孤独と社会的孤立が高齢者の転倒リスクを高める、と報告した研究(Bu et al., 2020)が公表されました。この研究は、ELSA(イギリスの老化に関する縦断研究)調査の一環として、2002~2017年に60歳以上の参加者13061人から収集したデータを調査しました。この研究は、転倒に関する自己申告データを解析し、利用可能な記録につ…
貧困層の人々の富裕層への課税に対する支持に関する研究(Sands, and de Kadt., 2020)が公表されました。心理学研究から、個人の態度形成は仲間や他者との社会的比較によって形作られる、と示されています。人々は、不平等に関する情報を提示されると行動を変え、たとえば、気前が悪くなったり、協力的でなくなったりする、と明らかに…
信頼性を伝える顔の特徴に関する研究(Safra et al., 2020)が公表されました。社会的信頼は、積極的な社会的成果(経済実績の向上や犯罪率の低下など)に関連しています。しかし、信頼が何によって生じるのか、明確になっていません。その理由の一つは、社会的信頼の変化を長期間にわたって定量的に記録することが困難であるためです。この研…
アメリカ合衆国ワシントンDCの「黒人」と「白人」との間の平均余命の格差に関する研究(Roberts et al., 2020)が公表されました。この研究は、1999~2017年の死亡数データを解析して、ワシントンDCの男性と女性の平均余命を算出し、さまざまな年齢層と3つの時期(2000年、2008年、2016年)について、「黒人」と「…
痛みの民族間差に関する研究(Losin et al., 2020)が公表されました。アメリカ合衆国(米国)の奴隷制度時代から、アフリカ系米国人は「白人」の米国人よりも痛みをそれほど強く感じない、と言われてきました。この考えは、アフリカ系米国人の疼痛治療の機会が不充分だったことと関連づけられており、広範かつ持続的な人種間・民族間の健康格…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、不公平な行為への反応に関する研究(FeldmanHall et al., 2014)が公表されました。社会において公平性は、社会的効率および協力を促す行動規範として機能しています。公平性に関する研究はこれまで、不公平な状況に置かれた実験参加者に対して、「罰を与える」あるいは「何もしない」の2…
現代文化の変化の速さに関する研究(Lambert et al., 2020)が公表されました。20世紀には、長期に及ぶ数々の実地調査により、動物集団の生物学的進化に関する研究が進み、進化上の変化の速度が推定されました。文化については、考古学的記録を対象としたこれまでの研究から、生物進化の変化と同等に変化することが示唆されていたものの、…
脳の働きによる効果的な謝罪方法に関する研究(Ohtsubo et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。これまで謝罪の研究では、誠意のある謝罪が許しを引き出しやすい、ということは知られていました。しかし、どのような謝罪の内容だと誠意があるとみなされるのか、という具体的な研究はありませんでした。これまでの研究…
アメリカ合衆国における「逆人種差別」の認識に関する研究(Earle, and Hodson., 2020)が公表されました。西洋諸国に広がる政治的分極化と極右的な運動の高まりの一因は、非「白人」を優遇しているとされる社会において「白人」が差別に直面しているという認識にあると考えられています。最近の実験的研究で、一部の「白人」系アメリカ…
確証バイアスの形成に関係する脳領域についての研究(Kappes et al., 2020)が公表されました。人間は、過去の自分の選択や判断にとって不利な情報を過小評価する傾向があります。これは確証バイアスといい、政治から科学・教育に至る、あらゆる事柄に重大な影響を及ぼし、信念形成の一つの特性となっていますが、その基盤となる機構は、ほと…
気候変動による環境ストレスと女性への影響に関する研究(Rao et al., 2019)が公表されました。家庭・地域社会・国家レベルで強化された確固たる社会構造は、男女各個人の気候変動の経験と気候変動に対する反応を形成しています。この状況下でのジェンダー研究により、移動性および資源の利用機会と役割分担が、気候の変化および社会構造と生活…
イギリスにおける移住と遺伝子の差との関連についての研究(Abdellaoui et al., 2019)が公表されました。イギリスでは、ヒトのDNAは先祖の違いを反映すると知られており、また人々が伝統的に生まれた土地に留まってあまり移動しないため、数世紀にわたって維持されてきました。しかし、DNAの構成が産業革命や後の移住などの国内移…
銀行員文化と不誠実さに関する研究(Rahwan et al., 2019)が公表されました。現在、社会科学はいわゆる「再現性の危機」に曝されています。研究室やクラウドソースのワーカープラットフォームのような利用しやすい集団からきわめて影響力のある知見が得られても、それらは必ずしも再現可能ではありません。利用しづらい集団から得られた知見…
乳幼児死亡率の地理的格差に関する研究(Burstein et al., 2019)が公表されました。小児(5歳未満)の死亡は全世界で減少しており、1950年に1960万人だった死亡数が2017年には540万人となり、2017年の小児の死亡の93%は、中低所得国で起きています。国連の持続可能な開発目標(SDG)のターゲット3.2は、予防…
