籍を読んだことはありませんでした。しかし本書は、少し読んでみてなかなか面白そうだったので、購入して読みました。期待通り本書は当たりで、長くサイコパス関連の入門書として読まれていくのではないか、と思います。まあ、私はこの問題の門外漢なので、専門家の評価はまた違うの... ...続きを見る

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2018/06/10 08:37
清家章『埋葬からみた古墳時代 女性・親族・王権』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2018年5月に刊行されました。本書は古墳時代の埋葬形態から社会構造を推測し、「王朝交替論」も検証しています。複数の人物が葬られている古墳は珍しくなく、本書はおもに歯冠の比較から被葬者間の関係を推測しています。その結果、首長層よりも下位(とはいっても、一定以上の階層でしょうが)においては、古墳時代前期〜後期まで親子・キョウダイを基本とする血縁者のみがともに埋葬されていました。夫婦で埋葬されている事例も一部であるものの、基本的には血縁者がともに埋葬... ...続きを見る

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2018/06/03 06:11
筒井清忠編『明治史講義 【人物篇】』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2018年3月に刊行されました。本書は小林和幸編『明治史講義 【テーマ篇】』(関連記事)の続編というか、対となる1冊だと言えるでしょう。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。 ...続きを見る

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2018/05/27 08:28
太田博樹『遺伝人類学入門 チンギス・ハンのDNAは何を語るか』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2018年5月に刊行されました。「入門」と題するように、遺伝の仕組み、さらには集団遺伝学の基礎について解説されています。「あとがき」にあるように、必ずしも「最新の知識」・「科学の最前線」を伝えているわけではありませんが、系統樹作成の方法など、「最新の知識」・「科学の最前線」を理解するのに必要な基礎的知識が解説されており、たいへん有益だと思います。今後、再読するだけの価値の高い一冊になっています。 ...続きを見る

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2018/05/20 11:59
とくに面白かった本(3)
 以前、ネットで取り上げた本のなかで、とくに面白かったものについて、2010年4月までの分(関連記事)と、2010年5月〜2013年12月までの分(関連記事)をまとめました。今回は、2014年1月〜2018年4月までの分を以下にまとめます。 ...続きを見る

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2018/05/13 18:54
小林和幸編『明治史講義 【テーマ篇】』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2018年3月に刊行されました。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。 ...続きを見る

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2018/05/13 07:38
木村光彦『日本統治下の朝鮮 統計と実証研究は何を語るか』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2018年4月に刊行されました。本書は経済問題に限定して、日本の朝鮮半島支配を実証的に検証しようとしています。著者はかつて、韓国の高校生向け教育番組において、朝鮮における日本の支配は世界の植民地支配のなかで最悪だった、との見解が受け入れられている様子であることに疑問を抱き、それが本書の執筆動機になっています。世界の植民地支配をすべて調べて比較したのか、そもそも最悪とはどのような意味なのか、などといった疑問です。 ...続きを見る

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2018/05/06 18:56
Richard Bessel『ナチスの戦争1918-1949 民族と人種の戦い』
 リチャード=ベッセル(Richard Bessel)著、大山晶訳で、中公新書の一冊として、中央公論新社から2015年7月に刊行されました。原書の刊行は2004年です。本書は対象とする時代を第二次世界大戦やナチス政権期に限定せず、第一次世界大戦におけるドイツの敗北から第二次世界大戦後の冷戦構造の確立の頃までを取り上げ、「ナチスの戦争」がどのような文脈で起きたのか、またどのような影響を第二次世界大戦後に及ぼしたのか、広い視野で検証しています。 ...続きを見る

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2018/05/06 07:05
佐藤信弥『中国古代史研究の最前線』
 星海社新書の一冊として、星海社から2018年3月に刊行されました。本書は紀元前21世紀〜紀元前1世紀頃までを対象に、伝世文献主体だった中国古代史研究が、近代以降に出土文献も含む考古学的研究の進展によりどのように変わってきたのか、解説しています。「**研究の最前線」というような題の一般向け書籍は、複数の執筆者で構成されていることが多いと思いますが、本書は殷王朝の前から前漢王朝末期までの約2000年間分を一人が執筆しています。しかし、本書は対象を伝世文献と出土文献および主な考古学的な遺物・遺構に限... ...続きを見る

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2018/04/29 08:28
桜井万里子、本村凌二『集中講義!ギリシア・ローマ』
 これは4月22日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2017年12月に刊行されました。20年前の『世界の歴史5 ギリシアとローマ』(中央公論社、1997年)と同じ著者二人による古代ギリシア・ローマ史です。この間、研究は大きく進展しているでしょうから、時間を作って『世界の歴史5 ギリシアとローマ』を再読し、違いを見つけていくのも楽しいかもしれません。 ...続きを見る

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2018/04/22 00:00
杉本淑彦『ナポレオン 最後の専制君主、最初の近代政治家』
 これは4月15日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店から2018年2月に刊行されました。最近、ナポレオンに関する本では『ナポレオン時代 英雄は何を遺したか』を読みましたが(関連記事)、同書がナポレオンの伝記というよりは、ナポレオン時代のパリの様相を中心に、フランス、さらにはヨーロッパにおけるナポレオンの評価・影響を論じた評論といった感じだったのにたいして、本書は歴史学からの堅実なナポレオンの伝記になっています。本書は簡潔にまとまった一般向けのナポレオンの伝記と... ...続きを見る

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2018/04/15 00:00
楊海英『「中国」という神話 習近平「偉大なる中華民族」のウソ』
 これは4月8日分の記事として掲載しておきます。文春新書の一冊として、文藝春秋社から2018年1月に刊行されました。本書は内陸アジアの視点から「中国」を相対化し、中華人民共和国における体制教義とも言える「中華民族」なる概念(関連記事)に疑問を呈しています。本書が強調する中華人民共和国の民族差別について、誇張や認識の誤りを指摘する識者もいるかもしれませんが、大きくは外していないように思います。まあ、門外漢の感想・印象にすぎませんし、本書を差別本・「ネトウヨ」的だとして罵倒・嘲笑する人は少なくないか... ...続きを見る

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2018/04/08 00:00
呉座勇一『陰謀の日本中世史』
 角川新書の一冊として、KADOKAWAから2018年3月に刊行されました。本書は日本中世史におけるさまざまな陰謀論的見解を取り上げ、そうした見解のどこに問題があるのか、解説していきます。本書が対象としているのは保元の乱から関ケ原の戦いまでとなります。本書は、まず史実というか通説を簡潔に叙述し、その後に陰謀論的見解を紹介し、その問題点と論理構造を解説しています。一般向けであることを強く意識したと思われる、たいへん読みやすい文章と、明快な論旨が特徴となっています。 ...続きを見る

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2018/04/01 00:00
飯山陽『イスラム教の論理』
 これは3月25日分の記事として掲載しておきます。新潮新書の一冊として、新潮社から2018年2月に刊行されました。近年では、「イスラーム」という表記が日本社会でもかなり浸透しているように思われ、私も当ブログでは基本的に「イスラーム」と表記してきましたが、本書は「イスラム教」で一貫しています。本書を読み、ユダヤ教やキリスト教などとの対比という観点からは、「イスラム教」表記の方が妥当なのかな、と考えを改めました。今後、当ブログでは「イスラム教」表記で一貫することにします。ただ、この問題に関してはこれ... ...続きを見る

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2018/03/25 00:00
小原克博『一神教とは何か キリスト教、ユダヤ教、イスラームを知るために』
 これは3月18日分の記事として掲載しておきます。平凡社新書の一冊として、平凡社より2018年2月に刊行されました。本書は、現代日本社会において「一神教」として分類されることの多いキリスト教・ユダヤ教・イスラームを、「一神教」という概念の形成過程とその妥当性にも言及しつつ、解説しています。著者の専門分野との関係から、キリスト教に関する解説が多くなっていますが、全体的には、現代日本社会における一般的な理解度を踏まえた解説となっており、「一神教」の入門書として適しているのではないか、と思います。 ... ...続きを見る

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2018/03/18 00:00
服部英雄『蒙古襲来と神風 中世の対外戦争の真実』
 これは3月11日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年11月に刊行されました。本書はモンゴル襲来(文永の役・弘安の役)を神風史観の見直しという観点から検証しています。神風史観とは、文永の役・弘安の役において神風が吹き、日本は侵略してきたモンゴル(大元ウルス)を退けることができた、というものです。本書は、神風史観がとくに太平洋戦争において惨劇をもたらした一因になっており、現在でも学校の歴史教育の現場において肯定的に扱われることがある、との問題意識から、神... ...続きを見る

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2018/03/11 00:00
倉本一宏『藤原氏―権力中枢の一族』
 これは3月4日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年12月に刊行されました。本書は、おもに7世紀半ばの乙巳の変から鎌倉時代の五摂家(近衛・九条・一条・二条・鷹司)の分立までを、藤原氏を視点に据えて概観しています。本書のような視点の通史は珍しくないのかもしれませんが、藤原氏のうち摂関家のみならず、氏族全体の動向・盛衰を視野に入れた一般向け書籍となると、意外と少ないのかな、と思います。まあ、私が無知なだけかもしれませんが。 ...続きを見る

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2018/03/04 00:00
河内春人『倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア』
 これは2月25日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2018年1月に刊行されました。『古事記』・『日本書紀』にはあまり依拠せず、おもに中華地域と朝鮮の史料および考古学的研究を活用しているのが本書の特徴です。また、本書の特徴としては、倭の五王を東アジア史のなかに位置づけるという姿勢が強く現れていることも挙げられます。もちろん、倭の五王に言及したこれまでの本・論文も、第二次世界大戦以降であれば、東アジア史を強く意識してはいたのでしょうが、本書は、朝鮮半島や中華地域... ...続きを見る

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2018/02/25 00:00
佐藤信編『古代史講義 邪馬台国から平安時代まで』
 これは2月18日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2018年1月に刊行されました。日本古代史の勉強も停滞しているので、最新の研究成果を把握するために読みました。本書はたいへん有益でしたが、もちろん、古代史の論点は多岐にわたり、新書一冊で網羅することはできませんので、続編が望まれます。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。 ...続きを見る

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2018/02/18 00:00
Alistair Horne『ナポレオン時代 英雄は何を遺したか』
 これは2月11日分の記事として掲載しておきます。アリステア=ホーン(Alistair Horne)著、大久保庸子訳で、中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年12月に刊行されました。原書の刊行は2004年です。ナポレオンの伝記を読んだのは10代の頃で、それ以降はフランス史も含めて近代ヨーロッパ史の一般向け書籍くらいでしかナポレオンについての知見を得ていなかったので、ナポレオンに関する自分の情報を更新するために、読むことにしました。 ...続きを見る

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2018/02/11 00:00
石野裕子『物語 フィンランドの歴史 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年』
 これは2月4日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年10月に刊行されました。本書はフィンランドの通史で、基本的にはスウェーデンの支配下以降の時期が対象となっています。新石器時代や更新世についてもわずかに言及されており、フィンランド西部で4万年以上前のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の痕跡が1980年代に発見された、との興味深い記述もあるのですが、北緯53度よりも北方では明確なネアンデルタール人の遺跡は発見されていないので... ...続きを見る

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2018/02/04 00:00
森恒二『創世のタイガ』第2巻(講談社)
 これは1月28日分の記事として掲載しておきます。本書は2018年1月に刊行されました。第1巻がたいへん面白かったので、第2巻も楽しみにしていました。第2巻後半では、主人公のタイガとネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)との格闘が描かれました。その分、タイガの仲間たちの出番は減り、青春群像劇的な性格は第1巻よりも弱くなっていたのですが、タイガとネアンデルタール人との格闘およびタイガのサバイバルドラマとしての性格が強くなっており、マンモスなどの大型動物はとくにそうですが、... ...続きを見る

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2018/01/28 00:00
更科功『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』
 これは1月21日分の記事として掲載しておきます。NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2018年1月に刊行されました。本書は、ヒト(現代人)の変わった特徴はなぜ進化したのか、人類のなかでなぜヒトだけが生き残ったのか、という観点から人類進化史を検証しています。本書は、初心者向けの人類進化史の概説というよりは、ある程度人類進化について知った一般層が、さらに詳しく知るために読むべき手がかりという位置づけのように思われます。本書は近年までの研究成果を踏まえつつ、興味深い論点を検証しており、人類進化... ...続きを見る

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2018/01/21 00:00
後藤明『世界神話学入門』
 これは1月14日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社から2017年12月に刊行されました。遺伝学を中心に考古学・言語学などの諸研究成果から、現生人類(Homo sapiens)がアフリカから世界中にどのように拡散したのか、次第に明らかになりつつあります。世界神話学とは、世界の遠く離れた地域同士の神話の類似性(たとえば、日本神話とゲルマン神話)を、現生人類拡散の様相から説明する仮説です。この仮説自体は以前に報道で知りましたが、具体的な内容をほとんど知らなかったので、... ...続きを見る

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2018/01/14 00:00
Adam Rutherford『ゲノムが語る人類全史』
 これは1月7日分の記事として掲載しておきます。アダム=ラザフォード(Adam Rutherford)著、渡会圭子訳、垂水雄二解説で、文藝春秋社より2017年12月に刊行されました。原書の刊行は2016年です。本書は人類進化史をゲノムの観点から概観しています。本書がおもに対象とするのは、現生人類(Homo sapiens)がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と交雑した後期更新世〜現代までとなり、文字記録の残る歴史時代にもかなりの分量を割いているのが特徴です。解説でも... ...続きを見る

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2018/01/07 00:00
川端裕人『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』
 これは12月24日分の記事として掲載しておきます。川端裕人著、海部陽介監修で、講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2017年12月に刊行されました。本書はおもに著者の監修者へのインタビューで構成されています。そのため、本書の見解は基本的に監修者の見解となります。監修者の見解すべてが有力説になっているわけではないので、異論も少なからずあるかもしれませんが、全体的に読みやすく、著者が発掘現場・研究室を訪れて描写しているため臨場感があり、興味深い一般向け書籍になっている、と思います。 ...続きを見る

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2017/12/24 00:00
家近良樹『西郷隆盛 維新150年目の真実』
 これは12月17日分の記事として掲載しておきます。NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2017年11月に刊行されました。来年(2018年)の大河ドラマ『西郷どん』の主役である西郷隆盛について予習しておこうと思い、読んでみました。著者は、ミネルヴァ日本評伝選で本格的な西郷隆盛の伝記を著しており、そちらを読むべきなのでしょうが、今はそこまでの気力がないので、余裕ができたら読んでみよう、と思います。著者は本書において、ミネルヴァ日本評伝選で触れられなかった問題を中心に取り上げた、とのことです。... ...続きを見る

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2017/12/17 00:00
尾本恵市、山極寿一『日本の人類学』
 これは12月10日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2017年11月に刊行されました。碩学二人の対談だけに、教えられること、汲み取るべきことは多いと思います。もちろん、二人の見解すべてに同意するわけではありませんが、今後の勉強・思索・行動の指針になるような示唆に富む対談になっていると思います。ただ、対談形式で、体系的な解説にはなっていないので、人類学の教科書として読もうとすると、期待外れになってしまいそうです。 ...続きを見る

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2017/12/10 00:00
斎藤成也『核DNA解析でたどる日本人の源流』
 これは12月3日分の記事として掲載しておきます。河出書房新社から2017年11月に刊行されました。本書はまず人類進化史と現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散を、最新の研究成果に基づいて簡潔に概観した後、日本列島の現代人がどのように形成されてきたのか、おもに核DNAの解析結果に基づいて検証しています。もっとも、本書は、核DNAよりは得られる情報が少なくなるものの、ミトコンドリアDNA(mtDNA)とY染色体DNAについてのこれまでの研究も取り上げています。本書で言及されている... ...続きを見る

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2017/12/03 00:00
長谷川貴彦『イギリス現代史』
 これは11月26日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店から2017年9月に刊行されました。本書は、第二次世界大戦から、昨年(2016年)の国民投票でのEU(ヨーロッパ連合)離脱の決定と、今年の総選挙までを取り上げています。まさに現代史といった感じで、手堅くまとめられており、私のような門外漢にとって手ごろな入門書になっているのではないか、と思います。 ...続きを見る

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2017/11/26 00:00
小林武彦『DNAの98%は謎 生命の鍵を握る「非コードDNA」とは何か』
 これは11月19日分の記事として掲載しておきます。講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2017年10月に刊行されました。本書は、ヒトのDNAのうち98%を占めると推定されているタンパク質をコードしていない領域(非コードDNA領域)について解説しています。本文は200ページにも満たない新書サイズですが、遺伝の基礎から非コードDNA領域の役割まで丁寧に解説されており、遺伝に関する一般向けの良書になっていると思います。ただ、たいへん充実した内容なので、私の見識・能力では一度読んだだけでおおむ... ...続きを見る

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2017/11/19 00:00
瀧浪貞子『光明皇后 平城京にかけた夢と祈り』
 これは11月12日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年10月に刊行されました。本書は光明皇后(安宿媛、光明子)の生涯を、両親・息子・異母兄・夫という肉親の死の観点から描き出そうとしています。なお、安宿媛という名前は、光明皇后の父親である藤原不比等を養育した田辺史一族の本拠地に因むものだろう、と本書は推測しています。光明皇后は慈悲深く信仰心の篤い人物との印象もあるでしょうが、本書は、息子の基王に続く母親の三千代の死が、光明皇后を仏教へ深く傾斜させたので... ...続きを見る

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2017/11/12 00:00
倉本一宏『戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで 』
 これは11月5日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社から2017年5月に刊行されました。本書は、日本古代史における「対外」戦争と「対外」認識を中心に解説し、古代日本において形成された朝鮮観が、中世と近世の「対外」戦争を経て増幅・変容していき、近代以降の日本の帝国主義的行動にも影響を及ぼし、現代の朝鮮観をも規定しているところがあるのではないか、と論じています。表題にあるように、基本的には戦争の観点からの古代史ですが、射程の長い一冊になっている、と言えるでしょう。 ... ...続きを見る

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2017/11/05 00:00
平井上総『兵農分離はあったのか』
 これは10月29日分の記事として掲載しておきます。シリーズ「中世から近世へ」の一冊として、平凡社より2017年9月に刊行されました。私はかつて兵農分離について熱心に調べていましたが、この十数年ほどは優先順位が以前ほど高くはなくなり、ほとんど勉強が進んでいません。それでも、まだ関心の高い問題なので、最新の研究成果を知る好機と思い読んでみました。本書の提示する歴史像は違和感のないもので、期待通りに、知らなかった史実やよく理解していなかった論点の解説がありました。私のような非専門家層にとっても、長く... ...続きを見る

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2017/10/29 00:00
渡辺克義『物語 ポーランドの歴史 東欧の「大国」の苦難と再生』
 これは10月22日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年7月に刊行されました。本書は10世紀後半〜現代までのポーランド史を概観しています。ポーランド映画への言及は多めなのですが、政治史が主体で、文化史・経済史は少なく、社会構造への言及はきわめて少なくなっています。ポーランドの通史なのですから、もう少し幅広く取り上げられていてもよいのではないか、とも思いますが、「物語」としての通史という企画意図なのでしょうから、政治史が主体となるのは仕方のないところでし... ...続きを見る

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2017/10/22 00:00
中山一大・市石博明編集『つい誰かに教えたくなる人類学63の大疑問』
 これは10月15日分の記事として掲載しておきます。日本人類学会教育普及委員会監修で講談社より2015年11月に刊行されました。本書は、人類学に関する63の話題を解説するという構成になっています。各解説は、高校教師が各分野の専門家に取材して執筆しており、おおむね最新の研究成果も踏まえた堅実な内容になっています。未解明な点を安易に断定しないよう心がけている編集方針が窺え、良心的な内容になっていると思います。ある程度予備知識が必要かもしれませんが、分かりやすい解説になっていますし、病気・食事・心理・... ...続きを見る

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2017/10/15 00:00
小野寺史郎『中国ナショナリズム 民族と愛国の近現代史』
 これは10月8日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年6月に刊行されました。本書は、19世紀末から現在までの中国におけるナショナリズムの変容を検証しています。近現代中国のナショナリズムは、伝統的世界観を前提に、西洋の衝撃への対応として形成されていったものなので(中国に限らず、非西洋地域の近代はおおむねそうだったのでしょうが)、本書はまず序章において伝統中国の世界観を解説しています。 ...続きを見る

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2017/10/08 00:00
左巻健男『暮らしのなかのニセ科学』
 これは10月1日分の記事として掲載しておきます。平凡社新書の一冊として平凡社より2017年6月に刊行されました。現代日本社会(もちろん、日本に限らないのでしょうが)において、ニセ科学と呼ばれるものは多くあり、中にはかなり浸透しているものもありますが、本書は「暮らしのなか」と題しているように、生活、とくに健康と強く直接的に関連したニセ科学を取り上げて検証しています。生活との直接的関わりがさほど強くないニセ科学としては、たとえば相対性理論への「懐疑」や進化学を否定する創造説やその亜流的な説などがあ... ...続きを見る

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2017/10/01 00:00
光田剛編『現代中国入門』
 これは9月24日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2017年5月に刊行されました。本書は、歴史・現代文化・国際関係・軍事など、さまざまな観点から現代中国を論じています。歴史に関しては、やはり近現代史が中心となるのですが、現代中国の前提として、前近代史についても随所で言及されています。台湾・中華民国についての言及が多いのが本書の特徴で、台湾の近現代史から、近現代における複雑な東アジア世界の動向・東アジア世界の人々の世界観の形成・現代の諸問題などを浮き彫りにしよう... ...続きを見る

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2017/09/24 00:00
『カラー図解 進化の教科書 第3巻 系統樹や生態から見た進化』
 これは9月17日分の記事として掲載しておきます。カール=ジンマー(Robin Dunbar)、ダグラス=エムレン(Douglas J. Emlen)著、更科功・石川牧子・国友良樹訳で、講談社ブルーバックスの一冊として、2017年8月に講談社より刊行されました。原書の刊行は2013年です。第1巻(関連記事)と第2巻(関連記事)については、すでにこのブログで取り上げています。第3巻は系統樹・遺伝子・種間関係・生態の進化を重点的に解説しており、第9章「系統樹」・第10章「遺伝子の歴史」・第11章「遺... ...続きを見る

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2017/09/17 00:00
白石典之『モンゴル帝国誕生 チンギス・カンの都を掘る』
 これは9月10日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2017年6月に刊行されました。なぜチンギスというかモンゴルが12世紀末以降に台頭し、短期間で大勢力を築いたのか、専門家の間でも決定的な見解はまだ提示されていないようです。文献からだけでは解明に限界のあるこの謎を、本書は考古学的観点から検証しています。本書は古気候学や古生態学の研究成果を大きく取り入れ、学際的な内容になっています。気候変動とチンギスやその周囲の諸勢力の動向を結びつける見解は興味深いものでした... ...続きを見る

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2017/09/10 00:00
澁谷由里『<軍>の中国史』
 これは9月3日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社から2017年1月に刊行されました。本書は軍事的観点からの中国通史です。古代・中世(唐代まで)と近世(宋〜18世紀末まで)にも1章ずつ、近代以降に3章割かれています。現代中国社会では、前近代と近代との境目としてアヘン戦争が特筆されているようですが、本書では太平天国の乱が重視されており、さらにその前史として、18世紀末の白蓮教徒の乱が取り上げられています。 ...続きを見る

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2017/09/03 00:00
森恒二『創世のタイガ』第1巻(講談社)
 これは8月27日分の記事として掲載しておきます。本書は2017年8月に刊行されました。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)について検索していたら、本作にネアンデルタール人も登場すると知ったので、購入してみました。本作は『イブニング』にて連載中ですが、とりあえず単行本で今後追いかけていこう、と考えています。『天智と天武〜新説・日本書紀〜』昨年(2016年)7月に完結(関連記事)してからは、新作漫画では『ヒストリエ』を単行本で読んだくらいだったのですが(関連記事)、本作... ...続きを見る

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2017/08/27 00:00
渡邊大門編『信長研究の最前線2 まだまだ未解明な「革新者」の実像』
 これは8月20日分の記事として掲載しておきます。日本史史料研究会監修で、 歴史新書の一冊として洋泉社より2017年8月に刊行されました。本書は『信長研究の最前線 ここまでわかった「革新者」の実像』の続編となります(関連記事)。本書は5部構成で、各部は複数の論考から構成されています。本書で提示された見解のなかには、すでに他の一般向け書籍で知ったものもありましたが、信長に関する勉強はこの十数年ほどほとんど進んでいなので、多くの知見を得られました。『信長研究の最前線 ここまでわかった「革新者」の実像... ...続きを見る

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2017/08/20 00:00
大石泰史編『今川氏研究の最前線 ここまでわかった「東海の大大名」の実像』
 これは8月13日分の記事として掲載しておきます。日本史史料研究会監修で、歴史新書の一冊として洋泉社より2017年6月に刊行されました。本書は4部構成で、各部は複数の論考から構成されています。本書で提示された見解のなかには、すでに他の一般向け書籍で知ったものもありましたが、今川氏についてはよく知らなかったので、多くの知見を得られました思います。今川氏についての近年の研究動向を手軽に知ることができ、たいへん有益だと思います。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。以下、... ...続きを見る

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2017/08/13 00:00
亀田俊和『観応の擾乱 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』
 これは8月6日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年7月に刊行されました。都内の某大型書店で本書を購入したのですが、入荷数が多いのに驚きました。本書は刊行前よりネットで話題になっているように見えましたが、それは私の観測範囲の狭さが原因で、知名度のあまり高くない争乱だけに、刊行当初より書店に多数入荷されるとは予想していませんでした。同じ中公新書の『応仁の乱』(関連記事)の大ヒットもありましたし、第二次?中世史ブームが起きているということでしょうか。 ... ...続きを見る

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2017/08/06 00:00
筒井清忠編『昭和史講義3─リーダーを通して見る戦争への道』
 これは7月30日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2017年7月に刊行されました。筒井清忠編『昭和史講義─最新研究で見る戦争への道』(関連記事)と筒井清忠編『昭和史講義2─最新研究で見る戦争への道』(関連記事)の続編となります。両書ともに好評だったのか、続編が刊行されたのは喜ばしいことです。編者による「まえがき」は、歴史研究と人物について考えさせられるところが多く、参考になります。本書もたいへん有益だったので、続編が望まれます。以下、本書で提示された興味深い見... ...続きを見る

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2017/07/30 00:00
三谷太一郎『日本の近代とは何であったか 問題史的考察』
 これは7月23日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2017年3月に刊行されました。本書はおもに政治・経済的観点からの日本近代史総論となっています。具体的には、政党政治の成立・資本主義の形成・植民地帝国の形成・天皇制の確立という観点から日本近代史が考察されています。あるいは、個々の具体的な解説に関して、専門家からの異論があるのかもしれませんが、大家の著書らしく、たいへん奥深い内容になっており、日本近代史についてさまざまな観点から考えさせられる契機になると思... ...続きを見る

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2017/07/23 00:00
Mark Adams『アトランティスへの旅 失われた大陸を求めて』
 これは7月16日分の記事として掲載しておきます。マーク=アダムス(Mark Adams)著、森夏樹訳で、白水社より2015年12月に刊行されました。もう10年以上前にこのブログで述べましたが、欧米社会におけるアトランティスへの関心は今でも強いようで、さまざまな本が刊行されたり、新説が提示されたりしています。その記事にて、「アマチュアだけではなく、アカデミズムの側からの発言もあります」と述べましたが、アカデミズム側からの発言は基本的に冷ややかなもので、アトランティスの探索に熱心なのはアマチュア側... ...続きを見る

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2017/07/16 00:00
ジェームズ=ロリンズ『イヴの迷宮』上・下
 これは7月9日分の記事として掲載しておきます。ジェームズ=ロリンズ(James Rollins)著、桑田健訳で、シグマフォースシリーズの一冊として竹書房より2017年7月に刊行されました。シグマフォースシリーズは本書で邦訳が11冊目となる小説で、外伝も邦訳が刊行されており、日本でも根強い人気があるようです。シグマフォースシリーズをこのブログで取り上げるのは初めてですが、外伝も含めてシリーズの邦訳は全巻読んできましたし、何よりも、本書は人類の知能の進化とネアンデルタール人(Homo neande... ...続きを見る

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2017/07/09 00:00
篠田謙一『ホモ・サピエンスの誕生と拡散』
 これは7月2日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2017年6月に刊行されました。本書からは、一般向けであることを強く意識し、分かりやすい解説・構成にしようという意図が窺えます。じっさい、本書は目新しい情報を多く掲載しているわけではないものの、最新の研究成果に基づいて人類史を分かりやすく解説しており、なかなか読みやすく理解しやすいと思います。基礎的な解説もあるので、人類進化史に関心を持ち始めた人が読むのに適していると言えるでしょう。著者の専攻が反映され、DNA解析につ... ...続きを見る

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2017/07/02 00:00
金子拓『織田信長 不器用すぎた天下人』
 これは6月25日分の記事として掲載しておきます。河出書房新社から2017年5月に刊行されました。本書は、裏切られ続けた人物との観点から信長の人物像を検証しています。信長を裏切った人物として検証の対象になっているのは、浅井長政・武田信玄・上杉謙信・毛利輝元・松永久秀・荒木村重・明智光秀です。このうち、浅井長政・武田信玄・上杉謙信・毛利輝元は同じ戦国大名の同盟者として、松永久秀・荒木村重・明智光秀は信長の家臣として位置づけられています。しかし、本書でも言及されているように、この区分には曖昧なところ... ...続きを見る

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2017/06/25 00:00
和田裕弘『織田信長の家臣団 派閥と人間関係』
 これは6月18日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年2月に刊行されました。本書は織田信長の家臣団について、陪臣も含めてその地縁・血縁関係や事蹟を検証していき、信長時代の織田家特徴を家臣団の観点から浮き彫りにしています。とにかく取り上げられている人物が多く、その地縁・血縁関係にまで言及されているので、一回読んだだけでは見落としていることも多そうで、今後何回か再読する必要がありそうです。本書は、信長について詳しく知る目的だけではなく、小説・ゲームなど創作... ...続きを見る

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2017/06/18 00:00
中野三敏『写楽 江戸人としての実像』
 これは6月11日分の記事として掲載しておきます。中公文庫の一冊として、中央公論新社より2016年9月に刊行されました。本書の親本は、同じ題名で中公新書の一冊として中央公論新社から2007年2月に刊行されました。東洲斎写楽はおそらく浮世絵師のなかでも知名度では最上位を争うくらいの人物で、「謎解き」の観点から高い関心が寄せられてきました。写楽の正体に関しては、もう幕末に近い天保年間の『増補浮世絵類考』に、阿波藩お抱えの能役者である斎藤十郎兵衛とあり、本来ならば詮索は無用だったはずですが、同時代の有... ...続きを見る

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2017/06/11 00:00
保守派とリベラル派の科学書の読書傾向の違い
 これは6月10日分の記事として掲載しておきます。保守派とリベラル派の科学書の読書傾向の違いに関する研究(Shi et al., 2017)が公表されました。自らの政治的信念に合致する狭い範囲の情報にのみ曝される、「反響室」や「フィルターバブル」と呼ばれる現象は、両極端に位置する政党に共鳴するそれぞれの人々の相互理解を妨げる恐れがあることから、政治学において懸念が高まっています。この研究は、世界最大級の二つのオンライン書籍小売業者の購入履歴を解析することで、実験室外において同問題を調べた数少ない... ...続きを見る

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2017/06/10 00:00
鈴木紀之『すごい進化 「一見すると不合理」の謎を解く』
 これは6月4日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年5月に刊行されました。本書は、一見すると「不合理」な進化を適応主義的な観点から検証していきます。擬態が不完全だったり、「求愛エラー(繁殖能力のある子孫を残せない近縁種との生殖行動)」を起こしたりするのは、遺伝子など何らかの制約に起因する、といった制約を重視する説にたいして、本書はあくまでも、一見すると「不合理」な進化のなかに、適応主義的な理由があるのではないか、と追及していきます。 ...続きを見る

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2017/06/04 00:00
本村凌二『教養としての「世界史」の読み方』第3刷
 これは5月21日分の記事として掲載しておきます。2017年3月にPHP研究所より刊行されました。第1刷の刊行は2017年1月です。歴史学に限らず、緻密化・細分化の進む分野で、総合的な内容の本を執筆するのには勇気が必要だと思います。歴史学のような分野だと、扱う範囲が広範で、研究の蓄積も膨大なため、「一国史」でも通史を執筆するのにはかなりの勇気が必要となるでしょう。じっさい、各分野の専門家や非専門家でも詳しい人で、本書の叙述に疑問を抱く人は少なくいかもしれません。ただそれでも、本書のような一人の執... ...続きを見る

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2017/05/21 00:00
Alex Mesoudi『文化進化論 ダーウィン進化論は文化を説明できるか』
 これは5月14日分の記事として掲載しておきます。アレックス=メスーディ(Alex Mesoudi)著、野中香方子訳、竹澤正哲解説で、文藝春秋社より2016年2月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。本書は、文化の変遷を生物進化の概念・数理モデルで把握しようとする文化進化論の立場を解説しています。歴史学や文化人類学など文化を扱う社会科学分野は多数ありますが、その多くが定量的な手法を用いておらず、科学的厳密さに欠けている、と本書は指摘します(心理学や経済学の手法には科学的厳密さがあるものの... ...続きを見る

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2017/05/14 00:00
Yuval Noah Harari『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』上・下
 これは5月7日分の記事として掲載しておきます。ユヴァル=ノア=ハラリ(Yuval Noah Harari)著、野中香方子訳で、河出書房新社から2016年9月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。地上波でも取り上げられ、大型書店でも大きく扱われているなど、本書は評判の一冊になっているようです。私は刊行後間もない時期に購入したのですが、書評を少し読んだ限りでは、あまり新鮮さはなさそうだということで、読むのを先延ばしにしていました。しかし、このまま読まないのはもったいないと思い、読んでみた次... ...続きを見る

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2017/05/07 00:00
深井智朗『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』
 これは4月30日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年3月に刊行されました。本書はプロテスタンティズムの概説ですが、副題にあるように現代社会を射程に入れており、現代社会におけるプロテスタンティズムの役割はどのような歴史的経緯をたどってきた結果として成立したのか、という観点を強く打ち出しているように思われます。本書はまず、プロテスタンティズムの前提として、中世の西方教会世界を簡潔に解説します。そこではカトリックが人々の世界観に大きな影響を与えており、ロー... ...続きを見る

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2017/04/30 00:00
長谷川眞理子、 山岸俊男『きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」』
 これは4月23日分の記事として掲載しておきます。集英社インターナショナルより2016年12月に刊行されました。本書は著者二人の対談で、一般読者層にもたいへん読みやすくなっていると思います。あとがきにあるように、編集者の力量が優れている、ということなのでしょう。さすがに第一人者同士の対談だけあって、じゅうぶん読みごたえがありましたし、教えられるところが多々ありました。 ...続きを見る

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2017/04/23 00:00
亀田達也『モラルの起源 実験社会科学からの問い』
 これは4月16日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2017年3月に刊行されました。本書は、人間社会のモラルの基盤を、さまざまな分野の研究成果から検証しています。本書はこれを「実験社会科学」と呼んでいます。実験社会科学とは、経済学・心理学・政治学・生物学など複数の分野の研究者たちが集まり、「実験」という共通の手法を用いて、人間の行動や社会における振る舞いを検討しようとする、新たな学問領域です。 ...続きを見る

