アクセスカウンタ

プロフィール

ブログ名
雑記帳
ブログ紹介
普段考えていることや気になっていることを気軽に書いていきます。文中の赤字の箇所にはリンクが張られています。文中の青字の箇所は引用文です。文中の緑字の箇所は追記です。
当ブログの記事を引用されたり、当ブログの記事へリンクなさったりする場合、とくに通知は必要ありませんが、トラックバックを送信していただければ幸いです。
長文のコメントはできれば控えてください。当ブログの記事へ長文のコメントをなさりたい場合は、ご自身のブログにて述べて、当ブログの該当記事へトラックバックを送信していただければ幸いです。
なお、本・漫画・ドラマを取り上げた当ブログの記事のなかには、内容を詳細に紹介したものも少なくないので、未読・未視聴の方はご注意ください。

メールアドレスは
alksnjdb@yahoo.co.jp
です。スパムよけのため、「@」としていますので、「@」に変更して送信してください。

ホームページのアドレスは
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/index.htm
です。

ツイッターのアドレスは
https://twitter.com/Florisbad
です。

当ブログにおけるトラックバックとコメントの扱いについては、以下の記事をご参照ください。
http://sicambre.at.webry.info/200709/article_16.html
zoom RSS

アファレンシスの脊椎骨

2017/05/28 00:00
 これは5月28日分の記事として掲載しておきます。330万年前頃の人類の脊椎骨に関する研究(Ward et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。エチオピアのディキカ(Dikika)では330万年前頃の人類の幼児の部分的骨格が発見されており(関連記事)、アウストラロピテクス属のアファレンシス(Australopithecus afarensis)に分類されています。この幼児化石(DIK-1-1)は、エチオピアの公用語であるアムハラ語で「平和」を意味するセラム(Selam)と呼ばれています。また、ディキカでは、石器が用いられた痕跡のある大型有蹄類の骨が発見されており、年代は340万年前頃と(関連記事)と推定されています。

 セラムには頸椎と腰椎の全痕跡が確認されており、6万年以上前の人類では唯一の事例となります。新たな分析の結果、セラムには現代人と同じく頸椎7個と胸椎12個が確認され、現生種では現代人と最近縁のチンパンジー(胸椎は13個)とは異なります。一方で、セラムの胸椎から腰椎への移行パターンは、アウストラロピテクス属ではアフリカヌス(Australopithecus africanus)やセディバ(Australopithecus sediba)、ホモ属ではエレクトス(Homo erectus)といった前期更新世以前の人類の部分的骨格で確認されていたように、現生類人猿や現代人と異なる特徴を示しています。

 現代人は他の現生霊長類とは異なり、直立二足歩行に特化しています。その解剖学的基盤は脊椎骨にも見られますが、確実に直立二足歩行だったと考えられる前期更新世以前の人類には、上述したように現代人とは異なる胸椎から腰椎への移行パターンが見られました。これはセラムでも見られた一方で、その胸椎の数は現生霊長類とは異なり、現代人と同じです。直立二足歩行に特化した解剖学的構造はじょじょに形成されたのでしょうが、現生類人猿とは異なる一方で、現代人との類似点と相違点の両方がすでに330万年前頃に確認されることを示したという点で、この研究は注目されます。


参考文献:
Ward CV. et al.(2017): Thoracic vertebral count and thoracolumbar transition in Australopithecus afarensis. PNAS.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1702229114
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


最古の人類系統かもしれないヨーロッパのヒト科化石

2017/05/27 00:00
 これは5月27日分の記事として掲載しておきます。中新世のヨーロッパのヒト科化石と人類系統との類似性、および当時の環境についての研究が報道されました。AFPでも報道されています。一方の研究(Fuss et al., 2017)は、ギリシア(Pyrgos Vassilissis Amalia)とブルガリア(Azmaka)で発見された既知のグラエコピテクス属化石の歯根を改めて分析し、アウストラロピテクス属・アルディピテクス属など絶滅した人類系統や現代人と比較した結果、グラエコピテクス属はチンパンジー(およびボノボ)系統と分岐した後の人類系統に属する可能性が高い、との見解を提示しています。ギリシアで発見されたグラエコピテクス属化石はフレイベルギ種(Graecopithecus freybergi)と、ブルガリアで発見されたグラエコピテクス属化石は種区分未定とされています。

 もう一方の研究(Böhme et al., 2017)は、グラエコピテクス属化石の年代(ギリシアの化石は7157000年前頃、ブルガリアの化石は724万年前頃と推定されています)を含む737万〜711万年前頃の環境を推定しています。この頃、アフリカ北部では砂漠が拡大し、ヨーロッパの地中海沿岸では寒冷化が進行して草原が拡大しました。グラエコピテクス属化石の年代は、最古の人類系統とされるサヘラントロプス属よりも古くなりそうで(関連記事)、現生類人猿の系統と現代人系統を含むヒト科系統の主要な分岐は、アフリカ北部での砂漠の拡大やヨーロッパの地中海沿岸地域の草原の拡大といった環境変化を背景として、アフリカ以外の地で起きたのではないか、との見解が示唆されています。

 たいへん注目される研究ですが、グラエコピテクス属と分類されている化石はまだたいへん少ないので、この研究の見解が直ちに有力説になるのではなく、今後も検証・議論が続いてくことになりそうです。かりに、グラエコピテクス属化石がチンパンジー系統と分岐した後の人類系統に分類され、推定年代も妥当なのだとしても、チンパンジー系統と人類系統との分岐も含めて、ヒト科系統の主要な分岐がアフリカで起きた可能性もじゅうぶん考えられると思います。グラエコピテクス属化石はチンパンジー系統と分岐した後の人類系統の一つであり、森林環境だけではなく開けた草原環境への適応能力にもなかなか優れており、アフリカからヨーロッパへと進出したものの、その後の気候変動や他種との競合などが原因で絶滅した、というわけです。ともかく、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Böhme M, Spassov N, Ebner M, Geraads D, Hristova L, Kirscher U, et al. (2017) Messinian age and savannah environment of the possible hominin Graecopithecus from Europe. PLoS ONE 12(5): e0177347.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0177347

Fuss J, Spassov N, Begun DR, Böhme M (2017) Potential hominin affinities of Graecopithecus from the Late Miocene of Europe. PLoS ONE 12(5): e0177127
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0177127
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0


デスクトップパソコンの不調

2017/05/26 00:00
 これは5月26日分の記事として掲載しておきます。先月(2017年4月)、デスクトップパソコンのデータ用ハードディスクが故障し、復旧しようとしてデータ用のSSDまで読み込めなくなった経緯をこのブログで述べましたが(関連記事)、その後、システム自体が不安定になり、音楽を再生したり、スタートメニューを選択したりしただけでもフリーズするようになりました。以前には、このようなフリーズはCPUの周波数を変更する時にたまに起きるだけだったのですが、通常の作業中に頻繁にフリーズするようになったので、先月デスクトップパソコンが壊れかけたことが原因のようです。

 Office 2016を導入したところ(関連記事)、体感速度で動作が明らかに遅くなったので、以前はCPUの周波数を1.6 GHzに下げて使用していたのですが、最近では4.4GHzまでオーバークロックして使っていたことが一因かもしれない、と考えて、久しぶりにCPUを定格で使用することにしました。しかし、その後もたびたびフリーズし、それどころか、BIOSが起動しなくなり、マザーボード上の電池の抜き差しによりやっと復旧できたことさえあったので、かなり困った状況に陥りました。いつフリーズするようになるか分からないので、ワードやエクセルでの作業時には以前よりも頻繁に保存するようになりました。

 私の知識では原因を特定できなかったので検索したところ、どうも「Kernel-Power 41問題」のようです(関連記事)。この問題についてはさまざまな解決策が提示されていますが、とりあえず、「Super Fetch」を無効化し、ページングファイルを作成しないように設定しました(関連記事)。これで問題解決になるのか、まだ分かりませんが、とりあえず体感的には速度が変わっていないので、フリーズすることさえなければ、実用的にはほとんど支障がないようです。

 あるいは、ハードウェアの深刻な問題が原因かもしれないので、電源などの買い替えが必要になるかもしれません。現在使用中のデスクトップパソコンも購入してから6年近くになるだけに(関連記事)、そろそろ買い替え時かもしれません。ただ、今はSSDとメモリの値段が高いだけに、6年前と比較すると割高感が否めません。もちろん、6年前と比較すると、同じくらいの値段でずっと高性能のデスクトップパソコンを購入できるわけですが、その時点での相対的な性能比でみると、現在は6年前と比較して明らかに割高のように思えます。何とも悩むところですが、Office 2016を今年になって導入したばかりですから、何とか、このまま現在使用中のデスクトップパソコンを最低もう1年は使い続けたいものです。

 先月までは、もう2〜3年使用することを前提に、消費電力と性能の問題からグラフィックボードを交換しようかな、と考えていたのですが、このデスクトップパソコンがいつまで使用できるのか分かりませんし、グラフィックボードの交換で深刻な問題が生じて使えなくなっても困るので、とりあえずこのまま現状の構成で様子を見ることにします。まあ、先月読み込めなくなったSSDをフォーマットして現在使用中のSSDのデータをコピーしておき、グラフィックボードの交換で深刻な問題が生じたら、元の環境に戻すという手もあるかな、とも考えていますが。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』634話〜637話

2017/05/25 00:00
633話「ホスピタル」8
 ドックは、入院患者が相次いで失踪した病院に、知り合いの医者の協力を得て偽って入院し、潜入捜査を続けます。失踪した男性の一人は水死体で発見され、臓器目当てではないか、と一係は推理します。けっきょく、医師の人体実験のために身寄りのない患者たちが誘拐されていたことが分かります。かつて医者を目指して医学部に進学したというドックの設定を活かした話になっています。この設定はたびたび活かされているのですが、上手く話を作ってくることが多いように思います。成功した人物設定と言えるでしょう。ゲストとして清水章吾氏・潮哲也氏・上田忠好氏・北條清嗣氏・金田明夫氏・塩見三省氏が出演しており、私にとってはかなり豪華な配役で、その点でも楽しめました。北條氏は相変わらず、視聴者の反感を買うような役を演じると上手いと思います。


634話「パブロフの犬」6
 サラ金強盗の犯人が逃走中にダンプに轢かれて重傷を負い、手術を受けますが、死亡します。犯人の身許は不明で、一係は手がかりを探します。犯人が早々に死亡するという珍しい話で、どう展開するのか、気になったのですが、犯人の身許はあっさりと判明します。しかし、犯人が悩んでいたという情報は得られたものの、犯行動機は不明なままです。一係が捜査を進めると、犯人の周囲の人物がマリファナを吸っていたことから脅迫されていた、と分かります。脅迫者が誰なのか、捜査は難航しますが、マリファナを吸っていたことを知っている、大学院に進学する女子学生が怪しいと考え、捜査を進めます。しかし、犯行動機がつかめません。けっきょく、成績優秀にも関わらず、自分より成績の劣る学生の就職が決まっていくことに鬱屈を感じたことが犯行動機でした。悪い話ではありませんでしたが、全体的に盛り上がりに欠けた感は否めません。まあ、女子学生が犯行を認めず、対決姿勢を貫くという結末は新鮮でよかったと思いますが。


635話「いい加減な女」9
 ブルースの妻はスーパーで出会った女性に娘の世話を強引に頼まれ、預かることになります。女性は母親が重体だと理由を告げましたが、女性には母親はおらず、女性の夫も出張から戻って来ていないことが分かります。女性には浮気相手がおり、女性の夫もそのことを承知したうえで妻の浮気相手に金を渡していて、一係は女性の夫の真意を測りかねます。行方不明だった女性の夫は落下した自動車の中で死体で発見されます。女性の夫は普段酒を飲まないのに、飲酒していたことが明らかになります。自殺なのか他殺なのか、謎めいた事件でしたが、死亡した男性には妻と母が受取人の保険がかけられていると明らかになり、一係は女性の浮気相手による殺人を疑いますが、捜査を進めると、女性の夫は末期癌だったことが分かります。けっきょく、女性の夫は妻・娘・母のためにあえて妻の浮気相手に殺されたことが明らかになります。なかなかひねった話になっており、かなり楽しめました。ブルース主演作ということになりそうですが、夫の複雑な心理の解明では山さんが活躍しており、ダブル主演に近い作品かもしれません。確かに、ブルースが妻の浮気相手を罠にはめた夫の複雑な心理を解き明かすのは、これまでの描写からして不自然なので、これでよかったと思います。


