日本列島「本土」集団(ヤマト人)の「内部二重構造」モデルに関する研究(Jinam et al., 2021)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。日本列島は南北2000km以上に及びます。日本列島は、1960年代初頭に作家の島尾敏雄により「ヤポネシア(Yaponesia)」と呼ばれました。「Yapo」はラテン…
琉球諸島への人類最初の航海に関する研究(Kaifu et al., 2020)が公表されました。人類史において渡海は100万年以上前から行なわれていましたが、明らかな航海が確認されているのは、現時点では現生人類(Homo sapiens)だけです(関連記事)。現生人類の航海の最古の証拠となりそうなのは、海洋酸素同位体ステージ(MIS)…
九州の縄文時代後期の土器のコクゾウムシ圧痕に関する研究(Obata et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。圧痕とは、土器の表面や断面についたタネやムシの痕跡のことで、これを探る土器圧痕法という手法が2003年頃から取り入れられています。圧痕の中でも特に、目視で確認できない圧痕を可視化する方法がX線CT…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、横浜市の称名寺貝塚遺跡の人類遺骸のmtDNA解析に関する研究(Takahashi et al., 2020)が公表されました。称名寺貝塚遺跡は、縄文時代後期初頭の考古学的指標とされる称名寺式土器で有名です。2017年の発掘では、人類遺骸を伴う25の土坑墓が発見されました。これらの人類遺骸には…
現代日本人のゲノムにおけるヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に関する研究(Liu et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ヒトゲノムの約8%は「内在性ウイルス配列」と呼ばれる古代のウイルス由来の配列で占められており、その多くは数百万年前にヒトの祖先のゲノムに入り込んだ、と考えられています。当初、ゲノム…
愛知県田原市の伊川津貝塚遺跡の人骨(IK002)のゲノム解析に関する研究(Gakuhari et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。本論文は、すでに昨年(2019年)、査読前に公開されていました(関連記事)。その時と内容は基本的に変わっていないようなので、今回は昨年の記事で言及していなかったことや、査読…
古代ゲノムデータに基づくアジア東部における現生人類(Homo sapiens)集団の形成史に関する研究(Wang et al., 2020)が公表されました。本論文は査読前なので、あるいは今後かなり修正されるかもしれませんが、ひじょうに興味深い内容なので取り上げます。世界でも農耕・牧畜が早期に始まった地域であるアジア東部には、現在世界…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、北海道の縄文時代のコクゾウムシ混入土器に関する研究(Obata et al., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。コクゾウムシ(Sitophilus zeamais)はオサゾウムシ科の甲虫で、貯蔵米の害虫として知られています。2003年頃より、土器の表面や断面についたタ…
本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究B01「人類集団の拡散と定着にともなう文化・行動変化の文化人類学的モデル構築」の2018年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 21)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDF…
ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2019年6月に刊行されました。第1刷の刊行は2019年5月です。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。なお、以下の西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です。
I 旧石器・縄文時代
第1講●杉原敏之「列島旧石器文化からみた現生人類の交流」P…
父系継承のY染色体(厳密にはわずかにX染色体との間で組換えが起きますが)DNA解析から縄文時代晩期の人口減少を推測した研究(Watanabe et al., 2019)が報道されました。解説記事もあります。本論文は、現代日本人を北海道のアイヌ、本州・四国・九州(およびそれぞれのごく近隣の島々)から構成される「本土」、沖縄の琉球の3集団…