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2017/04/16 00:00
Jonathan Marks『元サルの物語 科学は人類の進化をいかに考えてきたのか』
 これは4月9日分の記事として掲載しておきます。ジョナサン=マークス(Jonathan Marks)著、長野敬・長野郁訳で、2016年11月に青土社より刊行されました。原書の刊行は2015年です。本書は一般向けながら、たいへん深い内容になっていると思います。だからといって、難解とか、晦渋さを誇示しているとかいうわけではなく、文章自体は比較的平易だと思います(正確には、翻訳文がそうだと言うべきなのでしょうが、おそらく原文も同様なのでしょう)。 ...続きを見る

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2017/04/09 00:00
岩明均『ヒストリエ』第10巻発売(講談社)
 これは4月2日分の記事として掲載しておきます。待望の第10巻が刊行されました。実に1年10ヶ月振りの新刊となります。第9巻は、紀元前338年、アテネ・テーベなどの連合軍とマケドニア軍とのカイロネイアの戦いがまさに始まろうとし、一番手を自分と替わってくれ、とクラテロスに頼み込んだものの断られたアレクサンドロスが、副将の下知だ、と言うところで終了しました。第10巻は、パルメニオンがクラテロスに、アレクサンドロスの指示に従うよう、命じるところから始まります。アレクサンドロスは愛馬ブーケファラスととも... ...続きを見る

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2017/04/02 00:00
『最古の文字なのか? 氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く』
 これは3月26日分の記事として掲載しておきます。ジェネビーブ=ボン=ペッツィンガー(Genevieve von Petzinger)著、櫻井祐子訳で、文藝春秋社より2016年11月に刊行されました。原書の刊行は2016年です。著者の見解は地上波の番組でも取り上げられたことがあり、すでにある程度知られているのではないか、と思います。このブログでも、著者の見解を取り上げたことがあります(関連記事)。 ...続きを見る

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2017/03/26 00:00
『カラー図解 進化の教科書 第2巻 進化の理論』
 これは3月19日分の記事として掲載しておきます。カール=ジンマー(Robin Dunbar)、ダグラス=エムレン(Douglas J. Emlen)著、更科功・石川牧子・国友良樹訳で、講談社ブルーバックスの一冊として、2017年1月に講談社より刊行されました。原書の刊行は2013年です。第1巻については、すでにこのブログで取り上げています(関連記事)。第2巻はとくに淘汰を重点的に解説しており、第5章「進化のメカニズム─遺伝的浮動と自然淘汰」・第6章「量的遺伝学と表現型の進化」・第7章「自然淘汰... ...続きを見る

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2017/03/19 00:00
渡邊大門『おんな領主 井伊直虎』
 これは3月12日分の記事として掲載しておきます。中経の文庫の一冊として、2016年9月にKADOKAWAより刊行されました。大河ドラマ『おんな城主 直虎』関連本としては読んだのは本書で2冊目となります。以前に読んだ関連本(関連記事)は、門外漢にはかなり奇抜な内容に思えたので、もう一冊関連本を読むことにしました。中世〜近世移行期にはまっていた十数年前ならば、もっと多くの関連本を読んだでしょうし、そうする方がよいに決まっているのですが、今は中世〜近世移行期の優先順位が下がってしまったので、現在の能... ...続きを見る

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2017/03/12 00:00
『カラー図解 進化の教科書 第1巻 進化の歴史』
 これは3月5日分の記事として掲載しておきます。カール=ジンマー(Robin Dunbar)、ダグラス=エムレン(Douglas J. Emlen)著、更科功・石川牧子・国友良樹訳で、講談社ブルーバックスの一冊として、2016年11月に講談社より刊行されました。原書の刊行は2013年です。本書は、進化の具体的な過程とともに、進化の基本的な仕組みについての解説にもなっており、進化の入門書としてたいへん優れていると思います。豊富な具体的な事例が本書の特徴で、一般層にも面白く読める構成にしよう、との意... ...続きを見る

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2017/03/05 00:00
小山聡子『浄土真宗とは何か 親鸞の教えとその系譜』
 これは2月26日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年1月に刊行されました。本書は、親鸞の生涯と浄土真宗教団の成立過程を、その思想の変遷をたどりつつ解説しています。親鸞やその後継者たちの思想の背景として、浄土教をはじめとする平安時代以来の伝統的な信仰があり、親鸞やその後継者たちが自力に完全に徹していたわけではないことが解説されています。 ...続きを見る

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2017/02/26 00:00
今井宏平『トルコ現代史 オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで』
 これは2月19日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年1月に刊行されました。本書は、オスマン帝国の崩壊・トルコ共和国の成立から、昨年(2016年)までのトルコの動向を対象としています。本書は経済・社会構造・文芸なども取り上げていますが、ほぼ政治史になっており、政党政治の変遷や民族問題・外交が詳しく解説されています。トルコ現代史については本当に無知なので、教えられるところが多々あったというか、教えられるところばかりでした。 ...続きを見る

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2017/02/19 00:00
池田嘉郎『ロシア革命 破局の8か月』
 これは2月12日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2017年1月に刊行されました。本書は2月革命の勃発から10月革命の勃発までの約8ヶ月のロシアの政治情勢を解説していますが、その前後の時代も多少取り上げられています。副題に「破局の8か月」とありますが、本書を読んで改めて、この時期のロシアが破局的な情勢だったことが了解されます。2月革命後に成立した臨時政府は、けっきょくこの混乱した破局的情勢を収拾できなかったわけですが、それは、臨時政府の要人に第一次世界大... ...続きを見る

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2017/02/12 00:00
吉田一彦『シリーズ<本と日本史>1 『日本書紀』の呪縛』
 これは2月4日分の記事として掲載しておきます。集英社新書の一冊として、集英社より2016年11月に刊行されました。本シリーズは、本のあり方から一つの時代の文化や社会の姿を考え、その時代の考え方や世界観・価値観、さらには知の枠組みがどのようなものだったのか、考察する企画とのことです。本書は『日本書紀』を取り上げ、いかなる意図・構想なのか、後世にどのような影響を与えたのか、ということを考察しています。おもに奈良時代・平安時代における『日本書紀』の影響・受容の在り様が取り上げられていますが、中世・近... ...続きを見る

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2017/02/04 00:00
岩崎育夫『世界史の図式』
 これは1月29日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2015年11月に刊行されました。本書は、世界を大きくアジア・中東・ヨーロッパ・アフリカ・北アメリカ・ラテンアメリカ・オセアニアに7区分し、一つの地域世界が軍事・経済・文化的に優位となり(優位勢力)、その主導で歴史が展開してきた、との理解のもと、過去2000年の世界史を概観しています。本書は近現代において支配的だったヨーロッパ中心主義の克服を掲げ、ヨーロッパもこれら7地域世界の一つにすぎない、との視点を打ち... ...続きを見る

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2017/01/29 00:00
山岸俊男『「日本人」という、うそ 武士道精神は日本を復活させるか』
 これは1月22日分の記事として掲載しておきます。ちくま文庫の一冊として、筑摩書房より2015年10月に刊行されました。本書の親本『日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点』は、2008年に集英社インターナショナルより刊行されました。本書の内容については、親本の表題の方が本書の表題の方よりもずっと的確に表しているように思えます。もっとも、現代日本社会でより関心を惹きそうな表題は本書の方でしょうから、この改題は仕方のないところでしょうか。 ...続きを見る

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2017/01/22 00:00
玉木俊明『先生も知らない世界史』
 これは1月17日分の記事として掲載しておきます。日経プレミアムシリーズの一冊として、日本経済新聞出版社から2016年10月に刊行されました。定住生活と農耕の始まりから現代までを対象としていますが、冒頭で述べられているように、西洋中心の解説となっています。アジアやアメリカ大陸についてもそれなりに言及されていますが、本書の主題はあくまでも、ヨーロッパが他地域にたいして優位に立った理由の解明なので、そうした観点からのヨーロッパとの比較が多くなっています。 ...続きを見る

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2017/01/17 00:00
小原嘉明『入門!進化生物学 ダーウィンからDNAが拓く新世界へ』
 これは1月12日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年12月に刊行されました。本書は、現在の進化学の成果とともに学説史を参照し、進化学がどのように成立・展開してきたのか、分かりやすく解説しています。題名に入門とありますが、日本語で読める進化学の最新の入門書としてたいへん優れていると思います。これは、理論的な問題を扱いつつも、本書があくまでも具体的事例を取り上げて解説しようとしているからでもあるのでしょう。近いうちにまた再読したい一冊です。 ...続きを見る

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2017/01/12 00:00
尾本恵市『ヒトと文明 狩猟採集民から現代を見る』
 これは1月4日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2016年12月に刊行されました。本書は人類史の概説とも言えますが、著者の問題意識は現代社会への強い危機感にあり、現代人への警鐘と受け止めるべきなのかもしれません。ただ、本書は著者の自伝的性格も強いので、人類史の概説にしても、現代社会の危機の指摘にしても、やや雑然としているというか、体系的ではないところがあります。もっとも、著者の少年時代からの話は研究史にもなっているので、興味深く読み進められました。 ...続きを見る

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2017/01/04 00:00
溪内謙『現代社会主義を考える―ロシア革命から21世紀へ―』第3刷
 これは12月27日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より1988年12月に刊行されました。第1刷の刊行は1988年1月です。本書は、社会主義革命の理想と現実の社会主義政治体制との乖離の理由を、冷戦末期(だということは冷戦後だからこそ分かるわけで、本書のはしがきが執筆された1987年12月9日時点ではまだ不透明だったわけですが)の時点で考察し、社会主義の再生を模索しようとしています。著者はソ連政治史の専門家であり、冷戦末期における専門家の認識の一例を知ることが... ...続きを見る

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2016/12/27 00:00
本村凌二『競馬の世界史 サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年8月に刊行されました。古代ローマ史専攻の著者は競馬ファンでもあり、『優駿』やスポーツ紙などへの寄稿をたびたび読んだことがありますが、最近ではどうなのでしょうか。本書は、基本的にはサラブレッドの近代競馬を扱っていますが、著者の専攻を反映して、ローマ帝国やギリシアなど古代の競馬についても1章割かれています。もっとも、ローマ帝国における競馬とは、基本的には戦車競走でした。 ...続きを見る

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2016/12/23 00:00
松戸清裕『ソ連史』
 これは12月18日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2011年12月に刊行されました。ソ連史の復習になると思い読みましたが、門外漢にとっては、分量・分かりやすさともに適切で、一般向けのソ連通史としてなかなか優れていると思います。ソ連というと、民意を無視した抑圧主義的な体制だった、との印象が一般には強いかもしれませんが、本書を読むと、ソ連の支配体制は社会の隅々まで浸透していたわけではなく、案外脆弱だったのだな、と思います。また、ソ連の支配層が民意にかなり敏感だっ... ...続きを見る

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2016/12/18 00:00
檀上寛『天下と天朝の中国史』
 これは12月15日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年8月に刊行されました。天下と天朝という観点からの中国通史となっています。天下には中国王朝の実効的支配領域(中華)を指す狭義の天下と、「中華」と「夷狄」の両方を指す広義の天下がある、というのが本書の基本認識です。また、東アジア世界においては、中華世界の(知識層の)天下観念(大天下)をもとに、やがて日本も含めて周辺地域においても天下観念(小天下)が形成されていき、大天下と小天下が併存していた、と指... ...続きを見る

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2016/12/15 00:00
岡本隆司『中国の論理 歴史から解き明かす』
 これは12月9日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年8月に刊行されました。本書は、現代中国社会の論理がいかに形成されたのか、歴史的経緯から解説しています。前近代の論理の特徴・形成過程の解説に重点を置いているのが本書の特徴で、そうした前近代の知的状況を前提として、西洋の衝撃を受けた近代以降にどのように中国の論理が変容していったのか、また前近代の論理が現代にどのように残っているのか、ということが論じられています。 ...続きを見る

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2016/12/09 00:00
平野明夫編『家康研究の最前線 ここまでわかった「東照神君」の実像』
 これは12月4日分の記事として掲載しておきます。日本史史料研究会監修で、歴史新書の一冊として洋泉社より2016年11月に刊行されました。本書は、同じく歴史新書の一冊として、一昨年(2014年)刊行された『信長研究の最前線 ここまでわかった「革新者」の実像』(関連記事)と、昨年(2015年)刊行された『秀吉研究の最前線 ここまでわかった「天下人」の実像』(関連記事)の続編と言えそうです。本書は4部構成で、各部は複数の論考から構成されています。本書で提示された見解のなかには、すでに他の一般向け書籍... ...続きを見る

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2016/12/04 00:00
夏目琢史『井伊直虎 女領主・山の民・悪党』
 これは11月30日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社から2016年10月に刊行されました。来年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』の予習になると思い、読んでみました。本書は、第一章で井伊直虎(次郎法師)の生涯と井伊氏の動向について解説し、第二章で直虎の正体というか、歴史的位置づけを解明しようと試みています。井伊直虎についても、井伊直政の登場前の井伊氏についてもほとんど知識がなかったので、基礎知識を得ようという目的もありました。 ...続きを見る

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2016/11/30 00:00
美川圭『日本史リブレット人021 後三条天皇 中世の基礎を築いた君主』
 これは11月27日分の記事として掲載しておきます。山川出版社から2016年9月に刊行されました。本書は、後三条天皇(尊仁親王)の出自についてやや詳しく解説しています。一般には、後三条天皇は宇多天皇以来久しぶりに藤原氏を外戚としない天皇でとされています。しかし、後三条天皇の母である禎子内親王(陽明門院)の母方祖父は藤原道長ですし、後三条天皇の父である後朱雀天皇の母方祖父も藤原道長です。そのため、摂関家はいぜんとして後三条天皇の外戚だった、との見解も提示されているようです。 ...続きを見る

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2016/11/27 00:00
呉座勇一『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』
 これは11月23日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年10月に刊行されました。本書の特徴としてまず挙げられるのが、応仁の乱そのものだけではなく、その前史と応仁の乱後の情勢の解説にもかなりの分量が割かれていることです。応仁の乱の前提条件と応仁の乱の影響が解説され、戦国時代への展望が提示されており、射程が長いと言えるでしょう。大和国からの視点となっていることも本書の特徴です。本書は、興福寺の僧である経覚と尋尊の日記を用いて、同時代の人々の思惑・反応を復元... ...続きを見る

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2016/11/23 00:00
古川隆久『昭和天皇 「理性の君主」の孤独』第5版第2刷
 これは11月18日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2012年2月に刊行されました。初版の刊行は2011年4月です。本書は新書としてはかなりの大部となり、即位前と第二次世界大戦の敗戦後にも1章ずつ割きつつ、5章構成で昭和天皇の生涯を叙述します。副題にもあるように、本書は昭和天皇を孤独な理性の君主として描きます。儒教的徳治主義と生物学や大正デモクラシーの思潮といった西欧的普遍主義的傾向の諸思想を基盤として、政党政治と協調外交を国是とする民主的な立憲君主国を理想... ...続きを見る

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2016/11/18 00:00
吉田裕『昭和天皇の終戦史』第5刷
 これは11月15日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より1993年12月に刊行されました。第1刷の刊行は1992年12月です。昭和天皇についての研究は本書刊行後にかなり進展しているでしょうから、もっと適当な一般向け書籍があるのではないか、とも思ったのですが、古書店で安い値段にて売られていたので、購入して読んでみました。本書は、平成になってから発見され、大きく報道された「昭和天皇独白録」を徹底的に検証しつつ、第二次世界大戦での敗戦前後の日本の政治状況を、昭和天... ...続きを見る

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2016/11/15 00:00
服部龍二『田中角栄 昭和の光と闇』
 これは11月12日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社より2016年9月に刊行されました。近年、田中角栄への注目が高まっているようで、バブル崩壊後、長期にわたって経済の低迷が続くなか、高度経済成長期を象徴する政治家の一人である田中への郷愁が強くなっているためかもしれません。本書は研究者による田中の伝記ということで、時代背景と田中の選択の影響・意義、さらには田中の個性について、断罪に偏るわけでも称賛に偏るわけでもなく、冷静な評価が提示されているように思います。だから... ...続きを見る

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2016/11/12 00:00
Robin Dunbar『人類進化の謎を解き明かす』
 ロビン=ダンバー(Robin Dunbar)著、鍛原多惠子訳、真柴隆弘解説で、インターシフトより2016年6月に刊行されました。原書の刊行は2014年です。著者は「ダンバー数」で有名であり、本書でも、時間収支モデルとダンバー数を導く社会脳仮説に基づき、人類の進化を解明していきます。時間収支モデルとは、摂食・移動・休息・社会的関係の形成(社交)といった主要な活動に霊長類がどう時間を配分するのか、その身体的特徴と環境(集団規模といった社会環境も含まれます)から予測する方法です。社会脳仮説では、脳の... ...続きを見る

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2016/11/09 00:26
森下章司『古墳の古代史 東アジアのなかの日本』
 これは11月4日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2016年9月に刊行されました。本書は、墳墓の変遷という視点から、紀元前1世紀〜紀元後4世紀頃の日本列島を東アジア世界のなかに位置づけています。もっとも、日本列島とはいっても、対象となっているのは基本的に前方後円墳の築造された地域です。朝鮮半島および中華地域の墳墓の状況も詳しく取り上げられ、それらとの比較により、日本列島の墳墓・社会の特質を浮き彫りにする、というのが本書の特徴です。 ...続きを見る

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2016/11/04 00:00
本村凌二『ローマ帝国 人物列伝』
 祥伝社新書の一冊として、祥伝社より2016年5月に刊行されました。ローマ帝国の人物列伝とはいっても、共和政初期以降の人物が取り上げられており、ローマ史人物伝になっています。最後に取り上げられているのはアウグスティヌスで、西ローマ帝国の滅亡の半世紀ほど前までが対象となっています。本村氏らしく読みやすくて面白くなっており、本村氏の祥伝社新書のローマ通史(関連記事)を読んでおけば、ローマ史の初心者にもじゅうぶん分かりやすいと思います。 ...続きを見る

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2016/11/01 00:00
神田千里『戦国と宗教』
 これは10月30日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年9月に刊行されました。本書では、戦国時代における宗教の大きな役割が強調されています。戦国大名間の合戦においても宗教は重要な役割を担っており、「信仰心が薄れて合理的になった」現代日本社会との違いは大きいように見えます。しかし本書は、戦国時代の人々も信仰を絶対視していたわけではなく、現代日本社会とも通ずるような「合理性」が見られたことを指摘しています。さらに本書は、「信仰心が薄れて合理的になった」... ...続きを見る

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2016/10/30 00:00
渡邊大門編『戦国史の俗説を覆す』
 これは10月27日分の記事として掲載しておきます。柏書房より2016年10月に刊行されました。この十数年間、戦国時代〜江戸時代初期についての勉強が停滞しており知識が古くなっていそうなので、近年の研究成果を大まかにまとめて把握できるのではないかと思い、読んでみました。本書は一般向け書籍ということで、一般層が戦国時代でとくに関心を持ちそうな問題を広範に取り上げているように思います。価格も手ごろで、私のような一般層もわりと気軽に購入できそうなのはありがたいことです。この記事では、年代は西暦で統一しま... ...続きを見る

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2016/10/27 00:00
平山優『真田信之 父の知略に勝った決断力』
 これは10月23日分の記事として掲載しておきます。PHP新書の一冊として、2016年9月にPHP研究所より刊行されました。本書は真田信之(信幸)の伝記ですが、戦国時代末期〜江戸時代初期という、中近世移行期の真田家の動向を詳細に知るのにも適した一冊になっています。と言いますか、信之の思惑や心情について、推測を述べることに抑制的なので、近世大名たる真田家の成立期の解説という性格が強くなっているかもしれません。新書としては厚く、分量があるだけではなく密度も濃く、主要参考文献も掲載されているので、読み... ...続きを見る

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2016/10/23 00:00
更科功 『爆発的進化論 1%の奇跡がヒトを作った』
 新潮新書の一冊として、新潮社から2016年9月に刊行されました。本書は生物の進化におけるさまざまな重要点を取り上げ、進化史を解説しています。新書で短い分量なのですが、生物の進化における要点を一般層にも分かりやすく簡潔に解説できているように思います。一般向け書籍であることを強く意識した構成・文体になっており、一般向けの進化史概説としてなかなか興味深い内容になっています。各分野の専門家からは色々と批判があるのかもしれませんが、なかなか興味深く読み進められました。 ...続きを見る

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2016/10/18 00:00
麻田雅文『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』
 これは10月14日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年9月に刊行されました。副題に「近代日本の忘れられた七年戦争」とあるように、シベリア出兵への一般的な関心は、たとえば、同じく近代の戦争である日清戦争や日露戦争や日中戦争や太平洋戦争と比較して、低いように思われます。不勉強な私も、やはりシベリア出兵のことをよく知りません。その意味で、出兵の背景から出兵後の具体的な情勢変化を経て撤兵にいたるまで、国内・国際的な視点から基本的な事柄が解説された本書は、私に... ...続きを見る

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2016/10/14 00:00
森公章『人物叢書(新装版) 天智天皇』
 人物叢書の一冊として、吉川弘文館より2016年9月に刊行されました。巻末で認められているように、天智天皇(中大兄皇子)の人物像を探る手がかりは乏しいので、7世紀政治史のなかで天智天皇を位置づける、という構成になっています。これは仕方のないところでしょうし、「国内」の支配構造や「国際関係」も含めて7世紀政治史が詳しく解説されているので、もちろん、天智天皇の事績と後世(おもに奈良時代)の天智天皇にたいする評価(律令国家創始者としての顕彰は、天智天皇の娘である持統天皇・元明天皇によるところが大きかっ... ...続きを見る

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2016/10/12 00:26
佐藤長門『日本史リブレット人003 蘇我大臣家 倭王権を支えた雄族』
 これは10月8日分の記事として掲載しておきます。山川出版社より2016年5月に刊行されました。蘇我大臣家とは、大臣職を父系直系で世襲した稲目・馬子・蝦夷・入鹿の蘇我氏四代のことです。よく、この四代は蘇我本宗家と呼ばれますが、当時は父系での直系継承が確立していないので、蘇我大臣家という呼称を用いた、と本書は説明しています。もっとも、本書が指摘するように、当時はまだ氏から家が分立していたわけではありません。したがって本書は、蘇我大臣家という呼称も妥当とは言えないものの、他に適切な用語がないので、蘇... ...続きを見る

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2016/10/08 00:00
佐藤信弥『周―理想化された古代王朝』
 これは10月4日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年9月に刊行されました。本書の特徴は、金文・甲骨文・竹簡のような出土文献を重視した周代史となっていることです。子供向けの現代語訳『史記』などを読んで育った私のような門外漢にとっては、『史記』のような伝世文献に依拠した物語的な概説の方が馴染みやすいので、その意味では、やや難解というかとっつきにくいところがありました。もちろん本書は、出土文献を重視するとはいっても、伝世文献を軽視しているわけではなく、考古... ...続きを見る

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2016/10/04 00:00
古川隆久『人物叢書(新装版) 近衛文麿』
 これは10月1日分の記事として掲載しておきます。人物叢書の一冊として、吉川弘文館より2015年9月に刊行されました。本書は、歴代の首相のなかでも一般的な評価では最下位の有力候補であろう近衛文麿の伝記です。近衛は定見のないポピュリストで優柔不断とも言われますが、本書の評価は異なり、若い頃から思想的にも手法的にも一貫性が強かった、と指摘しています。近衛は若い頃から社会的不平等に敏感で、その解決による国内社会の統合・安定は生涯の課題だったようですが、そのために国家を最重要視しており、この点では国家社... ...続きを見る

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2016/10/01 00:00
Ian Tattersall『ヒトの起源を探して 言語能力と認知能力が現代人類を誕生させた』
 イアン=タッターソル(Ian Tattersall)著、河合信和監訳、大槻敦子訳で、原書房より2016年8月に刊行されました。原書の刊行は2012年です。碩学の著作だけあって、たいへん読みごたえがありました。原書の刊行は2012年なので、日進月歩のこの分野としてはやや古くなっていると言えるかもしれませんが、原書刊行後の研究の進展について監訳者の適切な解説があり、配慮が行き届いています。人類進化の全体像についてより詳しく調べようとするならば、本書はじつに有益な一冊になっていると思います。 ...続きを見る

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2016/09/29 00:00
井上寿一『終戦後史 1945-1955』
 これは9月21日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2015年7月に刊行されました。本書は、現代の日本の原型が形成された期間として1945〜1955年を取り上げています。本書はその期間における戦前と戦後の連続と断絶の問題を検証しています。本書はまた、この時期には日本が現代とは異なる社会になった可能性があった、とも指摘しています。本書はそうした問題意識から、1945〜1955年の日本を政治・外交・経済・社会・文化の視点で検証しています。 ...続きを見る

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2016/09/21 00:00
伊藤之雄『元老 近代日本の真の指導者たち』
 これは9月18日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年6月に刊行されました。本書は元老からの視点の近代日本政治史となっています。新書ということで、もちろん一般向けであり、著者もそのように工夫して執筆していることが窺えますが、一方で、研究者にも読みごたえのある本にしようとした、との意図も語られています。そのため、引用元を明記した他の研究者の見解が、一般向け書籍にしては多く参照されています。新書とはいえ、私のような門外漢にとって、気楽に読み進められる一冊で... ...続きを見る

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2016/09/18 00:00
古川隆久『昭和史』第2刷
 これは9月14日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2016年5月に刊行されました。第1刷の刊行は2016年5月です。本書の特徴は、著者の専門分野に重点が置かれているのではなく、幅広い分野が取り上げられていることです。著者の専門分野に重点を置いた通史は学問的良心と言えるかもしれませんが、新書での通史となると、やはりある程度幅広く事象を取り上げてもらいたいものです。昭和史となると62年と半月ほどの長きにわたりますし、史資料が豊富なだけに、さまざまな分野に言及しつつ... ...続きを見る

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2016/09/14 00:00
島泰三『ヒト―異端のサルの1億年』
 これは9月11日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年8月に刊行されました。霊長類とその下位区分である類人猿の進化史のなかに人類の進化を位置づけているのが本書の特徴で、大規模な環境変動を重視していることとあわせて、広い視野での考察になっていると思います。私は霊長類・類人猿の進化に疎いので、この点では有益でした。しかし、類人猿の起源地はアフリカではない、との本書の見解は一般的ではないと思います。この点については、今後も調べていく必要があります。 ...続きを見る

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2016/09/11 00:00
冨田健之『世界史リブレット人012 武帝 始皇帝をこえた皇帝』
 山川出版社より2016年2月に刊行されました。漢の武帝は恵まれた状況で即位した、と言われています。呉楚七国の乱で中央集権化が進み、大規模な「対外戦争」が長期にわたってなかったこともあり、国家財政では巨額の蓄えがあった、というわけです。しかし本書は、呉楚七国の乱により直轄領が激増したことで中央政府から派遣されるべき官吏が不足したことなど、武帝即位時にはその前の国政改革により政治状況は楽観的なものではなかった、と指摘しています。武帝は困難な政治状況下まだ十代で即位し、試行錯誤しつつ皇帝としての権威... ...続きを見る

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2016/09/08 00:00
筒井清忠編『昭和史講義2─最新研究で見る戦争への道』
 これは9月4日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2016年7月に刊行されました。筒井清忠編『昭和史講義─最新研究で見る戦争への道』(関連記事)の続編となります。『昭和史講義─最新研究で見る戦争への道』は好評だったとのことで、続編が刊行されたのは喜ばしいことです。本書もたいへん有益だったので、好評を博すことでしょう。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。 ...続きを見る

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2016/09/04 00:00
村井章介『シリーズ日本中世史4 分裂から天下統一へ』
 これは8月30日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年7月に刊行されました。すでに第1巻と第2巻と第3巻はこのブログで取り上げています。本書は戦国時代〜17世紀前半までを扱っています。中世から近世への移行期が対象と言えるでしょうか。本書の特徴は、「対外関係」や当時は日本に「包摂」されきっていなかった地域というか、「日本」の「周辺地域」に関する叙述が中心となっていることです。本書はこのように「対外関係」や「周辺地域」を中心に据えることで、近世日本の特... ...続きを見る

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2016/08/30 00:00
榎原雅治『シリーズ日本中世史3 室町幕府と地方の社会』
 これは8月28日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年5月に刊行されました。すでに第1巻と第2巻はこのブログで取り上げています。本書が扱うのは、鎌倉幕府の崩壊から明応の政変までとなります。「地方」の情勢を詳しく取り上げているのが本書の特徴ですが、「中央」の政治情勢の解説にもかなりの分量が割かれています。地域社会の変容・新たな文化的動向・「国際」情勢などにも一定以上の分量が割かれており、南北朝時代〜戦国時代の始まりの頃までの一般向け通史に相応しい内容... ...続きを見る

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2016/08/28 00:00
近藤成一『シリーズ日本中世史2 鎌倉幕府と朝廷』
 これは8月24日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年3月に刊行されました。すでに第1巻はこのブログで取り上げています。本書は治承・寿永の乱から鎌倉幕府の滅亡までを扱っています。表題にあるように、鎌倉幕府と朝廷を中心にこの時代を解説しており、おもに政治史中心の叙述となっています。裁判に関する解説が多いのも特徴で、法制史にもそれなりに分量が割かれています。本書が対象とする期間の大事件となると、何と言ってもモンゴル襲来となります。そのため本書では、外交... ...続きを見る

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2016/08/24 00:00
五味文彦『シリーズ日本中世史1 中世社会の始まり』
 これは8月19日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年1月に刊行されました。本書の冒頭にて構成の意図が説明されていますが、宗教も含めて文化史の割合が高いのが本書の特徴です。本書は、中世社会の前提となる古代社会についても1章を割いて叙述し、その後に、院政期からおおむね足利義満の頃までを、文化を中心に叙述しています。院政期から平氏政権までは政治史もやや詳しく叙述されていますが、鎌倉幕府成立以降の政治史の叙述はかなり簡略化されています。これは、第2巻以降... ...続きを見る

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2016/08/19 00:00
立山良司『ユダヤとアメリカ 揺れ動くイスラエル・ロビー』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年6月に刊行されました。アメリカ合衆国におけるユダヤ社会の動向の変遷が、イスラエルとの関係を軸に分析されています。アメリカ合衆国におけるイスラエル・ロビーというかユダヤ・ロビーの大きな影響力は、現代日本社会でもよく知られているでしょう。これが誇張されると、ユダヤ陰謀論になってしまうわけですが、日本社会でも一時期、ユダヤ陰謀論を主張する本がわりとよく売れ、今でもユダヤ陰謀論は一定以上の影響力を有しているかもしれません。もちろん本書の見解は、ユダヤを一... ...続きを見る

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2016/08/11 00:00
宇野重規『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』
 これは8月3日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年6月に刊行されました。広く使われている用語ほど、定義が難しく、見解の分かれることが多い、と私は昔から考えているのですが、保守主義もその一例と言えるかもしれません。本書は、過去に価値を見出し、変化を嫌うような思考は人類社会に普遍的であるものの、それは保守主義とは異なり、保守主義は自覚的な近代思想である、と指摘します。 ...続きを見る

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2016/08/03 00:00
呉座勇一編『南朝研究の最前線 ここまでわかった「建武政権」から後南朝まで』
 これは7月24日分の記事として掲載しておきます。日本史史料研究会監修で、 歴史新書の一冊として洋泉社より2016年7月に刊行されました。本書は4部構成で、各部は複数の論考から構成されています。本書で提示された見解のなかには、すでに他の一般向け書籍で知ったものもありましたが、南北朝時代、とくに南朝については知識が乏しかったので、得るところが多々ありました。本書は、近年の研究動向を手軽に知ることができ、たいへん有益な一冊になっていると思います。戦国時代ではなく南北朝時代でもこのような本が刊行された... ...続きを見る

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2016/07/24 00:00
飯倉章『第一次世界大戦史 風刺画とともに見る指導者たち』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年3月に刊行されました。一昨年(2014年)で第一次世界大戦の始まりから100年となり、再来年(2018年)で第一次世界大戦の終結から100年となります。そういうわけで、近年になって、日本社会では第二次世界大戦と比較するとずっと関心が低かったと思われる第一次世界大戦に関する書籍の刊行が活発になってきたように思います。一般向けの第一次世界大戦の通史である本書も、第一次世界大戦から100年という節目を意識しての刊行のようです。 ...続きを見る

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2016/07/09 00:00
石川明人『キリスト教と戦争 「愛と平和」を説きつつ戦う論理』
 これは7月3日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年1月に刊行されました。本書は、「愛」と「平和」を唱えるキリスト教徒がなぜ戦争をするのか、という問題を論じています。キリスト教というか、宗教全体に冷ややかな視線を向ける人を、私もこれまで少なからず見てきました。そうした人々にはしばしば、キリスト教徒が主体で、キリスト教が社会に大きな影響力を有していた時代にも、宗教を前面に出した戦争が絶えなかったことから、キリスト教、さらには宗教全体を偽善・役立たずと揶揄... ...続きを見る

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2016/07/03 00:00
細田晴子『カストロとフランコ 冷戦期外交の舞台裏』
 これは6月29日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2016年3月に刊行されました。私が近現代のスペインやキューバについてよく知らないということもあるのですが、カストロとフランコとは私にとって意外な組み合わせで興味深かったので、読んでみました。現代日本社会における一般的印象では、カストロが「左翼の英雄・革命家」であるのたいして、フランコの方は「(第二次世界大戦後も生き延びた)世渡りが上手く(時代遅れの)狡猾なファシスト」であり、両者は対照的な存在として認識されて... ...続きを見る

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2016/06/29 00:00
竹下節子『キリスト教の真実―西洋近代をもたらした宗教思想』
 これは6月24日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2012年4月に刊行されました。現代のグローバル化された「国際社会」における暗黙の「利用規約」にはキリスト教があるので、それを理解しなければならないのに、近代世界の成立にさいして、キリスト教というかカトリックの果たした役割が不当に評価され貶められている、というのが本書の基調となっています。現代日本人向けのカトリック復権・擁護の書だと言ってしまうと、本書を過小評価しているというか、誤読していることになりそうですが... ...続きを見る

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2016/06/24 00:00
関雄二編『古代文明アンデスと西アジア 神殿と権力の生成』
 これは6月15日分の記事として掲載しておきます。朝日選書の一冊として、朝日新聞出版より2015年8月に刊行されました。本書はアンデスと西アジアの事例から、完新世に社会がどのように変容・複雑化していったのか、検証しています。社会が変容・複雑化していった考古学的指標として本書が重視しているのが神殿です。本書にはアンデスと西アジアに関する複数の論考が所収されていますが、じゅうらいの経済を重視した唯物史観的な神殿・都市形成論を見直そうとする方針が貫かれています。じゅうらいの史観とは、農耕が始まり余剰生... ...続きを見る

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2016/06/15 00:00
三浦佑之『風土記の世界』
 これは6月3日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年4月に刊行されました。本書は風土記の入門書になっていますが、たんに風土記の成立事情や内容を取り上げるだけではなく、おもに『日本書紀』を対象として、風土記が8世紀前半の日本列島社会においてどのように位置づけられるのか、という点も重視しているのが特徴となっています。 ...続きを見る

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2016/06/03 00:00
David Christian『ビッグヒストリー入門 科学の力で読み解く世界史』
 デビッド=クリスチャン(David Christian)著、渡辺政隆訳で、WAVE出版から2015年10月に刊行されました。原書初版の刊行は2007年で、本書は2015年刊行の第5版の翻訳とのことです。本書の特徴は、宇宙の始まりから叙述を始めていることです。さすがに地球の誕生から生命の誕生、さらには人類の出現までは簡潔な叙述になっていますが、人類の狩猟採集時代は予想以上の分量でした。また、農耕開始から文字の使用が始まる前までの時代にもかなりの分量が割かれていますから、いわゆる先史時代の比重がか... ...続きを見る