636話「ラガー倒れる」7
 レストランで若い男性が暴れ、その場にいた中年男性の客が店に金を渡し、これで許してやってくれ、と言います。この中年男性は大物の男性作家を脅迫しており、要求が受け入れられなければビルを爆破する、と予告します。中年男性は、作家の功績は自分のものだと訴えていました。ところが、レストランで暴れた若い男性は中年男性を誘拐し、2000万円を要求します。中年男性は妻子に見捨てられており、ラガーは中年男性の息子を装い、若い男性と交渉します。なかなか込み入った人間関係になっており、ひねった話になっていたので、楽しめました。今回、ラガーが膝に激痛を覚える場面が何度か描かれ、事件解決後に、それが骨肉腫だと明らかになり、ラガーは入院します。ラガーが殉職の前に骨肉腫を患ったことは覚えていましたが、どのような経緯で発覚したのか、すっかり忘れていました。内田朝雄氏・藤岡重慶氏・村田雄浩氏がゲストで、かなり豪華な配役となっており、この点でも楽しめました。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2


大河ドラマ『おんな城主 直虎』第20回「第三の女」

2017/05/24 00:00
 これは5月24日分の記事として掲載しておきます。直親(亀之丞)の娘と名乗る高瀬という少女が井伊谷に現れ、井伊家中、とくに直虎(次郎法師)は動揺します。直親に娘がいるとは聞いていない、と井伊家中から聞かされた高瀬は、井伊谷を去ろうとしますが、直虎(次郎法師)は、真偽が判明するまで高瀬を屋敷で預かることにします。中野直之と奥山六左衛門は、本当に直親の娘ならば、井伊家中は人手不足なので井伊家の一族として迎えるべきではないか、と進言します。小野政次(鶴丸)は、今川と武田の関係が悪化するなか、武田が高瀬を間者として送り込んできたのではないか、と疑います。

 武田との関係が悪化した今川は、松平との和睦を模索します。松平家康(徳川家康)は今川との和睦も選択肢に入れているようですが、家臣は今川との和睦に強硬に反対します。家康はとりあえず、情勢を探らせて様子を見ることにします。直親を匿っていた人物からの情報で、高瀬の母親と直親は知り合いだったことは分かったものの、高瀬が直親の娘なのか、確証は得られませんでした。高瀬が直親の吹いていた曲を口ずさんでいたのを聴いた直虎は、高瀬が直親の娘だと確信し、井伊家に迎え入れることにします。しかし、直虎の心中は穏やかではなく、それは「しの」も同様でした。直虎と「しの」は、その場で調子のよいことばかり言っていた直親への恨みつらみで初めて意気投合します。直親の娘として井伊家に迎え入れる、と直虎に言われた高瀬は喜ぶとともに、自分の母が直虎には申し訳ないことをした、と謝ります。

 松平との接触を模索する直虎は、南渓和尚とも面識のある松下常慶と会おうとしていましたが、ついに松下常慶が井伊谷を再訪します。直虎と南渓和尚は松下常慶から諸国の情勢を聞き、武田と今川との対立の背後には織田がいることを知ります。政次とともに駿府を訪れた瀬戸方久は、今川氏真の意向により鉄炮の商売を駿府の商人に奪われたことから、駿府を見限り、商人の自治的な町である気賀を直虎とともに訪れます。そこには、井伊領内で木を伐採していた盗賊団がいました。

 今回は、直親の娘と名乗る高瀬の登場により、井伊家中が揺れ動く様が描かれ、全体的に喜劇調だったように思います。直虎と「しの」とが初めて意気投合した展開は、直親を調子のよいクズとして描いてきたことが活かされ、よかったと思います。ただ、井伊家中は高瀬を直親の娘として受け入れたものの、松下常慶を見たときの高瀬の様子からは、裏があるようにも思います。今後は、高瀬の正体も見どころの一つとなりそうで、楽しみが増えました。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


イラン大統領選

2017/05/23 00:00
 これは5月23日分の記事として掲載しておきます。イラン大統領選はこのブログを始めてからでは今年(2017年)で3回目となりますが、過去2回の2009年(関連記事)と2013年(関連記事)の時も言及しているので、今回も取り上げることにします。イラン大統領選は1回目の投票にて過半数の票を獲得する候補がいればそれで決まりで、1回目で決着することもよくあります。2009年と2013年の時は決選投票になるのかと予想していたところ、1回目で決まり、意外に思ったことを覚えています。

 今回は、強硬派とはいっても、イラン政界においては「保守本流」ではなく異端的なアフマディネジャド前大統領が立候補したものの、護憲評議会の審査で失格となり、保守強硬派とされる立候補者ではガリバフ・テヘラン市長とライシ前検事総長が有力候補とされていました。しかし、ガリバフ・テヘラン市長は保守強硬派一本化のため撤退し、一方で保守穏健派とされるジャハンギリ第一副大統領も撤退したので、ライシ前検事総長と保守穏健派とされる現職のロハニ大統領との一騎討ちの様相を呈していたように思います。

 今月(2017年5月)19日の1回目の投票では、開票率99.7%の時点でロハニ大統領が57.1%の得票率で再選を決めました(ライシ前検事総長の得票率は38.5%)。オバマ政権時代の核合意でも、イランにたいする経済制裁が完全に解除されたわけではなく、イランの経済状況は大きく好転したとは言えないようです。さらに、アメリカ合衆国のトランプ現政権は、オバマ政権時代のイランとの核合意の見直しを志向し、イラン敵視政策を強めようとしているだけに、ロハニ政権の前途は多難でしょう。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


白保竿根田原洞穴遺跡についての新たな発表

2017/05/22 00:00
 これは5月22日分の記事として掲載しておきます。沖縄県石垣市の白保竿根田原洞穴遺跡についての新たな発表が報道されました。読売新聞でも報道されています。白保竿根田原洞穴遺跡では日本列島でも有数の古い人骨が複数発見されており、このブログでも何度か取り上げてきました。
http://sicambre.at.webry.info/201002/article_6.html
http://sicambre.at.webry.info/201003/article_13.html
http://sicambre.at.webry.info/201101/article_22.html
http://sicambre.at.webry.info/201111/article_11.html
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_1.html

 今回の新たな発表では、白保竿根田原洞穴遺跡の更新世の人骨群が少なくとも19個体分になることと、そのうちのほぼ全身の骨格が残っている、推定身長165.2cmで比較的高齢の男性と考えられる1体(4号人骨)の年代が、放射性炭素年代測定法により、較正年代で27000年前頃になることが明かされています。4号人骨は仰向けに手足を強く折り曲げた屈葬の姿勢をとっており、白保竿根田原洞穴遺跡は更新世では最大級の規模の墓域で、風葬が採用されていたのではないか、と指摘されています。

 人骨と共伴した石器は発見されておらず、2体の上顎の歯がきょくたんにすり減っていたことから、歯が道具として利用されていた可能性が指摘されています。また、1体の頭蓋骨では両耳の部分が瘤状に変形しており、日常的に海に潜っていたのではないか、と推測されています。日本列島で発見された更新世の人骨はたいへん少なく、骨の保存に適した土壌の沖縄県に集中しています。同じく沖縄県で発見された更新世の人骨(湊川人)との比較では、白保竿根田原洞穴遺跡の4号人骨の方が、かなり身長が高いと指摘されています。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


本村凌二『教養としての「世界史」の読み方』第3刷

2017/05/21 00:00
 これは5月21日分の記事として掲載しておきます。2017年3月にPHP研究所より刊行されました。第1刷の刊行は2017年1月です。歴史学に限らず、緻密化・細分化の進む分野で、総合的な内容の本を執筆するのには勇気が必要だと思います。歴史学のような分野だと、扱う範囲が広範で、研究の蓄積も膨大なため、「一国史」でも通史を執筆するのにはかなりの勇気が必要となるでしょう。じっさい、各分野の専門家や非専門家でも詳しい人で、本書の叙述に疑問を抱く人は少なくいかもしれません。ただそれでも、本書のような一人の執筆者による総合的な歴史書は、歴史理解の手がかりのために必要であるとは思います。

 本書は「世界史」とはいっても、時代順に重要なもしくは著名な出来事を網羅的に簡潔に叙述していくという形式ではなく、著者が重要と考える観点に基づいて解説していく、という構成になっています。その観点とは、文明が大河の畔で発祥した理由・ローマとの比較・世界史における同時性・人間の大移動の理由・宗教の重視・共和政の観点からの日本と西洋の違い・すべての歴史は「現代史」である、というものです。このうち、すべての歴史は「現代史」であるという観点は、本書を貫く基調になっていると思います。

 このうち、文明が大河の畔で発祥した理由については、乾燥化により人々がより好適な環境に集まってきたからだ、とされており、人間の大移動の理由とも関連しています。ただ、たとえば、いわゆるインダス文明については、大河文明ではない、との見解も提示されています(関連記事)。アメリカ大陸など、メソポタミア・エジプト・華北以外の地域の事例も含めて、これは、今後も検証・議論の必要な問題のように思えます。ただ、「文明」の発祥において人間が集まることを重視する本書の見解は、基本的に妥当だと思います。

 世界史における同時性については、現代にまで強い影響を及ぼしている重要な思想が紀元前1000年紀にユーラシアの各地で相次いで出現したことが指摘されています。これは、すでに「枢軸時代」として以前から指摘されている見解ですが、本書は、思想だけではなく、貨幣・アルファベット・一神教の出現にも同時代性があると指摘し、その背景に単純化志向を想定しています。これは重要な指摘だと思います。ただ、宗教に関して言えば、「二分心」仮説に好意的な本書の見解には疑問が残ります。

 本書は全体的にたいへん読みやすく、もちろん、上述したように、世界史という大きな範囲を対象にしているので、専門家からすると突っ込みどころは少なくないだろう、と思います。私が気になったのは、一神教における宗教対立の激しさの指摘で、現代日本社会においてかなりの程度定着していると思われる、排他的な一神教世界と寛容な多神教世界の日本という俗説の影響があるのではないか、と懸念されます。また、現代日本社会におけるモラルの低下との指摘も、むしろ、著者がローマ社会について指摘していたような(関連記事)、社会の価値観の変化・厳格化といった心性の変化による可視化が進んだためではないか、とも思えます。

 このように疑問点もありますが、本書のような概説ではそれは避けられないことでしょうし、本書は教科書・指導書としてではなく、自身で調べて考える契機とする入門書として読むべきなのでしょう。著者の他の著書と同様にたいへん読みやすく、本書の諸見解に同意するか否かは別として、重要な論点が提示されているので、読んで損することはないと思います。私は、面白かったということもあり、集中してあっという間に読み終えることができました。著者の一連の著書のなかでは大当たりとまでは言えませんが、お気に入りの一冊となりました。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


現代人の形成に大きな役割を果たした移民

2017/05/20 00:00
 これは5月20日分の記事として掲載しておきます。現代人の形成に移民が大きな役割を果たした、と指摘する概説(Gibbons., 2017)が公表されました。この概説は、現在、移民が大きな問題となっていることを強く意識した内容になっています。移民排斥の流れは現代世界の大きな動向として注目されており、それがイギリスの国民投票におけるEU離脱や、アメリカ合衆国でのトランプ政権の誕生など、「識者」や既存報道機関にとって意外な、大きな政治的出来事をもたらした、とよく論じられています。また、「識者」や既存報道機関にとって意外ではないとしても、フランス大統領選における国民戦線候補の健闘も、同じような文脈でよく語られています。

 しかし、この概説は、そもそも現生人類(Homo sapiens)は頻繁に移動する動物であり、各集団間の混合は珍しくなく、現代人の各地域集団も混合の結果形成されていったのだ、と強調しています。このような人類集団の移動・混合について、かつては考古学的証拠(土器などの人工物)が指標とされていましたが、文化の伝播は人類集団の移住を伴うとは限らないので、同位体分析が重視されるようになり、現代ではDNA解析が重要な指標とされています。このDNA解析は、技術の飛躍的発展により、現代人だけではなく、更新世にまでさかのぼって人類遺骸も対象となっています。その結果、現生人類内の各集団間だけではなく、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)といった、他系統の人類と現生人類との交雑も明らかになりました。