平等と協力の関係に関する研究(Hauser et al., 2019)が公表されました。直接互恵性は、反復的な相互作用に基づく協力の進化における効果的な機構です。直接互恵性には、相互作用する個人同士が十分に平等で、協力または裏切りによって各人が同等の結果に直面することが必要とされます。公共財ゲームのような互恵性モデルの大多数ではこれま…
気候変動懐疑論者のメディアにおける可視性の評価に関する研究(Petersen et al., 2019)が公表されました。この研究は、気候変動懐疑論者の可視性と権威性の生成に関する調査を行ない、気候変動懐疑論者(学者・科学者・政治家・実業家)386人と、気候変動の一因が人間の活動だとする見解に同意する気候科学者386人の、デジタルフッ…
懲役刑と暴力的犯罪の抑止に関する研究(Harding et al., 2019)が公表されました。刑事上の有罪判決後に収監を行なう一般的な動機は、懲役刑が将来の暴力的犯罪を抑止するだろう、という考えにあります。理論上、未来の暴力的犯罪の抑止は、犯罪行動の機会を奪ったり、更正の機会を提供したり、将来の犯罪への関与を阻止したりすることで達…
自然災害による世界の輸送インフラの被害額の評価に関する研究(Koks et al., 2019)が公表されました。この研究は、世界の道路および鉄道の資産データとハザードマップを用いて、世界の輸送インフラが、熱帯性低気圧、地震、陸面氾濫による洪水、河川の氾濫による洪水、沿岸洪水などの自然災害にどれほど曝されており、これらの自然災害がどれ…
俳優人生の予測に関する研究(Williams et al., 2019)が公表されました。映画俳優の失業率は90%で、俳優の仕事で生計を立てている者はわずか2%ほどであるため、単純に充分な仕事(持続的生産性)のあることが、多くの俳優にとっての成功を意味しています。この研究は、世界的なデータベースを用いて、1888~2016年の200万…
乳幼児期の教育的介入と成人後の社会的意思決定の関係についての研究(Luo et al., 2018)が公表されました。アベセダリアン・プロジェクト(ABC)は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州で実施された介入研究で、同州内の複数のリスクを抱える低所得家庭において1972~1977年に誕生した新生児に対して、生後5年間にわたって教育支援…
ツイッター上でのソーシャルボットの役割に関する研究(Shao et al., 2018)が公表されました。ソーシャルボットがソーシャルメディア上で信頼性の低い情報源からの記事の拡散と視認性に大きく寄与していると考える人は多く、インターネット媒体がそれらに制限を加えるよう求められていますが、そうした関与を示す証拠は、これまでのところ根拠…
人工知能AIが抱える道徳的ジレンマに関する研究(Awad et al., 2018)が公表されました。人工知能の急速な発展にともない、機械がどのようにして道徳的な意思決定を行なうのかに関して懸念が生じており、機械の振る舞いを導くべき倫理原則についての社会的期待を定量化することが大きな課題となっています。この課題に取り組むため、本論文は…
ジェンダー差と経済的発展およびジェンダー平等性との関係についての研究(Falk, and Hermle., 2018)が公表されました。リスクを取ること・忍耐・利他主義・積極的および消極的相互主義・信頼といった基本的な選好は、人間の行動の基礎となります。経済学や心理学の諸研究は、選好における重要なジェンダー差を報告しており、職業選択や…
志望大学の選択と大学での学業成績に対する遺伝的影響に関する研究(Smith-Woolley et al., 2018)が公表されました。この研究は、3000人の被験者と3000組の双生児から得た遺伝情報を解析して、若年成人の大学教育に関連する指標の個人差を遺伝子によってどの程度説明できるのか、調べました。この研究は、一卵性双生児と二卵…
家畜と野生動物の共存が有益になる可能性を報告した研究(Huypens et al., 2018)が公表されました。地球全体で見ると、野生動物の大半は保護区外に住んでいるため、野生動物と人間のそれぞれの要求の潜在的な衝突を生み出しています。こうした問題の典型例がアフリカ東部のサバンナで、ゾウやキリンなどの野生種の生息地であるとともに、人…
STEM科目(科学・技術・工学・数学)の成績における性差についての研究(O’Dea et al., 2018)が公表されました。学校でのSTEM科目の成績では、女子が男子を常にリードしているにも関わらず、STEMのキャリアを目指すのは、女子学生より男子学生の方が多く、この現象を説明する仮説の一つは、学術研究能力のばらつきが女子よりも男…
キリスト教が速やかに拡大した要因に関する研究(Watts et al., 2018)が公表されました。キリスト教は現在、世界で最大の宗教です。しかし、その成功が、抑圧された人々に力を与えるメッセージによる草の根活動により最もうまく説明されるのか、それともローマ皇帝コンスタンティヌスの有名な改宗など、影響力のある指導者たちを改宗へと導く…
配偶者による暴力の進化的起源に関する研究(Stieglitz et al., 2018)が公表されました。近親者間暴力は、繁殖能力を持つ個々の配偶者に直接的な害を及ぼすにも関わらず、広く見られる現象です。そうした暴力には、教育水準・女性の権利状況・アルコールや薬物の乱用といった、いくつかの行動的・社会経済的要因が関連づけられています。…