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2016/05/28 00:00
大津透『日本古代史を学ぶ』
 これは5月24日分の記事として掲載しておきます。岩波書店より2009年2月に刊行されました。学術誌に掲載された論文やシンポジウムでの報告やジュネーヴ大学文学部日本学科での講義をまとめたもので、本書の内容を大まかに区分すると、日本古代史研究の現状の整理と課題の指摘、日本古代国家の位置づけと変容をめぐる研究史の整理および自説の提示、東アジア世界という枠組みからの古代日本史の概観、ということになるでしょう。私は日本古代史の研究史に詳しいわけではありませんが、本書では、なかなか的確に研究史が整理されて... ...続きを見る

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2016/05/24 00:00
檀上寛『永楽帝 華夷秩序の完成』
 これは5月15日分の記事として掲載しておきます。講談社学術文庫の一冊として、2012年12月に講談社より刊行されました。本書の親本は、『永楽帝 中華「世界システム」への夢』との題にて、講談社選書メチエの一冊として1997年に講談社より刊行されました。本書は現代日本社会ではあまり人気のなさそうな永楽帝を取り上げていますが、後書にもあるように、永楽帝の伝記というよりは、問題設定的なアプローチを試みるなかで、永楽帝の人物像に迫るとともに、明初の政治史を解明しようとするものであり、少なからぬ読者にとっ... ...続きを見る

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2016/05/15 00:00
入江曜子『古代東アジアの女帝』
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年3月に刊行されました。率直に言って、本書がなぜ岩波新書の古代史本として刊行されたのか、理解に苦しみます。いやまあ、岩波書店が本書をどのように位置づけているのか、私には正確なところは分からないのですが、カバーの広告には日本古代史本が掲載されていたので、やはり本書は古代史本という位置づけなのでしょう。 ...続きを見る

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2016/05/12 00:18
鈴木拓也『戦争の日本史3 蝦夷と東北戦争』
 これは5月6日分の記事として掲載しておきます。吉川弘文館より2008年12月に刊行されました。本書はおもに和銅2年の「征夷」から弘仁年間の「征夷」までを対象としています。おおむね、奈良時代全体と平安時代初期の日本国と蝦夷との関係を扱っている、と言えるでしょう。「征夷」とは当時の日本国にとってどのような意味があったのかということや、朝廷における「征夷」の手続きや、蝦夷とはどのような集団だったのかということや、戦いの発端・経緯・影響など、基本的な事柄が解説されているので、8世紀初頭から9世紀初頭に... ...続きを見る

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2016/05/06 00:00
吉川真司『シリーズ日本古代史3 飛鳥の都』
 これは5月3日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2011年4月に刊行されました。本書は、飛鳥寺の創建から大宝律令の制定までを対象としています。文献のみならず、考古学など他分野の研究成果も積極的に取り入れているのが本書の特徴です。また、飛鳥時代史を「東アジア」の観点から考察するのは、現在では当然のこととなっていますが、その対象をユーラシア東部世界にまで広げているのも本書の特徴です。近年では、本書のようにユーラシア世界を意識した日本史叙述が増えているように思... ...続きを見る

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2016/05/03 00:00
小泉龍人『都市の起源 古代の先進地域=西アジアを掘る』
 これは4月28日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2016年3月に刊行されました。都市の起源の解明となると、まず問題となるのが都市の定義です。本書は都市の必要十分条件を「都市計画」・「行政機構」・「祭祀施設」と定義し、最初の都市は5300年前頃に成立したウルク(イラク南部)と(その直後にウルクの模倣都市として成立した)ハブーバ・カビーラ南(シリア)である、との見解を提示しています。5300年前頃のウルクよりも古いとされる、最初の都市候補としてよく名前の挙が... ...続きを見る

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2016/04/28 00:00
Eugene E. Harris『ゲノム革命 ヒト起源の真実』
 これは4月24日分の記事として掲載しておきます。ユージン=E=ハリス(Eugene E. Harris)著、水谷淳訳で、早川書房より2016年4月に刊行されました。原書の刊行は2015年です。ゲノム解析による現代人の起源・進化の解明という、まさに日進月歩と言うべき分野だけに、原書の刊行が2015年と最近であることは、本書の価値を大いに高めていると思います。もっとも、本書が取り上げている研究はおおむね2013年までのもので、その後も、おそらく著者が予想・期待していたであろうように、ゲノム解析によ... ...続きを見る

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2016/04/24 00:00
田中史生『国際交易の古代列島』
 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2016年1月に刊行されました。本書は、紀元前の弥生時代から中世の始まる前までの、日本列島と他地域、さらには日本列島内における交易の変容を解説しています。本書は、この間の「国際交易」の変容を「国際情勢」や日本列島における政治体制の変容と関連づけて、上手く解説しているように思います。 ...続きを見る

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2016/04/17 00:00
遠藤慶太『六国史 日本書紀に始まる古代の「正史」』
 これは4月6日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年2月に刊行されました。六国史とは、古代日本の「正史」たる『日本書紀(日本紀)』・『続日本紀』・『日本後紀』・『続日本後紀』・『日本文徳天皇実録』・『日本三代実録』です。本書は、この六国史について、その成立過程や編纂者や特徴などを解説するとともに、六国史の興味深い記事を取り上げています。一般書ということで、無味乾燥とした解説書にならないよう、配慮しているのでしょう。 ...続きを見る

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2016/04/06 00:00
小畑弘己『タネをまく縄文人 最新科学が覆す農耕の起源』
 これは4月3日分の記事として掲載しておきます。歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2016年1月に刊行されました。縄文時代には農耕は行なわれていなかった、との見解が一般では長く浸透していましたが、近年では、縄文農耕論が一般にも少しずつ知られるようになってきたのではないか、と思います。ただ本書を読むと、農耕や栽培といった基本的な概念の定義に難しいところがある、とよく分かるので、どのような基準で農耕の開始と判断するのか、迷うところではあります。これは昔からの持論ですが、一般的に、基本的... ...続きを見る

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2016/04/03 00:00
長谷川眞理子編『ヒトの心はどこから生まれるのか 生物学からみる心の進化』第3刷
 これは3月24日分の記事として掲載しておきます。 ウェッジ選書の一冊として、ウェッジより2010年1月に刊行されました。第1刷の刊行は2008年10月です。本書の基調は、二項対立的図式の見直しです。本書の議論では、「こころ」と「からだ」、「遺伝」と「環境」、「本能」と「理性」、「本能」と「学習」、「意識」と「無意識」、「動物」と「人間」といった二項対立的図式が対象となります。人間の性質・能力は遺伝と環境のどちらで決まるのか、といった通俗的な問題設定は、氏か育ちか、という言葉で一般でも語られてい... ...続きを見る

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2016/03/24 00:00
鍛代敏雄『戦国大名の正体 家中粛清と権威志向』
 これは3月13日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2015年11月に刊行されました。副題にあるように、本書は戦国大名の特徴というか、戦国大名を形成・存立させる要素として家中粛清を重視しています。本書は戦国大名権力を、主従制的な支配と一揆的な原理により縦横に結ばれた、全体として統合された家中である、と認識しています。そのため、特定の譜代宿老への権限の集中や、家臣の反抗にたいしては、家中の合意に基づいて粛清が行なわれた、というわけです。一方、大名自身が専制化して... ...続きを見る

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2016/03/13 00:00
本多博之『天下統一とシルバーラッシュ 銀と戦国の流通革命』
 これは3月101日分の記事として掲載しておきます。歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2015年7月に刊行されました。本書は銀の動向を軸に、戦国時代から豊臣・徳川統一政権までの政治・経済構造の変容を検証しています。表題から容易に推測できる人も多いでしょうが、本書は日本列島に限定せず、広く東アジアや東南アジア、さらにはそれらの海域に進出してきたヨーロッパ勢力も取り上げています。現代日本社会では珍しくない視点でしょうが、少なからぬ非専門家層にとっては必ずしも自明のこととは言えないでしょ... ...続きを見る

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2016/03/10 00:00
南川高志『世界史リブレット人008 ユリアヌス 逸脱のローマ皇帝』
 山川出版社より2015年12月に刊行されました。本書は、後世のキリスト教勢力から「背教者」として非難されてきたローマ皇帝ユリアヌスの簡略な伝記です。本書はユリアヌスを、「逸脱」という観点から把握し、ユリアヌスの「逸脱」から当時のローマ帝国の性格が浮き彫りにされる、と指摘しています。ユリアヌスはコンスタンティヌス1世の甥であり、恵まれた出生身分と言えそうですが、それ故に警戒され、皇帝に即位するまでにも、たびたび生命の危機を経験しました。恵まれた出生身分とは言っても、当初は同時代の人々から皇帝に即... ...続きを見る

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2016/03/06 00:00
久保健一郎『戦国大名の兵粮事情』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2015年12月に刊行されました。本書は兵粮事情から戦国時代の経済・社会状況を検証しています。本書は兵粮をモノとカネの二つの側面で把握しています。もちろん、兵粮は食として消費されるわけですが、それだけではなく、カネのように運用されることもあるわけです。兵粮とはコメを指すことが多いようですが、近世の石高制ではまさにコメがカネ・価値基準として通用しているのであり、石高制の成立にカネとしての兵粮の深化があったのではないか、との見通しが本書では提示されて... ...続きを見る

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2016/03/03 00:25
村井良介『戦国大名論 暴力と法と権力』
 これは2月24日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2015年9月に刊行されました。本書の特徴の一つは、一般向け書籍としては珍しいくらい、研究史への直接的言及が多いことです。研究史の整理を直接読者に提示することにより、問題の所在を浮き彫りにする、という狙いがあるようです。また、フーコー(Michel Foucault)の権力論やゲーム理論など、歴史学以外の分野の研究成果を積極的に援用していることも本書の特徴と言えるでしょう。そのため、本書は歴史理論・歴史哲学... ...続きを見る

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2016/02/24 00:00
海部陽介『日本人はどこから来たのか?』
 これは2月21日分の記事として掲載しておきます。文藝春秋社から2016年2月に刊行されました。本書は、昔から(おそらくは今後も長く)日本社会では関心の高い日本人起源論を取り上げています。本書の特徴は、日本社会ではありふれているとも言える日本人起源論を、現生人類(Homo sapiens)アフリカ単一起源説を前提として、現生人類のアフリカからの拡散という観点から検証していることです。日本列島とその周辺地域だけではなく、広く世界的な視野で考察されている、というわけです。 ...続きを見る

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2016/02/21 00:00
黒嶋敏 『天下統一 秀吉から家康へ』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2015年11月に刊行されました。本書は、武威という視点からおもに「対外」関係を対象として豊臣秀吉と徳川家康の「天下統一」を検証しており、なかなか興味深く読み進められました。「対外」関係の点でも豊臣政権と徳川政権には連続性が認められ、それは武家政権たる両者が武威に基づき支配体制を構築してきたからだ、というのが本書の見通しです。天下人たる秀吉・家康と同じく、諸大名も武威により地域的な支配体制を構築しており、天下人が武威を掲げて統一を進めたことを諸大名が受け入... ...続きを見る

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2016/02/17 00:22
Jared Diamond『若い読者のための第三のチンパンジー 人間という動物の進化と未来』
 ジャレド=ダイアモンド(Jared Diamond)著、レベッカ=ステフォフ(Rebecca Stefoff)編著、秋山勝訳、長谷川眞理子解説で、草思社より2015年12月に刊行されました。原書の刊行は2014年です。本書は1993年に新曜社より日本語版が刊行された『人間はどこまでチンパンジーか? 人類進化の栄光と翳り』の圧縮版であり、その後の研究成果が参照された増補改訂版でもあります。 ...続きを見る

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2016/02/06 00:30
石井公成 『聖徳太子 実像と伝説の間』
 春秋社から2016年1月に刊行されました。著者はブログにて聖徳太子に関する最新の研究成果を公開しており(関連記事)、本書はそのブログ記事に基づいているところが少なくないので、その意味では意外な指摘の連続だったわけではありません。しかし、新規の内容も少なくないので、得るところが多々ありました。聖徳太子については、この十数年間、マスメディアで大きく取り上げられた「過激な」否定論が一般層にも広く浸透しているように思われますが、本書は、そうした否定論や今でも一部で見られる「信仰」のような肯定論に与する... ...続きを見る

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2016/02/03 00:46
玉木俊明『ヨーロッパ覇権史』
 これは1月31日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2015年10月に刊行されました。本書の問題意識の前提として、アジアの高い経済成長とヨーロッパの混迷が見られる現代社会においても、ヨーロッパ発の規範は依然として強く、現代人は「ヨーロッパ化した世界」に生きている、との認識があります。さらに、本書では明言されていませんが、「未開拓の土地」を前提として持続的な経済成長を志向するヨーロッパ発の近代世界システムは行き詰っており、新たなシステムが形成されるであろうものの、... ...続きを見る

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2016/01/31 00:00
呉座勇一『一揆の原理』
 これは1月24日分の記事として掲載しておきます。ちくま学芸文庫の一冊として、筑摩書房より2015年12月に刊行されました。本書の親本『一揆の原理 日本中世の一揆から現代のSNSまで』は、2012年に洋泉社より刊行されました。本書は日本史上における一揆がどのような原理に基づいているのか検証し、じゅうらいの一揆像の見直しを提言しています。じゅうらいの一揆像とは、たとえば戦後日本社会でもてはやされた階級闘争史観に基づくものです。一揆とは反体制・革命運動である、といったものです。一方、1970年代後半... ...続きを見る

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2016/01/24 00:00
坂上康俊『日本古代の歴史5 摂関政治と地方社会』
 これは1月17日分の記事として掲載しておきます。『日本古代の歴史』全6巻の第5巻として2015年12月に吉川弘文館より刊行されました。本書は9世紀後半から11世紀半ばまでの、いわゆる摂関政治の時代を扱っています。表題からも窺えるように、本書はこの時代の地方社会に重点を置いています。この時代、地方社会は大きく変容していき、またそれに対応して地方支配も変わっていきました。逆に、そうした地方支配の変容が地方社会をさらに変えていった、と言えるかもしれません。 ...続きを見る

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2016/01/17 00:00
中村修也『天智朝と東アジア』
 NHKブックスの一冊として、NHK出版より2015年10月に刊行されました。本書は天智朝の日本(ヤマト、倭)を東アジアの中に位置づけています。じゅうらい、白村江の戦いで日本が唐に惨敗した後、日本は唐と新羅の侵攻に備えて朝鮮式山城を築くなど防衛体制を構築していき、飛鳥から近江の大津への遷都にもそうした背景がある、と理解されてきました。白村江の戦いでの惨敗後も、日本は主体的に唐や新羅と対峙していた、というわけです。 ...続きを見る

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2016/01/13 00:00
倉本一宏『蘇我氏 古代豪族の興亡』
 これは1月6日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2015年12月に刊行されました。本書は、蘇我氏は葛城方を地盤とした複数の集団の中から有力な集団が編成され独立して成立したのであり、記紀に見える「葛城氏」とは蘇我氏が作り上げた祖先伝承である、との見解を提示しています。この見解の前提にあるのは、日本列島において氏という政治組織が成立したのは6世紀初頭である、との歴史認識があります。蘇我氏は曽我の地を地盤とすることにより氏として成立し、葛城集団の勢力の大多数を支配... ...続きを見る

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2016/01/06 00:00
吉村武彦『蘇我氏の古代』
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2015年12月に刊行されました。本書はまず、古代日本における氏の成立過程を蘇我氏登場の前提として解説しています。中華地域や朝鮮半島の影響を受けて、日本列島においても6世紀前半にはウジナを有する氏族が成立します。蘇我氏はそうした歴史的状況を背景に、6世紀前半に台頭します。蘇我氏は地名をウジナとする臣姓の氏族として稲目の代に台頭し、葛城氏との姻戚関係が指摘されています。 ...続きを見る

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2016/01/03 00:00
山田康弘『つくられた縄文時代 日本文化の原像を探る』
 これは12月28日分の記事として掲載しておきます。新潮選書の一冊として、新潮社から2015年11月に刊行されました。本書は縄文時代の研究史であり、縄文時代像の変遷の背景として、各時代の思潮があったことを強調しているのが特徴です。本書は、そもそも縄文時代という時代区分が定着したのは第二次世界大戦後である、とまず指摘します。戦前には、縄文時代は弥生時代とともに石器時代として一括して区分されることが多かったようです。 ...続きを見る

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2015/12/28 00:00
神田裕理編『ここまでわかった 戦国時代の天皇と公家衆たち 天皇制度は存亡の危機だったのか』
 これは12月25日分の記事として掲載しておきます。日本史史料研究会監修で、 歴史新書の一冊として洋泉社より2015年12月に刊行されました。本書は4部構成で、各部は複数の論考から構成されています。本書で提示された見解のなかには、すでに他の一般向け書籍で知ったものもありましたが、戦国時代の朝廷については知識が乏しかったので、得るところが多々ありました。本書は、近年の研究動向を手軽に知ることができ、たいへん有益な一冊になっていると思います。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べて... ...続きを見る

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2015/12/25 00:00
丸島和洋『真田四代と信繁』
 これは12月18日分の記事として掲載しておきます。平凡社新書の一冊として平凡社より2015年11月に刊行されました。著者は来年(2016年)の大河ドラマ『真田丸』の時代考証担当者の一人です。真田四代とは、幸綱・信綱・昌幸・信之(信幸)という戦国時代〜江戸時代初期にかけての真田家の当主のことです。この四人と昌幸の次男である信繁とに1章ずつ割かれており、全体では5章構成となっています。幸綱は以前には幸隆という名前で知られていましたが、諱(実名)は幸綱で、幸隆は法名(一徳斎幸隆)の一部である可能性が... ...続きを見る

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2015/12/18 00:00
Pat Shipman『ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた』
 これは12月13日分の記事として掲載しておきます。パット=シップマン(Pat Shipman)著、河合信和監修・訳、柴田譲治訳で原書房より2015年12月に刊行されました。原書の刊行は2015年です。本書は、現生人類(Homo sapiens)を侵略種と把握し、その拡散が生態系に大きな影響を及ぼした、との認識を前提とし、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅を検証しています。主要な検証対象地域はヨーロッパです。 ...続きを見る

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2015/12/13 00:00
川合伸幸『ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか』
 これは12月5日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社より2015年11月に刊行されました。本書は、ヒトの本性、さらには、ヒトの本性は残酷であるという今でもわりと根強いだろう観念の検証が主題となっています。率直に言って、本書はこの主題に捕われすぎており、やや偏向しているのではないか、と思います。漢字文化圏でなじみ深い、性善説対性悪説という二項対立的な把握を意識しすぎているのではないか、と思えました。もっとも、某東洋史研究者によると、いわゆる諸子百家の時代の性善説と性... ...続きを見る

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2015/12/05 00:00
渡邊大門編『家康伝説の嘘』
 これは11月28日分の記事として掲載しておきます。柏書房より2015年11月に刊行されました。さすがに徳川家康のことともなると、大まかな事績を知っているのですが、この十数年間、戦国時代〜江戸時代初期についての勉強が停滞しており知識が古くなっていそうなので、近年の研究成果を大まかにまとめて把握できるのではないかと思い、読んでみました。本書は4部構成で、各部は複数の論考から構成されています。家康について一般層も関心を持ちそうな問題を広範に取り上げているのが本書の特徴で、内容は充実していると思います... ...続きを見る

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2015/11/28 00:00
平山優『真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実』
 これは11月25日分の記事として掲載しておきます。角川選書の一冊として、角川学芸出版より2015年10月に刊行されました。著者は来年(2016年)の大河ドラマ『真田丸』の時代考証担当者の一人です。真田信繁については基本的な知識もあやふやなので、来年の大河ドラマの予習の意味にもなると思い、読んでみました。本書は、史料的制約のあるなか、信繁の生涯を詳しく検証しており、信繁の伝記として長く参照されることになるでしょう。私も得るところが多々ありました。史料的制約のため、信繁の事績・評価については確定で... ...続きを見る

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2015/11/25 00:00
小林登志子『文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2015年6月に刊行されました。本書は、現代世界の「標準」たる西洋「文明」の起源はメソポタミアにある、との認識に基づき、シュメルを中心にメソポタミアの古代「文明」について解説しています。副題にもあるように、ローマ帝国や日本への言及も多く、古代ギリシアの事例も度々取り上げられています。 ...続きを見る

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2015/11/18 00:00
ブライアン・ウォード=パーキンズ『ローマ帝国の崩壊 文明が終わるということ』第4刷
 これは11月13日分の記事として掲載しておきます。ブライアン・ウォード=パーキンズ(Bryan Ward-Perkins)著、南雲泰輔訳で、白水社より2014年9月に刊行されました。第1刷の刊行は2014年6月です。原書の刊行は2005年です。ローマ帝国が衰退・崩壊し、古代は終焉して暗黒の中世が始まった、との見解は今でも一般では根強いようです。これまで、ローマ帝国の衰退・崩壊には大きな関心が寄せられており、本書でも取り上げられているように、ある研究者によると、ローマ帝国の衰退の要因は210通り... ...続きを見る

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2015/11/13 00:00
ベルトラン=ランソン『古代末期 ローマ世界の変容』
 これは11月5日分の記事として掲載しておきます。ベルトラン=ランソン(Bertrand Lan&#231;on)著、大清水裕・瀧本みわ訳で、文庫クセジュの一冊として、白水社から2013年7月に刊行されました。原書の刊行は1997年です。「古代末期」との概念は、現代日本社会において私のような門外漢にも浸透しつつあるのではないか、と思います。古代末期という概念では、西ヨーロッパにおけるローマ帝国の衰退・滅亡による断絶を強調するのではなく、文化・心性の連続性を強調し、古代から中世への長期にわたる移行... ...続きを見る

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2015/11/05 00:00
Daniel E. Lieberman『人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病』上・下
 ダニエル=リーバーマン(Daniel E. Lieberman)著、塩原通緒訳で、早川書房より2015年9月に刊行されました。原書の刊行は2013年です。人類は現在の主要な環境にじゅうぶん適応していたわけではなく(ミスマッチ)、それが腰痛や糖尿病など以前にはあまり(もしくはほとんど)見られなかった現代人のさまざまな健康問題を惹起している、というのが本書の基本的な視点です。交通機関の発達・椅子に長時間座ること・糖分などの過剰摂取(栄養過多)といった、多くの現代人にとっての環境は、人類史のうえでご... ...続きを見る

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2015/10/28 00:26
鶴間和幸『人間・始皇帝』
 これは10月18日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2015年9月に刊行されました。始皇帝の伝記となると『史記』が基本となり、もちろん本書でもそれは同様なのですが、20世紀第4四半期以降に相次いで発見された出土文献の研究成果を多く取り入れていることが、本書の特徴となっています。それら出土文献の多くは同時代史料であり、『史記』の記述・歴史観に新たな情報を付け加えるとともに、修正することも少なからずあるので、秦漢史の研究の進展に大きく貢献しているようです。 ... ...続きを見る

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2015/10/18 00:00
篠田謙一『DNAで語る日本人起源論』
 岩波現代全書の一冊として、岩波書店より2015年9月に刊行されました。本書は遺伝学の研究成果に基づく日本人形成論です。本書の特徴は、一般読者を想定した丁寧な解説です。遺伝学に基づく人類進化の研究に関する基本的な事柄が丁寧に解説されていますし、現時点での研究成果の限界も言及されているので、良心的だと思います。この点は、8年前の著者の一般向け著書(関連記事)と同様です。本書は、その後大きく進展した人類進化に関する遺伝学的な諸研究成果を取り入れ、体系的に読める遺伝学的な日本人形成論としては最新のもの... ...続きを見る

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2015/10/13 00:00
井上文則『軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡』
 講談社選書メチエの一冊として、講談社より2015年5月に刊行されました。本書は、軍人皇帝時代にローマ帝国の支配の様相が変容したことを論じ、西ローマ帝国の滅亡までを取り上げています。本書の特徴は、ローマ帝国の変容・衰退を時代の近い漢王朝やもっと広く中華地域の変容と比較し、ローマ帝国の変容・衰退の性格を論じていることです。どの学問分野でも細分化が進むなか、こうした壮大な比較は勇気の必要なことでしょうが、意義のあることだとも思います。 ...続きを見る

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2015/10/05 00:00
大塚柳太郎『ヒトはこうして増えてきた 20万年の人口変遷史』
 これは9月28日分の記事として掲載しておきます。新潮選書の一冊として、新潮社から2015年7月に刊行されました。本書は、この20万年間の人口史を検証しています。人口とはいっても、対象となる人類は基本的に現生人類(Homo sapiens)のみです。本書はこの20万年間を4段階に区分しています。第1段階は、人類がまだ起源地のアフリカに留まっていた期間です。第2段階は、人類がアフリカから世界へと拡散していった期間です。125000年前頃のレヴァントへの進出にも言及されていますが、本格的な世界への拡... ...続きを見る

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2015/09/28 00:00
青木健『マニ教』
 これは9月18日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2010年11月に刊行されました。著者の他の著書『古代オリエントの宗教』を以前このブログで取り上げたことがありますが(関連記事)、その後再読して、マーニー教(マニ教)についての解説も含めて改めて面白いと思いましたし、マーニー教はシンクレティズムの時代においても際立っているように思えて興味を持っていたので、本書も読んでみました。著者の他の著書では、『アーリア人』もこのブログで取り上げています(関連記事)。 ... ...続きを見る

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2015/09/18 00:00
青木健『アーリア人』
 講談社選書メチエの一冊として、講談社より2009年5月に刊行されました。著者の他の著書『古代オリエントの宗教』を以前このブログで取り上げたことがありますが(関連記事)、その後再読して改めて面白いと思ったので、本書も読んでみました。本書の定義する「アーリア人」とは、インド・ヨーロッパ語族のうちインド・イラン系を指します。本書はおもに、そのうちイラン系を取り上げています。本書はこの「イラン系アーリア人」を、さらに中央アジアを中心とする範囲の騎馬遊牧民と、中央アジアのオアシス地帯やイラン高原の定住民... ...続きを見る

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2015/09/13 00:00
南川高志『ローマ五賢帝 「輝ける世紀」の虚像と実像』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より1998年1月に刊行されました。昨年(2014年)1月に本書は文庫化されているので(講談社学術文庫)、おそらくは増補・改訂・解説のあるだろう文庫版を読む方がよいのでしょうが、新書版を安価に入手できたので、こちらを読むことにしました。著者には『新・ローマ帝国衰亡史』という著書もあり(関連記事)、五賢帝の後のローマ帝国の衰亡を検証しています。同書では、ローマ帝国が衰亡へと向かう転機は五賢帝の時代の終焉ではなく、コンスタンティヌス1世の時代とされています。 ... ...続きを見る

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2015/09/05 00:00
『第二次世界大戦―あんな話こんな話』
 文春文庫の一冊として、ジェイムズ=ダニガン(James F. Dunnigan)、アルバート=ノーフィ(Albert A. Nofi)著、大貫昇訳で、文藝春秋社より1995年6月に刊行されました。第二次世界大戦にまつわるさまざまな話題が取り上げられていますが、戦前や戦後の話も多少触れられています。米国海軍ではアイスクリームがたいへん人気で行列ができるくらいだったとか、米軍第3艦隊司令長官のハルゼー(William Frederick Halsey)はその行列でしっかりと順番を守っており、上官優... ...続きを見る

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2015/08/28 00:00
日本史史料研究会編『秀吉研究の最前線 ここまでわかった「天下人」の実像』
 歴史新書の一冊として洋泉社より2015年8月に刊行されました。本書は、昨年(2014年)同じく日本史史料研究会の編纂で刊行された『信長研究の最前線 ここまでわかった「革新者」の実像』(関連記事)の続編と言えそうです。本書は4部構成で、各部は複数の論考から構成されています。本書で提示された見解のなかには、すでに他の一般向け書籍で知ったものもありましたが、豊臣秀吉についての近年の研究動向を手軽に知ることができ、たいへん有益だと思います。本書もたいへん面白かったので、次は徳川家康についても同様の新書... ...続きを見る

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2015/08/18 00:00
筒井清忠編『昭和史講義─最新研究で見る戦争への道』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2015年7月に刊行されました。現代日本社会において昭和史への関心は高く、毎年多くの一般向け書籍が刊行されています。しかし、そうした書籍のなかには、現在の研究水準では否定されている見解がいまだに提示されているなど、問題のあるものも多いので、第一線の研究者たちによる一般向けの昭和史を企画した、とのことです。一般向けの昭和史に問題のあるものが少なくない一因として、昭和史の研究は細分化されていて、専門家の間でさえ、分野・時代が多少ずれると、最新の研究成果が共有され... ...続きを見る

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2015/08/05 00:07
亀田俊和『高師直 室町新秩序の創造者』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2015年8月に刊行されました。めったに歴史文化ライブラリーを入荷することのない近所の書店に置いてあったので、遠回りせずに購入できたのは幸いでした。著者の前著『南朝の真実 忠臣という幻想』(関連記事)が好評だったということでしょうか。高師直は、蘇我入鹿・道鏡・梶原景時・吉良上野介などと並ぶ、日本史上の悪役というか嫌われ者ではないか、と思います。 ...続きを見る

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2015/07/28 00:00
渡邊大門編『真実の戦国時代』
 柏書房より2015年6月に刊行されました。この十数年間、戦国時代についての勉強が停滞しているので、近年の研究成果を大まかにまとめて把握できるのではないかと思い、読んでみました。本書は5部構成で、各部は複数の論考から構成されています。戦国時代の諸問題について広範に取り上げているのが本書の特徴で、内容は充実していると思います。戦国時代に関心があり、深く知りたいと思う一般層にとって格好の入門書になっている、と言えそうです。以下、各論考について簡潔に備忘録的に述べていきます。 ...続きを見る

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2015/07/18 00:00
スヴァンテ=ペーボ『ネアンデルタール人は私たちと交配した』
 スヴァンテ=ペーボ(Svante P&#228;&#228;bo)著、野中香方子訳、更科功解説で、文藝春秋社より2015年6月に刊行されました。原書の刊行は2014年です。本書は、古生物のDNA(古代DNA)研究の第一人者とも言うべきペーボ博士の自伝であり、古代DNA研究史にもなっています。中心的な話題はネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)のDNA解析と、現生人類(Homo sapiens)がネアンデルタール人のDNAを継承しているのか、ということであり、その間の苦... ...続きを見る

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2015/07/05 00:00
石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2015年6月に刊行されました。本書は、第一次世界大戦後〜第二次世界大戦での敗北までのドイツにおいて、ナチスがどのように台頭して政権を掌握し、ドイツ社会をナチス化していったのか、ということを解説しています。表題にあるように、本書はヒトラーの動向を中心にこの間のドイツ史を検証しているのですが、それは、ナチスの動向・政策はヒトラーの個性抜きにはあり得ず、ヒトラーによるカリスマ支配が貫徹していた、との認識に基づいています。 ...続きを見る

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2015/06/28 00:00
Juan Luis Arsuaga Ferreras『ネアンデルタール人の首飾り』
 フアン=ルイス=アルスアガ(Juan Luis Arsuaga Ferreras)著、藤野邦夫訳、岩城正夫監修で、新評論より2008年11月に刊行されました。原書の刊行は1999年です。本書のことは以前から知っていたのですが、原書の刊行が1999年と古いので、長い間読むのをためらっていました。訳者あとがきによると、本書の底本は2002年刊行の英語版で、2002年刊行のフランス語版も参考にしているそうです。翻訳自体は2002年に完了していたそうですが、著者のエージェントとなかなか連絡がつかず、出... ...続きを見る

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2015/06/18 00:00
片山一道『骨が語る日本人の歴史』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2015年5月に刊行されました。本書は「日本人」の形成過程を人骨から検証しています。日本列島における旧石器時代(更新世)の人骨はきわめて少なく、保存状況が良好な港川人にしても、「縄文人」と類似しているという以前の通説とは異なり、「縄文人」とは似ておらず、その祖先集団ではなかっただろう、との見解が近年では有力となっています。本書は更新世の日本列島の人類の起源に関しては慎重な姿勢を示しており、この時代の日本列島は「吹きだまり」だったのではないか、との見解を提示し... ...続きを見る

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2015/06/05 00:00
岩明均『ヒストリエ』第9巻発売(講談社)
 待望の第9巻が刊行されました。実に1年9ヶ月振りの新刊となります。第8巻は、マケドニア軍の遠征に加わっていたエウメネスが、マケドニアの首都のペラに帰還するところで終了しました。第9巻は、エウメネスがエウリュディケと一晩を過ごし、起床する場面から始まります。遠征前からなのか、明示されていませんが、ともかくエウメネスとエウリュディケとの間には肉体関係があるようです。エウリュディケがまだ眠っているなか、エウメネスは居候先でエウリュディケの叔父である将軍のアッタロスとの会話を想起します。 ...続きを見る

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2015/05/28 00:00
伊藤之雄『伊藤博文 近代日本を創った男』
 講談社学術文庫の一冊として、講談社より2015年3月に刊行されました。本書は、2009年に講談社より刊行された同名書を原本としています。本書を読んで改めて、伊藤博文の生涯をたどることは、明治時代の政治史の要点を抑えることでもあるのだな、と思ったものです。伊藤の伝記なので、当然のことながら伊藤視点の叙述なのですが、私のような門外漢にとっては、幕末〜明治時代の政治史の復習にも適していると思います。 ...続きを見る

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2015/05/18 00:00
Christopher Boehm『モラルの起源―道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか』
 クリストファー=ボーム(Christopher Boehm)著、斉藤隆央訳、長谷川眞理子解説で、白揚社より2014年11月に刊行されました。原書の刊行は2012年です。本書は、人間の道徳・良心・(血縁者だけではなく、非血縁者をも対象とするような)利他的行動がどのように獲得されてきたのか、進化史的観点から検証しています。利他的行動は人間に限らず多くの動物種で見られますが、道徳・良心(たとえば、赤面するといった恥じ入る行動)は人間にとって現生の近縁種となるボノボやチンパンジーにも見られず、人間に特... ...続きを見る

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2015/05/05 00:00
Dario Maestripieri『ゲームをするサル 進化生物学からみた「えこひいき」の起源』
 ダリオ=マエストリピエリ(Dario Maestripieri)著、河合信和訳で、雄山閣より2015年3月に刊行されました。原書の刊行は2012年です。本書は、自然淘汰が現代人の行動に影響を及ぼしている、という見解を前提として、人間の社会行動が進化的に選択されてきたものであることを解説しています。社会行動はある程度遺伝子に支配され、自然淘汰によって進化したのであり、現代人の多くは技術的に発達した産業社会で暮らしているとしても、その社会行動の大半は、数百万年前に進化したのと同じ問題に適応し、それ... ...続きを見る

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2015/04/28 00:00
西秋良宏編『ホモ・サピエンスと旧人3─ヒトと文化の交替劇』
 六一書房より2015年3月に刊行されました。2010〜2014年にかけて、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究として「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」が行なわれることは、このブログでも以前取り上げました(関連記事)。この研究計画には公式サイトが設置されており、さまざまな情報が公開されています。 ...続きを見る

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2015/04/18 00:00
戸川点『平安時代の死刑 なぜ避けられたのか』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2015年3月に刊行されました。平安時代には薬子の変から保元の乱までの350年近く死刑が執行されなかった、との見解は広く知られているように思います。本書は、すっかり通俗的になったとも言えるこの見解を検証していきます。まず本書は、律令制における刑罰について解説し、次に死刑が執行されないようになったとされる嵯峨朝の刑罰について検証していきます。 ...続きを見る