 この概説は、オーストラリア先住民のように、他集団との混合の影響の少ない地域集団もあるものの、現代人の各地域集団は基本的に混合により形成されたと強調し、「純粋な民族」を想定する見解、とくにドイツのナチス政権の主張を批判しています。現代人および古代人のDNA解析の結果、現代ヨーロッパ人の主要な起源ついては、更新世の狩猟採集民・完新世初期に農耕をもたらした西アジアからの移民・青銅器時代に黒海沿岸から拡散した遊牧民と複数あることが明らかになりました。こうした移動の特徴は一様ではなかったようで、青銅器時代の遊牧民の移動に関しては、男性の比率が圧倒的に高かったのではないか、と推測されています。

 ナチス政権は、人類学や考古学や歴史学を利用して「純粋なアーリア人」の存在を喧伝しました。ナチス政権はそうした文脈において、紀元後9年のトイトブルクの戦いの英雄とされるアルミニウスを「純粋な」アーリア人として称揚し、ポーランドやオーストリアの領有の正当化に利用しました。しかし、この概説は、アルミニウスはゲルマン系集団を統一できたわけではなく、さらに、上述したヨーロッパ人の形成過程からしても、アルミニウスの出身部族であるケルスキ族は各集団の混合により形成されたのであり、「純粋なアーリア人」ではなかった、と指摘しています。

 現代人の各地域集団は複雑な混合の結果形成された、というこの概説の見解は今では常識的です。ただ、この概説でも指摘されているように、たとえばオーストラリア先住民は比較的孤立していた集団であり、各地域集団の形成過程・混合の比率とその様相(たとえば、青銅器時代のヨーロッパにおける移動や、ヨーロッパからアメリカ大陸への人類の初期の移住における性比の非対称性)はかなり異なっていたと思われます。また、この概説からも窺えるように、現時点ではヨーロッパについての研究がとくに詳しく、地域間の研究密度の違いが大きいことも否定できません。気候など環境条件の問題により古代DNAの解析が難しい地域もあるので、この格差を埋めるのは容易ではありませんが、この分野の技術の発展は著しいので、今後の研究の進展が大いに期待されます。


参考文献:
Gibbons A.(2017): Busting myths of origin. Science, 356, 6339, 678-681.
http://dx.doi.org/10.1126/science.356.6339.678
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


マウスの子育ての遺伝的性質

2017/05/19 00:00
 マウスの子育ての遺伝的性質に関する研究(Bendesky et al., 2017)が公表されました。哺乳類の養育行動は個体差・性差・種差が大きいと明らかになっていますが、マウスの場合には、仔の移動・寄せ合い・仔の面倒を見ること・仔の毛づくろい・営巣などの行動が含まれています。しかし、そうした行動を引き起こす遺伝的機構と進化的機構については、解明が進んでいません。この研究は、乱婚型のシカシロアシマウス(Peromyscus maniculatus)と一雄一雌型のハイイロシロアシマウス(Peromyscus polionotus)というごく近縁な2種のマウスを調べて、両者の養育行動に大きな違いがあり、それが遺伝性のものであることを明らかにし、養育のような複雑な社会的行動の基盤となっている神経生物学的性質に関する新たな知見が得られました。

 この研究は、量的遺伝学の手法を用いて、養育に関係する12のゲノム領域を同定し、そのうちの8つの領域が性別特異的な影響を及ぼすことを明らかにしました。これは、雄と雌の養育行動がそれぞれ独立して進化した可能性を示唆しています。また、これらのゲノム領域の中には、養育に対して幅広い影響を及ぼす領域と特定の行動(例えば営巣)に影響を及ぼす領域があると考えられています。この研究は、バソプレッシンのレベルを上昇させる遺伝的変化が、営巣行動の減少と関連していることを明らかにしています。また、この研究は、視床下部においてバソプレッシンを放出するニューロンを人工的に操作する実験を行ない、これによりマウスの営巣行動のレベルを変えることができることを発見しました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトから引用(引用1および引用2)です。


【遺伝】子育ての遺伝的性質

2種のマウスを使って養育行動の遺伝的な駆動要因を調べた研究について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、これらのマウスの養育行動に影響を与える12のゲノム領域が同定され、養育の1つの側面である営巣においてバソプレッシンというホルモンが果たす役割が明らかになった。

哺乳類の養育行動は個体差、性差、種差が大きいが、マウスの場合には、仔の移動、寄せ合い、仔の面倒を見ること、仔の毛づくろい、営巣などの行動が含まれている。しかし、そうした行動を引き起こす遺伝的機構と進化的機構については、解明が進んでいない。

今回、Hopi Hoekstraたちの研究グループは、乱婚型のシカシロアシマウス(Peromyscus maniculatus)と一雄一雌型のハイイロシロアシマウス(Peromyscus polionotus)というごく近縁な2種のマウスを調べて、両者の養育行動に大きな違いがあり、それが遺伝性のものであることを明らかにした。Hoekstraたちは、量的遺伝学の手法を用いて、養育に関係する12のゲノム領域を同定し、そのうちの8つの領域が性別特異的な影響を及ぼすことを明らかにした。このことは、雄と雌の養育行動がそれぞれ独立して進化した可能性を示唆している。また、これらのゲノム領域の中には、養育に対して幅広い影響を及ぼす領域と特定の行動(例えば営巣)に影響を及ぼす領域があると考えられている。Hoekstraたちは、バソプレッシンのレベルを上昇させる遺伝的変化が、営巣行動の減少と関連していることを明らかにしている。また、Hoekstraたちは、視床下部においてバソプレッシンを放出するニューロンを人工的に操作する実験を行い、これによってマウスの営巣行動のレベルを変えることができることを発見した。今回の研究では、養育のような複雑な社会的行動の基盤となっている神経生物学的性質に関する新たな知見が得られた。


動物行動学:一夫一妻マウスにおける子育ての進化の遺伝学的基盤

動物行動学:子育ての遺伝学

 齧歯類は営巣などのさまざまな子育て行動を見せるが、こうした子育て義務を熱心に遂行する種もあれば、そうでもない種もある。しかし、子育て行動をどの程度行うかに影響を及ぼす遺伝的・進化的な機構は不明である。今回、H Hoekstraたちは量的遺伝学的手法を用いて、近縁種内で子育てに影響を与える遺伝子の候補を明らかにしている。視床下部ホルモンのバソプレッシンのレベルを上昇させる遺伝的変化は、営巣行動の減少と関連があった。さらに、バソプレッシンを分泌するニューロンを人為的に操作すると、営巣の度合いに直接影響を及ぼし、ニューロンのバソプレッシン放出活性の低下は、営巣行動レベルの上昇と相関を示した。この結果は、神経ペプチドシグナル伝達の変動が、子育てのような複雑な社会的行動に影響している可能性を示唆している。


参考文献:
Bendesky A et al.(2017): The genetic basis of parental care evolution in monogamous mice. Nature, 544, 7651, 434–439.
http://dx.doi.org/10.1038/nature22074
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


真菌類の起源

2017/05/18 00:00
 真菌類の起源に関する研究(Bengtson et al., 2017)が公表されました。控えめの推定では、真菌類は約4億年前に出現したと示唆されていますが、近年の研究では、14億年前の真菌類の化石証拠と考えられるものが報告された例もあります。真核生物の系統樹の枝は約27億年前に生じたと示唆されていますが、現時点で最古となる既知の真核生物(全ての動植物および真菌類を含み、真正細菌および古細菌を含まない生物群)化石であるグリパニア=スピラリス(Grypania spiralis)の年代は19億年前です。

 この研究は、南アフリカのオンゲルック累層の深部まで掘削して得たコアから採取した化石を示し、顕微鏡および分光法を利用して、その繊維の生物学的由来を確かめました。その結果、この24億年前の化石は微細な生物の遺物であることが明らかになりました(直径0.002〜0.012mm)。これはヒトの毛髪よりも細く、火山岩の内部の空隙に生息していました。真菌類は陸上で生まれたと考えられており、この研究は、その生物が生きていた当時のオンゲルック累層が海面下にあったことの重要性を指摘しています。そのような初期の真菌類の起源を示す化石は、同じ時代に他の重要な真核生物の枝も存在していたのか、という問題も提起します。ただ、この生物が、未知の真核生物系統樹上の繊維状生物である可能性も示唆されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


我々の仲間である真菌類は20億年以上にわたって存在しているのか

 一部の現生真菌類に類似した構造的特徴を示す24億年前の化石が、今週のオンライン版で発表される。その化石の繊維状の形態は、それが極めて古い真菌類であるか、さもなければ、これまで知られていなかったやはり真核生物系統樹上の繊維状生物であることを強く示唆している(真核生物とは、全ての動植物および真菌類を含み、細菌およびアーキアを含まない生物群である)。その化石は、真菌類としては10億〜20億年、真核生物化石としては5億年だけ、従来の最古の記録をさかのぼるものであり、今回の発見は初期生命の発達を理解する上で重要である。

 控えめの推定では、真菌類は約4億年前に出現したことが示唆されているが、近年の研究には、14億年前の真菌類の化石証拠と考えられるものが報告された例もある。真核生物の系統樹の枝は約27億年前に生じたことが示唆されているが、現時点で最も古い既知の真核生物化石(グリパニア・スピラリス;Grypania spiralis)は、たかだか19億年前のものである。

 今回、Stefan Bengtsonたちは、南アフリカ・オンゲルック累層の深部まで掘削して得たコアから採取した化石を示し、顕微鏡および分光法を利用してその繊維の生物学的由来を確かめた。その結果、その化石は微細な生物の遺物であることが分かった(直径0.002〜0.012 mm)。これはヒトの毛髪よりも細く、火山岩の内部の空隙に生息していた。真菌類は陸上で生まれたと考えられており、研究チームは、その生物が生きていた当時のオンゲルック累層が海面下にあったことの重要性を指摘している。そのような初期の真菌類の起源を示す化石は、同じ時代に他の重要な真核生物の枝も存在していたのかという問題も提起する。



参考文献:
Bengtson S. et al.(2017): Fungus-like mycelial fossils in 2.4-billion-year-old vesicular basalt. Nature Ecology & Evolution, 1, 0141.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-017-0141
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


環境変化とホモ属の出現

2017/05/17 00:00
 これは5月17日分の記事として掲載しておきます。環境変化とホモ属の出現に関する研究(Robinson et al., 2017)が報道されました。アフリカ東部におけるアウストラロピテクス属からホモ属への移行は、鮮新世〜更新世にかけての、湿潤な森林の多い環境から乾燥した草原環境への移行と関連づけられてきました。しかし、鮮新世末期の環境に関するデータは不足しています。この研究は、アワシュ川下流域とトゥルカナ盆地において、350万〜100万年前頃の動物相の土壌炭酸塩安定同位体を分析し、環境変化と食性を明らかにしています。

 アワシュ川下流域のレディゲラル(Ledi-Geraru)ではホモ属的特徴を有する280万〜275万年前頃の下顎(LD 350-1)が発見されています(関連記事)。これは、ホモ属化石の年代を40万年ほどさかのぼらせる発見として話題になりましたが、この頃にホモ属が出現していた、と断定するのには慎重であるべきだと思います。しかし、アフリカ東部において300万年前頃までには痕跡の途絶える(ホモ属的特徴の見られない)アウストラロピテクス属と、ホモ属との間を埋めるたいへん重要な化石であることは間違いないでしょう。

 この研究は、アワシュ川下流域とトゥルカナ盆地における鮮新世〜更新世の環境変化が大まかには類似していることを明らかにしました。しかし、アウストラロピテクス属からホモ属への移行期とも考えられる300万〜280万年前頃にかけては、アワシュ川下流域の方が、湿潤な森林環境から乾燥した草原環境への移行が早かったことも明らかになりました。また、このように環境の移行にともなって動物相が変化したにも関わらず、「LD 350-1」の歯の分析からは、「LD 350-1」の食性がそれ以前のアウストラロピテクス属と変わらなかったことも明らかになりました。この結果には、本論文の著者の一人であるカンピサノ(Christopher J. Campisano)博士も率直に、驚いたと述べています。

 こうした知見より、アウストラロピテクス属からホモ属が出現する背景として、湿潤な森林環境から乾燥した草原環境への移行があるのではないか、と考えられています。これは、従来から有力視されていた見解を補強する証拠と言えるでしょう。ただ、初期ホモ属とはいっても、ハビリス(Homo habilis)と分類されている人骨群にはホモ属的(派生的)特徴と祖先的特徴が混在しており、アウストラロピテクス属からホモ属への移行には長い時間を要したのではないか、と考えられます。


参考文献:
Robinson JR. et al.(2017): Late Pliocene environmental change during the transition from Australopithecus to Homo. Nature Ecology & Evolution, 1, 0159.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-017-0159
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


ペンギンに大きな影響を及ぼした火山噴火

2017/05/16 00:00
 これは5月16日分の記事として掲載しておきます。ペンギンにたいする火山噴火の影響についての研究(Roberts et al., 2017)が公表されました。南極半島の北部沖合に浮かぶアードレイ島には、多様性を示す大型のペンギンコロニーが存在しています。しかし、ジェンツーペンギンの個体数が増加している一方で、アデリーペンギンとヒゲペンギンの個体数が減少しており、温暖化と海氷面積の変化により多様性は脅かされています。ただ、このコロニーに関する長期記録がないため、このコロニーの過去の変化の解明とそれによって今後の変化を予測する能力が制約を受けています。

 この研究は、アードレイ島の中央部の湖の堆積層に長期間蓄積されたペンギンのグアノ(排泄物が堆積固化した物質)からの生物地球化学的特徴に基づき、約7000年間のペンギンの個体数の記録を再構築し、情報不足の問題に取り組みました。その結果、ペンギンのコロニーに最も大きな影響を及ぼしたのが気温や海氷状態の変化ではなく、近くにあるデセプション島の火山の爆発的噴火であり、火山灰が地表を覆い、少なくとも3回はコロニーの放棄に追い込んだことを発見しました。さらに、このグアノの記録からは、コロニーがこうした火山噴火から持続可能な回復を遂げるまでに400〜800年かかったことも明らかになりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【環境科学】ペンギンの運命を決めた火山噴火

 南極半島に存在していたジェンツーペンギンの最古で最大のコロニーの1つが、火山の噴火によってたびたび絶滅に近い状態に追い込まれていたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究結果によれば、このコロニーは過去7,000年間で少なくとも3回にわたって局所的な絶滅に近い被害を受け、その後400〜800年をかけて回復したとされる。

 南極半島の北部沖合に浮かぶアードレイ島には、多様性を示す大型のペンギンコロニーが存在している。しかし、この多様性が、温暖化と海氷面積の変化によって脅かされている。ジェンツーペンギンの個体数が増加している一方で、アデリーペンギンとヒゲペンギンの個体数が減少しているのだ。残念なことに、このコロニーに関する長期記録がないため、このコロニーの過去の変化の解明とそれによって今後の変化を予測する能力が制約を受けている。

 今回、Stephen Robertsたちの研究グループは、アードレイ島の中央部にある湖の堆積層に長い年月をかけて蓄積されたペンギンのグアノ(排泄物が堆積固化した物質)から見つかった生物地球化学的特徴に基づいて約7,000年間のペンギンの個体数の記録を再構築し、情報不足の問題に取り組んだ。その結果、Robertsたちは、ペンギンのコロニーに最も大きな影響を及ぼしたのが気温や海氷状態の変化ではなく、近くにあるデセプション島での火山の爆発的噴火であり、火山灰が地表を覆い、少なくとも3回はコロニーの放棄に追い込まれたことを発見した。さらに、このグアノの記録からは、コロニーがこうした火山噴火から持続可能な回復を遂げるまでに400〜800年かかったことも明らかになった。



参考文献:
Roberts SJ. et al.(2017): Past penguin colony responses to explosive volcanism on the Antarctic Peninsula. Nature Communications, 8, 14914.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms14914
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


大河ドラマ『おんな城主 直虎』第19回「罪と罰」

2017/05/15 00:00
 これは5月15日分の記事として掲載しておきます。井伊谷の近隣領主である近藤康用が直虎(次郎法師)を訪ねてきて、領内の山の木々を井伊領の者に盗まれた、と訴え出てきます。直虎は近藤領の者の仕業ではないかと反論し、二人はともに、検証のために盗伐のあった現場に向かいます。そこで直虎たちは、近藤領内だけでなく井伊領内の木々も盗まれてしまっていることに気づきます。井伊と近藤は見張りを続けた結果、ついに犯人を捕らえます。その犯人は、以前、直虎に人集めの知恵を授けた旅の男でした。

 中野直之は捕えた旅人を打ち首にするよう主張しますが、直虎は、以前知恵を授けてもらった恩義があることから、旅人を助けようとします。駿府から戻った小野政次(鶴丸)は、あくまでも打ち首にするよう主張するものの、強情な直虎に折れて、無償労働させるという直虎の案を検討すると約束します。しかし、やはり面倒な事態になることを回避すべく、政次は旅人を近藤家に引き渡そうとします。直虎と政次は激しく言い争いますが、その間に旅人は逃げ出します。

 虎松(井伊直政)の成長も少し描かれましたが、今回の見どころは、やはり謎めいた旅の男と直虎との再会でした。ただ、旅の男の正体はある程度明かされたとはいえ、まだ謎めいたところが多分にあり、おそらくは架空の人物でしょうから、主人公とどう関わってくるのか、予想しづらく、楽しみです。予想しづらいといえば、今回最後に登場した、直親(亀之丞)の娘と名乗る少女もそうで、今後どのように物語に関わってくるのか、注目されます。今川と武田の関係は悪化し、焦る今川氏真にたいして、祖母の寿桂尼は松平との和睦を進言します。直接的な描写は、義信が幽閉されたことくらいですが、このところ作中で武田はかなりの存在感を示しており、本格的な登場が楽しみです。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


Alex Mesoudi『文化進化論 ダーウィン進化論は文化を説明できるか』

2017/05/14 00:00
 これは5月14日分の記事として掲載しておきます。アレックス=メスーディ(Alex Mesoudi)著、野中香方子訳、竹澤正哲解説で、文藝春秋社より2016年2月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。本書は、文化の変遷を生物進化の概念・数理モデルで把握しようとする文化進化論の立場を解説しています。歴史学や文化人類学など文化を扱う社会科学分野は多数ありますが、その多くが定量的な手法を用いておらず、科学的厳密さに欠けている、と本書は指摘します(心理学や経済学の手法には科学的厳密さがあるものの、文化を無視して個人の行動を重視し、文化を不変の背景係数として扱う傾向にある、と指摘されています)。そうした状況を変えるものとして、本書は文化進化論を強く打ち出しています。

 本書の目的は、たんに科学的厳密さを追求するのではなく、社会科学のさまざまな分野の間で個別の方法論が維持され、各分野を横断しての知見・方法論の交換が乏しいことから、文化の理解が妨げられている現状を大きく改善するために、生物進化のモデルを用いて文化を定量的に把握することにより、社会科学各分野の橋渡しをして、文化をより正確に説明しよう、という気宇壮大なものです。20世紀半ばに、数学的手法を用いた研究者たちが博物学と遺伝学との橋渡しをして進化総合説が成立したように、生物進化のモデルを用いて社会科学を統合しよう、というわけです。

 この試みが成功するのか否か、私の見識ではとても的確に予測できませんが、本書は、言語・写本などの諸研究から、文化の変遷を生物進化のモデルで把握することの有効性が少なくとも一定以上あることを、説得的に示せているように思います。このブログでも取り上げた、アシューリアン(Acheulian)石器の拡散と変容(関連記事)についても言及されていました。本書は、人間の文化の変遷を生物進化のモデルで把握することが有効な理由として、人間の文化の変遷が生物進化と同様に蓄積的であることを挙げています。人間にとって最近縁の現生種であるチンパンジーも含めて、他の現存生物にも文化と言えるものはありますが、蓄積的ではない、というわけです。ただ、人間の文化が蓄積的である理由については、まだ確定的なことは言えないようです。なお、本書における文化の定義は、「模倣、教育、言語といった社会的な伝達機構を介して他者から習得する情報」となっています。

 率直に言って、詳しくない分野だったので、読み進めるのになかなか苦労しましたし、じゅうぶん理解できたとはとても言えません。今後、時間を作って何度か再読する必要があります。文化の変遷を生物進化のモデルで把握する方法の有効性は明らかだと思いますし、今後の発展が大いに見込める分野だと言えるでしょう。その意味で、今後の研究の進展が大いに期待されますが、本書も指摘するように、まだ歴史の浅い分野なので、今後、多くの検証と議論が必要になってくるでしょう。本書は、教科書としてその見解を受動的に把握するのではなく、今後理解を深めるための出発点となる一冊と考えるべきなのでしょう。


参考文献:
Mesoudi A.著(2016)、野中香方子訳、竹澤正哲解説『文化進化論 ダーウィン進化論は文化を説明できるか』(NTT出版、原書の刊行は2011年)
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


2017年度アメリカ自然人類学会総会(クロアチアの後期更新世〜完新世の遺跡について)

2017/05/13 00:00
 これは5月13日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、今年(2017年)4月19日〜4月22日にかけて、アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ市で第86回アメリカ自然人類学会総会が開催されました。アメリカ自然人類学会総会では、最新の研究成果が多数報告されるだけに、古人類学に関心のある私は大いに注目しています。総会での各報告の要約PDFファイルで公表されているのですが、まだいくつかの報告を読んだだけです。とりあえず今回は、とくに興味深いと思った報告(Jankoviä et al., 2017)を取り上げます(P231)。今後、興味のある報告をこのブログで取り上げた場合は、この記事にトラックバックを送ることにします。

 本報告は、クロアチアのイストリア半島にあるロムアルド洞窟(Romualdo’s cave)遺跡について報告しています。ロムアルド洞窟遺跡では19世紀後半に小規模な発掘が、20世紀半ばにはもっと広範な発掘が行なわれ、後期更新世から鉄器時代にかけての様々な動物遺骸や人工物が発見されました。後期更新世の層からは、上部旧石器的な人工物や(人間ではない)動物遺骸や学童期(juvenile、6〜7歳から12〜13歳頃)の人間の歯が2個発見されています。2007年と2008年の発掘ではムステリアン(Musterian)的な人工物も発見されています。2014年には新たな発掘が始まり、青銅器時代の層からは人間の遺骸と人工物が、鉄器時代の層からは人工物が発見されています。48000年以上前となる層からは、ムステリアンの人工物と動物遺骸が発見されました。上部旧石器時代の人間の乳歯はじゅうぶんに現生人類(Homo sapiens)的であり、東ヨーロッパの上部旧石器時代における現生人類の拡散の解明の手がかりとなりそうです。


 アメリカ自然人類学会総会に関するこのブログの過去の記事は以下の通りです。

2016年度(第85回)
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_23.html

2015年度(第84回)
http://sicambre.at.webry.info/201504/article_15.html

2014年度(第83回)
http://sicambre.at.webry.info/201404/article_22.html
http://sicambre.at.webry.info/201404/article_34.html
http://sicambre.at.webry.info/201404/article_37.html
http://sicambre.at.webry.info/201405/article_5.html
http://sicambre.at.webry.info/201405/article_7.html

2013年度(第82回)
http://sicambre.at.webry.info/201304/article_30.html

2012年度(第81回)
http://sicambre.at.webry.info/201204/article_20.html

2011年度(第80回)
http://sicambre.at.webry.info/201104/article_27.html

2010年度(第79回)
http://sicambre.at.webry.info/201004/article_23.html

2009年度(第78回)
http://sicambre.at.webry.info/200905/article_27.html

2008年度(第77回)
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_20.html
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_28.html
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_32.html

2007年度(第76回)
http://sicambre.at.webry.info/200703/article_32.html
http://sicambre.at.webry.info/200704/article_11.html


参考文献:
Jankoviä I. et al.(2017): Human remains and artefacts from Romualdo’s cave, Istria, Croatia. The 86th Annual Meeting of the AAPA.
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


進化的放散と衰退の速度

2017/05/12 00:00
 進化的放散と衰退の速度に関する研究(Lim, and Marshall., 2017)が公表されました。種の豊かさ(種数)の変化速度と、生物的環境および非生物的環境の変化との関係を明らかにすることは、進化生物学における重大な目標の一つとされています。しかし、優れた化石記録や地質記録から手掛かりが得られる場合もあるものの、ほとんどの分類群では質の高い化石記録が欠如しています。そのため、クレードの多様性動態の研究では、多様化の速度変化を環境変化や形質変化と相関させるというような、分子系統学的手法に頼ることになります。しかし、分子系統学から導き出される推論は絶滅種に関する説明が困難なために限界があり、そうした種を生み出した多様性動態を正確に決定することは難しくなっています。