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2015/04/05 00:00
岡本隆司『袁世凱─現代中国の出発』
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2015年2月に刊行されました。本書は、日本でも中国でも未だに評判の悪い袁世凱を取り上げています。本書によると、清末民初の時代背景はかなり詳細に解明されつつあり、袁世凱の再評価も進んでいるそうです。しかし、悪評に満ちたじゅうらいの袁世凱像に替わる的確な人物像が新たに提示されているのかというと、そうではない、と本書は指摘します。本書の狙いは、現時点での研究水準に即して新たな袁世凱像を提示することにあり、辛亥革命以前の比重が高いのが特徴となっています。 ... ...続きを見る

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2015/04/01 00:00
落合淳思『殷 中国史最古の王朝』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2015年1月に刊行されました。本書は、『史記』などの後世の文献ではなく、同時代の甲骨文字を重視して殷王朝の実態を解明していこうとします。『史記』などの後世の文献による物語的な殷王朝史・殷周交代史でまず歴史に馴染んだ私からすると、本書の叙述にはどこかで違和感が残ります。とはいえ、成人以降に何冊か一般向け概説書を読んでいたので、受け入れられないというほどの違和感ではありませんし、専門家による新書が本書のような方針で執筆されるのは、基本的には歓迎すべきだろう、... ...続きを見る

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2015/03/28 00:00
木畑洋一『二〇世紀の歴史』
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2014年9月に刊行されました。本書は、ホブズボーム(Eric John Ernest Hobsbawm)氏の提唱した有名な「短い20世紀」論を意識しつつ、「長い20世紀」という視点から20世紀を把握しています。具体的には、1870年代から1990年代初頭までが対象となっています。帝国主義世界体制の構造が確立し、それが崩壊していった時代を「長い20世紀」として把握しよう、というのが本書の視点です。その終点の象徴が、南アフリカにおけるアパルトヘイト体制の... ...続きを見る

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2015/03/17 00:00
勝浦令子『孝謙・称徳天皇 出家しても政を行ふに豈障らず』
 ミネルヴァ日本評伝選の一冊として、ミネルヴァ書房より2014年10月に刊行されました。本書は、孝謙(称徳)天皇の誕生前の政治状況・皇位継承問題にも触れ、孝謙天皇がいかなる政治的立場で即位し、政治を運営していったのか、解説しています。即位前にもそれなりに分量が割かれており、皇太子(現時点では日本史上唯一の女性皇太子です)となった経緯や、どのような環境で育ち、どのような価値観を形成していったのか、解説されています。 ...続きを見る

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2015/03/10 00:00
板橋拓己『アデナウアー 現代ドイツを創った政治家』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2014年5月に刊行されました。本書はアデナウアーの伝記ですが、ドイツ第二帝政の成立した5年後に生まれ、1967年に死去した政治家アデナウアーの伝記となると、第二帝政→ヴァイマル体制→ナチス体制→西ドイツという、二度の世界大戦も含む激動のドイツ近現代史と大きく重なります。本書は、政治家アデナウアーの伝記であり、アデナウアーを軸とするドイツ近現代史にもなっています。ただ、やはり第二次世界大戦後の分量が多く(第2章〜第4章)、それ以前は簡潔な解説となっています... ...続きを見る

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2015/03/05 00:00
倉本一宏『平安朝 皇位継承の闇』
 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2014年12月に刊行されました。本書は、「暴虐」や「狂気」と語られる平安時代の4人の天皇(平城・陽成・冷泉・花山)について、それぞれの皇統問題と政治状況の考察から、その「狂気」の実態を解明していきます。本書は、これら4人の天皇は当時の基準からしても「狂って」いたわけではなく、その「狂気」を伝える史料は多分に政治的色彩が濃かったのであり、そこには「嫡流」ではなかったのに「嫡流」となった者(の子孫たち)による正当化がある、と指摘します。 ...続きを見る

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2015/03/01 00:00
Marlene Zuk『私たちは今でも進化しているのか?』
 マーリーン=ズック(Marlene Zuk)著、渡会圭子訳、垂水雄二解説で、文藝春秋社より2015年1月に刊行されました。原書の刊行は2013年です。本書を貫く基調の一つは、人間も含めて生物は進化史のある時点で完璧に環境に適応したことはないのであり、進化の過程で獲得した特徴には完璧からは程遠く妥協的なところも多分にあった、というものです。ある環境(条件)に有利な特徴が、別の環境では不利に働くということは珍しくなく、トレードオフ(交換条件)は進化においてありふれている、とも指摘されています。 ... ...続きを見る

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2015/02/23 00:00
飯田洋介『ビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2015年1月に刊行されました。本書は、ドイツ建国の英雄と称賛されたことも、ヒトラーの先駆者と断罪されたこともあるビスマルクの伝記です。本書は、そうした賞賛と断罪から距離を置き、一人の人間・政治家としてビスマルクを把握する近年の研究動向を踏まえ、ビスマルクの二面性に着目して、その等身大の姿に迫ろうとしています。「鉄血宰相」などさまざまな「神話」に彩られているビスマルクの「脱神話化」を企図している、というわけです。 ...続きを見る

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2015/02/12 00:00
Steven Pinker『暴力の人類史』上・下
 スティーブン=ピンカー(Steven Pinker)著、幾島幸子・塩原通緒訳で、青土社より2015年2月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。本書は、広範な分野の研究成果と膨大なデータを参照し、人類史において暴力が減少する傾向にあることを指摘して、その傾向をもたらした要因について検証しています。大部の本書で提示された論点は多岐に亘り、その洞察は深いと言えるでしょう。著者の学識と努力には敬意を払わねばならず、人類の暴力について考察するにさいして、本書は長きにわたって必読文献となり、後には... ...続きを見る

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2015/02/10 00:00
Thomas Suddendorf『現実を生きるサル 空想を語るヒト』
 トーマス=ズデンドルフ(Thomas Suddendorf)著、寺町朋子訳で、白揚社より2015年1月に刊行されました。本書は、人間と他の動物を隔てる「ギャップ」は何か、ということを検証します。本書は、人間と他の動物とのギャップは心(知的能力)にあるとし、さまざまな分野での先行研究を引用し、再検証しています。具体的には、言語や先見性や文化や道徳性などです。そうした比較では、人間と他の動物、とくに現生種では人間と最も近縁な大型類人猿(その中で最も人間と近縁なのがチンパンジーとボノボ)がよく取り上... ...続きを見る

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2015/01/23 00:00
西秋良宏編『ホモ・サピエンスと旧人2─考古学からみた学習』
 六一書房より2014年12月に刊行されました。2010〜2014年にかけて、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究として「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」が行なわれることは、このブログでも以前取り上げました(関連記事)。この研究計画には公式サイトが設置されており、さまざまな情報が公開されています。 ...続きを見る

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2015/01/12 00:00
吉川浩満 『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』初版第2刷
 朝日出版社より2014年12月に刊行されました。初版第1刷の刊行は2014年10月です。生物種の大半は絶滅してきた、との冒頭の指摘を読み、絶滅という視点からの進化史・進化学解説なのかと思ったら、科学哲学史・思想史的な解説が主題になっており、これは予想外でした。本書の特徴は、なぜ非専門家の一般層は進化論を誤解するのか、専門家同士の論争(とくに適応主義をめぐる論争)における「敗者」の躓きの要因は何だったのか、という「否定的側面」から進化論の魅力・有効性を解説していることです。いわば逆説的な進化論解... ...続きを見る

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2015/01/10 00:00
吉村武彦『シリーズ日本古代史2 ヤマト王権』第4刷
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2011年1月に刊行されました。第1刷の刊行は2010年11月です。本書は、ヤマト王権の成立から6世紀末の崇峻の暗殺までを対象としますが、ヤマト王権成立の前提として、『漢書』や『三国志』に見える倭の情勢にも1章を割いて言及しています。本書は、ヤマト王権の初代の王は崇神(ミマキイリヒコイニヱ)であり、宮内庁が比定するようにその陵墓は行燈山古墳だろうから、行燈山古墳が築造されたと推定される4世紀前半にヤマト王権は成立した、との見解を提示しています。 ...続きを見る

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2014/12/23 00:06
石川日出志『シリーズ日本古代史1 農耕社会の成立』第3刷
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2010年12月に刊行されました。第1刷の刊行は2010年10月です。本書は、日本列島に人類が移住してきてから、弥生時代が終わって古墳時代が始まるところまでを対象としています。後期旧石器時代よりも前の日本列島における人類の痕跡については、まだ確実な証拠はないとして、存否の判断は保留されています。古墳時代は、定型的な大型前方後円墳の築造が始まってからとされています。 ...続きを見る

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2014/12/15 00:00
坂野潤治『日本近代史』第10刷
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2013年2月に刊行されました。第1刷の刊行は2012年3月です。本書は、1857年〜1937年の80年間を対象とし、日本における近代国家の形成と展開を論じています。新書としてはかなり分厚く、読みごたえがありました。本書の特徴は、日本近代史を6段階に区分していることです。改革期(公武合体、1857年〜1863年)→革命期(尊王倒幕、1863年〜1871年)→建設期(殖産興業、1871年〜1880年)→運用期(明治立憲制、1880年〜1893年)→再編期(大正... ...続きを見る

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2014/12/12 00:00
門脇誠二『ホモ・サピエンスの起源とアフリカの石器時代 ムトングウェ遺跡の再評価』
 名古屋大学博物館より2014年3月に刊行されました。著者の門脇様がわざわざ送ってくださったので、読むことができました。この場を借りまして、改めてお礼申し上げます。本書は、名古屋大学博物館において2014年3月4日〜2014年7月12日にかけて開催された特別展「人類史上画期的な石器―名大のアフリカ考古学と南山大の旧石器コレクション―」の関連図書とのことです。 ...続きを見る

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2014/12/08 00:00
小島毅『増補 靖国史観 日本思想を読み直す−幕末維新という深淵』第2刷
 ちくま学芸文庫の一冊として、筑摩書房より2014年8月に刊行されました。第1刷の刊行は2014年7月です。本書は2007年にちくま新書の一冊として筑摩書房より刊行された『靖国史観−幕末維新という深淵』の増補となります。同書については以前このブログで取り上げました(関連記事)。本書の第1章〜第3章は同書の修正で、第4章は書き下ろしとなります。解説は気鋭の歴史学者で論壇においてもよく見かける與那覇潤氏です。 ...続きを見る

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2014/12/02 00:00
松本佐保『バチカン近現代史 ローマ教皇たちの「近代」との格闘』再版
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2013年7月に刊行されました。初版の刊行は2013年6月です。バチカンについては、学術系の一般書よりも娯楽作品で接することの方がずっと多く、また近現代のバチカンについては、さまざまな雑誌・書籍などで断片的に知っているだけであり、まとまった本を読んだことがなかったので、本書を読んでみました。 ...続きを見る

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2014/11/28 00:00
武田善憲『ロシアの論理 復活した大国は何を目指すか』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2010年8月に刊行されました。著者は(本書刊行時点では)現役の外務省の職員です。本書刊行時のロシアは、メドヴェージェフ大統領・プーチン首相という政治体制でした。現在では、大統領と首相が入れ替わっています。ソ連崩壊後の1990年代の低迷・混乱期を経て、21世紀になってロシアは大国として復活した、とよく言われるように思いますし、私もそのように考えています。 ...続きを見る

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2014/11/23 00:00
佐々木克『幕末史』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2014年11月に刊行されました。本書は第1章〜第5章にかけていわゆる幕末史(ペリー来航から王政復古まで)を、第6章で明治時代前半(大日本帝国憲法の発布まで)を扱っており、新書としてはかなりの分厚さになっています。本書は基本的に政治史を扱っており、経済史への言及はきわめて少なく、文化史・思想史への言及はほぼ皆無となっています。この点は残念でしたが、重要人物の個性が鮮やかに描き出されており、単に勉強になるというだけではなく、読み物としてなかなか面白くなっている... ...続きを見る

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2014/11/19 00:00
義江明子『日本史リブレット人006 天武天皇と持統天皇 律令国家を確立した二人の君主』
 山川出版社より2014年6月に刊行されました。本書は、天武天皇と持統天皇の二代にわたって、どのように律令国家が形成されていったのか、近年の研究成果も取り入れつつ、簡潔に解説しています。分量はさほど多くなく、きわだって目新しい見解が提示されているわけではありませんが、地方行政・宗教政策・氏族再編・皇位継承・史書編纂など、国家制度が天武・持統の二代(およびその前後の時代)にわたって整備されていく様が、簡潔かつ丁寧に解説されていると思います。律令国家の形成について基本的な知識・流れを把握するうえで、... ...続きを見る

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2014/11/15 00:00
服部龍二『日中国交正常化 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦』第3版
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2012年1月に刊行されました。初版の刊行は2011年5月です。本書は、田中角栄・大平正芳・外務省の動向を中心に、国内の政治情勢と国際情勢を踏まえつつ、日中共同声明へといたる日中の交渉を検証しています。よく言われることですが、外交問題には内政問題としての側面が多分にあります。本書もそうした側面を協調しており、田中など政治家が国内政局に注意を払っていたことがよく分かります。 ...続きを見る

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2014/11/12 00:00
山田雄司『怨霊とは何か 菅原道真・平将門・崇徳院』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2014年8月に刊行されました。本書は怨霊について、相手側から弾圧されたことなどにより追い込まれて非業の死を遂げ、その後に充分な供養がなされなかった霊魂が、死後に自己の宿願を叶えるために、自分を追い落とした人物に祟って出たり、社会全体に災害を発生させたりした、と把握しています。怨霊的な観念は文献で確認できる前から存在したのであり、国家と関わる形で怨霊が明確に登場するのは長屋王からだ、と本書は指摘します。 ...続きを見る

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2014/11/04 00:00
荒木敏夫『敗者の日本史4 古代日本の勝者と敗者』
 『敗者の日本史』全20巻の第4巻として、2014年9月に吉川弘文館より刊行されました。表題からは、大友皇子・藤原広嗣・藤原仲麻呂・平城上皇といった古代史の政治的敗者が個別に取り上げられているのかな、と予想していたのですが、そうではありませんでした。本書は、大伴氏の動向を5世紀〜平安時代まで概観し、古代史において勝者の藤原氏とは対照的に敗者とされる大伴氏の事例から、古代氏族について考察しようとしています。 ...続きを見る

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2014/11/02 00:00
筒井清忠『敗者の日本史19 二・二六事件と青年将校』
 『敗者の日本史』全20巻の第19巻として、2014年8月に吉川弘文館より刊行されました。本書は、現在の研究水準での一般向け解説を強く意識しているように思います。そのため本書は、二・二六事件の研究史にも言及しています。本書は、二・二六事件の背景として、日本社会の動向(第一次世界大戦後の不景気・関東大震災・昭和恐慌などによる農村の窮乏と格差の問題)や、それと関連しての軍部の動向(第一次世界大戦後の軍縮による軍人の動揺や、第一次世界大戦を実見した軍人たちを中心とした総力戦的な国家体制への志向や、軍内... ...続きを見る

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2014/10/28 00:00
山田康弘『老人と子供の考古学』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2014年7月に刊行されました。縄文時代の墓制研究から、老人と子供に着目して縄文時代の社会を一般向けに再構成しようとした意欲作です。縄文時代の墓制研究について、その基礎と方法論、さらには限界と難しさが詳しく解説されており、有益だと思います。本書の特徴は、考古学のみならず人類学・民俗学の研究成果も取り入れ、北アメリカ大陸といった日本列島以外の事例も積極的に援用して縄文時代の社会を再構成しようとしていることで、著者の視野の広さ・博学が印象に残ります。... ...続きを見る

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2014/10/23 00:00
中野等『戦争の日本史16 文禄・慶長の役』
 吉川弘文館より2008年2月に刊行されました。本書は、文禄・慶長の役の期間のみならず、その後の日本・明・朝鮮の交渉と、日本・朝鮮間の「復交」までを対象としています。日本と明とは、文禄・慶長の役の後に通商関係は以前のように盛んとなりましたが、「国交回復」はなされませんでした。明の後に中華地域を支配したダイチングルン(大清帝国)と日本との間でも、明治時代になるまで「国交」は締結されず、通商のみが行なわれるという関係にとどまりました。 ...続きを見る

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2014/10/19 00:00
神田千里『織田信長』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2014年10月に刊行されました。本書は、これまでの信長像の見直しを提言しています。これまでの信長像とは、戦前であれば勤王家、戦後であれば、旧来の権威を打破し、画期的な政策を実行し、新たな秩序を樹立していく革新的・合理的な人物、というものです。こうした人物像は、その時代の価値観が反映されたものです。この問題については、このブログでも言及したことがあります(関連記事)。著者は専門家らしく堅実に、じゅうらいの信長像に疑問を呈していきます。 ...続きを見る

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2014/10/15 00:00
日本史史料研究会編『信長研究の最前線 ここまでわかった「革新者」の実像』
 歴史新書の一冊として洋泉社より2014年10月に刊行されました。織田信長は現代日本社会において一・二を争う人気の高い歴史上の人物です。その大きな理由として考えられるのは、信長は革新的な人物である、との認識が広く浸透していることです。信長の「強い革新性」が戦国時代研究の進展により否定されつつあるのに、一般向け書籍では依然として「超人的な信長像」が提示されており、信長はたいへん革新的な人物との認識が一般では主流であることから、そうした一般の認識を改めることを目的として、複数の執筆者による解説が14... ...続きを見る

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2014/10/12 00:00
Azar Gat『文明と戦争』上・下(再版)
 今日はもう1本掲載します。アザー=ガット(Azar Gat)著、石津朋之・永末聡・山本文史監訳、歴史と戦争研究会訳で、中央公論新社より2012年9月に刊行されました。初版の刊行は2012年8月です。原書の刊行は2006年です。本書は、歴史学・考古学・政治学・進化学など広範な見地から戦争について考察し、奥深い洞察を提示しています。著者の広い学識・視野と多大な努力には敬意を払わなければならないでしょう。戦争について考えるにあたって、本書は必読と言えるのではないかと思います。 ...続きを見る

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2014/10/08 00:00
上原善広『石の虚塔』
 新潮社より2014年8月に刊行されました。本書は『新潮45』の連載記事をまとめて加筆訂正したもののようで、その最終回だけは読み、このブログで取り上げたことがあります。 http://sicambre.at.webry.info/201302/article_26.html ...続きを見る

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2014/10/04 00:00
本村凌二『愛欲のローマ史』(追記有)
 講談社学術文庫の一冊として、2014年5月に講談社より刊行されました。本書の親本『ローマ人の愛と性』は、講談社現代新書の一冊として1999年に講談社より刊行されました。ローマ帝国は平和と繁栄のなかで飽食・性的放縦など堕落・退廃していき、それが滅亡の要因となった、との通俗的見解は今でも一般には根強いように思います。本書で重要な史料として取り上げられている諷刺詩からも、そのように解釈できるように思われます。しかし本書は、ローマ人の性愛意識・行動に関してそうした通俗的見解に疑問を呈し、変わったのはロ... ...続きを見る

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2014/10/02 00:00
竹岡俊樹『考古学崩壊 前期旧石器捏造事件の深層』
 勉誠出版より2014年9月に刊行されました。著者には『旧石器時代人の歴史 アフリカから日本列島へ』という著書もあり、以前このブログで取り上げました(関連記事)。著者は旧石器捏造事件の発覚前より捏造を指摘していたというか、旧石器捏造事件の発覚に重要な役割を果たし、いわば捏造発覚の起点になった研究者です。その著者が捏造発覚から十数年経過して改めて本書を執筆しようとした背景には、当事者の一人として感情を清算するのにそれだけ時間を要したということと、捏造事件を許してしまった日本の考古学界の問題点が、捏... ...続きを見る

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2014/09/28 00:00
渡部昇一、本村凌二『国家の盛衰─3000年の歴史に学ぶ』
 祥伝社新書の一冊として、祥伝社より2014年9月に刊行されました。本書は、序章で国家の繁栄と覇権の条件について包括的に述べた後、第1章〜第6章にかけて各国を個別に取り上げ、その盛衰を論じます。第1章はローマ(世界帝国の典型)、第2章はスペインとオランダ(海上覇権と貿易)、第3章はイギリス(工業技術による産業立国)、第4章はアメリカ(実験国家、人口国家の活力)、第5章は中国(覇権国家になりうるか)、第6章は日本(これから歩むべき道)です。各章の項目単位で二人の著者が相互に見解を述べていく対話形式... ...続きを見る

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2014/09/23 00:00
安野眞幸『教会領長崎』
 講談社選書メチエの一冊として、2014年6月に刊行されました。本書の特徴は、戦国時代の日本におけるイエズス会を「権門」として把握し、「適応主義」対「原則主義」というイエズス会の内部対立に着目するとともに、イエズス会の財政基盤となった南蛮貿易の実態を解明するために、地理的・年代的に広範な事例を参照していることです。また本書は、日本におけるイエズス会の動向をスペイン・ポルトガル連合王国の成立とも関連させて論じており、視野の広い一般向け書籍になっていると思います。 ...続きを見る

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2014/09/15 00:00
平山優『検証長篠合戦と武田勝頼』第2刷
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2014年9月に刊行されました。第1刷の刊行は2014年8月です。本書は、『敗者の日本史』全20巻の第9巻として2014年2月に吉川弘文館より刊行された『敗者の日本史9 長篠合戦と武田勝頼』の続編というか、同書にて紙幅の関係で割愛した論考を再構成したものです。同書と併せて本書を読むことで、長篠の戦いと武田勝頼に関する著者の見解がはっきりと見えてきますので、ともに読むことをお勧めします。『敗者の日本史9 長篠合戦と武田勝頼』については、以前このブロ... ...続きを見る

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2014/09/06 00:00
本村凌二『はじめて読む人のローマ史1200年』
 祥伝社新書の一冊として、祥伝社より2014年6月に刊行されました。本書は、ローマの建国から西ローマ帝国の滅亡までのおよそ1200年間を扱います。広範な時空間を新書一冊で扱うため、本書は工夫をしています。一つは、ローマ史を理解するうえで重要な鍵となる用語を最初に簡潔に解説していることです。具体的には、「S.P.Q.R」・ローマ法・父祖の遺風・パトロヌスとクリエンテテス・多神教と一神教です。これらの簡潔な解説により、ローマ史の特徴を浮かび上がらせています。 ...続きを見る

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2014/09/02 00:00
金子拓『織田信長<天下人>の実像』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2014年8月に刊行されました。本書は、対朝廷・天皇の観点から、信長の志向を検証しています。本書の背景には、領地支配・流通政策などにおいて、信長の革新性を見直すという戦国時代の研究動向があります。本書を読む前は、信長の領地支配・流通政策などについても、通俗的に語られている革新性を検証していくのかな、と期待していたのですが、それらの「考察はしかるべき時機にゆだねざるをえない」とのことで、正直なところこの点では残念でした。しかし、信長と朝廷・天皇との関係につい... ...続きを見る

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2014/08/23 00:00
横手慎二『スターリン』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2014年7月に刊行されました。ソ連の通史は何冊か読みましたが、スターリンの伝記を読んだことはなかったので、本書を読んでみました。本書の特徴は慎重というか禁欲的な叙述姿勢です。議論のある問題については、断定的な記述を避けようとする配慮が感じられますし、結論を最初にはっきりと決めたうえで、それに見合うような史料・出来事を都合よく引用するような姿勢に陥らないようにしよう、との配慮も窺えます。 ...続きを見る

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2014/08/15 00:00
中沢弘基『生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像』第2刷
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2014年6月に刊行されました。第1刷の刊行は2014年5月です。本書の特徴は、(地球)物理学・化学に基づき、地球誕生以降の分子単位での物質の変遷とエネルギーの動きを追うことで、生命誕生へと至る経緯を把握しようとしていることです。地球史の観点からの壮大な生命起源論となっており、困惑させられたところが少なくありません。ただ、生命は諸物質から構成されているわけですから、物理学・化学の観点からの生命起源論はある意味当然とも言えます。 ...続きを見る

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2014/08/06 00:00
井上寿一『第一次世界大戦と日本』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2014年6月に刊行されました。本書は、第一次世界大戦が日本に及ぼした影響と、その前後の期間の日本の変容について、外交・軍事・政治・経済・社会・文化の観点から解説しています。最初に本書は、日本では第一次世界大戦の当事者意識が乏しい、と指摘しています。これはもっともな指摘ですが、国内が戦場になったわけではなく、戦闘の規模が日清戦争と比較しても大きくなく、実質的な戦闘期間も短かったことから、仕方のないところもあると言えるでしょう。 ...続きを見る

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2014/08/02 00:00
木村靖二『第一次世界大戦』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2014年7月に刊行されました。今年は第一次世界大戦の勃発から100年ということで、日本でも第一次世界大戦に関する本がかなり刊行されているようです。第一次世界大戦の復習と、近年の見解を学べそうだということで、本書を読んでみました。本書は、大戦の原因・経過・その影響・意義などを、研究史にも触れつつ分かりやすく解説しており、門外漢が日本語で読める第一次世界大戦の通史として、たいへん優れていると思います。第一次世界大戦について門外漢が調べようと思ったら、まずは本書... ...続きを見る

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2014/07/30 00:00
平野聡『「反日」中国の文明史』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2014年7月に刊行されました。著者の他の著作では、『清帝国とチベット問題』(関連記事)と『興亡の世界史17 大清帝国と中華の混迷』(関連記事)を以前このブログにて取り上げています。本書は、政治思想と中国知識層の自己認識を中心に、中国を文明として把握してその歴史を概観し、中国の現状と日本との激しい対立の要因とを歴史的に探ろうとします。おもな対象となるのは近代以降(アヘン戦争以降)ですが、前近代にもそれなりの分量が割かれています。 ...続きを見る

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2014/07/23 00:00
井上寿一『山県有朋と明治国家』
 NHKブックスの一冊として、2010年12月に日本放送出版協会から刊行されました。伊藤之雄『山県有朋 愚直な権力者の生涯』(関連記事)との対比という観点からも読んでみました。本書は、『山県有朋 愚直な権力者の生涯』と比較して、個人の伝記というよりも、山県有朋を近代史に位置づけ、近代史像を提示するという性格が強くなっています。この本書の性格の前提として、帝国主義・軍国主義により歪められ遅れた近代日本社会(およびそこにおいて中心的役割を果たした要人の一人たる山県有朋)という日本近代史像と、官民が立... ...続きを見る

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2014/07/15 00:00
伊藤之雄『山県有朋 愚直な権力者の生涯』
 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2009年2月に刊行されました。新書としては異例の分量に驚かされました。そのため、新書でありながら、山県の伝記として一般層には充分な質量になっていると思います。山県が病気がちだったことや、明治初期には陸軍をなかなか掌握できず苦労したことや、何度か失脚の危機に遭ったことや、明治時代半ば頃までは伊藤博文と協調しつつ政治家として成長していったことなどが丁寧に描かれており、不勉強な私にとっては得たものが少なからずありました。 ...続きを見る

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2014/07/06 00:00
神田千里『戦争の日本史14 一向一揆と石山合戦』第3刷
 吉川弘文館より2012年4月に刊行されました。第1刷の刊行は2007年10月です。本書は通俗的な一向一揆像とは異なる見解を提示しています。一向一揆は、江戸時代における本願寺教団の東西分裂という状況のなか、それぞれの立場の人々に都合よく語られてきた伝承によって、当時の実情とは異なった印象が形成されており、近代以降の歴史学も、そうした印象を必ずしも払拭できなかったばかりか、その時々の潮流に沿って実情とは異なる歴史観を強化することさえあった、というのが本書の見通しです。 ...続きを見る

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2014/07/02 00:00
本村凌二『世界史の叡智 悪役・名脇役篇 辣腕、無私、洞察力の51人に学ぶ』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2014年5月に刊行されました。歴史上の人物を取り上げて、その叡智を読者に紹介するという趣旨で産経新聞に連載されていた「世界史の遺風」の書籍化となります。この連載は2年間続き、前半が昨年刊行された『世界史の叡智 勇気、寛容、先見性の51人に学ぶ』(関連記事)として、後半が本書として書籍化されたわけです。なお、『世界史の叡智 勇気、寛容、先見性の51人に学ぶ』と同じく、本書も書籍化にあたり加筆されているそうです。 ...続きを見る

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2014/06/15 00:00
亀田俊和『南朝の真実 忠臣という幻想』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2014年6月に刊行されました。ネットで評判になっていたので、読んでみました。めったに歴史文化ライブラリーを入荷することのない近所の書店に置いてあったので、渋谷・新宿・池袋にまで出かけたり立ち寄ったりすることなく購入できたのは幸いでした。評判がよいということで、入荷されたのでしょうか。本書は、今でも一般には根強いかもしれない、南朝の構成員の方が北朝のそれより道徳的にはるかに優れている、との歴史認識を検証しています。戦後の一般向け通史などでも、北朝... ...続きを見る

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2014/06/06 00:00
仲野徹『エピジェネティクス―新しい生命像をえがく』
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2014年5月に刊行されました。近年大いに注目されているエピジェネティクスについて、一度基礎知識をしっかりと学ぼうと思い、読んでみました。本書によると、近年におけるエピジェネティクスについての最大公約数的な定義は、「エピジェネティックな特性とは、DNAの塩基配列の変化をともなわずに、染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型である」とのことです。エピジェネティック修飾による遺伝子発現制御の基礎は、 (1)ヒストンがアセチル化をうけ... ...続きを見る

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2014/05/30 00:00
右田裕規『天皇制と進化論』
 青弓社より2009年3月に刊行されました。本書は、近代日本社会における進化論の受容およびそれに伴う軋轢を、天皇制との関係を軸に概観します。なお、以下の進化論とはダーウィンの生物進化論のことで、スペンサー流の社会進化論を含みません。また、本書では皇国史観という用語が近代日本の大半の期間を対象として使われているのですが、これは皇国史観もしくはそれと通ずるような大日本帝国の根本的な体制を支える歴史概念・言説と解釈するのがよいように思います。この記事では、本書の用例にしたがい、基本的には皇国史観で統一... ...続きを見る

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2014/05/18 00:00
今正秀『敗者の日本史3 摂関政治と菅原道真』
 『敗者の日本史』全20巻の第3巻として、2013年10月に吉川弘文館より刊行されました。地方支配を中心に国家統治の在り様の大きく変わった9〜10世紀について、「勝者」たる揺籃期の摂関政治と絡めつつ、敗者たる菅原道真を中心に描き出した一冊になっています。ただ本書は、道真と摂関政治というか基経・時平に代表される藤原氏北家とを対立的に把握しているわけではありません。つまり、門閥貴族による政治ではなく文人政治を構想した道真が藤原氏の政治力に敗れ去った、という歴史認識は妥当ではない、というわけです。また... ...続きを見る

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2014/05/04 00:00
廣瀬憲雄『古代日本外交史』
 まだ日付は変わっていないのですが、4月21日分の記事として2本掲載しておきます(その二)。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2014年2月に刊行されました。本書はまず、古代日本外交の研究の学説史を整理します。冊封体制論は中華王朝と周辺王朝との君臣関係から導き出されたことに起因する問題点を抱えている、と本書は認識しています。そこで本書は、近年の日本史・東洋史の研究動向を踏まえ、中華王朝と周辺王朝の君臣関係に限定されない「国際関係」史を検証・考察します。 ...続きを見る

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2014/04/21 00:00
『人類進化700万年の物語』
 今日は3本掲載します(その二)。チップ=ウォルター著、長野敬・赤松眞紀訳で、2014年4月に青土社より刊行されました。原書の刊行は2013年です。表題からは、人類の進化を年代順に物語風に解説した一冊なのかと予想していたのですが、そうした側面もあるものの、基本的には予想とは異なる構成になっていました。本書は、ネオテニー・脳と学習・進化心理学・言語・性選択・創造力・認知能力といった主題ごとに人類進化を考察する、という性格の強い一冊になっています。科学ジャーナリストの執筆した一般向け書籍としては、や... ...続きを見る

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2014/04/18 00:00
印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷
 今日は3本掲載します(その一)。臨川書店より2014年1月に刊行されました。初版第1刷の刊行は2013年3月です。本書は国立民族学博物館の共同研究「人類の移動誌─進化的視点から」の成果をまとめた論文集です。この共同研究には、霊長類学・考古学・言語学・分子遺伝学・形態人類学・文化人類学・生態人類学など多様な分野から研究者が参加しています。この共同研究の成果をまとめたより一般向けの本として『人類大移動 アフリカからイースター島へ』があり、以前このブログで取り上げたことがあります(関連記事)。本書も... ...続きを見る

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2014/04/18 00:00
『人類の進化 拡散と絶滅の歴史を探る』
 バーナード=ウッド著、馬場悠男訳で、サイエンス・パレットの一冊として丸善出版より2014年2月に刊行されました。原書の刊行は2005年です。最初期の人類候補であるサヘラントロプス=チャデンシスから、現生人類(ホモ=サピエンス)の出現と拡散までの人類史を概観しています。ホモ属の起源をめぐる議論に関する著者による最近の解説をこのブログでも取り上げましたが(関連記事)、その記事でも述べたように、著者は碩学であり、新書という制限のある形式の本書においても、人類史に関する論点を的確に叙述しています。 ... ...続きを見る

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2014/04/15 00:00
遠山美都男『天武天皇の企て 壬申の乱で解く日本書紀』
 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2014年2月に刊行されました。遠山氏の著書をこれまでに10冊以上読んできましたが、その中には壬申の乱を主題としたり壬申の乱に言及したりしたものもあります。本書の基本的な認識・理解は、遠山氏がこれまでにそうした著書などで提示したものと変わっていない、とのことです。じっさい、『日本書紀』において、中国的な王朝交替の枠組みが組み込まれたとか、天智天皇(中大兄皇子、葛城皇子)の位置づけの変更から蘇我氏逆臣(王朝簒奪)説が構想された、とかいった見解は、遠山氏の以前... ...続きを見る

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2014/04/04 00:00
ジャック・ル=ゴフ著、池田健二・菅沼潤訳『中世の身体』
 本日は3本掲載します(その二)。藤原書店より2006年6月に刊行されました。『<子供>の誕生』の背景をさらに理解すべく読もうと思った次第です。 http://sicambre.at.webry.info/201403/article_24.html ...続きを見る

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2014/03/21 00:00
フィリップ=アリエス著、杉山光信・杉山恵美子訳『<子供>の誕生』第18刷
 本日は3本掲載します(その一)。みすず書房より1999年12月に刊行されました。第1刷の刊行は1980年12月です。本書は1973年に刊行された新版の翻訳で、原書初版は1960年に刊行されています。副題は「アンシァン・レジーム期の子供と家族生活」です。本書にたいして否定的な評価を下している一般向け書籍も読みましたが、ネット上でのやり取りから、本書の主張を直接知りたいと思い、読んでみました。本書の背景をさらに理解しようと思い、本書にも言及している『中世の身体』も合わせて読んでみました。 htt... ...続きを見る

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2014/03/21 00:00
平山優『敗者の日本史9 長篠合戦と武田勝頼』
 本日は3本掲載します(その三)。『敗者の日本史』全20巻の第9巻として、2014年2月に吉川弘文館より刊行されました。本書は長篠の戦いのみを検証しているのではなく、戦国時代の軍編成と戦闘の在り様についての所見解の見直しも提示し、さらには勝頼の置かれた立場を勝頼誕生以前にまでさかのぼって武田家と諏訪家の動向から論じており、広い視野に基づいていると思います。以下、本書の見解を備忘録的に述べていきます。 ...続きを見る