 この研究は、ハワイ諸島において、島の面積変化と種の豊かさとの関係に関する地質学的情報に基づくモデルを用いて、14の固有分類群の進化史全体にわたる種の豊かさの変化速度を、化石データや分子系統学を必要とせずに推測しました。その結果、これらの固有クレードは、種数の累積の初期の加速とそれに続く減速を特徴とする進化的放散を経験していることが明らかになりました。じっさい、ほとんどの島の大半の分類群で、進化的拡大の時期はすでに過ぎており、これらは現在まで認識されていなかった長期に及ぶ進化的衰退のさなかにあります。

 こうした知見は、景観の動的変化がどのようにして進化的動態を幅広い時間規模にわたって駆動し得るかを示しており、分子系統学では容易に検出されないか、豊かな化石記録なしでは得られないような、種の喪失の駆動なども含まれます。この研究では、環境の変化と種の豊かさの変化との間の関係を定量化することのできる他のクレードについても検証が進み、他の多くの現生分類群もまた、長期に及ぶ進行中の進化的衰退などの同様に複雑な進化的軌跡をたどってきたことが明らかになると期待される、と指摘されています。


参考文献:
Lim JY, and Marshall CR.(2017): The true tempo of evolutionary radiation and decline revealed on the Hawaiian archipelago. Nature, 543, 7647, 710–713.
http://dx.doi.org/10.1038/nature21675
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


ナレディの新たな化石と年代(追記有)

2017/05/11 00:00
 これは5月11日分の記事として掲載しておきます。新種のホモ属とされているナレディ(Homo naledi)に関する新たな論文3本が報道されました(報道1および報道2および報道3)。ナレディは南アフリカ共和国のライジングスター洞窟(Rising Star Cave)にあるディナレディ空洞(Dinaledi Chamber)で発見された年代不明の人骨群(関連記事)で、一般誌でも大きく取り上げられる(関連記事)など話題になりました。ナレディの足と手には現代人的(派生的)特徴と祖先的特徴との混在が指摘されており(関連記事)、ナレディの年代推定と人類進化系統樹における位置づけを難しくしています。当初、ナレディの報告者たちは、ナレディは鮮新世後期〜更新世初期の人骨群で、アウストラロピテクス属からホモ属への移行的な種である可能性が高い、と示唆していましたが(関連記事)、頭蓋と歯の比較からは、年代が912000年前頃と推定されています(関連記事)。ただ、あくまでも人類化石やチンパンジーやゴリラとの比較からの推定年代であり、堆積物から推定されたわけではないので、確定的とはとても言えませんでした。

 このように、ナレディの年代と人類進化系統樹における位置づけについては、不明な状況が続いていたのですが、この一連の論文3本により、ナレディについての研究は大きく進展することになりました。それは、ナレディの新たな化石についての研究(Hawks et al., 2017)と、ナレディの年代についての研究(Dirks et al., 2017)と、ナレディの人類進化史における位置づけについての研究(Berger et al., 2017)です。これらの研究はいずれも注目されますが、とくに、曖昧だったナレディの年代に関する研究の意義は大きいと思います。以下、これらの研究の成果を備忘録としてごく簡潔にまとめておきます。

 上述したように、ライジングスター洞窟のディナレディ空洞においてナレディの遺骸がすでに発見されており、少なくとも15個体分が確認されています。今回新たに、ライジングスター洞窟のレセディ空洞(Lesedi Chamber)において、131個の人類遺骸が発見されました。「レセディ(Lesedi)」とはツワナ語で「光」の意味です。これらの標本では、成人と子供を含む少なくとも3個体が確認されており、ディナレディ空洞で発見された人類遺骸との類似性が見られることから、ナレディに分類されました。

 これら3個体のうち、最も保存状態の良好な個体(LES1)の頭蓋はほぼ完全であり、脳容量は約610 ccです。これは、ディナレディ空洞で発見されたナレディの最大推定脳容量560ccを上回ります。LES1の頭蓋には、ホモ属ではエレクトス(Homo erectus)やハビリス(Homo habilis)やルドルフェンシス(Homo rudolfensis)、アウストラロピテクス属ではセディバ(Australopithecus sediba)と類似した特徴が見られます。しかし、そうした特徴が一括して見られるのは、現時点ではナレディだけです。

 ナレディは全体的には、エレクトスやハビリスやルドルフェンシスといった早期ホモ属およびアウストラロピテクス属に分類されているセディバと類似しています。しかし、ナレディには、現生人類(Homo sapiens)やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)系統に見られる派生的特徴も確認されています。総合的に考えると、ナレディの系統は、ホモ属の進化系統樹において少なくともアンテセッサー(Homo antecessor)の出現した時点で、現生人類やネアンデルタール人の共通祖先系統と分岐していたようだ、と指摘されています。

 では、ナレディの派生的特徴は何に由来するのかというと、ナレディの推定年代とお大きく関わってくるかもしれません。ナレディに関して今回はじめて、より確実な推定年代が提示されました。堆積物のウラン系列法とナレディの歯の電子スピン共鳴法(ESR)により、ナレディの年代は335000〜236000年前頃と推定されました。これは、195000年前頃という最古の現生人類化石と近い年代になります。ただ、当初より、ナレディの年代が中期更新世以降にまでくだる可能性も指摘されていたので、さほど意外ではありませんでした。この新たな推定年代から、ナレディの派生的特徴に関しては、他のホモ属系統との交雑によるものかもしれない、と指摘されています。アフリカでも現生人類と他系統の人類との交雑の可能性が指摘されていますが(関連記事)、ナレディはその候補かもしれない、というわけです。けっきょくのところ、現時点では化石記録が不充分なため、ナレディのホモ属進化系統樹における位置づけはまだ確定が難しい、と言えるでしょう。

 ナレディの新たな推定年代は、後期ホモ属の多様性を改めて示すとともに、後期ホモ属の進化史の見直しにもつながります。ナレディの考古学的文脈はまだ不明です。しかし、ナレディは少なくとも中期石器時代前半までは存在していました。中期石器文化に関しては、「古代型サピエンス」や現生人類の祖先系統が担い手だとの前提がありましたが、このナレディの新たな推定年代により、ナレディもその一部の担い手だった可能性が指摘されています。

 これは、ナレディの認知能力についての議論とも関わってきます。ディナレディ空洞もそうでしたが、レセディ空洞に入るのもかなり困難です。そのため、何者かが意図的にナレディの遺骸を空洞まで運んだ可能性が高くなります。傷跡が見当たらないことから、ナレディの遺骸を肉食獣が運んだ可能性はほぼ否定されます。ナレディと現生人類(の直近の祖先系統)との接触はじゅうぶん想定されるので、現生人類(の直近の祖先系統)が何らかの目的でナレディの遺骸を空洞に集めた可能性も考えられます。しかし、解体痕(cut marks)などがないことから、ナレディが自集団の遺骸を空洞まで運んだ可能性が最も高く、ナレディが一部の中期石器文化の担い手だったかもしれない可能性を考慮すると、こうしたナレディの遺骸処理は葬儀のような象徴的行動だったと可能性も考えられる、と指摘されています。

 ナレディについての研究は、今回の一連の論文で大きく進展した、と言えるでしょう。しかし、ナレディの新たな推定年代は、後期ホモ属の進化史が複雑だったことを改めて示したように思えます。中期更新世のアフリカの人骨は少ないので、考古学的証拠と各人類系統とをどう結びつけるのか、難しかったのですが、おそらくは現生人類の系統とかなり早期に(遅くとも現生人類の系統とネアンデルタール人の系統との分岐よりもずっと前に)分岐しただろうナレディが、中期石器時代まで存在していたことがほぼ確実となったことで、さらに問題は複雑になった、と言えるかもしれません。今後の研究の進展が大いに注目されますが、やはり、ライジングスター洞窟以外で、ナレディの遺骸が石器と共伴して発見されることが期待されます。


参考文献:
Berger LR. et al.(2017): Homo naledi and Pleistocene hominin evolution in subequatorial Africa. eLife, 6, 24234.
http://dx.doi.org/10.7554/eLife.24234

Dirks PHGM. et al.(2017): The age of Homo naledi and associated sediments in the Rising Star Cave, South Africa. eLife, 6, 24231.
http://dx.doi.org/10.7554/eLife.24231

Hawks J. et al.(2017): New fossil remains of Homo naledi from the Lesedi Chamber, South Africa. eLife, 6, 24232.
http://dx.doi.org/10.7554/eLife.24232


追記(2017年5月12日)
 AFPナショナルジオグラフィックでも報道されています。
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


アシューリアン石器製作の基礎となる脳機能

2017/05/10 00:00
 これは5月10日分の記事として掲載しておきます。アシューリアン(Acheulian)石器製作の基礎となる脳機能に関する研究(Putt et al., 2017)が報道されました。伝統的な石器製作技術の区分(関連記事)では、小さな礫から2〜3片の剥片をはがす簡単な石器製作技術であるオルドワン(Oldowan)に代表される様式1(Mode 1)から、様式1より周到な計画と調整が必要とされる両面加工握斧(Handaxe)などを製作する様式2(Mode 2)への変化は、画期の一つとされています。現時点では、最古のアシューリアン石器は176万年前頃とされています(関連記事)。アシューリアンの出現は、人類の認知・言語能力における進化を反映している、と考えられています。

 この研究は、オルドワン石器とアシューリアン石器の製作における基礎となる脳機能の違いについて、機能的近赤外線分光法を用いて検証しています。もちろん、絶滅人類の脳機能を観察するのは不可能なので、現代人31名が観察対象となりました。この実験では、石器製作と言語との関連を検証するために、石器製作の学習にさいして同じ映像を用いつつも、15人は音声有、16人は音声無と分けられました。オルドワン石器の製作では、視覚的注意力と動作制御ネットワークの共同作用で充分である、と明らかになりました。

 しかし、アシューリアン石器の製作においては、視覚的なワーキングメモリ・聴覚および感覚的情報・複雑な行動計画の統合が要求され、これは現代のピアノ演奏で活性化する脳領域と同様でした。また、参加者が音声有の映像でアシューリアン石器の製作を学習している時のみ、言語に特化した脳のネットワークが活性化することも明らかになりました。この実験で得られた知見は、革新的とされているアシューリアン石器製作の始まりが脳の言語野の進化に大きく依存していなかったことを示唆しているのではないか、と指摘されています。これは人類の認知能力の進化を解明するうえで注目すべき成果と言えそうで、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Putt SS. et al.(2017): The functional brain networks that underlie Early Stone Age tool manufacture. Nature Human Behaviour, 1, 0102.
http://dx.doi.org/10.1038/s41562-017-0102
記事へナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


フランス大統領選決選投票

2017/05/09 00:00
 これは5月9日分の記事として掲載しておきます。今回のフランス大統領選も決選投票となり、先月(2017年4月23日)の第1回投票(投票率77.77%)の上位2人(8656346票で得票率24.01%のマクロン候補と7678491票で得票率21.30%のルペン候補)の対決となりました(関連記事)。国民戦線の党首(ルペン候補は決選投票対策として、一時的に党首を退任しましたが)がフランス大統領選で決選投票に残るのは2002年以来ですが、この時はルペン候補の父親が立候補しており、第1回投票(投票率71.60%)では4804713票(得票率16.86%)で2位、決選投票(投票率79.71%)では5225032票(得票率17.79%)でシラク候補に敗れました。

 今回は、2002年の時よりも反国民戦線運動が盛り上がらなかったことから、番狂わせを警戒する人も一部でいたようですが、マクロン候補の勝利は固いとみるのが一般的な見解で、私も、どれだけの差でマクロン候補が勝つのか、という点に注目していました。今回の決選投票の投票率は74.56%で、第1回投票や2002年の決選投票の時よりも低下しました。最近は、第1回投票よりも決選投票の方が投票率は高いのですが、事前に報道されていたように、「極右」である国民戦線の候補者には投票したくないものの、「新自由主義的」とも言われるマクロン候補にも投票したくない、という有権者が多数いたからなのでしょう。