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2014/03/21 00:00
呉座勇一『戦争の日本中世史 「下剋上」は本当にあったのか』
 新潮選書の一冊として、新潮社から2014年1月に刊行されました。モンゴル襲来から応仁の乱までの戦争から見た日本社中世史となっています。本書を貫くのは、戦後歴史学、とくにマルクス主義的な「階級闘争史観」と意識的に距離を置こう、という姿勢です。本書のこの姿勢の前提として、1980年代以降、「階級闘争史観」はある程度克服されたように見えても、今でも研究者たちを拘束しているところがあるのではないか、との認識があるようです。そのため、「階級闘争史観」と意識的に距離を置くことにより、視野を広げられるのでは... ...続きを見る

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2014/03/18 00:00
関幸彦『敗者の日本史6 承久の乱と後鳥羽院』
 『敗者の日本史』全20巻の第6巻として、2012年10月に吉川弘文館より刊行されました。本書は後鳥羽院をはじめとした敗者の視点から承久の乱を解説しています。承久の乱で敗者となった、後鳥羽院をはじめとして天皇家の人々や貴族・武士のうちで主要な人々について、なぜ鎌倉幕府ではなく後鳥羽院の側に立ったのか、人脈・経歴・当時の状況などから解説されるとともに、敗者となった人々の乱後の動向・運命も言及されています。あまり有名ではない敗者の経歴もやや詳しく取り上げられているのが本書の特徴で、『敗者の日本史』に... ...続きを見る

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2014/03/04 00:00
佐々木恵介『日本古代の歴史4 平安京の時代』
 まだ日付は変わっていないのですが、2月23日分の記事として掲載しておきます。『日本古代の歴史』全6巻の第4巻として2014年1月に吉川弘文館より刊行されました。本書は、8世紀後半の長岡京への遷都から、菅原道真が失脚した10世紀初頭の昌泰の変までを扱っています。あとがきにて「本シリーズの企画段階では、高校生にもわかるようになるべく平易な内容とし、かつ高校日本史の教科書に記されたことには、原則としてすべて言及するという方針があった」と述べられていますが、本書はその方針をかなりの程度実現できた、手堅... ...続きを見る

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2014/02/23 00:00
西宮秀紀『日本古代の歴史3 奈良の都と天平文化』
 『日本古代の歴史』全6巻の第3巻として2013年11月に吉川弘文館より刊行されました。本書が対象としている時代は、文武天皇の即位から長岡京への遷都までの90年弱です。奈良時代を語るにあたって大宝律令の制定は欠かせない、という意図もあるのかもしれません。また、『続日本紀』が文武天皇の元年から始まるので、区切りがよいということなのかもしれません。 ...続きを見る

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2014/02/18 00:00
岡野友彦『院政とは何だったか 「権門体制論」を見直す』
 PHP新書の一冊として、2013年3月にPHP研究所より刊行されました。公的な最高位者と最高権力者が異なることがほぼ常態化した分かりにくい中世政治史を、専門家の立場から分かりやすく説明する、という意図の一冊です。このような主題は、新書に相応しいと言えるでしょう。本書は中世政治史の分かりにくさの要因を荘園制に求めますが、この荘園制も一般層には分かりにくいとよく言われています。新書にて難題を二つも分かりやすく解説しようという意欲的な試みですが、それはおおむね達成されているのではないか、と思います。... ...続きを見る

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2014/02/07 00:00
矢部健太郎『敗者の日本史12 関ヶ原合戦と石田三成』
 『敗者の日本史』全20巻の第12巻として、2014年1月に吉川弘文館より刊行されました。本書は関ヶ原の戦いやその前後の日本全域での騒乱状況についてはあまり触れておらず、実質的には豊臣政権を論じた一冊になっています。関ヶ原の戦いの考察にあたって、豊臣政権の構造を解明することは必須だと言えるでしょう。その意味で、私にとって本書はたいへん面白く有益な一冊となりましたが、表題から受ける印象との乖離は否定できないでしょうから、不満に思う一般読者は少なくないかもしれません。 ...続きを見る

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2014/02/04 00:03
黒田基樹『戦国大名 政策・統治・戦争』
 平凡社新書の一冊として平凡社より2014年1月に刊行されました。著者は、1980年代以降に大きく進展した戦国大名研究を踏まえて、現時点における戦国大名像を一般読者に提示する、という意図で執筆したそうです。著者の他の著作(ちくま新書『百姓から見た戦国大名』)や『週刊新発見!日本の歴史』第27号「戦国時代2 戦国大名たちの素顔」など(関連記事)を読んでいたこともあり、本書で提示されている戦国大名像は私にとって大きな違和感はありませんでした。以下、備忘録的に本書の見解について述べていきます。 ...続きを見る

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2014/01/30 00:00
諏訪勝則『黒田官兵衛』
 まだ日付は変わっていないのですが、1月25日分の記事として3本掲載しておきます(その一)。中公新書の一冊として、中央公論新社から2013年11月に刊行されました。今年の大河ドラマ『軍師官兵衛』を最終回まで視聴することになりそうなので、あまりよく知らなかった官兵衛について基礎知識を得るために読んでみました。本書は大河ドラマ便乗本なのでしょうが、ほぼ確実な事績と怪しげな伝承とを区別しており、一般読者向けの堅実な入門書になっていると思います。すべての大河ドラマ便乗本が本書くらいの水準であればよいので... ...続きを見る

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2014/01/25 00:00
一ノ瀬俊也『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』
 まだ日付は変わっていないのですが、1月23日分の記事として2本掲載しておきます(その二)。講談社現代新書の一冊として、講談社より2014年1月に刊行されました。ネットで著者のインタビュー記事を読んで面白そうだったので、読んでみました。アメリカ合衆国陸軍の軍事情報部が1942〜1946年にかけて部内向けに毎月刊行していた戦訓広報誌『情報公報』に掲載された日本軍に関する記事を用いて、戦闘組織としての日本陸軍の姿や能力を明らかにする、というのが本書の意図です。 ...続きを見る

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2014/01/23 00:00
『人類の進化 大図鑑』
 まだ日付は変わっていないのですが、1月14日分の記事として掲載しておきます。アリス=ロバーツ編、黒田眞智・森冨美子訳、馬場悠男監修で、河出書房新より2012年9月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。編者の著書は日本語に翻訳されており、以前このブログで取り上げたことがあります(関連記事)。本書は、霊長類の出現から紀元前の世界各地の「古代文明」まで広範な時代を扱っています。もっとも、表題にもあるように、おもに取り上げられているのは中新世〜更新世、とくに更新世における人類の進化です。 ... ...続きを見る

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2014/01/14 00:00
『ヒトはどのように進化してきたか』第5版
 ロバート=ボイド、ジョーン=B=シルク著、松本晶子、小田亮監訳で、ミネルヴァ書房より2011年7月に刊行されました。原書の刊行は2009年です。本書は、カリフォルニア大学人類学部のボイド教授(進化学)とシルク教授(霊長類学)の執筆による人類進化についての教科書です。1997年の初刊行以降、この教科書は版を重ね、本書はその第5版の日本語訳となります。 ...続きを見る

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2014/01/07 00:00
とくに面白かった本(2)2010年5月〜2013年12月まで
 以前、とくに面白いと思った本に関する記事をまとめて掲載しました。 http://sicambre.at.webry.info/201004/article_25.html ...続きを見る

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2014/01/03 00:00
ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』全6巻(エンターブレイン)
 まだ日付は変わっていないのですが、12月21日分の記事として掲載しておきます。随分前にネットで第1話を読んだ時から、面白い漫画だなと思って気になってはいたのですが、つい他のことを優先して後回しにしてしまいました。地上波で放送された映画を録画し、最近になって視聴したところ、なかなか面白かったので、全6巻をようやく入手し、読み終えました。漫画の方は期待通りの面白さで、映画の方もなかなか大がかりなセットで見応えがありました。漫画は全6巻で完結しましたが、映画の方は続編が制作中とのことで、楽しみです。... ...続きを見る

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2013/12/21 00:00
篠川賢『日本古代の歴史2 飛鳥と古代国家』
 まだ日付は変わっていないのですが、12月7日分の記事として掲載しておきます。『日本古代の歴史』全6巻の第2巻として2013年9月に吉川弘文館より刊行されました。本書は継体の即位から平城京遷都の直前までを扱っています。あとがきにて「本シリーズは、一般読者がわかりやすい叙述とすること、政治史を基軸としながらも、政治・経済・社会・文化すべての分野にわたってまんべんなく取りあげること、高校の教科書に収載されている用語について解説すること、などを方針とした通史である」と述べられていますが、本書はその方針... ...続きを見る

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2013/12/07 00:00
『そして最後にヒトが残った ネアンデルタール人と私たちの50万年史』
 クライブ=フィンレイソン著、上原直子訳、近藤修解説で、白揚社より2013年11月に刊行されました。原書の刊行は2009年です。フィンレイソン博士のチームの研究の一つを、過去にこのブログで取り上げたことがあります(関連記事)。フィンレイソン博士はジブラルタル博物館の館長で、ジブラルタルのゴーラム洞窟の調査を長年続けており、末期ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)研究の第一人者的存在です。本書の特徴は、以下の5点にまとめられると思います。 ...続きを見る

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2013/12/01 00:00
遠山美都男『敗者の日本史1 大化改新と蘇我氏』
 まだ日付は変わっていないのですが、11月29日分の記事として2本掲載しておきます(その二)。『敗者の日本史』全20巻の第1巻として、2013年11月に吉川弘文館より刊行されました。このブログでは以下のように何度か遠山氏の著書を取り上げてきました。 ...続きを見る

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2013/11/29 00:00
鍛代敏雄『敗者の日本史11 中世日本の勝者と敗者』
 まだ日付は変わっていないのですが、11月25日分の記事として掲載しておきます。『敗者の日本史』全20巻の第11巻として、2013年11月に吉川弘文館より刊行されました。本書は4章構成となっています。第1章は政治史、第2章は社会史、第3章は「日本周縁」の地域史、第4章は文化史です。本書はこの構成に沿って、勝者と敗者という観点から中世史全体を概観しています。 ...続きを見る

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2013/11/25 00:00
岡本隆司編『中国経済史』
 まだ日付は変わっていないのですが、11月23日分の記事として2本掲載しておきます(その二)。2013年11月に名古屋大学出版会より刊行されました。「特に序章は岡本イズムが全面的に展開されており、『近代中国史』の読者であればかなり読みやすいのではないかと思います」とのブログ記事を読んだので、私には敷居が高いかな、とも思ったのですが、購入して読んでみました。本書は、概論となる序章・本論となる5章・個別の述語および事象の解説となるテーマで構成されています。本論はあくまでもあらすじを把握するためのもの... ...続きを見る

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2013/11/23 00:00
水野俊平『庶民たちの朝鮮王朝』
 まだ日付は変わっていないのですが、11月20日分の記事として2本掲載しておきます(その一)。角川選書の一冊として、角川学芸出版より2013年6月に刊行されました。朝鮮王朝の庶民とはいっても、朝鮮王朝の歴史は500年以上になることもあって、扱う時代はおもに18世紀(17世紀末〜19世紀初頭)で、対象地域は首都の漢城に限定されています。つまり、朝鮮王朝の庶民の多くを占めるだろう農民については触れられていません。羊頭狗肉との感もありますが、朝鮮王朝の長さを考えると仕方のないところでしょうか。 ...続きを見る

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2013/11/20 00:00
関周一『朝鮮人のみた中世日本』
 明日(11月9日)からしばらく留守にするかもしれないので、とりあえず来週分までまとめて更新することにします。これは11月11日分の記事として掲載しておきます。 ...続きを見る

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2013/11/11 00:00
『日本中世の歴史』全7巻の記事のまとめ
 明日(11月9日)からしばらく留守にするかもしれないので、とりあえず来週分までまとめて更新することにします。これは11月9日分の記事として掲載しておきます。 ...続きを見る

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2013/11/09 00:00
西秋良宏編『ホモ・サピエンスと旧人─旧石器考古学からみた交替劇』
 まだ日付は変わっていないのですが、11月8日分の記事として掲載しておきます。六一書房より2013年1月に刊行されました。2010〜2014年にかけて、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究として「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」が行なわれることは、このブログでも以前取り上げました(関連記事)。この研究計画には公式サイトが設置されており、さまざまな情報が公開されています。この研究計画と関連して、デデリエ洞窟での発掘(関連記事)や読売新聞の記事(関連... ...続きを見る

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2013/11/08 00:00
長田俊樹『インダス文明の謎 古代文明神話を見直す』
 これは11月6日分の記事として掲載しておきます。学術選書の一冊として、京都大学学術出版会より2013年10月に刊行されました。著者はインダス文明に関するプロジェクトを2004年に発足させ、予備研究などを経て2007年から5年間、本研究としてファルマーナー・カーンメールという二つのインダス文明遺跡の発掘やインダス文明遺跡地域での環境調査を行なった、とのことです。著者はその成果を取り入れつつ、インダス文明について包括的に論じています。著者は考古学者ではなく言語学者で、考古学的な細かい解説にはなって... ...続きを見る

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2013/11/06 00:00
小学館『日本の歴史』全16巻の記事のまとめ
 まだ日付は変わっていないのですが、11月4日分の記事として掲載しておきます。今更ではありますが、2007年11月〜2009年5月にかけて刊行された小学館『日本の歴史』全16巻の記事をまとめておきます。 ...続きを見る

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2013/11/04 00:00
南川高志『新・ローマ帝国衰亡史』第4刷
 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2013年8月に刊行されました。第1刷の刊行は2013年5月です。気宇壮大な表題に惹かれて購入し、読んでみました。本書は、日本における一般向けのローマ(衰亡)史とはかなり異なるように思います。一つは、ローマ帝国の支配域において西北にあたるヨーロッパ大陸内部やブリテン島(現在ではフランス・スイス・ドイツ・イギリスなどの領土です)を重視していることです。ローマ帝国を地中海帝国と認識する見解は、日本でも一般層に広く浸透しているように思いますが、そのような認識... ...続きを見る

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2013/11/01 00:00
杉山正明『中国の歴史08 疾駆する草原の征服者』
 まだ日付は変わっていないのですが、10月29日分の記事として掲載しておきます。2004年〜2005年にかけて講談社より『中国の歴史』全12巻が刊行されました。その第8巻である本書は2005年10月に刊行されました。私は全巻刊行後すぐに購入して読んだのですが、ホームページが開店休業状態で、ブログを開始する前だったということもあり、ホームページでもブログでも取り上げてきませんでした(このブログで参考文献として引用したことはありますが)。 ...続きを見る

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2013/10/29 00:30
高松康『朱鳥翔けよ』
 まだ日付は変わっていないのですが、10月26日分の記事として掲載しておきます。幻冬舎ルネッサンスより2013年9月に刊行されました。アマゾンのお勧めで興味を持って調べたところ、出版社の紹介文と目次を読んで面白そうだと思ったので、購入して読んでみました。 http://www.gentosha-r.com/products/9784779009976/ ...続きを見る

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2013/10/26 00:00
丸島和洋『戦国大名の「外交」』
 講談社選書メチエの一冊として、2013年8月に刊行されました。本書はまず、「外交」という表現を用いる理由を説明します。それは、戦国時代には「日本」という「国家」の統合力が弱まり、戦国大名という「地域国家」によって日本列島が分裂していた、という歴史認識に基づいています。以下、本書では戦国大名の外交の具体的様相が叙述され、古文書学的な知識も言及されています。ただ、後書とも関連しますが、本書の本当の狙いは、戦国大名の外交の具体的様相の解明というよりも、戦国大名論であるように思います。以下、本書の興味... ...続きを見る

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2013/10/20 00:00
岡本隆司『近代中国史』
 これは10月11日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2013年7月に刊行されました。本書における「中国」の範囲は、おおむね欧米でいうところの「中国本土」に相当します。したがって、本書の「中国」は中華人民共和国の支配領域全てを含んでいるわけではありません。本書は、他地域と比較しつつ、中国の伝統的な経済社会がいかに形成され変容していったのか、明・清朝(ダイチングルン)を中心に論じており、清朝の後の民国期の変容についてもそれなりに分量を割いています。 ...続きを見る

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2013/10/11 00:00
藤田伸二『騎手の一分 競馬界の真実』5刷
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2013年6月に刊行されました。1刷の刊行は2013年5月です。今更ではありますが、話題となっている本書を読んでみました。著者はJRAの現役騎手で、一流と言っても問題ない実績を残していますし、その騎乗技術も競馬関係者・ファンの間で高く評価されています。本書は、騎乗論・騎手論とJRAの騎手の置かれた現状への不満と批判を中心に、JRAと日本競馬界の問題点(もちろん、著者の視点からということですが)を著者が指摘し、その元凶としてJRAを糾弾する、という内容になっ... ...続きを見る

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2013/10/06 00:00
河内将芳『信長が見た戦国京都』
 これは9月26日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2010年8月に刊行されました。副題は「城壁に囲まれた異貌の都」です。著者は信長について専門的に勉強してきたわけではなく、中世後期の都市社会史を中心に研究を進めているとのことで、表題に掲げているだけあって信長についての言及の多い本書も、実質的には中世後期の京都の歴史となっています。おそらく編集部が、「中世後期の京都」では一般向けの新書として売れそうにないと判断して、信長と絡めて中世後期の京都を取り上げるよう著者に依頼... ...続きを見る

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2013/09/26 00:00
本村凌二、中村るい『古代地中海世界の歴史』
 ちくま学芸文庫の一冊として、筑摩書房より2012年11月に刊行されました。本書は2004年に刊行された放送大学用教科書に大幅に加筆・修正したものとのことで、全15章で構成されています。本書はおおむね本村氏が執筆しているのですが、美術史となる第5章・第9章・第13章は中村氏が執筆しています。本書が対象としているのは、時代でいうと前4000年紀から西ローマ帝国の滅亡の頃まで(6世紀以降についてもわずかながら言及されてはいますが)、地域でいうと、地中海沿岸地域を中心として、メソポタミア・ペルシア・ヨ... ...続きを見る

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2013/09/20 00:00
坂上康俊『シリーズ日本古代史4 平城京の時代』
 まだ日付は変わっていないのですが、9月11日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2011年5月に刊行されました。岩波新書の『シリーズ日本古代史』は全6巻で構成されており、これまでさほど読みたいとは思わなかったので、本書が初めて読んだ一冊になるのですが、たまたま古書店で見かけて安いので購入して読んでみたところ、なかなか面白かったので、今後古書店で他の巻を見かけたら購入する予定です。本書は奈良時代の大半を対象としていますが、教科書的な時代区分とは異なり、文武天... ...続きを見る

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2013/09/11 00:00
本村凌二『世界史の叡智 勇気、寛容、先見性の51人に学ぶ』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2013年6月に刊行されました。歴史上の人物を取り上げて、その叡智を読者に紹介するという趣旨で、元々は産経新聞の「世界史の遺風」という連載だったそうですが、新書化にあたり、加筆されているそうです。新書一冊で51人の紹介ということで、当然のことながら1人あたりの分量は4ページと少なく、充分に紹介できるわけではないので、全体的に薄くなっている感は否めません。これは自室で気合を入れて読む本ではないなと思い、電車の中と外食時の待ち時間で読み終えました。読んで失敗だ... ...続きを見る

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2013/09/06 00:00
岩明均『ヒストリエ』第8巻発売(講談社)
 これは8月26日分の記事として掲載しておきます。待望の第8巻が刊行されました。実に1年9ヶ月振りの新刊となります。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html 第5巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/2... ...続きを見る

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2013/08/26 00:00
水谷千秋『継体天皇と朝鮮半島の謎』
 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2013年7月に刊行されました。異例の経緯で即位し、「新王朝」の祖と考えている人も少なくないだろう継体について、数少ない文献と、考古学の研究成果および当時の朝鮮半島情勢とを総合し、謎を解明しようとする意欲的な新書になっています。文献から継体の実像を探るには限界があるので、考古学的成果を活用するのは当然とも言えますが、本書では、近年の考古学的成果が大きく取り入れられており、かなり考古学の比重が高くなっています。多くの研究者が真の継体陵と考えている今城塚古墳につ... ...続きを見る

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2013/08/20 00:00
パット=シップマン著、河合信和訳『アニマル・コネクション 人間を進化させたもの』
 まだ日付は変わっていないのですが、8月11日分の記事として掲載しておきます。同成社より2013年6月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。人類(実質的にはホモ属)の進化を、動物と人類(人類も動物の一種なのですが、ここでは人間と動物とを区別します)との関係という視点から見直した本です。人類にとって家畜化した動物は生きた道具であり、石器などの人類にとっての古くからの道具と同じく、身体外適応なのだ、との見解がさまざまな研究成果に基づいて提示されています。著者も認めるように推論になっているとこ... ...続きを見る

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2013/08/11 00:00
アリス=ロバーツ著、野中香方子訳『人類20万年遥かなる旅路』
 文藝春秋社より2013年5月に刊行されました。原書の刊行は2009年です。今年6月・7月にNHK教育テレビの『地球ドラマチック』で3回にわたって放送された「人類 遥かなる旅路」 http://sicambre.at.webry.info/201306/article_19.html http://sicambre.at.webry.info/201307/article_9.html http://sicambre.at.webry.info/201307/article_31.html... ...続きを見る

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2013/08/06 00:00
木下正史『日本古代の歴史1 倭国のなりたち』
 まだ日付は変わっていないのですが、7月28日分の記事として掲載しておきます。『日本古代の歴史』全6巻の第1巻として2013年7月に吉川弘文館より刊行されました。『日本古代の歴史』の編纂意図は、第1巻〜第5巻までは政治史を軸にした時系列の通史とし、第6巻は古代全体の時代像を示す、とのことです。第5巻は『王朝貴族と国風文化』とのことで、院政期の前までを対象とするようです。院政期からが中世というのが現在の有力な時代区分でしょうから、妥当なところでしょうか。この第1巻は、日本列島に人類が移住してきた更... ...続きを見る

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2013/07/28 00:00
曽根勇二『敗者の日本史13 大坂の陣と豊臣秀頼』
 まだ日付は変わっていないのですが、7月20日分の記事として掲載しておきます。『敗者の日本史』全20巻の第13巻として、2013年6月に吉川弘文館より刊行されました。朝鮮役の長期化にともない伏見と大坂を拠点とする物流の支配体制が形成され、伏見と大坂は「首都」として機能し、秀吉死後もその支配体制の構築が継続され、家康と秀頼は「秀吉政治」の(有力)継承(候補)者だった、という視点から、関ヶ原の戦いの後〜大坂の陣、さらには「鎖国体制の確立」までが概観されています。この観点では、秀頼が寺社造営に熱心だっ... ...続きを見る

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2013/07/20 00:00
秋山哲雄『敗者の日本史7 鎌倉幕府滅亡と北条氏一族』
 まだ日付は変わっていないのですが、7月15日分の記事として掲載しておきます。『敗者の日本史』全20巻の第7巻として、2013年5月に吉川弘文館より刊行されました。表題が「鎌倉幕府滅亡」なので、鎌倉時代後半についての記述が多くなっているのですが、鎌倉時代前半についてもそれなりに言及されており、鎌倉時代の政治・制度史にもなっています。鎌倉幕府は滅亡したと言われますが、本書では、鎌倉幕府の制度など政治的遺産は後世に継承されており、鎌倉幕府の滅亡は北条一族の滅亡ではあったものの、鎌倉幕府の奉行人が建武... ...続きを見る

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2013/07/15 00:00
元木泰雄『敗者の日本史5 治承・寿永の内乱と平氏』
 これは7月11日分の記事として掲載します。『敗者の日本史』全20巻の第5巻として、2013年4月に吉川弘文館より刊行されました。著者の他の著書や論考などを読んでいたので、著者の見解には馴染みがあり、違和感なく読み進められました。本書の主題は、治承・寿永の内乱における平氏の敗因の分析なので、治承・寿永の内乱についての叙述が中心なのですが、内乱勃発前にもかなりの分量が割かれていて、平氏の敗因が考察されています。確かに、治承・寿永の内乱における平氏の敗因を考察するうえで、内乱勃発前の検証は不可欠です... ...続きを見る

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2013/07/11 00:00
鈴木光太郎『ヒトの心はどう進化したのか─狩猟採集生活が生んだもの』
 これは6月28日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2013年6月に刊行されました。現代人の心は他の動物とどのように違うのか、そうした違いが進化の過程でどのように生じたのか、という問題の一般向け解説となっています。本書では、ほとんどの現代人が当然と思っている行動・能力の少なからぬものが、他の動物には見られない特殊なものであり、それが現生人類(ホモ=サピエンス)の特徴である、と強調されています。それは、たとえば他者の視点で物事を考えるという能力であり、そうした能力... ...続きを見る

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2013/06/28 00:00
山本博文、堀新、曽根勇二編『偽りの秀吉像を打ち壊す』
 柏書房より2013年2月に刊行されました。同じく柏書房より2011年6月に刊行された『消された秀吉の真実 徳川史観を越えて』 http://sicambre.at.webry.info/201106/article_12.html の続編であり、体裁も『消された秀吉の真実 徳川史観を越えて』と同じく各論考から成る論文集で、本書は前作より一章減り、序章と第一章〜第九章の論考が掲載されています。本書も前作と同じく、豊臣秀吉関連の文書が取り上げられ、その原本の写真が掲載されるとともに、釈文と現代... ...続きを見る

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2013/06/22 01:21
松山ケンイチ『敗者』2刷
 まだ日付は変わっていないのですが、6月20日分の記事として掲載しておきます。新潮社より2013年3月に刊行されました。1刷の刊行は2013年2月です。昨年の大河ドラマ『平清盛』の主演である松山氏の著書ということで、刊行前より注目していたのですが、多忙ということもあり、入手したのは刊行からかなり経過してのことでした。本書の表題を知った時から、「敗者」とはどのような意味なのだろうか、と気になっていました。『平清盛』は大河ドラマとしては空前の低視聴率でしたから、そのことを意味しているのかな、と予想し... ...続きを見る

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2013/06/20 00:00
五島勉『H・G・ウェルズの予言された未来の記録』
 まだ日付は変わっていないのですが、6月15日分の記事として掲載しておきます。今年2月に、このブログで『【予言・預言対談】飛鳥昭雄×五島勉 ノストラダムスの正体と黙示録の真実』を取り上げましたが、 http://sicambre.at.webry.info/201302/article_13.html 同書において五島勉氏は、ハーバート=ジョージ=ウェルズの著作を題材に新作の執筆に取りかかる、と述べており、今年5月に『H・G・ウェルズの予言された未来の記録』として祥伝社より刊行されました。本... ...続きを見る

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2013/06/15 00:00
五島勉『1999年日本 ノストラダムス「大予言」からの脱出』
 これは6月11日分の記事として掲載しておきます。今年2月に、このブログで『【予言・預言対談】飛鳥昭雄×五島勉 ノストラダムスの正体と黙示録の真実』を取り上げましたが、 http://sicambre.at.webry.info/201302/article_13.html 同書において五島勉氏は、ハーバート=ジョージ=ウェルズの著作を題材に新作の執筆に取りかかる、と述べており、気になっていたところ、今年5月に『H・G・ウェルズの予言された未来の記録』として祥伝社より刊行されました。『【予言... ...続きを見る

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2013/06/11 00:00
渡邊大門『秀吉の出自と出世伝説』
 まだ日付は変わっていないのですが、5月30日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2013年5月に刊行されました。秀吉の出自を中心として、秀吉の人物像を歴史学的な成果に基づいて一般向けに提示した一冊となっています。民俗学的成果も活用しての、近年の歴史学の提示する秀吉像においては、その出自に非農業民的性格が指摘され、秀吉の大出世と言動の要因がその出自に求められる傾向がありますか、本書はそうした傾向に批判的であり、あくまでも秀吉個人の能力・性格を重視する見解を提示しています... ...続きを見る

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2013/05/30 00:00
池上裕子『人物叢書(新装版) 織田信長』第1版第2刷
 まだ日付は変わっていないのですが、5月22日分の記事として掲載しておきます。吉川弘文館より2013年1月に刊行されました。第1版第1刷の刊行は2012年12月です。吉川弘文館の人物叢書はすでに多数刊行されており、本書で272冊目となるようです。ところが、意外なことに「大物」というか知名度の高い人物で取り上げられていない者も多く、天智天皇・天武天皇・源頼朝・足利尊氏・豊臣秀吉・徳川家康・大久保利通・伊藤博文・明治天皇などがそうで、三幕府の初代がいずれも取り上げられていないということになります。現... ...続きを見る

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2013/05/22 00:00
倉本一宏『藤原道長の日常生活』
 これは5月13日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社より2013年3月に刊行されました。本書は、藤原道長の日記『御堂関白記』・藤原実資の日記『小右記』・藤原行成の日記『権記』を丁寧に読み解き、道長の日常生活・言動・公的立場・個性・世界観を明らかにしています。もちろん本書は、道長だけではなく、当時の朝廷の政務・儀式の在り様や、朝廷上層部の人々の公的および私的活動・世界観にも言及しており、摂関政治最盛期の朝廷の様相を詳しく描き出しています。当時の朝廷を非専門家が知るう... ...続きを見る

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2013/05/13 00:00
瀧浪貞子『敗者の日本史2 奈良朝の政変と道鏡』
 まだ日付は変わっていないのですが、5月4日分の記事として掲載しておきます。『敗者の日本史』全20巻の第2巻として、2013年3月に吉川弘文館より刊行されました。『敗者の日本史』は20巻構成で、すでに半数近く刊行されているのですが、本書を最初に購入して読み終えました。まだ本書しか読んでいないのですが、たいへん面白そうな構成になっているので、できれば全巻購入して読もう、と考えています。 http://www.yoshikawa-k.co.jp/news/n4704.html ...続きを見る

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2013/05/04 00:00
長谷川修一『聖書考古学』
 まだ日付は変わっていないのですが、4月25日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2013年2月に刊行されました。聖書考古学の当初の目的は聖書の史実性を実証することだったのですが、もちろん本書はそうした目的を掲げておらず、本書における聖書考古学の定義(P62)は、「聖書の歴史記述の深い理解に達するため、特に聖書の舞台となった古代パレスチナを中心とした考古学」というものです。本書は、聖書考古学がどのような学問かということだけではなく、考古学と聖書についても基本的な... ...続きを見る

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2013/04/25 00:00
『日本近世の歴史』全6巻完結
 まだ日付は変わっていないのですが、4月22日分の記事として掲載しておきます。2013年3月刊行の『日本近世の歴史5 開国前夜の世界』をもって、『日本近世の歴史』全6巻が完結となりました。ここでは、各巻を紹介した記事をまとめて記載します。 ...続きを見る

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2013/04/22 00:00
横山伊徳『日本近世の歴史5 開国前夜の世界』
 まだ日付は変わっていないのですが、4月17日分の記事として掲載しておきます。『日本近世の歴史』全6巻の第5巻として、2013年3月に吉川弘文館より刊行されました。18世紀末〜19世紀半ばまでの江戸幕府後期の歴史が、「対外関係」の視点から叙述されています。この時期の江戸幕府の政治・政権の在り様に、対外政策が影響を与えていたことは間違いないでしょうし、それは重視しなくてもよいような小さなものではなく、大きなものだったのでしょうが、正直なところ、この時期の概説としてはあまりにも「対外関係」に偏重して... ...続きを見る

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2013/04/17 00:00
早島大祐『足軽の誕生 室町時代の光と影』第2刷
 まだ日付は変わっていないのですが、4月10日分の記事として掲載しておきます。朝日新書の一冊として、朝日新聞社より2013年1月に刊行されました。第1刷の刊行は2012年10月です。足軽は応仁の乱で大量に出現したとされますが、その理由というか背景となる、南北朝時代も含む室町時代前半の社会変容の叙述が本書の主題となります。本書では、足軽誕生の前提として、朝廷と武家の中心地が京都と鎌倉に分離していた鎌倉時代とは異なり、室町時代には京都に一元化され、京都に人・物資がさらに流入しやすい状況が出現していた... ...続きを見る

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2013/04/10 00:00
伊藤聡『神道とは何か 神と仏の日本史』
 まだ日付は変わっていないのですが、3月31日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2012年4月に刊行されました。本書では古代から近世にいたる神道の形成過程が叙述されていますが、著者の専攻ということもあってか、おもに扱われているのは中世です。近年では、日本思想史についての専門家による一般向け書籍のほとんどで、仏教伝来前より日本列島で連綿と続いてきた神道、という一昔前には一般層によく浸透していた俗説(今でもそれなりに影響力がある、と言えるかもしれませんが)が批判さ... ...続きを見る

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2013/03/31 00:00
青山和夫『マヤ文明―密林に栄えた石器文化』(岩波書店)
 まだ日付は変わっていないのですが、3月20日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、2012年4月に刊行されました。マヤ文明については、「世界史上まれにみる神秘的でユニークな謎の文明」との見解が今でも一般には根強そうで、そうした「偏見」の是正も、本書の執筆意図になっているようです。じっさい、日本ではそれほどでもなかったようですが、マヤ暦と終末思想を結びつけた言説が世界全体では一定以上の影響力を有したようですから、著者の懸念は杞憂というわけでもなさそうです。本書でも、マヤ文... ...続きを見る

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2013/03/20 00:00
遠山美都男『聖徳太子の「謎」』
 宝島社より2013年2月に刊行されました。書店で歴史本として分類されているもののなかには、聖徳太子を通説では別人とされている人物と実は同一だったと主張するものがあり、聖徳太子と同一とされる人物は、蘇我馬子・蘇我入鹿・突厥の王などさまざまです。また、聖徳太子は妻と心中したので、その死後に法隆寺で怨霊として祀られることになった、といった聖徳太子怨霊説もそうした歴史本で主張されることがあります。そうした「妄想」は、日本古代史の研究者たちが無視している間に現代日本人の間に浸透している、との危機感から、... ...続きを見る

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2013/03/01 05:17
荒木敏夫『古代天皇家の婚姻戦略』
 まだ日付は変わっていないのですが、2月20日分の記事として掲載しておきます。歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2013年1月に刊行されました。本書が扱うのは、古代日本(倭国)の王族(皇族)の婚姻についてです。本書で指摘される古代日本の王族の婚姻の特徴は、閉鎖的だということです。日本古代史に関心のある人ならば、古代日本の王族では近親婚が盛行したことをよく知っているでしょう。本書では、近親婚の盛行は、女性王族の婚姻規制(王族以外の男性との婚姻の禁止)や、ハプスブルク家および漢・唐・新... ...続きを見る

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2013/02/20 00:00
『【予言・預言対談】飛鳥昭雄×五島勉 ノストラダムスの正体と黙示録の真実』
 まだ日付は変わっていないのですが、2月13日分の記事として掲載しておきます。学研パブリッシングより2012年12月に刊行されました。飛鳥昭雄氏と五島勉氏の対談で、五島氏の単著というわけではありませんが、五島氏のファンとしては読まずにはいられませんでした。飛鳥氏はオカルト業界では著名な作家で、五島氏の対談相手として適任だろう、と思います。私は飛鳥氏の著作を読んだことがないので、飛鳥氏がかつて五島氏を厳しく批判していた、という話の真偽について判断はできませんが、この対談は文章で読んだかぎりでは和や... ...続きを見る