 決選投票の結果は、予想通りマクロン候補の勝利だったわけですが、マクロン候補は20753798票(得票率66.10%)で、ルペン候補は10644118票(得票率33.90%)でした。おおむね事前の報道(マクロン候補の支持率が60%強にたいして、ルペン候補の支持率は40%弱)通りになった、と言えるでしょう。投票率が伸びないことで、支持層が強固なルペン候補の得票率が相対的に高くなるのではないか、とも予想されたのですが、国民戦線への忌避感は根強いということなのでしょう。

 当選したマクロン候補は、他の有力候補者が醜聞報道などで失速するなか、若さもあっての新鮮さから選択されたという感があり、期待感先行なのは否めません。既成大政党から立候補したわけではないマクロン次期大統領は、議会に基盤を有しているわけでもないので、これも今後の政権運営の不安点です。来月実施予定の議会総選挙でどれだけの基盤を築けるのか、注目されます。まあ、議会総選挙の結果がどうであれ、前途多難の政権運営となりそうです。

 決選投票における国民戦線候補者の得票数・率として、ルペン候補の10644118票(得票率33.90%)は、2002年の4804713票(得票率16.86%)を大きく上回るものであり、大躍進と言えるでしょう。差別主義的方針を先代の党首の頃より抑制したことと、福祉主義的側面を打ち出すようになったことが要因でしょうか。とはいえ、既成大政党から立候補したわけではなく、大臣経験があるとはいえ、政治家としては多分に未知数なマクロン候補に完敗したわけですから、国民戦線への忌避感は根強いものがあるようです。国民戦線が政権を獲得することは難しいでしょう、と門外漢としてはつい安易に言いたくなりますが、今後どう情勢が変わるのか、門外漢には予想の難しいところなので、国民戦線が政権を獲得する可能性も想定しておいたほうが無難でしょうか。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


大河ドラマ『おんな城主 直虎』第18回「あるいは裏切りという名の鶴」

2017/05/08 00:00
 これは5月8日分の記事として掲載しておきます。直虎(次郎法師)が秘かに作らせていた鉄炮を奪った小野政次(鶴丸)は、今川への謀反の疑いを直虎にかけ、虎松(井伊直政)の後見を降りるよう迫ります。観念した直虎は後見を譲ると約束し、政次とともに駿府へ向かいます。しかし、瀬戸方久は駿府の今川館へ先回りし、今川氏真に鉄炮を売りつけることに成功し、井伊が鉄炮を製造しようとしたのは謀反のためではなく今川に買ってもらうためだった、という理屈で直虎の窮地を救います。

 上機嫌の氏真の元に、妹を正妻としている武田家嫡男の義信が謀反の罪で幽閉された、との報せが届きます。語りだけで終わるのかと思ったのですが、義信が登場したのは意外でした。武田は本作では重要な役割を担うと思うのですが、武田信玄や武田勝頼の配役はまだ発表されていないようです。あるいは信玄は登場しないかもしれませんが、勝頼はまず間違いなく登場すると思われるので、おそらく登場するだろう武田家の重臣も含めて、武田がどのように描かれるのか、楽しみです。

 他人に救われてばかりだ、と悩む直虎にたいして、南渓和尚は書物を渡します。直虎が母を訪ねると、「なつ」がいました。政次は優しい男だと言う「なつ」に直虎は反発しますが、政次の振る舞いを改めて思い起こしてみて、じつは政次は井伊を守ろうとして井伊家中の者を欺いているのではないか、との考えに至ります。直虎は直接、政次にその真意を問い質します。政次は、小勢力の井伊が大勢力のなかで生き残るには、どんな手を使っても戦いを避けるしかない、と答えます。

 今回はついに、すれ違い続けた直虎と政次の思いが交錯しました。まあ、すれ違っていたとはいっても、直虎が政次の真意を見抜けず、(「なつ」やその息子を除く)井伊家中の他の者と同様に政次を毛嫌いしていた、ということですが。直虎が政次を毛嫌いするという展開はもっと続くと思っていたので、やや意外でしたが、そろそろ直虎と政次との関係にも決着がつけられるということなのか、それとも、両者の関係がさらに丁寧に描かれるのか、どちらなのでしょうか。このところ2回ほど期待外れでしたが、今回はなかなか楽しめました。武田もそろそろ本格的に登場しそうですし、今後の話も楽しみです。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


Yuval Noah Harari『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』上・下

2017/05/07 00:00
 これは5月7日分の記事として掲載しておきます。ユヴァル=ノア=ハラリ(Yuval Noah Harari)著、野中香方子訳で、河出書房新社から2016年9月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。地上波でも取り上げられ、大型書店でも大きく扱われているなど、本書は評判の一冊になっているようです。私は刊行後間もない時期に購入したのですが、書評を少し読んだ限りでは、あまり新鮮さはなさそうだということで、読むのを先延ばしにしていました。しかし、このまま読まないのはもったいないと思い、読んでみた次第です。

 本書の個々の見解は、確かに新鮮さはあまりないと思います。ただ、特定の観点にこだわって現生人類の歴史を概観するという構成が雄大であり、著者も一般向けであることを意識してか、なるべく分かりやすい説明を心掛けているように思われ、その点が評判になっている理由でしょうか。欧米ではこうした魅力的で壮大な一般向け人類史が刊行され、話題になることがありますが、本書も評判になるだけの要素を備えており、それは博学な著者ゆえに可能だったのでしょう。

 本書の観点の一つは、(遅くとも7万年前頃の認知革命による)現生人類(Homo sapiens)に備わっている、虚構を語り信じる能力です。これが、その後の現生人類(サピエンス)の歴史的展開の基盤とされています。人権概念・貨幣・国家・宗教などが虚構に基づいていると強調する本書の見解は、ありふれていると言えるかもしれませんが、一般向け書籍としては、なかなか刺激的かもしれません。本書を読んで改めて、近代国家を標的にやたらと虚構性を強調する見解への違和感を覚えます。

 本書のもう一つの観点は、幸福です。本書は、種(分類群)・集団の「繁栄」と個体の幸福とを直結させず、農業革命や科学革命(およびそれが実現可能とした産業革命・近代化)により前者が実現しても、後者の観点ではむしろ状況が悪化したことも多い、と強調します。これもとくに新鮮な見解ではないとしても、一般向け書籍ということを考慮すれば、それが強調されたのは衝撃的と言えるかもしれません。人間が小麦を栽培化したのではなく、小麦が人間を家畜化した、との見解も一般向け書籍としては新鮮でしょう。また、近代における植民地の搾取された人々のみならず、近代化でいっそう大規模になった家畜の、個体の幸福まで大きく取り上げているのも、本書の重要な特徴と言えるでしょう。

 人類史の転換点として農業革命と産業革命を挙げる見解は常識的と言えるでしょうが、本書は、産業革命よりもむしろ、それをもたらすにいたった科学革命を重視している点が大きな特徴と言えるでしょうか。本書は科学革命の重要な特徴として、世界の重要な事柄について、すでに神や賢者によりすべて示されている、とするキリスト教・イスラーム・儒教などの伝統的な知的観念とは異なり、進んで無知であることを認めたことが大きい、と指摘しています。

 今後、科学革命以降の大発展を前提として、現生人類が別の生物に変わっていくかもしれない可能性を論じていることなど、本書はとにかく雄大な構想になっているので、細かく見ていけば、特定の時代・地域・事象に関心の強い読者にとって、不満点は少なくないかもしれません。しかし、それが本書の価値を大きく減じていることはないと思います。原書は2011年の刊行なので、現時点(2017年5月)でもやや古く、新たな知見を得るという目的で読むと、必ずしも満足させられないかもしれません。しかし、幸福や虚構性という観点など、本書は哲学的に深く考えさせられる内容となっており、一読の価値はあると思います。

 個人的な関心に引き付けて言えば、認知革命を現生人類に特有の出来事とし、他系統の人類を過小評価しているのではないか、との疑問は残ります。これはまだ考古学的に実証された見解とは言い難く、本書のこの見解は今後大きく修正されることになるかもしれません。しかし、かりにネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)など他の後期ホモ属にもサピエンスとあまり変わらないような、虚構を可能とする認知能力があったとしても、それが現代の「高度な文明」の重要な基盤になっている、という本書の核となる見解は間違いないだろう、と思います。

 また本書では、人類は長い間、食物連鎖における地位は中ほどで、環境に大きな影響を及ぼすわけではなかった、とされます。人類が大型動物を本格的に狩るようになったのは40万年前頃以降で、その前には死肉漁りや小形動物の狩猟が主であり、人類は絶えず捕食動物に脅かされていたのではないか、というわけです。しかし、人類が50万年以上前から大型動物を待ち伏せして狩っていた可能性(関連記事)や、70万年前頃に大型動物を体系的に屠殺していたこと(関連記事)など、近年の考古学的成果(関連記事)から推測すると、これは50万年前頃以前の人類の過小評価かもしれません。


参考文献:
Harari YN.著(2016)、柴田裕之訳『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』上・下(河出書房新社、原書の刊行は2011年)
記事へ面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


植物の進化は花粉媒介生物の種類に応じて異なる

2017/05/06 00:00
 これは5月6日分の記事として掲載しておきます。植物の進化と花粉媒介生物の種類に関する研究(Gervasi, and Schiestl., 2017)が公表されました。花粉媒介生物に応じた植物の進化に関する過去の研究は野外で行なわれており、花粉媒介生物以外の要因で植物の特徴に変化が生じる可能性がありました。この研究では、花粉媒介生物それ自体が植物の進化に及ぼす影響を分離できる実験系が用いられました。

 この研究は、温室内でアブラナやハクサイの原種(Brassica rapa)を栽培し、マルハナバチやハナアブによる送粉を行ないました。その結果、人工授粉した場合と比較すると、マルハナバチにより送粉された場合は、草丈が高く、香りの豊かな花が多く、紫外線反射率が高くなりました。一方、ハナアブにより送粉された場合は、草丈が低く、香りが弱くなりました。

 この実験が終わる頃には、マルハナバチにより送粉された植物は、送粉者のマルハナバチを多く引き寄せるようになりました。一方、さほど有効な送粉者ではないハナアブにより送粉された植物は、自家受粉(花粉媒介生物の助けを借りずに結実する)を上手くできるようになりました。こうした知見は、自然の生息環境における花粉媒介生物環境の変化が進化に及ぼす影響について研究を重ねる必要性を明確に示している、とこの研究は指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【進化】植物は花粉媒介生物の種類に応じて異なった進化をする

 植物の形質が花粉媒介生物種の違いによって急速に多様化することを明らかにした研究論文が、今週掲載される。マルハナバチやハナアブによる送粉をわずか11世代続けただけで、草丈、花の香り、花の色、繁殖における花粉媒介生物への依存度に違いが生じていたのだ。今回の研究は、花粉媒介生物群集に変化があると、植物の形質の進化に対して急激な影響が及ぶことを示唆している。

 花粉媒介生物に応じた植物の進化に関する過去の研究は、野外で行われており、花粉媒介生物以外の要因で植物の特徴に変化が生じる可能性があった。今回の研究では、花粉媒介生物それ自体が植物の進化に及ぼす影響を分離できる実験系が用いられた。

 今回、Daniel GervasiとFlorian Schiestlは、温室内でBrassica rapa(アブラナやハクサイの原種)を栽培し、マルハナバチやハナアブによる送粉を行った。人工授粉した場合と比べると、マルハナバチにより送粉された場合は草丈が高くなり、香りの豊かな花が多くなり、紫外線反射率が高くなった。一方、ハナアブにより送粉された場合は草丈が低くなり、香りが弱くなった。

 また、この実験が終わる頃には、マルハナバチにより送粉された植物は、送粉者のマルハナバチを多く引き寄せるようになった。一方、さほど有効な送粉者ではないハナアブにより送粉された植物は、自家受粉(花粉媒介生物の助けを借りずに結実する)をうまくできるようになった。以上の知見は、自然の生息環境における花粉媒介生物環境の変化が進化に及ぼす影響について研究を重ねる必要性を明確に示している、とGervasiとSchiestlは結論づけている。



参考文献:
Gervasi DDL, and Schiestl FP.(2017): Real-time divergent evolution in plants driven by pollinators. Nature Communications, 8, 14691.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms14691
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


アフリカ南部の岩絵の年代

2017/05/05 00:00
 これは5月5日分の記事として掲載しておきます。アフリカ南部の岩絵の年代に関する研究(Bonneau et al., 2017)が報道(Wild., 2017)されました。この研究で調査対象となったのは、アフリカ南部における初期狩猟採集民の直系子孫とされるサン人の所産と考えられている、南アフリカ共和国・ボツワナ共和国・レソト王国の後期石器時代のものと思われる岩絵です。岩絵は民族誌としても利用でき、農耕集団や牧畜集団との交流の様子が窺えると指摘されていますが、他の人工物が共伴していないので、正確な年代は不明でした。また、アフリカ南部の岩絵の黒色の顔料はマンガンに由来すると推測されていたので、放射性炭素年代測定の適用は難しい、と考えられていました。

 この研究は、これらアフリカ南部の岩絵を分析し、獣脂を燃やすなどして作ったと思われる黒色の顔料が使用されていることを明らかにし、放射性炭素年代測定法を適用しました。ただ、岩絵には描かれた後の汚染の問題もあり、正確な結果を得るのが難しくなっています。これらアフリカ南部の岩絵では、シュウ酸カルシウムなどの表面の堆積物が除去され、放射性炭素年代測定法が適用されました。ただ、完全にシュウ酸カルシウムを除去できたと明示できていない、と疑問を呈する研究者もおり、有望な方法ではあるものの、有機汚染物質の多い古い年代の場所には適していない方法だ、とも指摘されています。

 そうした問題もありますが、この研究は放射性炭素年代測定法を用いて、アフリカ南部の複数の岩絵の較正年代を提示しています。ボツワナ共和国では、南東部に位置する、40ヶ所の遺跡のあるテューネダム(Thune Dam)が調査の対象となりました。テューネダム遺跡群では、後期石器時代と思われる岩絵が確認されており、キリンや魚やヒツジが描かれているのが地域的特徴となっています。レソト王国西部ではプティアツァナ川渓谷(Phuthiatsana River Valley)の259ヶ所(その他の地域も含めると493ヶ所)で岩絵が確認されています。この研究では、メトロングダム(Metolong Dam)地域の岩絵が年代測定されています。南アフリカ共和国では南東部のマクレア地区(Maclear District)の岩絵が年代測定されています。

 各岩絵の放射性炭素年代測定の結果はさまざまですが、信頼できそうな古い較正年代は、ボツワナ共和国南東部で5723〜4420年前、レソト王国西部では2326〜965年前、南アフリカ共和国南東部では2998〜2381年前となります。ボツワナ共和国南東部の岩絵の年代は、直接的に測定された確実なものとしては、現時点ではアフリカ南部で最古となります。また、岩絵は長期にわたって描かれているので、社会変化の反映という観点からの研究の進展も期待されています。


参考文献:
Bonneau A. et al.(2017): The earliest directly dated rock paintings from southern Africa: new AMS radiocarbon dates. Antiquity, 91, 356, 322–323.
https://doi.org/10.15184/aqy.2016.271

Wild S.(2017): Dreams of the Stone Age dated for first time in southern Africa. Nature, 545, 7652, 14–15.
http://dx.doi.org/10.1038/545014a
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0


究極の利他的行為の動機

2017/05/04 00:00
 これは5月4日分の記事として掲載しておきます。究極の利他的行為の動機に関する研究(Vekaria et al., 2017)が公表されました。腎臓を見知らぬ人に提供する行為は、痛みを伴い、犠牲が大きく、標準的ではなくて極めてまれであり、利他主義の典型例とみなすことができます。ヒトの利他主義傾向を高める要因は何なのか、また、その寛大さは他者への純粋な共感から生まれるのか、それとも利己的な動機に由来するのか、といった疑問に対する答えはいまだ得られていません。

 この研究は、腎臓を見知らぬ他人に提供した21人と、マッチする対照者39人の参加者たちによる実験を実施しました。マッチする対照者39人の参加者たちはまず、自身の知る100人を親密さに従って「血縁者」・「友人」・「知人」・「見知らぬ他人」のいずれかに分類しました。次に参加者は、評価後の個々の人たちのそれぞれに対してどれだけの金銭を与える(もしくは与えない)かを決める、「金銭割り当て課題」を行ないました。この課題により、参加者による他者に対する親密さの認識(社会的距離)と、参加者による他者の幸福への価値づけ(社会割引)が測られます。

 課題の結果、極端な利他主義者(自分の腎臓を見知らぬ他者へ提供した人々)は、社会的距離については対照者集団と同様に評価するものの、自分と距離のある他者へ多くの金銭を配分することが判明しました。この研究では、極端な利他主義者は、彼らの社会的距離の認識が誤っているわけではなく、一般的な人々と比較して、見知らぬ他人の幸福に価値を見いだすのだろう、と示唆されています。この結論は、利他的行為の動機は、近縁者を助けたいという願望あるいは互恵行動にある、というじゅうらいの見解と対照的です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


究極の利他主義者

 見知らぬ人に自分の腎臓を提供する人は、一般の人々と比べて、他者の幸福に対する関心が強いことが、今週オンラインで掲載される論文で報告される。今回の研究では、そうした極端な利他主義の基盤を理解するための知見が得られ、犠牲の大きい利他的行為を、友人や家族を越えて見知らぬ人々へも拡張しうる心理学的機構の存在が示唆された。

 腎臓を見知らぬ人に提供する行為は、痛みを伴い、犠牲が大きく、標準的ではなく、極めてまれであり、利他主義の典型例とみなすことができる。ヒトの利他主義傾向を高める要因は何なのか、またその寛大さは、他者への純粋な共感から生まれるのか、それとも利己的な動機に由来するのかといった疑問に対する答えはいまだ得られていない。

 Kruti Vekariaたちによる研究において、腎臓を見知らぬ他人に提供した21人と、マッチする対照者39人の参加者たちはまず、自身の知る100人を親密さに従って、〈血縁者〉、〈友人〉、〈知人〉、〈見知らぬ他人〉のいずれかに分類した。次に参加者は、評価後の個々の人たちのそれぞれに対してどれだけの金銭を与える(もしくは与えない)かを決める「金銭割り当て課題」を行った。この課題によって、参加者による他者に対する親密さの認識(社会的距離)と、参加者による他者の幸福への価値づけ(社会割引)が測られる。課題の結果、極端な利他主義者(自分の腎臓を見知らぬ他者へ提供した人々)は、社会的距離については対照者集団と同様に評価するものの、自分と距離のある他者へ多くの金銭を配分することが判明した。研究チームはこの結果を受けて、極端な利他主義者は、彼らの社会的距離の認識が誤っているわけではなく、一般的な人々と比較して、見知らぬ他人の幸福に価値を見いだすのだろうと示唆している。この結論は、利他的行為の動機は、近縁者を助けたいという願望にある、あるいは互恵行動にある、という従来の考えと対照を成す。

 同時掲載のNews & Views記事ではTobias Kalenscherが、「ナショナリストの抱く保護主義、またポピュリストの抱く個人主義がはびこる昨今の風潮からすれば、今回の研究の結果は未来への希望につながる」と述べている。



参考文献:
Vekaria KM. et al.(2017): Social discounting and distance perceptions in costly altruism. Nature Human Behaviour, 1, 0100.
http://dx.doi.org/10.1038/s41562-017-0100
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


データ用ハードディスクの故障

2017/05/03 00:00
 これは5月3日分の記事として掲載しておきます。デスクトップパソコンのデータ用ハードディスク(関連記事)が、先月(2017年4月)24日に故障しました。5年近く使用していたので仕方ないのかもしれませんが、その前日までは故障の兆候はなかったように思われましたし(私が見落としていただけかもしれませんが)、CrystalDiskInfoでも確かその1週間くらい前までは「正常」状態でした。先月24日早朝に異音が聴こえてデータ用ハードディスクが認識しなくなったことに気づき、再起動してみたところ、最初はBIOSでは認識していたのですが、OSでは認識されず、その後に再起動すると、BIOSでも認識されなくなりました。ケーブルをつなぎ直したり、リムーバブルケースを介さず直接デスクトップパソコンにつないだりしてみましたが、やはりBIOSでも認識されないままでした。

 最近はブログの下書きや各種資料集など重要なファイルを以前起動ドライブとして使用していたSSD(関連記事)に保存しており(Gドライブ)、データ用ハードディスクに重要なデータを保存することは少なくなっていたので、最後に大型バックアップをとった昨年大晦日時点以降の画像データや音楽データなどは失われるとしても、多少手間はかかっても大半は復旧できそうだということで、さほど心配していませんでした。ところが、先月29日に、マザーボード上の電池の抜き差しを試してみようと思い立ったのが大失敗で、重要データを保存していたSSDにアクセスできなくなってしまいました。

 まず、マザーボード上の電池の抜き差しを試してみた後、再起動すると、Windows 7が立ち上がりました。以前の起動ドライブだったSSDが起動ドライブになってしまったので、BIOSで設定を修正しようとしたところ、Windows 10の入っている新しいSSDを起動ドライブに指定できなかったので、ケーブルを入れ替えて再起動しました。すると、ディスクチェックが始まるなどしてなかなか起動せず、やっとWindows 10が起動したと思ったら、以前の起動ドライブだったSSD がGドライブとして認識されていたものの、ディスク使用率100%状態となり、何度か再起動してディスク使用率100%状態は解消されたものの、ディスクにアクセスできなくなってしまいました。

 どうも、パーティション情報が削除されてしまったようなのですが、私の知識不足のため、復元ソフトを使ってもアクセスできないままでした。最近では、Gドライブの重要な情報はOneDriveに保存していたので、保存していなかったわずかな文章だけだから仕方ないかな、と諦めかけたのですが、ワードでは最近使ったファイルからGドライブのデータを開けましたし、chromeの画像を保存するコマンドからGドライブのフォルダにアクセスできたので、重要な情報はほぼ救出できたと思います。

 Gドライブには、Windows 7やOffice 2007が入っているので、迷うところではあるのですが、今更Windows 7に戻るつもりはありませんし、Office 2007は今年の10月10日がサポート期限なので、Gドライブをフォーマットしてバックアップ用にCドライブをコビーしたうえで、再度重要データをコピーして作業しようか、とも考えました。しかし、すでにGドライブのSSDはCrystalDiskInfoで健康状態が95%となっているので、ブログの下書きなどの重要データはCドライブに入れて作業し、随時バックアップをとることにしました。GドライブのSSDは、いつか復旧手段が見つかるかもしれないので、とりあえずデスクトップパソコンから外して保管しておくことにしました。

 故障したデータ用ハードディスクの代わりにはやはり同容量(2TB)のハードディスクを購入しました。外付けハードディスクのバックアップから新ハードディスクにコピーし、足りないと思われる音楽データなどは、失われてしまったプレイリストも含めて復元していきますが、焦ることでもないので、今後地道に進めていくつもりです。早期に諦めればよかったのに、粘ってしまったため、余計な時間を要し、SSDを1台無駄にしてしまいました。まあ自分が悪いので、仕方のないところではありますが、今後は、パソコンが故障したさいには慎重に修理の手段を考えていかねばなりません。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0


ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』629話〜633話

2017/05/02 00:00
629話「ドリーム」6
 男性の死体が発見されます。男性は女性が写っている写真を持っていました。一方、マミーとトシさんは、事情を聞いていた巡査の挙動が不審だと考えます。一係は、大学生の女性と巡査が事件に関わっているのではないか、と推理して捜査を進めます。すると、巡査は自分が男性を殺したと遺書を残して自殺します。女性と殺された男性・自殺した巡査との関係も明らかになり、ブルースやトシさんは女性が事件に深くかかわっているのではないか、と疑いますが、マイコンはあくまでも女性を信じようとします。けっきょく、女性が男性を殺し、巡査を自殺に追い込んだことが明らかになります。女性は、新たに恋をした男性に以前の恋人のことを知られたくなくて葬り去ろうとした、というわけです。なかなかひねった大人向けの話になっていました。今回は、一係で対照的な存在と言えるマイコンとブルースの対比が目立っていたように思います。ブルースがマイコンに先輩風を吹かせるところは、ややうんざりさせられます。本放送時にブルースの印象があまりよくなかったのは、それが一因だったのかもしれません。ただ、この8ヶ月ほどのブルース登場以降の再視聴でブルースへの印象はかなりよくなったので、今のところアクションシーンを中心にブルースの場面は楽しみにしています。