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2013/02/13 00:00
森公章『古代豪族と武士の誕生』
 まだ日付は変わっていないのですが、1月20日分の記事として掲載しておきます。歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2013年1月に刊行されました。本書は4世紀以前にも少し触れていますが、5世紀を起点として中央との関係を軸にしつつ、文献だけではなく考古学的成果も活用して古代豪族の動向を描き出し、鎌倉時代への展望も最後に提示されます。中央と地方という視点が所与の前提になっていることで見落とされるものがあるのではないか、という疑問もありますが、著者の意図している「教科書的書物」としての役割... ...続きを見る

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2013/01/20 00:00
鈴木哲雄『動乱の東国史1 平将門と東国武士団』
 まだ日付は変わっていないのですが、12月23日分の記事として掲載しておきます。『動乱の東国史』全7巻の第1巻として、2012年9月に吉川弘文館より刊行されました。本書は、平将門の乱を中心として、前九年・後三年の役や保元・平治の乱などの動乱を軸に、9世紀後半〜12世紀後半の治承・寿永の乱の直前までの、古代〜中世へと転換していく東国史を叙述します。本書の特徴は、平将門の乱の舞台となった坂東が、今よりも広い内海を有し、河川の交錯する水上交通の盛んな地域であった、とする近年の研究成果を踏まえた叙述にな... ...続きを見る

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2012/12/23 00:00
青山忠正『日本近世の歴史6 明治維新』
 まだ日付は変わっていないのですが、12月15日分の記事として掲載しておきます。『日本近世の歴史』全6巻の第6巻として、2012年11月に吉川弘文館より刊行されました。本書が対象とするのは、ペリー来航から西南戦争までのおよそ四半世紀で、政治史に特化した叙述となっており、経済史・民衆史・文化史の叙述が薄いというかほぼ省略されているのですが、そうした解説は他の一般向け書籍で補うこともできるわけですし、一般向け書籍としては丁寧な政治史叙述になっていると思いますので、とくに不満はありません。本書は、その... ...続きを見る

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2012/12/15 00:00
トム=ノックス著、山本雅子訳『ジェネシス・シークレット』
 まだ日付は変わっていないのですが、12月4日分の記事として掲載しておきます。RHブックス・プラスの一冊として、2010年10月に武田ランダムハウスジャパンより刊行されました。以前、コメントにて山猫さんに教えていただき、『イリヤッド』風味の内容とのことで面白そうだったので、読んでみました。 http://sicambre.at.webry.info/201209/article_12.html ...続きを見る

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2012/12/02 00:00
小川剛生『足利義満』再版
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2012年9月に刊行されました。初版の刊行は2012年8月です。足利義満は、日本ではおそらく小学校でも習うであろうくらい有名な歴史上の人物ですが、その一般的人気はかなり低いように思います。すべての事例を調べたわけではありませんし、記憶が曖昧なので確固たる自信があるわけではないのですが、好きな歴史上の人物といった投票・調査企画にて、上位10人に足利義満が選ばれたことはないでしょうし、そもそも義満に限らず室町幕府の歴代将軍も、そうした企画で上位に選ばれたことは... ...続きを見る

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2012/11/23 00:24
更科功 『化石の分子生物学』
 まだ日付は変わっていないのですが、11月15日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社より2012年7月に刊行されました。本書では、分子生物学の具体的な解析について、一般書にしては詳しく述べられており、分子生物学史的な記述もあるので、分子生物学の入門書としての性格もあるように思います。本書は全体的に、分子生物学の有効性とともに限界性も強調した内容になっているので、その点で明快な説明を求めている人には物足りないところもあるかもしれませんが、それだけに良心的ではある、とも... ...続きを見る

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2012/11/15 00:00
柴田哲孝『TENGU』(祥伝社、2006年)
 ウェブリブログの調子が悪く、11月1日から長期メンテナンスに入ったので、この間は更新できませんでしたが、公開予定の記事は用意していたので、まとめて日分更新することにします。これは11月2日分の記事として掲載しておきます。 ...続きを見る

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2012/11/02 00:00
盛本昌広『戦国合戦の舞台裏 兵士たちの出陣から退陣まで』
 まだ日付は変わっていないのですが、10月23日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として、洋泉社から2010年10月に刊行されました。本書の主題は、退陣・出陣式・陣中見舞いなどというように、現在でもよく用いられる陣という言葉を重要な手掛かりとして、戦国時代の合戦の一般にはあまり知られていない、舞台裏というか地味な側面の具体的な様相の解明です。著名な合戦やそれにまつわる人間模様といった、一般受けする派手な内容ではありませんが、物語として戦国時代の合戦を知る人が圧倒的に多いでしょうから、... ...続きを見る

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2012/10/23 00:00
杉晴夫『人類はなぜ短期間で進化できたのか ラマルク説で読み解く』
 まだ日付は変わっていないのですが、10月13日分の記事として掲載しておきます。平凡社新書の一冊として平凡社より2012年7月に刊行されました。「ラマルク説で読み解く」という副題を見た時点でかなりのていど覚悟はしていたのですが、大外れの一冊でした。新書でそれほど文字数が多くないのに、途中で挫折しそうになったくらいで、何度か中断しつつ、読み始めてからかなりの時間が経過してやっと読み終えられました。この本をなぜ購入してしまったのか、購入時の心理状態が自分でもよく思い出せないのですが、表題に見える人類... ...続きを見る

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2012/10/13 00:00
本村凌二『古代ローマとの対話 「歴史感」のすすめ』
 まだ日付は変わっていないのですが、10月5日分の記事として掲載しておきます。岩波現代文庫の一冊として、岩波書店より2012年6月に刊行されました。表題と少し読んだ印象からは、かなり内容が薄いのではないか、との懸念もあったのですが、本村氏の一般向け著作ということで購入して読んでみることにしました。本書は、新聞や雑誌などに掲載された著者の文章を加筆訂正してまとめたものとのことで、随筆集的な性格が強くなっています。それだけに、各随筆を年代順に並べて通史的な構成にするなど工夫も見られるものの、やや散漫... ...続きを見る

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2012/10/05 00:00
遠山美都男『日本書紀の虚構と史実』
 まだ日付は変わっていないのですが、9月26日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2012年8月に刊行されました。このブログでも過去に何度か遠山氏の著書を取り上げてきましたが、 http://sicambre.at.webry.info/200803/article_25.html http://sicambre.at.webry.info/200901/article_22.html http://sicambre.at.webry.info/201206/ar... ...続きを見る

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2012/09/26 00:00
ミシェル=ブリュネ著、山田美明訳『人類の原点を求めて』
 まだ日付は変わっていないのですが、9月23日分の記事として掲載しておきます。原書房より2012年7月に刊行されました。著者は、アウストラロピテクス=バーレルガザリ(アファレンシスと同種との見解のほうが優勢かもしれません)やサヘラントロプス=チャデンシスの発見・研究で有名な古人類学者で、原書の刊行は2006年です。日本語版序文でも触れられていない原書刊行以降の研究にて、バーレルガザリとチャデンシスのより正確な年代が推定されており、このブログで取り上げたことがあります。 http://sicam... ...続きを見る

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2012/09/23 00:00
小野昭『ネアンデルタール人 奇跡の再発見』
 まだ日付は変わっていないのですが、9月16日分の記事として掲載しておきます。朝日選書の一冊として、朝日新聞出版より2012年8月に刊行されました。ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の正基準標本(模式標本)とされている人骨が、1856年に現在ではドイツ領となっているネアンデル渓谷の小フェルトホーファー洞窟で発見された最初のネアンデルタール人であることは、よく知られているでしょう。もっとも、本書でも指摘されているように、1856年よりも前に他の場所でネアンデルタール人の骨は発見され... ...続きを見る

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2012/09/16 00:00
細川重男『頼朝の武士団 将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉』
 まだ日付は変わっていないのですが、9月13日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2012年8月に刊行されました。細川氏の著書については以前にもこのブログで 『北条氏と鎌倉幕府』 http://sicambre.at.webry.info/201104/article_13.html と『鎌倉幕府の滅亡』 http://sicambre.at.webry.info/201106/article_16.html を取り上げたことがありますが、本書には、『北条氏と... ...続きを見る

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2012/09/13 00:00
大城道則『古代エジプト文明 世界史の源流』
 まだ日付は変わっていないのですが、9月5日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、2012年4月に刊行されました。エジプトに統一王朝が成立した時代からローマ帝国の統治下に組み込まれた時代まで、3000年以上にわたる古代エジプト史が、古代エジプトの枠内だけからではなく、周辺地域との双方向的な影響という観点から概観されています。エジプトと周辺地域との交流は、もちろん古王国時代からあったことですが、本書では、古代エジプトが「異民族」のヒクソスに支配されたことが、地中海世界へと進... ...続きを見る

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2012/09/05 00:00
森下徹『武士という身分 城下町萩の大名家臣団』
 まだ日付は変わっていないのですが、8月26日分の記事として掲載しておきます。歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2012年7月に刊行されました。武士が平安時代から幕末までどのように変容していったのか、という問題への関心は一般的にも高いように思うのですが、本書では江戸時代の萩藩(長州藩)を対象に、その具体的様相が叙述されています。江戸時代には武士の官僚化が進んだと言われることが多いように思いますが、本書では、大きく変容しつつも、江戸時代を通じて全体的に武士団の軍事組織的が強く保持され... ...続きを見る

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2012/08/26 00:00
安藤寿康『遺伝子の不都合な真実─すべての能力は遺伝である』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2012年7月に刊行されました。本書では「能力」には遺伝子の影響があるという見解が強調されていますが、もちろん「能力」は遺伝子だけで決まるものではなく、遺伝子と環境の両者の影響が指摘されています。そんな当然のことをわざわざ本にまとめる必要があるのか、と多くの人が考えるかもしれませんが、多くの人が直感的に・漠然と自明のことと考えている常識を、学術的に検証することも専門家の役割であり、その意義は大きいと思います。その意味で、多くの人が漠然と考えているであろう常識... ...続きを見る

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2012/08/13 00:00
渡邉義浩『「三国志」の政治と思想』
 講談社選書メチエの一冊として、2012年6月に刊行されました。同じ著者の『魏志倭人伝の謎を解く』 http://sicambre.at.webry.info/201206/article_10.html が面白かったので本書も読んだのですが、本書も面白く、再度『三国志』の時代にはまる契機になるかもしれません。ただ、専門家ではない私には本格的な評価はとてもできませんが、面白すぎるというか、整然とした説明になっているので、理念化・類型化が行き過ぎているのではないか、との疑問がないわけではありま... ...続きを見る

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2012/08/05 00:00
佐藤次高『イスラームの「英雄」サラディン』第2刷
 講談社学術文庫の一冊として、2011年11月に講談社より刊行されました。第1刷の刊行は2011年10月です。本書の親本は、講談社選書メチエの一冊として1996年に講談社より刊行されました。巻末の解説によると、著者は昨年(2011年4月)急逝したとのことです。本書は、寛大な英雄としてイスラーム社会だけではなくヨーロッパのキリスト教社会においても賞賛され続けてきたサラディン(サラーフ=アッディーン)の伝記ですが、伝統的なサラディン賛美ではなく、同時代の史料から当時の社会情勢とサラディンの人物像・行... ...続きを見る

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2012/07/26 00:00
藤田覚『日本近世の歴史4 田沼時代』
 『日本近世の歴史』全6巻の第4巻として、2012年6月に吉川弘文館より刊行されました。田沼意次は、賄賂政治家とも革新的政治家とも言われ、その評価が両極端に分かれやすい歴史的人物と言えるかもしれません。ただ、各日本史教師によって異なるのかもしれませんが、20年以上前に私が高校生だった時の日本史の授業では、田沼意次は革新的な政治家として高く評価されていました。本書でも、田沼意次の革新的な側面が取り上げられていますが、一方で、田沼時代に賄賂が横行したという伝統的な見解が否定されるわけではなく、田沼時... ...続きを見る

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2012/07/13 00:00
ヤコヴ=M=ラブキン著、菅野賢治訳 『イスラエルとは何か』
 平凡社新書の一冊として平凡社より2012年6月に刊行されました。本書は、著者の以前の著作である『トーラーの名において─シオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史』(平凡社、2010年、本書と同じく菅野賢治訳)のフランス語オリジナル原稿を大幅に圧縮し、新たに4章を加えた一般向け書籍とのことです。そのため本書は、ユダヤ教の側からのシオニズムにたいする批判に重点が置かれており、シオニズムが伝統的なユダヤ教およびその解釈の延長線上にあるのではなく、むしろユダヤ教を否定して成立・発展してきたのであり、伝統的... ...続きを見る

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2012/07/10 06:28
青木健『古代オリエントの宗教』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2012年6月に刊行されました。都市文化・文字文化が古くから栄えたメソポタミア平原・イラン高原という「東方地域」において、「聖書ストーリー」はいかに解釈・受容され、「東方地域」の在来の信仰はどのように変容していったのかという観点から、1〜13世紀にかけての「東方地域」の精神史が概観されています。本書を読むと、地中海(東岸)発の「聖書ストーリー」の影響力がきわめて強いことが印象に残り、この時期の「東方地域」の宗教・思想は、基本的には西から東へという流れになり... ...続きを見る

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2012/07/05 00:00
遠山美都男『天智と持統』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2010年11月に刊行されました。遠山氏の著書の多くは読みやすく面白いのですが、厳密さという点では疑問の残ることが多く、 http://sicambre.at.webry.info/200901/article_22.html 注意して読む必要があるでしょう。本書も、こうした過去の遠山氏の著書と同じ傾向にあるのですが、もう10年以上勉強の停滞している日本古代史について、新たに得た知見もあったので、一読の価値はあったと思います。 ...続きを見る

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2012/06/26 00:00
川島浩平『人種とスポーツ 黒人は本当に「速く」「強い」のか』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2012年5月に刊行されました。黒人が先天(遺伝)的に運動能力に優れているという言説は、現代日本社会でもかなり浸透しているように思われます。本書は、アメリカ合衆国スポーツ史の検証を通じて、この黒人運動能力先天的優越説が、20世紀、とくに1930年代以降に顕著になっていったことと、プロ・アマを問わず黒人のスポーツでの活躍が、経済・社会資本・政治的制度・社会思潮に大きく影響されていたことを示しています。おもに分析対象となるのは、野球・アメリカンフットボール・バ... ...続きを見る

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2012/06/13 00:00
渡邉義浩『魏志倭人伝の謎を解く』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2012年5月に刊行されました。副題は「三国志から見る邪馬台国」です。三国志と邪馬台国論争は、現代日本社会においてとくに人気の高い歴史分野なのですが、邪馬台国論争はまさに三国時代のことで、邪馬台国は三国で最大の勢力を誇った魏と密接な関係を有していたというのに、一般の歴史愛好者層では両者が密接に関連しているという印象はあまりなく、それぞれ個別に盛り上がっている感があります。 ...続きを見る

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2012/06/10 00:00
氣賀澤保規編『遣隋使がみた風景−東アジアからの新視点−』
 八木書店より2012年2月に刊行されました。倭と隋との関係について、東アジアという枠組みから考察するという、現代日本ではすっかり浸透した視点による論文集なのですが、複数の分野の研究者が加わっているということもあり、陳腐な印象は受けませんでした。図版もなかなか豊富ですし、巻末には、『隋書』や『日本書紀』といった遣隋使関連の史料が採録されており、新聞記者によるコラムも掲載されていますから、一般の読者にも配慮した内容と言えるでしょう。また、450ページにも及ぶ大部の書でありながら、価格は税込み399... ...続きを見る

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2012/06/05 00:06
原田実『つくられる古代史』
 新人物往来社より2011年7月に刊行されました。邪馬台国関連の遺跡や旧石器捏造事件や『東日流外三郡誌』問題や飛鳥時代の遺跡や聖徳太子実在論争など、具体的に取り上げられている歴史的事象・遺跡は多岐にわたっているのですが、遺跡そのものの学術的価値よりも、現代人の利益・利権という観点から遺跡の保存の有無が決まってしまう現状と、後世の人間の価値観・利害などから古代史が「造られる」ことへの警鐘が一貫した主題となっているので、雑多とかまとまりがないとかいった印象は受けませんでした。 ...続きを見る

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2012/05/26 04:18
元木泰雄『平清盛と後白河院』
 新潮選書の一冊として、新潮社から2012年3月に刊行されました。平清盛と後白河との関係を軸に、平安時代末期の政治史が詳しく解説されています。著者の他の著書や論考などを読んでいたので、著者の見解には馴染みがあり、違和感なく読み進められました。一般には、この時代の政治史は複雑で難しいと言われることが多いように思いますが、たとえばこの時代よりも一般的には人気・関心の高い時代である戦国時代と比較して、より複雑で難しいと言えるか疑問で、要は馴染み深さの問題なのではないか、とも思います。 ...続きを見る

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2012/05/18 00:00
森公章『日本史リブレット人002 倭の五王』
 山川出版社より2010年4月に刊行されました。邪馬台国論争ほどではないにしても、倭の五王についても一般の関心はなかなか高そうで、それは、おもに人物比定という謎解きの側面に集中しているように思います。本書でも、『宋書』に見える倭の五王が、「国内史料」たる『日本書紀』に見えるどの人物に相当するのか、ということにも触れられていますが、それは主な論点にはなっておらず、「国内史料」・「海外史料」・考古学的研究成果に基づき、該当期の前代も踏まえての「国内情勢」・「国際情勢」が堅実に検証・解説されています。... ...続きを見る

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2012/05/11 04:19
棚橋光男『後白河法皇』
 講談社選書メチエの一冊として、1995年12月に講談社より刊行されました。講談社選書メチエの創刊にあたって、講談社より著者に執筆依頼があり、著者もたいへん乗り気だったそうですが、1994年12月1日、まだ四十代の著者は肺の腺癌のため亡くなり、書き下ろしの講談社選書メチエとしては未完に終わりました。本書は、後白河に関する著者の論文と、ワープロに残されていた遺稿が掲載された論文集として刊行されることになり、講談社選書メチエとしては異例のことですが、著者の長年の友人であった橋昌明氏をはじめとして、... ...続きを見る

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2012/05/05 04:06
本村凌二『ローマ人に学ぶ』
 集英社新書の一冊として、集英社より2012年1月に刊行されました。表題から、かなり内容が薄いのではないか、との懸念もあったのですが、これまでに読んだ本村氏の一般向け著作には外れがなかったので、読んでみることにしました。しかし今回は、懸念がやや当たった感があり、雑多な感が否めず、ビジネス雑誌などで見られる歴史を現代に活かすという内容の特集と、悪い意味で通ずる軽さがあるように思われます。ただ、さすがに紹介されている個々の史実・伝承の取り上げ方と解説は読みごたえがありました。読んで損をしたとは思いま... ...続きを見る

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2012/04/18 18:34
ロナルド=H=フリッツェ著、尾澤和幸訳『捏造される歴史』
 原書房より2012年2月に刊行されました。本書では、さまざまな擬似歴史について、その主張の変遷・背景・影響力・間違っている点などが、ひじょうに詳しく述べられており、いわば擬似歴史の研究史・史学史(と言うと語弊がありそうですが)になっています。こうした擬似歴史のなかには、私にとって馴染み深いものもありましたが、地域としてはおもにアメリカ合衆国が対象となっているので、私のよく知らないものもありました。こうした擬似歴史は、そもそも政治的意図から捏造されることも少なからずあるため、政治的に影響を及ぼす... ...続きを見る

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2012/04/11 04:29
藤尾慎一郎『〈新〉弥生時代 500年早かった水田稲作』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2011年10月に刊行されました。国立歴史民俗博物館により、弥生時代の始まりがじゅうらい考えられていたよりも500年さかのぼる、との見解が公表されたのは2003年のことで、もう10年近く前のことになります。当時報道機関で大きく取り上げられたように、ひじょうに衝撃的な発表だったことは間違いないのですが、それだけにこの見解にたいする批判は根強くあるようで、今でも通説としての地位を確立したとは言えず、依然として議論が続いているように思います。 ...続きを見る

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2012/04/04 05:19
印東道子編『人類大移動 アフリカからイースター島へ』
 朝日選書の一冊として、朝日新聞出版より 2012年2月に刊行されました。本書は分担執筆の8章構成で、各論考の執筆者は、人類の移動を全地球規模で考えようという趣旨の、国立民学博物館の共同研究「人類の移動誌─進化的視点から」の構成員が中心になっています。本書は、ホモ=サピエンス(現生人類)以外の人類の出アフリカや世界各地への拡散についても触れられていますが、主要な議論は現生人類の世界各地への拡散とその様相についてであり、ホモ=ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)などユーラシア各地の先住人類... ...続きを見る

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2012/03/18 04:38
深井雅海『日本近世の歴史3 綱吉と吉宗』
 『日本近世の歴史』全6巻の第3巻として、2012年2月に吉川弘文館より刊行されました。将軍でいうと、5代綱吉・6代家宣・7代家継・8代吉宗の時代が扱われています。3代家光・4代家綱と病弱な将軍が続いたので、綱吉と吉宗が積極的に政治を主導した、との印象が強く残ります。幼少で将軍に就任して夭折した家継の印象はさすがに弱いのですが、在任期間の短かった家宣は、前代の綱吉の路線を修正したことや、新井白石の起用などもあり、印象が強く残ります。本書の扱う時代は全体的に、幼少の家継を除くと、「鉱山バブル」がは... ...続きを見る

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2012/03/11 04:35
本郷恵子『蕩尽する中世』
 新潮選書の一冊として、新潮社から2012年1月に刊行されました。著者の以前の著書『選書日本中世史3 将軍権力の発見』 http://sicambre.at.webry.info/201104/article_26.html が面白かったので、購入しました。『選書日本中世史3 将軍権力の発見』の時もそうでしたが、本書も、一見すると細かな実証が提示されつつも、日本史上の大きな問題が常に意識された構成・叙述となっており、奥深い一冊になっていると思います。 ...続きを見る

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2012/03/04 00:00
橋昌明『[増補改定]清盛以前』(平凡社)
 平凡社ライブラリーの一冊として2011年12月に刊行されました。本書は、もともと平凡社選書の一冊として1984年5月に刊行され、その増補・改定版が2004年10月に文理閣より刊行されました。本書は文理閣版に若干の訂正と注記が加えられており、今年の大河ドラマが、著者が二人の時代考証担当者の一方である『平清盛』ということから、刊行されることになったのでしょう。著者は武士見直し論の第一人者であり、10年以上前に『武士の成立 武士像の創出』(東京大学出版会、1999年)を読み、たいへん面白かったことを... ...続きを見る

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2012/02/25 04:48
野口実『武門源氏の血脈 為義から義経まで』
 2012年1月に中央公論新社より刊行されました。著者は武士見直し論の代表的研究者の一人で、ネットで評判になっていましたし、今年の大河ドラマ『平清盛』の時代背景をもっと詳しく知るという目的もあって、購入して読みました。本書では、平安時代末期の武門源氏の代表的人物である為義・義朝・頼朝・義経が取り上げられ、近年の研究成果に基づいてその事績が紹介され、通俗的な歴史観とは異なるところの多分にある解釈が提示されています。著者は武士見直し論の代表的研究者の一人だけに、本書では武士と貴族を対立的に把握すると... ...続きを見る

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2012/02/04 00:00
杣田善雄『日本近世の歴史2 将軍権力の確立』
 『日本近世の歴史』全6巻の第2巻として、2011年12月に吉川弘文館より刊行されました。本書の叙述範囲は、江戸幕府の将軍でいうと第三代の家光と第四代の家綱の時代を対象としていますが、家光の代とはいっても、第二代将軍秀忠没後がおもに叙述範囲となっており、家光が「天下人」となって以降ということになります。表題にあるように、この時代は将軍権力が確立していった時期なのですが、本書を読むと、むしろ将軍個人の資質に大きく左右されない安定した江戸幕府の統治体制の確立、との表現のほうが適しており、本書も基本的... ...続きを見る

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2012/01/25 06:21
森田善明『戦国10大合戦の大ウソ』
 ワックより2011年10月に刊行されました。厳島・桶狭間・謙信の関東侵攻・川中島・信長の美濃侵攻・信玄の西上戦・長篠・賤ヶ岳・秀吉の小田原城攻め・関ヶ原という、戦国時代の著名な10の合戦の俗説・通説を批判し、異なる見解を提示する、という体裁になっています。個々の合戦の俗説・通説にたいする批判と、それに替わる見解については、先行研究に依拠したところが多分にあり、本書で提示された見解のなかに、目新しいものはそれほど多くありません。 ...続きを見る

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2012/01/04 00:00
橋昌明編『別冊太陽 平清盛 王朝への挑戦』
 来年の大河ドラマ『平清盛』の放送開始が間近になったということで、平清盛を扱った書籍の刊行が書店で目立つようになってきました。本書は税別2300円と一般向けにしてはやや高いようにも思うのですが、ほぼすべてカラーページであり、編集部の執筆による清盛の生涯の概説には近年の研究成果が取り入れられていますし、研究者による論考が多数掲載されているので、お買い得だと思います。橋昌明氏の編纂ということで期待していたのですが、期待以上の内容でした。 ...続きを見る

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2011/12/22 00:00
本村凌二『古代ポンペイの日常生活』第4刷
 講談社学術文庫の一冊として、2010年10月に講談社より刊行されました。第1刷の刊行は2010年3月です。本書は、中公新書として1996年に刊行された『ポンペイ・グラフィティ』の増補・改訂版である『優雅でみだらなポンペイ』(講談社、2004年)を原本としたもので、ともにこれまで読んだことがなかったのですが、これまでに読んだ本村氏の一般向け著作には外れがなかったので、講談社学術文庫として刊行されたこの機会に読んでみることにしました。本村氏の学界での評価については、専門家ではない私にはよく分かりま... ...続きを見る

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2011/12/18 04:45
『天皇の歴史』全10巻完結
 2011年11月刊行の『天皇の歴史10 天皇と芸能』をもって、『天皇の歴史』全10巻が完結となりました。ここでは、各巻を紹介した記事をまとめて記載します。 ...続きを見る

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2011/12/14 06:51
渡部泰明、阿部泰郎、鈴木健一、松澤克行『天皇の歴史10 天皇と芸能』
 『天皇の歴史』全10巻の第10巻として、2011年11月に講談社より刊行されました。古代から近世までの天皇と芸能の関係が、複数の執筆者により叙述されています。ここでの芸能は、現代の言葉では文化と置き換えるのがもっとも適しているように思いますが、本書では和歌に偏重した感が否めず、実質的には天皇を中心とした宮廷和歌史になっているように思います。正直なところ、和歌にはあまり興味のない私には、やや退屈な内容でしたが、以下に引用する第四部の最後の指摘は、中世後期〜近世中期にあっても、朝廷の役割・主体性を... ...続きを見る

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2011/12/08 00:00
羽田正『新しい世界史へ―地球市民のための構想』(岩波書店)
 岩波新書(赤版)の一冊として、2011年11月に刊行されました。著者の以前の著書『興亡の世界史15 東インド会社とアジアの海』(講談社、2007年) http://sicambre.at.webry.info/200803/article_15.html がたいへん面白かったので、期待して読み始めたのですが、『興亡の世界史15 東インド会社とアジアの海』とは異なり、具体的な史実の描写はほとんどなく、抽象的・理念的な内容ではあったものの、期待通りに面白く読み進められました。 ...続きを見る

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2011/12/04 00:00
『ヒストリエ』フィリッポス2世とアンティゴノス1世
 『ヒストリエ』は現在第7巻まで刊行されており、 http://sicambre.at.webry.info/201111/article_29.html アレクサンドロスとヘファイスティオンが同一人物というか、アレクサンドロスの別人格がヘファイスティオンだと明かされています。『ヒストリエ』については、単行本でしか読んでいないので、この設定については第6巻を読んではじめて知ったのですが、当初は、さすがに失敗なのではないか、とも思いました。しかし、著者の構成力が優れていることは疑いようがないの... ...続きを見る

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2011/12/02 00:00
岩明均『ヒストリエ』第7巻発売(講談社)
 待望の第7巻が刊行されました。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html 第5巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200904/article_10.html 第6巻の内容は以下の記事にて述べていま... ...続きを見る

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2011/11/29 00:00
本郷和人『謎とき平清盛』
 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2011年11月に刊行されました。著者は来年の大河ドラマ『平清盛』の時代考証担当者の一人で、もう一人は橋昌明氏です。私が、『平清盛』の時代考証担当者が橋氏から著者に交代したのではないか、と誤解した記事を掲載したときに、著者から直接コメントをいただき、時代考証は二人体制であることが分かったのですが、 http://sicambre.at.webry.info/201110/article_30.html 本書の冒頭で、「大河ドラマ『平清盛』(以下、<ド... ...続きを見る

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2011/11/27 00:00
『平清盛の真実』
 インターナショナルラグジュアリーメディアより2011年11月に刊行されました。平清盛の生涯を中心として、平氏の歴史にも触れられています。来年の大河ドラマ『平清盛』の便乗本なのでしょうが、近年の研究成果も参照されており、大河ドラマ便乗本としては、なかなかの出来になっていると思います。著者については明記されていないのですが、執筆協力は「有限会社新選社/右京裕一」となっており、複数の筆者による分担執筆ということでしょうか。 ...続きを見る

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2011/11/22 00:00
藤井讓治『日本近世の歴史1 天下人の時代』
 『日本近世の歴史』全6巻の第1巻として、2011年11月に吉川弘文館より刊行されました。著者による一般向け書籍には『天皇の歴史05 天皇と天下人』があり、本書とは対象とする時代が重なるのですが、同書については以前このブログで取り上げたことがあります。 http://sicambre.at.webry.info/201106/article_8.html ...続きを見る

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2011/11/18 06:45
元木泰雄『河内源氏』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2011年9月に刊行されました。著者は武士見直し論の代表的な研究者の一人です。河内源氏の動向について、10世紀半ば〜12世紀半ばの平治の乱までが扱われていますが、武士見直し論の代表的な研究者の一人だけあって、鎌倉幕府の成立からの逆算的な河内源氏論ではなく、当時の文脈を踏まえたものであろうとする意識が強く窺えます。もちろん、こうした姿勢は当然のことと言えるでしょうが、研究者といえども、結果論的解釈を突き放すことはそれほど容易ではないだろう、とも思います。 ... ...続きを見る

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2011/10/18 19:41
小倉慈司、山口輝臣『天皇の歴史09 天皇と宗教』
 『天皇の歴史』全10巻の第9巻として、2011年9月に講談社より刊行されました。『天皇の歴史』は、8巻までが通史で、この9巻と次に刊行される最終巻の10巻は、特定の主題からの天皇の歴史が叙述されることになります。この9巻は、宗教と天皇の関係について、古代から現代まで概観されています。当然のことながら、天皇と宗教との関係については、古代から現代まで様々に変遷してきているわけで、宗教との関係に限定しても、天皇の「本質」を探るのは容易ではありませんが、そもそも、通時的な「本質」を見出そうとする試み自... ...続きを見る

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2011/10/09 00:00
『1492 コロンブス 逆転の世界史』
 フェリペ・フェルナンデス=アルメスト著、関口篤訳で、2010年11月に青土社より刊行されました。原書の刊行は2009年です。本書は、「遅れた」ヨーロッパが「進んだ」アジアを逆転し、ヨーロッパが主導権を握る、一体化した世界が到来する契機として、クリストバル=コロン(コロンブス)がアメリカ大陸圏に到達し、スペインがグラナダを攻略した1492年に見出し、その前後の世界各地の様相を描いています。 ...続きを見る

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2011/10/04 00:07
都出比呂志『古代国家はいつ成立したか』(岩波書店)
 岩波新書(赤版)の一冊として、2011年8月に刊行されました。前方後円墳体制論の提唱者として有名な著者は、本書でも、さまざまな考古学的知見を取り入れつつ、自説を補強しています。けっきょくのところ、国家成立の問題は、国家をいかに定義するかによるので、最終的には、価値観の相違が重要になってくるのだろう、とは思います。とはいえ、考古学や文献史学などの研究成果を踏まえつつ、より整合的で時代・地域の対象を広げるような国家成立論をめざして見解の応酬が続くのは、有意義なことではあると思います。 ...続きを見る

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2011/09/30 06:24
小路田泰直『邪馬台国と「鉄の道」』
 歴史新書の一冊として、洋泉社から2011年4月に刊行されました。小路田氏の著書では、邪馬台国論争を手掛かりとして、近代日本におけるナショナリズムと歴史認識の問題を論じた『「邪馬台国」と日本人』が面白く、自サイトで取り上げたことがありました。 http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/read003.htm ...続きを見る

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2011/09/23 00:00
加藤陽子『天皇の歴史08 昭和天皇と戦争の世紀』
 『天皇の歴史』全10巻の第8巻として、2011年8月に講談社より刊行されました。信頼できる記録によるかぎりでは、私が生まれた時にはすでに、昭和天皇は歴代最長の在位期間の天皇で、その後さらに16年以上在位し、1989年1月7日に崩御しました。このようにたいへん長い在位期間の昭和天皇でしたが、本書では、昭和天皇の在位期間の2/3以上、昭和天皇個人の生涯でいうと、その後半生についてはほとんど触れられず、第二次世界大戦における日本の敗北までが描かれ、昭和天皇の即位前について、それなりに分量が割かれてい... ...続きを見る

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2011/09/18 00:00
武井弘一『鉄砲を手放さなかった百姓たち』
 朝日選書の一冊として、2010年6月に刊行されました。本書では、江戸時代の百姓が武器を手放したわけではなく、多数の鉄砲(鉄炮)を所持していたことが、史料に即して主張されています。これは、塚本学氏や藤木久志氏などがすでに主張していたことですが、本書では、なぜ百姓が鉄砲を手放さなかったのか、江戸時代の政治・社会の在り様、とくに幕府による鉄砲規制の社会的意味合いという観点から、具体的事例が多数取り上げられつつ詳しく説明されているのが特徴と言えるでしょう。 ...続きを見る

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2011/08/30 00:00
衣川仁『僧兵=祈りと暴力の力』
 講談社選書メチエの一冊として、2010年11月に刊行されました。いわゆる僧兵など、中世日本の寺社勢力が武力を有していたことはよく知られていますが、そうした構造をもたらした社会的構造は何だったのか、またどのような過程で寺社勢力が武力を有するようになったのか、さらには、現代日本社会ではほとんど賛同されないであろう、宗教勢力が武力を有するということの社会的意味についてなど、総合的に僧兵の意味合いについて考察されています。ただ、本書が対象とする時代はほぼ平安時代後期ですから、通時的な考察という側面が弱... ...続きを見る

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2011/08/23 00:00
西川誠『天皇の歴史07 明治天皇の大日本帝国』
 『天皇の歴史』全10巻の第7巻として、2011年7月に講談社より刊行されました。明治天皇を中心に、明治時代が描かれています。明治天皇がどのように政治に関わったのか、当時の政府高官は明治天皇をどのように評価し、またどう導こうとしたのか、という観点を中心に考察・叙述されています。明治天皇が、政治への意欲を最初からずっと持ち続けていたわけではなかったものの、大津事件や日清・日露戦争を通じて「建国の父祖」の一員へと成長していったことや、明治政府のさまざまな立場の人々が、それぞれの立場・価値観から明治天... ...続きを見る

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2011/08/12 00:00
小林よしのり、有本香『はじめての支那論』
 幻冬舎現代新書の一冊として、幻冬舎より2011年7月に刊行されました。書店で見かけて、どんなものなのだろうかと、怖いもの見たさで購入して読みました。本書で云うところの支那がどう定義されるのか、明確に述べられているわけではないのですが、おおむね、漢人の居住地域で漢字文化の圧倒的に優勢な地域と考えてよさそうです。「支那論」と題しているので、支那という呼称をめぐる議論についてそれなりに説明・議論があるのかな、と予想していたのですが、意外にあっさりとしていました。 ...続きを見る

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2011/08/10 00:00
加藤博文『シベリアを旅した人類』
 ユーラシア・ブックレットの第123巻として、東洋書店より2008年6月に刊行されました。人類の最大の特徴は、地球上のほとんどあらゆる地域において生活しているという、生活空間の広さにある、との認識を前提として、基本的には熱帯型の生物である人類が、いかにして寒冷なシベリアへと到達し、そこで生活していたのか、ということが考古学の研究成果に基づいて叙述されています。本書の主題は、現生人類(ホモ=サピエンス)がいかにしてシベリアに進出し、どのように寒冷なシベリアに適応して生活していったのか、ということな... ...続きを見る

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2011/07/23 00:00
井上寛司『「神道」の虚像と実像』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2011年6月に刊行されました。柳田国男に代表される、「神道(シントウ)は、太古の昔から現在にいたるまで連綿と続く、自然発生的な日本固有の民族的宗教である」とする、現代日本では根強く支持されている見解を、超歴史的な見解として徹底的に批判し、神道という言葉の読みの変遷(ジンドウ・シンドウ→シントウ)などを踏まえて、神道の具体的様相と歴史的変遷をたどった、なかなかの力作だと思います。近代の国家神道の成立過程とその評価をはじめとして、私の見識では本書の主張の是非... ...続きを見る

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2011/07/22 00:00
金子隆一『アナザー人類興亡史』
 技術評論社より2011年5月に刊行されました。副題は「人間になれず消滅した“傍系人類”の系譜」です。本書の特徴は、人類の進化を広い視点で概観していることで、人類の祖先とチンパンジーの祖先とが分岐した後だけではなく、哺乳類の進化にまでさかのぼり、人類の進化を位置づけています。そのこととも関連するのですが、一般向けの人類進化の書籍にしては、人類の定義と学説史にも詳しく言及されており、リンネにまでさかのぼって、生物の分類・人類の定義がどのように変わってきたのか、ということが解説されています。 ...続きを見る

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2011/07/19 00:00
スペンサー=ウェルズ著、上原直子訳『旅する遺伝子』
 英治出版より2008年10月に刊行されました。原書の刊行は2007年です。著者は、ナショナルジオグラフィック協会主導の、人類がアフリカからどのように地球上へ移動したのか、遺伝学的な側面から研究するジェノグラフィック・プロジェクトのリーダーです。本書では、その研究成果が一般向けに紹介されています。一般向けということで、まず遺伝の仕組みやこれまでの研究の流れについて平易に述べられており、巻末には簡略なまとめと用語解説があるなど、優れた啓蒙書としての条件を備えている、と言ってよいでしょう。 ...続きを見る

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2011/07/16 00:00
渡邊大門『戦国誕生 中世日本が終焉するとき』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2011年5月に刊行されました。本書の主張は、戦国時代の始まりの指標を形式から実体(実力)への変化とし、その画期は、天皇・将軍・守護の権力が著しい低下を見せるようになった、15世紀半ばだった、というものです。形式から実体への変化については、戦国大名の代表例の一つにして守護大名の代表例の一つでもあった今川家の、「今川仮名目録追加二十一条」から、同時代の人々(の一部)にも自覚されていたと考えられますし、現代の視点からも、戦国時代の開始の妥当な指標の一つと言って... ...続きを見る

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2011/07/12 00:00
藤田覚『天皇の歴史06 江戸時代の天皇』
 『天皇の歴史』全10巻の第6巻として、2011年6月に講談社より刊行されました。天皇は、江戸時代初期には経済的に弱体化し、実質的な政治権力をほとんど喪失しましたが、幕末になってその政治的権威は向上し、明治の大日本帝国体制へと移行していくことになります。この変化がいかにして生じたのかという観点から、江戸時代の歴代の天皇の事績が、幕府との関係を中心にして、具体的に叙述されていきます。本書を読むと、中世の騒乱のなかで中止されるにいたった数々の朝議の再興に、江戸時代の天皇が熱心に取り組んでいたことと、... ...続きを見る

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2011/07/08 00:00
橋本雄『中華幻想』
 勉誠出版より2011年3月に刊行されました。他者崇敬としての中華と自己投影としての中華という観点から、「対外関係」を中心として、室町時代の人々の中華にまつわる認識が検証されています。自己投影としての中華という室町時代の「日本人」の「幻想」が、どのような背景・契機で当時の人々に選択されたのか、努めて実証的に叙述していこうとする姿勢が窺え、好感が持てます。正直なところ、私の見識では、本書で展開された議論の細部にいたるまで、充分に理解できたと言えるのかというと、自信はありませんが、ともかく、きわめて... ...続きを見る

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2011/06/29 00:56
溝口優司『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』
 ソフトバンク新書の一冊として、ソフトバンククリエイティヴより2011年5月に刊行されました。人類の進化史を概観したうえで、日本人起源論を取り上げるという、人類進化関連の問題としては、現代日本でもっとも需要の多そうなものについて論じられています。人類進化については、とくに目新しい情報はないのですが、ところどころ合目的な進化と解釈できる記述はあるものの、おおむね、近年の古人類学の研究成果を取り入れた穏当なものになっているのではないか、と思います。ただ、デニソワ人の遺伝子解析および現生人類(ホモ=サ... ...続きを見る

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2011/06/24 00:00
細川重男『鎌倉幕府の滅亡』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2011年3月に刊行されました。細川氏の著書は以前にもこのブログで取り上げたことがありますが、 http://sicambre.at.webry.info/201104/article_13.html なかなか面白かったので、本書も読んでみることにしました。 ...続きを見る

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2011/06/16 00:00
山本博文、堀新、曽根勇二編『消された秀吉の真実 徳川史観を越えて』
 柏書房より2011年6月に刊行されました。序章と第一章〜第十章までの各論考から成る論文集といった体裁になっています。各論考では豊臣秀吉の文書が取り上げられ、その原本の写真が掲載されるとともに、釈文と現代語訳が記載されており、一般向け書籍としてたいへん丁寧な構成になっています。だからといって、低俗に陥っているということはまったくなく、史料批判の徹底が非専門家にも分かりやすいような記述となっています。個々の論考で提示された見解の是非は今後も検証が必要でしょうが、一般向けの歴史書としてかなり良心的と... ...続きを見る

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2011/06/12 00:00
藤井讓治『天皇の歴史05 天皇と天下人』
 『天皇の歴史』全10巻の第5巻として、2011年5月に講談社より刊行されました。淡々と史実の叙述が続き、いつ著者の独自の見解が述べられるのだろう、とやや戸惑いながら読み進めていたところ、最後まで淡々とした史実の紹介に終始し、正直なところ、期待外れだったというか、大いに困惑しました。もちろん、史実にたいする著者の評価は随所で述べられていますし、そもそも史実をどう認定するのか、それをどのように叙述するのか、ということも著者の価値判断によるのですが、それにしても、もう少し著者独自の見解をまとめて述べ... ...続きを見る

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2011/06/08 00:00
早島大祐『室町幕府論』
 講談社選書メチエの一冊として、2010年12月に刊行されました。足利将軍家が逆賊とされた戦前はもちろんのこと、戦後も、弱々しい政権という印象もあってか、室町幕府というか室町時代の一般人気は低い(室町時代後半は大人気ですが、それは室町時代としてではなく、戦国時代としてです)のではないか、と思います。こうした状況において、研究の細分化もあり、研究者の側が一般層に体系的な室町幕府論を提示できていない、という問題意識のもと、本書は、朝廷の儀式の在り様などにも注目しつつ、儀式財政史的観点から室町幕府の在... ...続きを見る

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2011/05/24 00:00
榎本渉『選書日本中世史4 僧侶と海商たちの東シナ海』
 講談社選書メチエの選書日本中世史第4巻として、2010年10月に刊行されました。9〜14世紀における東シナ海の様相が、僧侶の往来を中心に叙述されていますが、僧侶の具体的事例の紹介が多く、なかなか興味深い一冊です。著者自身が述べているように、一般的な日本史の枠組みから外れたところが多分にあるとも言えるのですが、基本的には日本中心の視点になっており、日本中世史のという表題が羊頭狗肉というわけではない、と思います。現代日本の社会状況から考えて、今後、本書のような近代以降の国境という枠組みにとらわれな... ...続きを見る

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2011/05/08 00:00
本郷恵子『選書日本中世史3 将軍権力の発見』
 講談社選書メチエの選書日本中世史第3巻として、2010年9月に刊行されました。文書様式の特徴・変遷と、ある時期に特定の様式の文書が大量に出されていることなどから、鎌倉幕府と室町幕府との違い、さらには、朝廷(公家政権)の特質と、朝廷・天皇という仕組みが滅びずに長期間持続してきた理由を解明する端緒となり得る見解が提示されるなど、対象となる時代・事象が限定されているように見えながらも、日本史上の大きな問題が常に意識された構成・叙述となっており、奥深い一冊だと言えるでしょう。 ...続きを見る

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2011/04/26 00:00
杉山正明『ユーラシアの東西』
 日本経済新聞出版社より2010年12月に刊行されました。一般向けの歴史書というよりは随筆集で、ロシアを中心として、時事問題にもかなりの分量が割かれています。内容はというと、相変わらずの杉山節で、杉山氏の他の著書を読んでいれば、とくに目新しいところはないのですが、いぜんとしてヨーロッパ中心史観と中華中心史観の根強い日本では、杉山氏の提言が必要なのだろう、とは思います。とくに、中華人民共和国が今後も経済・軍事・政治大国として影響力を強めていった場合、日本でも中国へのさらなる迎合により中華中心史観(... ...続きを見る

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2011/04/24 00:00
下斗米伸夫『ゴルバチョフの時代』
 岩波新書(赤版)として、岩波書店より1988年5月に刊行されました。ソ連崩壊後、ソ連関連の史料の公開が以前と比較して大きく進展しているでしょうから、ソ連の歴史を知るために、ソ連崩壊の3年前に刊行された本書を改めて読む意味はあまりないでしょう。しかし、古書店にて100円で売っており、安いということと、当時の雰囲気を改めて感じてみたいという懐古趣味から購入して読んでみました。ペレストロイカやグラスノスチといった言葉は、私以上の年齢の人にとっては、懐かしさを覚えるものだと思います。本書の定価は480... ...続きを見る

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2011/04/19 00:00
竹岡俊樹『旧石器時代人の歴史 アフリカから日本列島へ』
 講談社選書メチエの一冊として、講談社より2011年4月に刊行されました。著者はいわゆる旧石器捏造事件において、捏造を暴いた毎日新聞によるスクープの前より、藤村新一氏によって発見されたと発表されてきた旧石器が捏造であることを見抜いており、毎日新聞取材班の主要な根拠・情報源の一つとなったのが、著者の見解でした。本書は、旧石器捏造事件を直接の主題とはしていませんが、旧石器捏造事件を防げなかった日本の考古学の問題点を指摘するとともに、日本の旧石器時代研究はいかにあるべきか、ということを具体的事例・解説... ...続きを見る

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2011/04/17 05:25
細川重男『北条氏と鎌倉幕府』
 講談社選書メチエの一冊として、2011年3月に刊行されました。鎌倉幕府の実権を握った北条一族がなぜ将軍にならなかったのかという観点から、鎌倉時代を概観しつつ、義時と時宗を中心にした北条一族の盛衰と支配の論理を説明しています。北条一族がなぜ将軍にならなかったのかという問題は、天皇という枠組みがなぜ千数百年以上続いたのか、という問題と通ずるところがあるように思われます。こうした問題意識の前提として、本当は天皇や将軍になりたかったのになれなかった、という解釈があることが多いのですが、本書では、そうし... ...続きを見る

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2011/04/13 00:00
鈴木眞哉『戦国「常識・非常識」大論争』
 歴史新書の一冊として洋泉社より2011年2月に刊行されました。副題は「旧説・奇説を信じる方々への最後通牒」という挑発的なもので、じっさい、内容も挑発的ではあるのですが、正直なところ、これまでに著者が提示してきた見解を挑発的に言い換えただけ、といったところが多分にあり、目新しい見解は提示されておらず、著者の偏狭さのみが印象づけられるという結果になっています。著者が提示する見解自体には、納得できるものが多いので、なんとも残念です。もっとも、著者の主観では、より説得力のある自説があまり受け入れられて... ...続きを見る

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2011/04/09 00:00
藤田達生『信長革命』
 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2010年12月に刊行されました。藤田氏の著書では、『本能寺の変の群像』や『秀吉神話をくつがえす』 http://sicambre.at.webry.info/200803/article_27.html などを読んできたので、本書で提示された基本的見解は、私には馴染みのあるものでした。つまり、研究の進展を踏まえた、より精緻な叙述になってはいるのですが、基本的な構想では、とくに目新しい点はありません。 ...続きを見る

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2011/04/08 00:00
河内祥輔、新田一郎『天皇の歴史04 天皇と中世の武家』
 『天皇の歴史』全10巻の第4巻として、2011年3月に講談社より刊行されました。平安時代後期〜鎌倉時代までを扱う第一部を河内氏、室町時代(南北朝時代〜戦国時代)を扱う第二部を新田氏が担当しています。正統という概念をキーワードとし、朝廷再建運動という観点から中世史が展望されるのですが、意識して武士対貴族という観念から脱しようとしてきた私も、やはり近代以降の武士中心の史観に慣れているということもあってか、違和感のある見解の提示が少なくなく、とくに第一部には、疑問の残る見解が少なくありません。 ... ...続きを見る

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2011/04/01 00:00
手嶋兼輔『ギリシア文明とはなにか』
 講談社選書メチエの一冊として、2010年8月に刊行されました。著者は後書きにて、「学問の最前線からは遠ざかり、専門家たちの常識にも疎い私には、とんだ見当違いや自分勝手な思い込みに陥っている点、恐らく多々あろう」と述べており、この点に不安はあるのですが、狭義の古代ギリシア史ではなく、対象としているのが地理的・時間的に広範で、壮大な見通しが提示されているということもあって、専門家ではない私はひじょうに面白く読み進めました。私のように、古代ギリシア史に関心はあるものの、それほど詳しいというわけではな... ...続きを見る

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2011/03/17 00:00
東島誠『選書日本中世史2 自由にしてケシカラン人々の世紀』
 講談社選書メチエの選書日本中世史第巻として、2010年6月に刊行されました。本書は選書日本中世史として刊行されており、具体的に取り扱われる時代はおおむね中世なのですが、現代社会の在り様とその変容について強い関心を持ち、そこから中世史を見直していき、過去のみならず今後の「変革可能性」を見出してこう、との視点が強く打ち出されています。もちろん、すべての歴史は現代史ですから、本書の視点はとくに不思議ではないのですが、それをはっきりと打ち出していることは、論点が明確になるという意味で、よいのではないか... ...続きを見る

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2011/03/08 00:00
佐々木恵介『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』
 『天皇の歴史』全10巻の第3巻として、2011年2月に講談社より刊行されました。本書が対象とするのは9世紀半ば〜11世紀半ばで、いわゆる摂関政治の時代を扱っています。この時代の天皇の存在感が前代までと比較して薄いのではないか、と多くの人が考えているでしょうが、本書でも指摘されているように、それは、誰が天皇になっても摂政や関白や蔵人所などが天皇の権能を過不足なく行使できる体制が整えられた時代ということでもあり、天皇が制度化された、ということでもあるのでしょう。その意味で、天皇という枠組みが安定し... ...続きを見る

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2011/03/01 00:00
吉川真司『天皇の歴史02 聖武天皇と仏都平城京』
 『天皇の歴史』全10巻の第2巻として、2011年1月に講談社より刊行されました。いわゆる奈良時代を中心としつつも、天智朝末や平安時代初期と、その前後の時代も扱われています。藤原京・平城京・長岡京・平安京など、都城の構造からもそれぞれの時代の政権の構造が考察されており、なかなか興味深いと思います。表題にあるように、平城京を仏都として把握するのが本書の中心的な視点で、それは、長岡京、さらには平安京の遷都後も変わらなかった、とされています。 ...続きを見る

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2011/02/22 06:30
小島毅『江と戦国と大河 日本史を「外」から問い直す』
 光文社新書の一冊として、光文社より2011年1月に刊行されました。小島氏の著書については、これまでにもこのブログで、『靖国史観−幕末維新という深淵』 http://sicambre.at.webry.info/200803/article_29.html 『足利義満 消された日本国王』 http://sicambre.at.webry.info/200803/article_30.html 『織田信長 最後の茶会』 http://sicambre.at.webry.info/2009... ...続きを見る

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2011/02/17 00:00
元・大鳴戸親方(関脇高鉄山)『八百長〜相撲協会一刀両断〜』(鹿砦社)
 初版第1刷の刊行は1996年5月10日です。著者は本書の発売直前の1996年4月14日に急逝したのですが、著者の後援者でともに大相撲の八百長を暴露した橋本成一郎氏も同日に同じ病院にて同じ病気(肺炎)で亡くなっており、二人の死は謀略だと考える人は少なくないでしょう。もっとも、本当になんらかの謀略があったのか、今となっては検証が難しいとは思います。現在の大相撲界の八百長問題に影響を受けて本書を購入したというわけではなく、ブックオフにて100円で購入したのは10年近く前だったと記憶しています。もっと... ...続きを見る

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2011/02/11 05:30
読売新聞取材班『検証 日露戦争』
 中公文庫の一冊として、中央公論新社より2010年9月に刊行されました。本書の親本は、同じ題名で中央公論新社より2005年に刊行されていますが、それは2004〜2005年にかけての読売新聞の連載記事「現代に生きる日露戦争」を、加筆・修正したうえで書籍化したものです。文庫化にあたって、欧米の研究者へのインタビューが割愛され、特別寄稿の横手慎二「日露戦争の歴史的意義」が新たに所収されています。 ...続きを見る

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2011/02/08 00:00
本郷和人『選書日本中世史1 武力による政治の誕生』
 講談社選書メチエの選書日本中世史第1巻として、2010年5月に刊行されました。著者の提示する歴史像にはどうも納得のできないことが多いのですが、選書日本中世史シリーズでこの巻だけを読まないというのも落ち着かないので、読むことにしました。本郷氏の他の著書を以前このブログで取り上げたことがありますが、 http://sicambre.at.webry.info/200711/article_6.html 本書を読んでの全体的な感想も、その時とあまり印象は変わりません。 ...続きを見る

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2011/01/08 00:00
藤本正行『本能寺の変 信長の油断・光秀の殺意』
 歴史新書の一冊として、洋泉社から2010年10月に刊行されました。すでに著者には、同じく本能寺の変を取り上げた、鈴木眞哉氏との共著『信長は謀略で殺されたのか』(洋泉社、2006年)があるので、本書の見解はおおむね意外なものではなかったのですが、『信長は謀略で殺されたのか』刊行後の本能寺の変についての二つの見解への反論や、有名な「是非に及ばず」の解釈について、通説とは異なるものが提示されているなど、単なる焼き直しにはなっていないので、読む価値はじゅうぶんにあると思います。 ...続きを見る

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2010/12/23 00:00
大津透『天皇の歴史01 神話から歴史へ』
 『天皇の歴史』全10巻の第1巻として、2010年11月に講談社より刊行されました。この書名は、明らかに、40年以上前の中公版『日本の歴史』の第1巻を意識したものでしょう。井上光貞『日本の歴史1 神話から歴史へ』は、シリーズものの歴史書としては異例の売れ行きだったそうです。この『天皇の歴史』は、第1巻〜第8巻までが時代順の通史的役割を担い、第9巻と第10巻は、通史ではまとまった叙述の難しい、宗教・芸能と天皇との関係が取り上げられます。毎日新聞では、著者へのインタビュー記事も掲載されています。 ... ...続きを見る

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2010/12/21 00:00
河合信和『ヒトの進化 七〇〇万年史』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2010年12月に刊行されました。以前、河合氏のブログを取り上げたときに、 http://sicambre.at.webry.info/201011/article_24.html 本書の刊行が近いことにも触れましたが、本書の概要は、河合氏のブログにて紹介されています。 http://blog.livedoor.jp/nobukazukawai/archives/1827034.html ...続きを見る

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2010/12/09 00:00
岡村道雄『旧石器遺跡「捏造事件」』
 山川出版社より2010年11月に刊行されました。今年で旧石器捏造事件の発覚から10年ということで、関連書籍が複数刊行されています。このブログでも、角張淳一『旧石器掘捏造事件の研究』 http://sicambre.at.webry.info/201011/article_23.html と、松藤和人『検証「前期旧石器遺跡発掘捏造事件」』 http://sicambre.at.webry.info/201012/article_3.html を取り上げました。 ...続きを見る

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2010/12/07 00:00
松藤和人『検証「前期旧石器遺跡発掘捏造事件」』
 雄山閣より2010年10月に刊行されました。今年で旧石器捏造事件の発覚から10年ということで、関連書籍が複数刊行されています。著者は、前・中期旧石器問題調査研究特別委員会の、形態・型式学的な検討から捏造に使用された石器の出自を解明する役割を担った第四作業部会の部会長で、最近では日本列島では最古となるだろうと報道された、島根県出雲市の砂原遺跡の調査に関わりました。 http://sicambre.at.webry.info/201007/article_7.html ...続きを見る

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2010/12/03 00:00
角張淳一『旧石器掘捏造事件の研究』
 鳥影社より2010年5月に刊行されました。今年で旧石器捏造事件の発覚から10年ということで、関連書籍が複数刊行されています。著者は、毎日新聞が旧石器捏造事件をスクープする前に、藤村新一氏(現在は苗字を変えているそうですが)の関与した「遺跡」の問題点を指摘していた数少ない研究者の一人で、旧石器捏造事件をめぐる議論での重要な論者の一人になりました。 ...続きを見る

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2010/11/23 05:40
竹内康浩『中国王朝の起源を探る』
 世界史リブレット95として、山川出版社より2010年3月に刊行されました。著者の姿勢はきわめて慎重というか禁欲的で、それは夏王朝の認定についての見解によく表れています。現代の中国では、夏王朝の実在は学界においても確実なこととして認定されており、夏王朝の実在について、日本では慎重な姿勢を示すことの研究者が多いことと対照的です。著者によると、中国では、二里頭遺跡をもって夏王朝実在の考古学的根拠とされているのですが、中国で刊行される概説や通史では、二里頭遺跡の考古学的成果が夏王朝史として述べられてい... ...続きを見る

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2010/11/21 05:50
『天皇の歴史』全10巻
 書店で偶然に、『天皇の歴史』全10巻が2010年11月から講談社より刊行されることを知りました。 http://shop.kodansha.jp/bc/books/tennou/ ...続きを見る

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2010/11/18 00:00
足立倫行『激変!日本古代史』
 朝日新書の一冊として、朝日新聞社より2010年1月に刊行されました。著者はノンフィクション作家で、著者自身の見解を提示するのではなく、専門家の見解を取材しまとめています。邪馬台国論争を中心に、聖徳太子・大化改新・伊勢神宮など、一般にも関心の高い問題が取り上げられています。本書の特徴は、著者が現地に赴いて取材していることで、このような手法は珍しくありませんが、現地で研究者にしっかりと取材しているところは、新書としてはなかなかよいと思います。 ...続きを見る

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2010/11/07 00:00
川尻秋生編『歴史と古典 将門記を読む』
 吉川弘文館より2009年2月に刊行されました。「将門記を読む」と題されていますが、『将門記』についての詳細な研究だけではなく、武器についての研究なども含む、総合的な平将門研究を一般向けに紹介した一冊となっています。平将門の乱は舞台が坂東ということで、ほぼ同時期の藤原純友の乱とは対照的に、一般には陸上の視点からとらえられているかもしれませんが、本書では、近年の研究成果も踏まえて、将門の乱の背景として、水上交通が重要な役割を果たしていただろうということと、それと整合的な研究として、この時期が温暖だ... ...続きを見る

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2010/11/03 00:00
鈴木眞哉『戦国軍事史への挑戦』
 歴史新書の一冊として洋泉社より2010年6月に刊行されました。戦国時代の軍事面での基本的な事柄について、著者が疑問に思ったことや、根強く浸透してしまっている誤解を訂正することが主題となっています。戦国時代の戦いで有効な武器は何だったのかという問題について、同時代の「戦闘報告書」に依拠した解説は、正直なところ、過去の著書のネタの使い回しといった感がありますし、鈴木氏の著書にそうした過去のネタの使い回しが目立つことは否定できないだろう、と思います。 ...続きを見る

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2010/10/07 00:01
広瀬和雄『前方後円墳の世界』
 岩波新書の一冊として、岩波書店より2010年8月に刊行されました。前方後円墳が築造された350年(この年代は、一部の古代史愛好家にとっては長すぎるということになるのでしょうが)ほどの時代の政治・社会が、各地の前方後円墳の大きさ・副葬品・立地・年代などから推測されています。全体的に、大和への求心力・大和の中心性を強調する見解になっており、九州王朝説派など一部の古代史愛好家にとっては、大和中心史観・皇国史観として糾弾すべき見解になっている、と言えるでしょう。 ...続きを見る

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2010/10/03 00:00
後藤明『海から見た日本人』
 講談社選書メチエの一冊として、2010年4月に刊行されました。日本列島が主題とはなっていますし、じっさい日本列島に関する記述は他の地域よりも多いのですが、日本列島史・日本人形成史というよりは、海人に関する考察が真の主題になっているような印象を受けます。海人とは、漁民を意味するのではなく、海を生活拠点としながら、漁撈・海上交易・工芸・製塩・水先案内・海賊・水軍など、多様な生業を営む人々のことで、本書では、日本列島はもちろん、東南アジア・メラネシア・ポリネシア・ヨーロッパなどにおける、海人の事例が... ...続きを見る

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2010/09/07 00:00
小林敏男『日本国号の歴史』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2010年8月に刊行されました。本書では、網野善彦氏に代表される、日本国号の画期性を強調し、日本国号制定以前には「日本人」はいなかった、というような見解は、呼称の変化に本質(実体)を見る観念的言説だとして退けられ、自称としてのヤマトの連続性を強調する見解が提示されています。日本という表記は、倭に代わる国号として7世紀後半〜8世紀初頭に定められましたが、倭にせよ日本にせよ、中華の地の諸王朝や朝鮮半島諸国向けの対外的なもので、日本列島(の大部分を覆う... ...続きを見る

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2010/09/03 00:00
藤本正行『長篠の戦い 信長の勝因・勝頼の敗因』
 歴史新書の一冊として、洋泉社から2010年4月に刊行されました。藤本氏のかねてからの主張の再論といった感じで、それほど新鮮さはありませんでしたが、藤本氏の見解への批判にたいする再反論や火縄銃についての基礎知識も述べられていて、得るところが少なからずありました。本書では、長篠の戦いは戦術革命ではなく、それまでの戦術の流れを集成したものであり、後世にも引き継がれているから、その時代を象徴する戦いだった、と主張されていますが、妥当な見解だと思います。 ...続きを見る

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2010/08/03 00:00
佐伯真一『建礼門院という悲劇』
 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2009年6月に刊行されました。2012年の大河ドラマの主人公が平清盛と決まった、と報道された http://sicambre.at.webry.info/201007/article_24.html ので読んでみたというわけではなく、上記報道以前に書店でたまたま目についたので、購入して読んでみた、という次第です。建礼門院について述べた確実な史料はほとんどないので、その実像を追及するのは困難であり、本書の目的は、多くの異本からなる『平家物語』の記述に基... ...続きを見る

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2010/07/31 00:00
『興亡の世界史』完結
 2010年5月刊行の『興亡の世界史18 大日本・満州帝国の遺産』をもって、ついに『興亡の世界史』全21巻が完結となりました。『興亡の世界史』の刊行が2006年12月に始まると知ったのは4年近く前のことですが、 http://sicambre.at.webry.info/200607/article_8.html まさか2010年5月まで完結がずれ込むとは予想していませんでした。全体的にはなかなかの出来になっていると思いますが、全21巻となると、やはり当たり外れはあります。この記事では、各巻... ...続きを見る

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2010/06/25 00:00
実松克義『アマゾン文明の研究』
 現代書館より2010年2月に刊行されました。副題は、「古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか」です。以前テレビで、アマゾン流域の「モホス文明」が紹介されていましたが、それは、著者が主体的役割を果たしたモホス・プロジェクトの途中までの成果をテレビ局(TBS)が映像化したものでした。この番組を見たときは、モホス「文明」と言えるのか、疑問を持ち、どうも納得がいなかったことを覚えています。その後もプロジェクトは続き、その成果が活字化されたということで、読んでみることにしました。また、ヨーロッパ... ...続きを見る

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2010/06/22 00:00
清水克行『日本神判史』
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2010年5月に刊行されました。清水氏の以前の著書『喧嘩両成敗の誕生』がたいへん面白かったということもありますが、盟神探湯・湯起請・鉄火起請といった過酷な裁判を行なった当時の人々の心性に以前より関心があったので、読んでみることにしました。本書が取り扱っている時代はおもに中世後期〜近世初期で、古代の盟神探湯にはあまり触れられていません。古代の盟神探湯と中世の湯起請との間には断絶があるとの見解が歴史学では優勢だそうで、漠然と両者の類似性・継続性を考えていた自分... ...続きを見る

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2010/06/15 00:00
五島勉『未来仏ミロクの指は何をさしているか』(青萠堂、2010年)
 五島勉氏の著書は、2004年7月に同じく青萠堂から刊行された『予言体系I釈迦と日蓮 やはり世界は予言で動いている』が最後になるのかと思っていたところ、今年の3月に本書が刊行されていることを知り、五島氏の著書を熱心に読んできた私は、すぐに本書を購入して読みました。不謹慎な言い方になりますが、もう、五島氏の新作を読めないかもしれませんので、五島氏がけっきょくはどのような見解にたどりついたのか、という観点からも読み勧めました。 ...続きを見る

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2010/06/13 00:00
『一万年の進化爆発 文明が進化を加速した』(日経BP社、2010年)
 グレゴリー=コクラン、ヘンリー=ハーペンディング著、古川奈々子訳で、日経BP社より2010年5月に刊行されました(Cochran, and Harpending.,2010)。原書の刊行は2009年です。人類の進化は5万年前に止まったわけではなく、この1万年間はそれ以前と比較して加速している、遺伝的変異と環境には相互作用が認められる、との本書の見解は、おおむね妥当なものだろうと思います。 ...続きを見る

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2010/06/10 00:11
姜尚中、玄武岩『興亡の世界史18 大日本・満州帝国の遺産』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ21冊目となります(2010年5月刊行)。2006年12月に刊行の始まった『興亡の世界史』シリーズの最後の刊行となります。『興亡の世界史』シリーズは、1ヶ月に1冊刊行されていれば、2008年には刊行が終わっていたはずですが、最後の刊行が2010年5月にずれ込むとは、刊行当初にはまったく予想していませんでした。 ...続きを見る

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2010/06/06 00:00
小谷野敦『日本文化論のインチキ』
 幻冬舎新書の一冊として、幻冬舎から2010年5月に刊行されました。通俗的な数々の日本文化論に、かねてより疑問を抱いていたので、色々と得るところがあるのではないかと思い、読んでみました。取り上げられている日本文化論の書籍・論考は多岐にわたり、その分個々の日本文化論への批判・指摘が簡潔にすぎるところもありますが、新書という体裁なのですから、これでよいだろうと思います。本書で取り上げられた日本文化論のなかには私がほとんど知らなかったものもあり、期待通りに得たものは多々ありました。 ...続きを見る

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2010/06/01 00:00
岩明均『ヒストリエ』第6巻発売(講談社)
 待望の第6巻が刊行されました。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html 第5巻の内容は以下の記事にて述べています。 http://sicambre.at.webry.info/200904/article_10.html ...続きを見る

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2010/05/25 00:00
伊藤正敏『無縁所の中世』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2010年5月に刊行されました。伊藤氏の著書は以前にも読んだことがあったので、本書で提示された見解にも、それほど意外な感はありませんでした。表題からも分かるように、網野善彦氏の『無縁・公界・楽』を強く意識した内容となっていますが、著者の見解は網野氏の無縁論に批判的です。とはいえ、もちろん網野氏の見解の全否定ではなく、網野氏寄りに解釈すれば、網野氏の無縁論を批判的に継承した、と言えるでしょう。もっとも、表題から網野氏にこだわるのは妥当ではなく、本文中でも述べら... ...続きを見る

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2010/05/22 00:00
中田正光『村人の城・戦国大名の城』
 歴史新書の一冊として、洋泉社から2010年4月に刊行されました。戦国時代の城、そのなかでも北条氏、とくに北条氏照の関わった城を中心に、城から見た戦国時代の在り様が提示されています。戦国時代の戦いの様相が、百姓の動向も大きく取り上げられて叙述されており、英雄豪傑の活躍する戦国絵巻ではなく、派手なところはありませんが、戦国時代の日本列島の社会が、板東を中心として具体的に記述されています。北条氏が流通の掌握を重視していたらしいことなど、本書で提示される歴史像には興味深いものが少なくありません。 ... ...続きを見る

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2010/05/15 00:05
室谷克実『日韓がタブーにする半島の歴史』
 新潮新書の一冊として、新潮社から2010年4月に刊行されました。近年量産されている嫌韓本とは水準がことなり、古代の日本列島と朝鮮半島の関係について真剣に検証されているとの評判を聞いたので、勉強の停滞している日本古代史についての勉強になるかと思い、購入してみました。しかし、読み始めてすぐに、いきなり九州王朝説に好意的な見解が提示され、脱力してしまいました。これは本書の後半になっても変わらず、著者は九州王朝説のほうが通説よりずっと説得力がある、と考えているようです。このような著者の古代史についての... ...続きを見る

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2010/05/12 00:00
松浦玲『坂本龍馬』第4刷(岩波書店)
 岩波新書(赤版)の一冊として、2010年2月に刊行されました。第1刷の刊行は2008年11月です。龍馬について私はほとんど知らず、妙に持ち上げられている胡散臭い人物というような漠然とした印象しか持っていなかったので、龍馬が主人公の大河ドラマが放映されている現在、安直な動機ではありますが、一度龍馬について学術的な成果に基づいた本を読んでみようと思った次第です。 ...続きを見る

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2010/05/06 00:00
とくに面白かった本
 ブログの読書の記事も増えてきましたので、とくに面白いと思った本に関する記事を、ブログ開始以前の記事も含めて、以下にまとめて掲載することにしました。 ...続きを見る

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2010/04/25 06:26
長崎尚志『アルタンタハー 東方見聞録奇譚』
 講談社より2010年1月に刊行されました。『イリヤッド』の原作者である長崎氏(『イリヤッド』では東周斎雅楽名義)の初の小説ということで、読んでみました。「東方見聞録奇譚」との副題なので、『東方見聞録』がじゅうような役割をになうのかと思ったら、そうでもなかったのは意外でした。また、「東方見聞録奇譚」との副題から、歴史ミステリーとしての性格の強い作品なのかと予想していたら、サスペンス・ヒューマンストーリー的性格のほうがずっと強かったのも意外でした。この点では予想が外れたのですが、最後まで早く続きを... ...続きを見る

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2010/04/06 06:54
神田千里『宗教で読む戦国時代』
 講談社選書メチエの一冊として、2010年2月に刊行されました。戦国時代に日本列島においてなぜキリスト教が勢力を拡大し、その後に弾圧されるにいたったのか、という日本史上の大問題にたいする意欲的な解答になっています。私が10代の頃に学校や歴史関係の本で学んだのは、キリスト教はその信者に身分秩序・権力者よりも神(信仰)を優先させるようになり、封建制度を否定しかねない危険な思想だったから、というような説明でした。 ...続きを見る

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2010/03/30 01:05
ケネス=フィーダ『幻想の古代史』上・下
 福岡洋一訳で、楽工社より2009年11月に刊行されました。古代史・先史時代を中心として、カーディフの事件やピルトダウン事件といった捏造事件や、地球外知的生命体による人類の進化・文化への介入といった珍説が取り上げられ、その知識不足・思考様式が批判されるとともに、そうした捏造事件や珍説が一定以上影響力を有した背景についても指摘されています。本書を読めば、たんに知識が得られるだけではなく、批判的思考の訓練にもなることでしょう。原書の刊行は2008年(6版)です。本書は英語圏でかなり有名な擬似古代史批... ...続きを見る

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2010/03/02 21:24
大山誠一『天孫降臨の夢 藤原不比等のプロジェクト』
 NHKブックスの一冊として、日本放送出版協会より2009年11月に刊行されました。書店で目次とカバーの概要を読んだとき、聖徳太子架空人物説で有名な大山誠一氏も、ついに一線を超えてしまい、「古代史解明本」や「古代史真相本」を自信満々に世に問いかける「在野の研究者の世界」へと踏み入ってしまったのか、と嫌な予感がしたのですが、聖徳太子架空人物説について新たな見解を知ることができるかな、と思って読んでみました。残念ながら、嫌な予感は半ば以上的中したと言えるかもしれませんが、本書で提示された「過激な」見... ...続きを見る

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2010/02/27 07:00
堀新『日本中世の歴史7 天下統一から鎖国へ』
 吉川弘文館より2009年12月に刊行されました。織田信長の台頭から「鎖国の完成」という、現代日本では一般にも大きな関心をもたれている時代が扱われており、おそらく、この『日本中世の歴史』全7巻のなかで、もっとも売れるだろうと思います。本書の特徴は、武家と朝廷との関係を相互補完的な公武結合王権とする認識に基づいて、この時代の政治史を叙述している点です。 ...続きを見る

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2010/02/14 06:29
デイビッド=ギビンズ『アトランティスを探せ』上・下
 遠藤宏昭訳で、扶桑社ミステリーの一冊として扶桑社より2009年7月に刊行されました。原書の刊行は2005年です。以前、コメント欄でイリヤノファンさんにご教示いただき、面白そうなので読んでみました。 http://sicambre.at.webry.info/200812/article_4.html ...続きを見る

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2010/01/28 00:00
早川万年『壬申の乱を読み解く』(2009年)
 歴史文化ライブラリーの1冊として、吉川弘文館より刊行されました。壬申の乱についての近年の研究成果を把握しておきたいと思い、倉本一宏『戦争の日本史2 壬申の乱』 http://sicambre.at.webry.info/201001/article_5.html の直後に読みました。 ...続きを見る

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2010/01/06 00:00
倉本一宏『戦争の日本史2 壬申の乱』第3刷
 吉川弘文館より2007年2月に刊行されました。第1刷の刊行は2007年2月です。壬申の乱についての近年の研究成果を把握しておきたいと思い、読んでみました。本書は、壬申の乱の詳細な様相を時系列に留意して地図を用いつつ説明し、研究史についてもこれまでの問題点を簡潔にまとめており、一般向けの壬申の乱についての本としては親切な構成になっている、と思います。この詳細な叙述だけでも、今後長く壬申の乱についての一般向け概説書として読まれるだけの価値があるでしょう。 ...続きを見る

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2010/01/05 06:39
青柳正規『興亡の世界史00 人類文明の黎明と暮れ方』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ20冊目となります(2009年11月刊行)。冒頭にて現代人の把握する時間軸の短さが指摘された本書においては、更新世以前の人類の進化にもかなりの分量が割かれています。もっと長い時間軸で人類文明をととらえなければならない、との著者の問題意識に基づく構成ということなのでしょう。著者は古人類学の専門家ではないだけに、本書の更新世以前の人類の進化の記述にはとくに目新しい情報はありませんし、疑問もないわけではありませんが、古人類学に関心のある私にとっては、このような世界史シ... ...続きを見る

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2009/12/09 00:00
三宅正樹『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日新聞社)
 朝日選書の一冊として、2007年2月に刊行されました。おもに1939年〜1941年の独ソ関係を、日本も絡めて、日ソ独伊の四国連合構想成立の可能性という観点から考察しています。この時期の日本にとって重要な課題の一つに、泥沼化していた日中戦争の解決があります。この大きな制約が、当時の日本の外交路線をかなりのところ規定していました。中国を屈服させるためにはイギリスとソ連が大きな障壁となっており、ドイツやソ連への接近も、日中戦争解決の重要な手段と考えられたために進められた、という側面が多分にありました... ...続きを見る

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2009/11/14 05:43
橋昌明『平家の群像 物語から史実へ』(岩波書店)
 岩波新書の一冊として、2009年10月に刊行されました。武士見直し論の第一人者である橋氏の最新作ということで、さっそく読みました。清盛の孫である維盛(重盛の長男)と清盛の五男である重衡を中心に、平家一門の実像が追及されているとともに、平家が一枚岩ではなく、一門の構成員がそれぞれ時には相反するような独自の動きを見せていたことが示されています。 ...続きを見る

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2009/11/06 00:01
川合康『日本中世の歴史3 源平の内乱と公武政権』
 吉川弘文館より2009年月に刊行されました。川合氏の執筆ということで、民衆の動向についてもっと述べられているのかと思いましたが、『日本中世の歴史』の編集方針に沿って、政治史中心の叙述となっています。平安時代末〜鎌倉時代初期は、とくに古代史と比較すると、新聞の紙面を華やかに飾るような「大発見」に乏しく、歴史像が変わることはあまりないだろう、と一般的には思われているかもしれませんが、政治史にかぎっても、20世紀後半以降かなりの見直しが進んでおり、じつに興味深い時代だと思います。もちろん本書も、近年... ...続きを見る

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2009/11/01 00:00
落合淳思『古代中国の虚像と実像』(講談社)
 講談社現代新書の一冊として、2009年10月に刊行されました。『史記』などの古典に基づく、事実ではない作り話がいまだに根強く浸透している現状にたいして、2000年以上も昔の話だからこのような誤解は放置してもたいした害はないだろうが、自分は非科学的なものが嫌いなので、あえて虚像を指摘し、それを正す文章を書くことにした、との冒頭の一節から、良くも悪くも精神的に若い人だなあ、との印象を受けましたが、じっさい、著者は1974年生まれとのことで、歴史学の研究者としては若手と言ってよいでしょう。本書で取り... ...続きを見る

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2009/10/30 00:00
野口実『伝説の将軍藤原秀郷』第2刷
 吉川弘文館より2007年に刊行されました。第1刷の刊行は2001年です。著者は武士見直し論者の一人で、武士の在り様、とくに起源をめぐる論争において、藤原秀郷はじゅうような位置を占めています。私も十数年前より武士見直し論に興味をもっており、それは本書を読んだ動機の一つになっているのですが、直接の動機は、最近見始めた『風と雲と虹と』の時代背景、さらには登場人物の一人である藤原秀郷をより詳しく知りたい、と思ったからです。そもそも、『風と雲と虹と』を見ようと思った根本的な動機は、露口茂氏が藤原秀郷(田... ...続きを見る

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2009/10/22 00:00
上杉和彦『戦争の日本史6 源平の争乱』
 吉川弘文館より2007年2月に刊行されました。『平家物語』などの軍記物の影響を受けた後世の価値観からの構成ではなく、同時代の史料を基礎とした、手堅い歴史叙述になっていると思います。もちろん、これは研究者にとって当然のことではあるのでしょうが、研究者といえども、『平家物語』などの軍記物の価値観から自由であることは、それほど容易なことではないでしょう。 ...続きを見る

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2009/10/11 00:00
栗田伸子・佐藤育子『興亡の世界史03 通商国家カルタゴ』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ19冊目となります(2009年9月刊行)。カルタゴの歴史を扱っていますが、フェニキア史としての性格も有しています。フェニキア・カルタゴ史の知識に乏しい私にとっては、新鮮な見解が多く提示されていたということもあり、なかなか面白く読めた一冊でした。とくに、前5世紀前半のシチリアでの敗戦がカルタゴにとって転機となった、との見解は興味深いものでした。カルタゴの運命を知っている後世の人間にとって、カルタゴ史の通読は、読み進むにつれて陰鬱な気分になりがちですが、悪い意味では... ...続きを見る

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2009/10/09 00:00
山田邦明『日本中世の歴史5 室町の平和』
 吉川弘文館より2009年9月に刊行されました。政治史・事件史偏重の叙述になっており、近年の一般向け概説書としては異例と言えるでしょう。この『日本中世の歴史』には、「近年の〈通史〉とは異なり、歴史の基本となる政治の動向を中心に、最新の成果を取り入れ、わかりやすく解説した本格的通史」との編纂意図があるのですが、 http://sicambre.at.webry.info/200904/article_22.html それにしても偏りすぎではないか、との印象は拭えません。 ...続きを見る

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2009/09/27 00:00
藤本強『考古学でつづる世界史』
 『市民の考古学』第6巻として、同成社より2008年10月に刊行されました。対象となる年代は、石器時代初期から10世紀頃までとたいへん長くなっています。もちろん、いわゆる歴史時代以降も、考古学の対象となるわけですが、石器時代初期から10世紀頃までの単独執筆による一冊となると、珍しいことではないかな、と思います。世界史と題されているだけあって、対象となる地域も広いのですが、アメリカ大陸・オーストラリア大陸・ニューギニア・ポリネシアなどはほとんど対象外となっており、アフリカ南部についての記述も少ない... ...続きを見る

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2009/09/22 06:37
小林一岳『日本中世の歴史4 元寇と南北朝の動乱』
 吉川弘文館より2009年8月に刊行されました。鎌倉後期〜南北朝の動乱を、社会全体の状況とからめて叙述し、この時期の政治情勢の変動が、社会の変化に対応するものであることが説明されています。もちろん、どの時代の政治情勢もそうなのでしょうが、それを社会の変動と関連させて因果関係を説明することは、それほど容易なことではないと思います。 ...続きを見る

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2009/09/21 06:42
横山宏章『中国の異民族支配』
 集英社新書の一冊として、集英社より2009年6月に刊行されました。現代の中華人民共和国の民族政策へといたる、ダイチン=グルン(いわゆる清朝)末期以降の思想史的系譜を追った一冊です。本書では、この間の思想的動向が、「華夷之辨」と「大一統」という二つの概念で整理されています。 ...続きを見る

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2009/09/19 05:51
池享『日本中世の歴史6 戦国大名と一揆』
 吉川弘文館より2009年7月に刊行されました。この『日本中世の歴史』は、巻数順に刊行予定だったはずですが、川合康『日本中世の歴史3 源平の内乱と公武政権』よりも先に6巻が刊行されたのには、どのような理由があったのでしょうか。地域で区分されることの多い世界史の通史ものならば、巻数順の刊行でなくてもよいでしょうが、日本史の通史ものでは、年代順に刊行するのが望ましいと思うのですが。 ...続きを見る

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2009/09/15 06:42
川尻秋生『戦争の日本史4 平将門の乱』第3刷
 吉川弘文館より2009年4月に刊行されました。第1刷の刊行は2007年4月です。この『戦争の日本史』全23巻は、企画編集委員の一人が小和田哲男氏で、その小和田氏執筆の巻(15巻『秀吉の天下統一戦争』)が最初期に刊行されたことで、これまで避けていたのですが、小和田氏以外の執筆の巻には期待できそうなので、今後は面白そうな巻、とくに古代史の巻を読んでいこう、と考えています。本書を最初に選んだのは、大河ドラマ『風と雲と虹と』を視聴するにあたって、 http://sicambre.at.webry.i... ...続きを見る

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2009/09/11 00:00
光成準治『関ヶ原前夜』(日本放送出版協会、2009年)
 NHKブックスの一冊として2009年6月に刊行されました。副題に「西軍大名たちの戦い」とあるように、敗者の側の動向が丁寧に描かれています。関ヶ原の戦いについての歴史認識となると、今でも司馬遼太郎氏の著作をはじめとする小説の影響が大きいと言えるでしょうが、それらの小説により浸透しているさまざまな俗説が、本書では一次史料に基づいて検証されています。関ヶ原の戦いを、「武断派」対「文治派」、「封建派」対「中央集権派」といった単純な対立に分類し、その予断のもとに解釈するのではなく、個々の大名の置かれた複... ...続きを見る

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2009/09/09 00:00
小島毅『織田信長 最後の茶会』
 光文社新書の一冊として、光文社より2009年7月に刊行されました。小島氏の著作はこれまでにもこのブログで紹介してきましたが(『靖国史観−幕末維新という深淵』、『足利義満 消された日本国王』)、 http://sicambre.at.webry.info/200803/article_29.html http://sicambre.at.webry.info/200803/article_30.html この2冊、とくに『足利義満 消された日本国王』と比較すると、ふざけた感じの文章が激減し... ...続きを見る

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2009/09/03 06:16
磯田道史『武士の家計簿』(新潮社、2003年)
 新潮新書の1冊として刊行されました。評判の高い本書ですが、刊行から6年後にはじめて読むことになりました。本書は、加賀藩のある藩士の家の家計簿を史料として、江戸時代後期から幕末を経て明治時代にまでいたる、その一家の変遷を詳細に描いています。あくまでもこの一家の事例ではありますが、当時の武士社会の在り様がうかがえる、たいへん興味深い記述になっており、評判の高さにも納得しました。 ...続きを見る

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2009/07/08 06:45
福島正樹『日本中世の歴史2 院政と武士の誕生』
 吉川弘文館より2009年6月に刊行されました。政治史を中心に中世初期の様相が概観され、院政を中世的な政治体制とする現在の通説にしたがった叙述となっています。荘園についての説明が少ないのが残念ではありますが、意図的に政治史中心の叙述にしたということなので、仕方のないところでしょう。全体的に、近年の研究成果を取り入れてよくまとまった概説書になっていると思います。院政を古代国家最後の政治形態とする歴史認識が戦後日本では浸透していましたが、現在では否定されています。しかし、現在でも一般的にはそのような... ...続きを見る

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2009/07/02 00:10
青木美智男『日本の歴史別巻 日本文化の原型』(2009年5月刊行)
 小学館『日本の歴史』の別巻となります。文化を受容する立場という視点から、日本文化の原型としての江戸時代の文化が概観されています。衣食住という生活の基本要素から、出版・演劇・旅にいたるまで、多様な分野が取り上げられていますが、これらの文化を作る側ではなく、受容・消費する側の視点を中心とした叙述となっている点が、作品論・作者論になる傾向の強い文化史としてはやや異色と言えるかもしれません。 ...続きを見る

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2009/06/20 00:00
石澤良昭『興亡の世界史11 東南アジア 多文明世界の発見』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ18冊目となります(2009年5月刊行)。東南アジア史の概観も述べられているとはいえ、表題とは異なり、実質的にはアンコール王朝の政治・経済・社会・文化史となっており、筆者がアンコール王朝の専門家であるいじょう仕方のないこととはいえ、やや問題のある表題だったと思います。「東南アジア 多文明世界の発見」は副題とし、「アンコール王朝の興亡」を表題とするか、複数の著者による分担執筆とするほうがよかったのではないでしょうか。 ...続きを見る

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2009/06/13 10:22
河合信和『人類進化99の謎』
 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2009年に刊行されました。古人類学に関する河合氏の最新の著書ということで、迷うことなく購入しました。河合氏の2年前の著書『ホモ・サピエンスの誕生』と比較すると、敷居が低くなっているな、と思いました。しかし、見開き2ページでのQ&A形式を採用しているため、人類史についての体系的な知識を得るには不向きで、あるていど古人類学についての知識がある人を対象にしているかな、と思います。とはいえ、全体的に本書はたいへんわかりやすく、あるていど人類史の流れをつかんでいる人... ...続きを見る

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2009/06/05 06:52
木村茂光『日本中世の歴史1 中世社会の成り立ち』(吉川弘文館、2009年)
 『日本中世の歴史』の刊行が始まりました。この第1巻は『日本中世の歴史』の総論といった感じで、中世社会が概観されています。武士・百姓・信仰と寺社勢力・イエ・都市・一揆など、中世社会の各特徴が成立過程から論じられていますが、総論という性格上、やや物足りなさの残るところもあります。しかし、それは第2巻以降で補っていけばよいのでしょう。 ...続きを見る

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2009/05/28 08:05
鈴木眞哉『戦国史の怪しい人たち』
 平凡社新書の一冊として平凡社より2008年に刊行されました。本書での「怪しい」とは、出自・経歴・事績などについての疑念や、「怪物」という意味合いです。そうした怪しい人々に関する通説・俗説を史料に基づいて検証していこう、というのが本書の主題ですが、新書という形式と、雑多な話題を扱っているということもあり、個々の検証はそれほど深く掘り下げられているわけではなく、いわば広く浅くといった感じで、戦国雑学本としての性格が強くなっているように思われます。だからといって、本書に価値がないわけではなく、気軽に... ...続きを見る

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2009/05/20 06:32
大井功『「チベット問題」を読み解く』
 祥伝社新書の一冊として、祥伝社より2008年に刊行されました。チベット問題について包括的に論じられており、日本語で読めるチベット問題の入門書としては、現時点ではもっとも優れているように思います。それだけに、もっと深く知りたいという読者のために、索引はよいとしても、専門書も含んだ参考文献一覧を掲載すべきだったと思います。 ...続きを見る

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2009/05/17 06:22
湯浅邦弘『諸子百家』
 中公新書の1冊として、中央公論新社より2009年に刊行されました。諸子百家の思想について、20世紀後半以降に出土した文献資料に基づき、見直しが提言されています。全体として、諸子百家の各思想が、その時代にあって突出したものではなく、思想史的な流れの中から生じたものだ、ということが主張されています。とくに孟子の思想について、出土文献に基づいてじゅうらいの通説を見直す必要のあることが強調されています。 ...続きを見る

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2009/05/16 12:57
田中史生『越境の古代史』
 ちくま新書の一冊として筑摩書房より2009年に刊行されました。弥生時代〜10世紀にかけての、アジア東部における広域的な「交流」の様相を、日本列島を中心として多面的に描き出そうとした意欲作だと思います。ただ、王権の交流に限定されない多面的な交流を描き出そうとする意欲はよいのですが、考古学的成果よりも文献のほうに圧倒的に比重が置かれていることもあり、とくに6世紀以前の交流については、著者の意図がじゅうぶんに実現されたとは言えないように思います。とはいえ、日本と新羅とのネットワークが強い影響を及ぼし... ...続きを見る

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2009/05/14 06:21
美川圭『院政』
 中公新書の一冊として、中央公論社より2006年に刊行されました。近年の研究成果も取り入れたうえで、院政についてあくまでも具体的事例でもって概観しており、院政についての一般向け概説書として、かなりよい出来なのではないか、と思います。本書では、私にとって興味深いさまざまな指摘がなされていますが、とくに面白いと思ったのは、鳥羽と崇徳との関係です。 ...続きを見る

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2009/05/13 19:12
『興亡の世界史20 人類はどこへ行くのか』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ17冊目となります。福井憲彦・杉山正明・大塚柳太郎・応地利明・森本公誠・松田素二・朝尾直弘・青柳正規・陣内秀信・ロナルド=トビ著で、2009年4月刊行に刊行されました。刊行が大幅に遅れている『興亡の世界史』ですが、本書はその集大成的な役割を担うわけですから、できれば最後の刊行にしてもらいたかったものです。 ...続きを見る

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2009/05/07 06:41
後藤みち子『戦国を生きた公家の妻たち』(2009年)
 歴史文化ライブラリーの1冊として、吉川弘文館より刊行されました。夫婦同姓・別姓の問題を歴史的に考えていく場合に、参考になりそうだと思い読んだのですが、その期待通りにさまざまな知見が得られたので、読んで正解だったと思います。前近代の日本社会は夫婦別姓であり、現代の日本社会における夫婦同姓(夫婦同氏)は西欧の物真似で、たかだか100年ていどの歴史しかない、との夫婦別姓容認論側によく見られる歴史認識の誤謬の根本的な要因は、氏(姓)と苗字(名字)との混同です。 ...続きを見る

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2009/04/24 00:00
荒川章二『日本の歴史第16巻 豊かさへの渇望』(2009年3月刊行)
 小学館『日本の歴史』16冊目の刊行となります。本書を読んで改めて痛感したのは、高度経済成長により日本社会が大きく変容したことです。対象基準が異なるので、たんじゅんな比較はできませんが、ある意味で、明治維新や第二次世界大戦での敗戦以上の、本質的で深い変容だったと言えるかもしれません。おそらく、この変容は不可逆的なものであり、高度経済成長以前の「伝統的」で「古き良き」日本に戻ることは、無理なのでしょう。 ...続きを見る

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2009/04/23 00:01
『日本中世の歴史』全7巻
 来月より、吉川弘文館から『日本中世の歴史』全7巻の刊行が始まります。 http://www.yoshikawa-k.co.jp/tyusei1.htm ...続きを見る

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2009/04/22 00:00
大門正克『日本の歴史第15巻 戦争と戦後を生きる』(2009年2月刊行)
 小学館『日本の歴史』15冊目の刊行となります。生存の視点から、1930〜1955年の日本社会の在り様が描かれています。全集ものの通史としては珍しい時代区分と言えるでしょうが、この時代に生存の仕組みが大きく変わった、というのが本書の見解です。 ...続きを見る

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2009/04/14 06:43
岩明均『ヒストリエ』5巻発売(講談社)
 今年の2月に5巻が刊行されていたことを、不覚にも最近になって知り、ただちに購入しました。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて述べています。 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html ...続きを見る

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2009/04/10 00:01
小松裕『日本の歴史第14巻 「いのち」と帝国日本』(2009年1月刊行)
 小学館『日本の歴史』14冊目の刊行となります。「いのち」に焦点が当てられたこの14巻では、近代日本において「いのち」を軽視された人々が取り上げられ、近代日本の様相が浮き彫りにされていきます。この14巻も13巻と同じく、栄光の近代日本という物語に陶酔したい人々にとっては大いに不満の残る内容となったでしょうし、政治・経済史の記述が少なすぎるのではないかといった点も含めて、一般向け通史としてはかなり偏った内容なのではないか、と私も思います。 ...続きを見る

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2009/02/08 09:47
溝口睦子『アマテラスの誕生―古代王権の源流を探る』(岩波書店)
 岩波新書(赤版)の一冊として、2009年に刊行されました。本書の論証には疑問の残る箇所もあるのですが、新書という性格上仕方のないところもあり、本書でもたびたび述べられているように、詳細な論証は著者による他の著作を読むしかないのでしょう。 ...続きを見る

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2009/02/07 00:01
遠山美都男『蘇我氏四代の冤罪を晴らす』
 学研新書の一冊として、学習研究社より2008年に刊行されました。蘇我氏断罪史観と、それにたいする反発から主張されている見解の一部を、『日本書記』を中心とした史料の検証により見直していこうとする一冊です。蘇我氏断罪史観は、さすがに戦後になって克服されたのかと私は考えていたのですが、皇国史観に浸っているというわけではなさそうな人が、数年前にある掲示板で大真面目に蘇我氏断罪史観を主張していたのを見ると、今でも根強いのかもしれません。その意味では、本書の意義は小さくないのかな、とも思います。 ...続きを見る

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2009/01/22 04:54
牧原憲夫『日本の歴史第13巻 文明国をめざして』(2008年12月刊行)
 小学館『日本の歴史』13冊目の刊行となります。近代国家・文明国・国民の創出がいかになされたのか、さまざまな観点からその苦闘が描かれている一冊です。「近代化・文明化」がおおむね完成した社会で生まれ育った人間がほとんどを占める現在の日本列島において、自明のこととされる諸観念・生活様式の定着の具体的様相を知ることは、同時代にまだ存在する「近代化」に苦闘する世界を理解するにあたって、有益だろうと思います。 ...続きを見る

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2009/01/17 00:00
雨宮昭一『占領と改革』
 岩波新書の『シリーズ日本近現代史』の第7巻として、岩波書店より2008年に刊行されました。問題の書というか、物議を醸す一冊になりそうだな、というのが素人の率直な感想です。戦後に連合国(実質的には米国)による占領のもとではじめて、日本は政治・経済面における民主的改革がなされ、それは被占領国たる日本の広範な層に支持されたものだった、というのが日本のみならず世界において強く支持されている見解でしょう。 ...続きを見る

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2009/01/15 00:01
福井憲彦『興亡の世界史13 近代ヨーロッパの覇権』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ16冊目となります(2008年12月刊行)。近代ヨーロッパの覇権の成立とその崩壊について論じた一冊です。おそらく、近年のヨーロッパ近代史研究の成果が反映されているということもあるのでしょうが、専門家ではない私にとっては、なかなか面白く分かりやすい内容になっています。これは、近代ヨーロッパ諸国で提示された価値観・見解が、私も含めた現代日本人にとってすっかり馴染んだものになっているということもあるのでしょう。本書でも指摘されている近代における生活様式の変容も含めて、... ...続きを見る

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2009/01/08 00:00
『先史時代と心の進化』
 コリン=レンフルー著、溝口孝司監訳、小林朋則訳で、ランダムハウス講談社より2008年に刊行されました。原書の刊行は2007年です。ホモ=サピエンス・パラドックスの解明を主要な問題意識として、認知考古学の立場から人類史を概観した一冊です。 ...続きを見る

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2008/12/18 00:00
平川新『日本の歴史第12巻 開国への道』(2008年11月刊行)
 小学館『日本の歴史』12冊目の刊行となります。一般向け通史にしては、日露外交史の記述が多すぎるかな、とも思いますが、ヨーロッパから見た「帝国」としての日本像の紹介、大塩平八郎・水野忠邦・遠山景元・鳥居耀蔵といった著名な人物の評価や天保の改革の見直しなど、江戸時代後期の歴史に詳しくない私のような一般読者にとっては、なかなか楽しめる一冊になっていると思います。 ...続きを見る

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2008/12/08 06:21
倉地克直『日本の歴史第11巻 徳川社会のゆらぎ』(2008年10月刊行)
 小学館『日本の歴史』11冊目の刊行となります。災害と「治」をめぐるせめぎ合いという観点から、18世紀の日本社会が描かれます。著者は、この二つの観点を基礎におきつつ、18世紀の日本社会の様相を多岐にわたって論じており、博学だな、との印象を受けました。 ...続きを見る

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2008/11/27 06:46
林佳世子『興亡の世界史10 オスマン帝国500年の平和』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ15冊目となります(2008年10月刊行)。オスマン帝国を「トルコ人の国」ではなく、多面的に描こうとする本書の基調は、オスマン帝国の領域に現在住む人々の多くにとっては、あるいは説得的ではないかもしれませんが、ポストモダン社会に突入した日本においては、わりと受け入れられやすいだろうと思います。それはまた、米国や西欧でも同様だろうとも思うのですが、トルコ人移民の多い西欧においては、あるいはそうではないのかもしれません。 ...続きを見る

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2008/11/25 00:00
『類人猿を直立させた小さな骨―人類進化の謎を解く』
 アーロン=G=フィラー著、日向やよい訳で、東洋経済新報社より2008年に刊行されました。昨年10月13日分の記事で取り上げた論文(Filler.,2007)の著者である、フィラー博士による一般向けの単行本です。直立二足歩行の起源は2000万年以上前までさかのぼる、とするフィラー博士の見解は衝撃的だったのですが、私の学識ではじゅうぶん理解できたとは言いがたいだけに、フィラー博士の見解への理解を深めるには最適の一冊だと思い、迷うことなく読んでみました。 ...続きを見る

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2008/11/16 00:01
佐々木敏『ラスコーリニコフの日』
 徳間書店より2002年5月に刊行された小説です。佐々木氏の前々作・前作である『ゲノムの方舟』・『龍の仮面』と同じく、国際政治サスペンスとなっています。創作ですので、舞台は虚構ということになっていますが、それなりに新聞を読み、テレビの報道番組を見ている日本人なら、どの事件・国・団体・人物を素材として描かれた作品なのか、すぐに分かることでしょう。 ...続きを見る

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2008/10/30 00:01
フィリップ=カー『エサウ 封印された神の子』
 東江一紀・後藤由季子訳で、徳間書店より1998年に刊行された小説です。カバーの紹介文は、次の通りです(青字の箇所)。 ヒマラヤの秘峰で発見された原人の頭蓋骨。旧約聖書の人物にちなんで「エサウ」と名づけられたその化石は、ヒトの起源を根底からくつがえすものだった。世界的登山家ジャック・ファーニスと古人類学者ステラ・スウィフトの一行は、エサウの正体を求め、人類の過去を探る旅に出かける。しかし、彼らがヒマラヤで見つけたものは、人類の未来を脅かす恐ろしい秘密だった。ヒマラヤの秘境で彼らは、人類の恐るべ... ...続きを見る

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2008/10/10 00:00
水本邦彦『日本の歴史第10巻 徳川の国家デザイン』(2008年9月刊行)
 小学館『日本の歴史』10冊目の刊行となります。江戸時代前期の日本社会の在り様とその成立過程を、具体的事例を引用しつつ叙述した一冊です。その分、一般の歴史愛好者がとくに好むであろう、人物本位的な政治史的記述が少なめだ、との印象を受けました。 ...続きを見る

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2008/09/30 06:56
エリザベス=コストヴァ『ヒストリアンI・II』
 高瀬素子訳で、2006年2月に2巻構成で日本放送出版協会より刊行されました。小説ですが、歴史を題材としており、歴史についての雑感もちょっと述べることになるので、読書だけではなく歴史のカテゴリーでも扱うことにします。かなり評判の歴史小説とのことで、以前から気になっていたのですが、他にも読むべき本があったので、刊行されてからかなり経ってから読むことになりました。 ...続きを見る

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2008/09/19 06:40
五味文彦『源義経』
 岩波新書の一冊として、2004年10月に岩波書店から刊行されました。碩学により手堅くまとめられた義経の伝記といった感じですが、義経が後世になってさまざまな伝説に彩られたことも考慮に入れて、義経伝説についても新書としてはやや詳しく触れられていて、弁慶伝説との比較などもあり、なかなか興味深い記述となっています。派手なところはありませんが、義経の伝記としてはなかなか優れていると思います。 ...続きを見る

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2008/09/18 07:03
ロナルド=トビ『日本の歴史第9巻 「鎖国」という外交』(2008年8月刊行)
 小学館『日本の歴史』9冊目の刊行となります。「新視点・近世史、従来の“鎖国”史観を覆す新たな視点」とのことで、1970年代の小学館版『日本の歴史』の「日本史の社会集団」や、2000年代の講談社版『日本の歴史』の「**史の論点」の巻と似た役割を担うことになるのでしょう。 ...続きを見る

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2008/09/14 00:00
平野聡『清帝国とチベット問題』(名古屋大学出版会、2004年)
 本書にたいする痛烈な批判をすでに読んでいましたので、改めて本書を読む必要があるのだろうかとは思ったのですが、本書は博士学位取得論文に若干の補足修正を加えた一冊とのことで、不勉強な私にとっては大いに読み応えがあり、読んで正解だったと思います。チベット問題について不勉強な私が、上記リンク先に付け加えるような本書にたいする疑問・批判はありませんので、本書を読んで興味深かった点について、いくつか述べていくことにします(引用箇所は青字としましたが、一部の漢数字は算用数字に改めました)。 ...続きを見る

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2008/09/07 00:00
中田興吉『「大王」の誕生』(学生社、2008年)
 日本における大王の誕生について、考古学と文献の両方から考察されています。こうした問題が論じられる場合、普通は弥生時代中期以降が対象となるのですが、本書では、縄文時代をも視野に入れた見解が提示されています。本書では、大王号は敬称ではなく称号だとし、その根拠として朝鮮半島の事例が紹介されているのですが、この問題についてはさらなる検証が必要だと思われます。 ...続きを見る

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2008/09/05 05:30
山田邦明『日本の歴史第8巻 戦国の活力』(2008年7月刊行)
 小学館『日本の歴史』8冊目の刊行となります。応仁の乱後から大坂の陣までを扱った一般向け概説書としては、なかなか無難な出来になっていると思います。しかし、他の一般向け通史では2巻分割り当てられることが多い年代であり、戦国時代はとくに人気が高いだけに、物足りなさを感じる人も少なくないだろうと思います。私がやや不満に思ったのは、流通に関する記述が手薄なことです。 ...続きを見る

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2008/08/23 04:40
東野治之『遣唐使』(岩波書店、2007年)
 『史学雑誌』恒例の「回顧と展望」の今年の号(第117編第5号「2007年の歴史学界」)で、「古代史像の見直しを迫るもの」であり、「開かれた日本」論に疑問が呈されている、と紹介されていたので(日本古代、P679)、気になって読んでみました。遣唐使の具体的様相と意義について包括的に述べられており、参照文献も示され、索引もあるので、良書と言ってよいだろうと思います。本書において興味深いと思った見解は、以下のようなものです。 ...続きを見る

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

2008/08/01 04:47
陣内秀信『興亡の世界史08 イタリア海洋都市の精神』
 講談社の『興亡の世界史』シリーズ14冊目となります(2008年7月刊行)。著者のイタリア海洋都市への情熱はよく伝わってきたのですが、正直なところ、一般向けの歴史書というよりは、イタリア観光のための案内書といった感じの内容であるように思います。ただ、この分野についての予備知識がもっと私にあれば、受け止め方が変わっていたかもしれません。 ...続きを見る

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2008/07/26 05:14
『ビジュアル版 人類進化大全』(悠書館、2008年)
 クリス=ストリンガー、ピーター=アンドリュース著、馬場悠男・道方しのぶ訳で、悠書館より刊行されました。人類進化の様相を、じっさいの発掘現場の様子・化石の生成過程なども紹介しながら、包括的に論じた一冊です。図版や人骨などの写真も豊富であり、古人類学に関心のある人にとっては必読の書と言えるでしょう。一般向け書籍としては高価(税別12000円)なのが難点ですが、それだけの価値のある良書だと思います。 ...続きを見る

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2008/07/17 06:12
安田次郎『日本の歴史第7巻 走る悪党、蜂起する土民』(2008年6月刊行)
 小学館『日本の歴史』7冊目の刊行となります。さまざまな分野の話題が手際よくまとめられており、南北朝時代〜15世紀末までをこの分量でまとめた通史としては、無難な出来になっていると思います。本書では、この時代の様相を、生産力の発展とそれによって生み出された富の争奪を軸とした、階級間闘争として描く傾向にあった以前の歴史観にたいして、むしろ飢饉や疫病などのさまざまな危機への対応を中心として動いていた、とする見解が作用されています。この見解は魅力的ですが、通説となるには、自然科学も含めての諸分野との学際... ...続きを見る

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2008/07/11 06:06
『ホモ・フロレシエンシス』上・下(日本放送出版協会、2008年)
 本書は、マイク=モーウッド、ペニー=ヴァン=オオステルチィ著、馬場悠男監訳、仲村明子翻訳で、NHKブックスの一冊として刊行されました。インドネシア領フローレス島のリアン=ブア洞窟の発掘は、オーストラリアとインドネシアとの合同研究チームにより行なわれ、更新世の地層から人骨・石器・動物骨が発見され、発掘チームはその人骨群を人類の新種ホモ=フロレシエンシスとしました。モーウッド氏は、その合同研究チームの指導者的地位にいる研究者です。オオステルチィ氏は作家で、一般向け科学書を多数執筆しているとのことで... ...続きを見る

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 2 / コメント 0

2008/06/15 00:00

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