630話「必死のマミー」5
 マミーが子供を連れて逃げる場面から始まります。マミーは子供を必死に守りますが、追ってきた男性たちに追いつかれ、銃撃戦となって負傷します。夢なのかな、とも思ったのですが、ここで時間はさかのぼり、回想形式でこのような状況になった経緯が語られます。150話「わかれ」のような例もありますが(関連記事)、本作では珍しい構成と言えるでしょう。今回も少なくとも一度は視聴しているはずなのですが、内容をすっかり忘れていたことで、まずまず楽しめました。ただ、マミーが二人の母親だという設定はあまり活かされていなかったように思われ、この点はやや残念でした。


631話「ロックとブルース」6
 ブルースは警察学校時代の恩師と再会します。恩師は、警察犬として優秀な素質を有しているものの、容疑者の制圧で腕ではなく首に噛みついてしまうロックという犬を矯正していました。ブルースの恩師は、犬が自動車にはねられそうになったのを庇おうとして自分がはねられてしまい、はねた男性を制圧するよう言い残して死にます。犯人の身許はすぐに判明しましたが、犯人は逃亡します。ブルースはロックが犯人を殺してしまうのではない、と案じてその行方を追います。ところが、犯人だと思われた男性は実は同乗者にすぎず、真犯人は別にいました。久々の動物ものだと思うのですが、犬の心理も描かれていて、なかなか工夫された話だったと思います。ブルースのアクションシーンがもっとあればよかったのですが、ブルースと犬との関係が主題だけに、仕方のないところでしょうか。


632話「恐ろしい」8
 トシさんは当直明けで帰宅するさいに、女子が自動車にはねられる場面を偶然目撃します。トシさんは通りかかったタクシーに乗り、ひき逃げ犯を追います。タクシーの運転手の隙のない運転にトシさんは驚き、警戒します。トシさんはタクシー運転手の卓越した技術によりひき逃げ犯を捕まえますが、そのさいにタクシー運転手は激昂して犯人を蹴り、骨折させます。トシさんはタクシー運転手に引っかかるものを感じ、タクシー運転手から事情を聞きます。その後、タクシー運転手は男性を乗せ、男性が絡んでくると、スピードを上げて事故を起こし、男性は死亡しましたが、タクシー運転手は軽傷でした。タクシー運転手の意図が不明で、何とも不気味な感じで話が進み、タクシー運転手の息子の妻の思惑も絡んで、謎解き要素があって楽しめました。タクシー運転手を演じたのは大坂志郎氏で、さすがに名優といった感じの不気味な存在感を示していました。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


古人類学の記事のまとめ(31)2017年1月〜2017年4月

2017/05/01 00:00
 これは5月1日分の記事として掲載しておきます。2017年1月〜2017年4月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2017年1月〜2017年4月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、このブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。


●ホモ属登場以前の人類関連の記事

アフリカヌスの踵骨の分析
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_11.html


●ネアンデルタール人・現生人類以外のホモ属関連の記事

ヨーロッパの初期人類の食性
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_2.html

12万〜10万年前頃の「許昌人」の頭蓋
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_4.html

40万年前頃のポルトガルの人類頭蓋
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_16.html


●ネアンデルタール人関連の記事

クラピナ遺跡で発見されたネアンデルタール人の象徴的思考のさらなる証拠
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_19.html

ハインリッヒイベントの要因
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_18.html

現代人の遺伝子発現におけるネアンデルタール人由来の遺伝子の影響
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_28.html

歯石から推測されるネアンデルタール人の行動・食性・病気(追記有)
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_10.html

クリミアのネアンデルタール人の象徴的行動の証拠
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_1.html

デニソワ洞窟で確認された新たなネアンデルタール人の骨
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_26.html

堆積物で確認された更新世人類のDNA
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_29.html


●フロレシエンシス関連の記事

フロレシエンシスの祖先はエレクトスではない
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_24.html


●現生人類の起源や象徴的思考に関する記事

20万年以上前までさかのぼる大量の黒曜石の長距離移動
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_2.html

Genevieve von Petzinger『最古の文字なのか? 氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く』
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_26.html

現生人類の起源と拡散
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_20.html


●その他の記事

尾本恵市『ヒトと文明 狩猟採集民から現代を見る』
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_4.html

関連していなかった人類の脳と歯の進化
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_5.html

さかのぼるチベット高原高地帯の人間の定住年代
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_7.html

1万年前頃の植物の加熱調理
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_11.html

小原嘉明『入門!進化生物学 ダーウィンからDNAが拓く新世界へ』
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_12.html

アマゾン低地における過去45000年間の水文気候の変化
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_14.html

最終最大氷期におけるベーリンジアでの人類の痕跡
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_18.html

想定されていたほどには仲間を助ける行動をとらないチンパンジー
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_21.html

病原体の毒性の性差
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_26.html

音楽の普遍的な特徴の変化
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_28.html

妊娠により変わる女性の脳の構造
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_31.html

7700年前頃の東アジア人のDNA
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_3.html

社会規範の違反の程度と応答
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_8.html

脳が相互に関連し合った対象を意識的に結びつける機構
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_9.html

女性性器切除の文化的進化
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_10.html

現代アメリカ合衆国の人口構造
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_11.html

アイリッシュ・トラヴェラー集団の起源
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_14.html

不正を続けると不正への脳の感受性が低下する
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_16.html

「男脳」「女脳」のウソはなぜ、どのように拡散するのか
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_20.html

9世紀〜12世紀にかけての北アメリカ大陸における母系継承の支配層
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_24.html

加齢によるリスク選好の変化は脳構造の変化に起因する
http://sicambre.at.webry.info/201702/article_25.html

『カラー図解 進化の教科書 第1巻 進化の歴史』
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_5.html

肥満と糖尿病の関係
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_8.html

急速に拡散した最初期のオーストラリア人(追記有)
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_11.html

新生児は成人と同様に視覚処理ができる
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_14.html

『カラー図解 進化の教科書 第2巻 進化の理論』
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_19.html

高地に順応する方法を「記憶」している血液細胞
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_23.html

霊長類の脳サイズと食性の関係
http://sicambre.at.webry.info/201703/article_29.html

マリタ遺跡の少年のDNA解析について
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_5.html

ヒトの身長に関連する遺伝子群
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_7.html

更新世の食人行為の評価
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_8.html

Jonathan Marks『元サルの物語 科学は人類の進化をいかに考えてきたのか』
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_9.html

更新世において間氷期をもたらす要因
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_14.html

亀田達也『モラルの起源 実験社会科学からの問い』
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_16.html

長谷川眞理子、 山岸俊男『きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」』
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_23.html

アメリカ大陸における13万年前頃の人類の痕跡?
http://sicambre.at.webry.info/201704/article_28.html



過去のまとめ一覧

古人類学の記事のまとめ(0)
http://sicambre.at.webry.info/200709/article_29.html

古人類学の記事のまとめ(1)
http://sicambre.at.webry.info/200707/article_29.html

古人類学の記事のまとめ(2)
http://sicambre.at.webry.info/200712/article_31.html

古人類学の記事のまとめ(3)
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(4)
http://sicambre.at.webry.info/200807/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(5)
http://sicambre.at.webry.info/200811/article_3.html

古人類学の記事のまとめ(6)
http://sicambre.at.webry.info/200812/article_26.html

古人類学の記事のまとめ(7)
http://sicambre.at.webry.info/200905/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(8)
http://sicambre.at.webry.info/200909/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(9)
http://sicambre.at.webry.info/200912/article_26.html

古人類学の記事のまとめ(10)
http://sicambre.at.webry.info/201005/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(11)
http://sicambre.at.webry.info/201009/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(12)
http://sicambre.at.webry.info/201012/article_28.html

古人類学の記事のまとめ(13)
http://sicambre.at.webry.info/201105/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(14)
http://sicambre.at.webry.info/201109/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(15)
http://sicambre.at.webry.info/201112/article_28.html

古人類学の記事のまとめ(16)
http://sicambre.at.webry.info/201205/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(17)
http://sicambre.at.webry.info/201209/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(18)
http://sicambre.at.webry.info/201301/article_3.html

古人類学の記事のまとめ(19)
http://sicambre.at.webry.info/201305/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(20)
http://sicambre.at.webry.info/201309/article_5.html

古人類学の記事のまとめ(21)
http://sicambre.at.webry.info/201401/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(22)
http://sicambre.at.webry.info/201405/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(23)
http://sicambre.at.webry.info/201409/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(24)
http://sicambre.at.webry.info/201501/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(25)
http://sicambre.at.webry.info/201505/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(26)
http://sicambre.at.webry.info/201509/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(27)
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(28)
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(29)
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(30)
http://sicambre.at.webry.info/201701/article_2.html
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


大河ドラマ『おんな城主 直虎』第17回「消された種子島」

2017/04/30 19:50
 中野直之は鉄炮を取り寄せ、直虎(次郎法師)の前で実演してみせます。鉄炮の威力に驚いた直虎は、鍛冶の村である井平で鉄炮を生産しようと考えます。それにしても、東海道の国人衆の家に生まれた直虎が永禄年間になっても鉄炮を知らなかったとは考えにくいのですが・・・。どうも、戦国時代の社会状況を取り入れて、視聴者に物語のなかの「自然な流れ」で伝えようとするあまり、直虎を必要以上に無知な存在にしてしまっているのではないか、と思います。主人公を美化するだけなのも問題ですが、やたらと主人公を貶めるのも問題でしょう。

 龍潭寺では虎松(井伊直政)が手習いを始めていました。家臣の息子たちは五目並べで虎松に気を遣って手加減していましたが、それを知った直虎は、手加減しないよう注意します。すると、虎松は五目並べをはじめとして何をやっても勝てなくなり、龍潭寺に来なくなってしまいます。母親の悪いところを引き継いだというか、母親である「しの」のこれまでの教育が悪かった、と言いたいような設定に思えてしまいます。直虎が虎松を叱責すると、虎松は泣いてしまいます。直虎は旅人らしき男性の教示を受けて、虎松に勝つ喜びを教えさせようとします。直虎は虎松に五目並べを教え込み、虎松に再び気力を取り戻させることに成功します。

 今回は、これまで空気だった虎松が中心になって話が進みました。虎松は重要人物なので、そろそろ掘り下げて描いてもらいたかったところだけに、これでよかったと思います。ただ今回は、上述しましたが、鉄炮に関する話がどうも引っかかります。永禄年間の東海道において、鉄炮の生産が謀反とみなされるのには無理があるというか、そもそも井伊家中がこの時点で鉄炮のことを不自然なまでに知らないように思えます。戦国時代の社会状況を取り入れた物語にしようという意欲はよいと思うのですが、前回といい今回といい、やや滑っている感が否めません。それでも、直虎と小野政次(鶴丸)の関係の推移と結末を楽しみに視聴を続けられそうですが。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


深井智朗『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』

2017/04/30 00:00
 これは4月30日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年3月に刊行されました。本書はプロテスタンティズムの概説ですが、副題にあるように現代社会を射程に入れており、現代社会におけるプロテスタンティズムの役割はどのような歴史的経緯をたどってきた結果として成立したのか、という観点を強く打ち出しているように思われます。本書はまず、プロテスタンティズムの前提として、中世の西方教会世界を簡潔に解説します。そこではカトリックが人々の世界観に大きな影響を与えており、ローマ教皇が高い権威を有していました。しかし、ルターによる「宗教改革」の発信地となった神聖ローマ帝国領内では、政治的権威確保のためにローマ教皇への依存度が高いので、カトリックに搾取される傾向があり、これがルターによる「宗教改革」の前提となったようです。

 本書はルターによる「宗教改革」をやや詳しく取り上げており、カルヴァンなど「宗教改革」における他の重要人物については、解説がやや簡略になっています。本書が強調しているのは、ルターは新たな「宗派」を立ち上げようとしたのではなく、あくまでもカトリックの「再形成」を目標としていた、ということです。しかし、贖宥状の利権をめぐる問題などで折り合いがつかず、カトリックとルター双方の強硬姿勢から、ついにルターの教えはカトリックと決別し、新たな教派たるプロテスタンティズムが形成されていきます。ローマ教皇という確たる中心的権威が存在し、中央集権的で教義が統一されているカトリックにたいして、聖書を重視するプロテスタンティズムの方は、ローマ教皇のみならず万人に聖書の解釈が平等に開かれていることを特徴とするため、際限なく分裂していく傾向にあった、と本書は指摘します。

 こうした多様なプロテスタンティズムについて本書は、古プロテスタンティズムと新プロテスタンティズムの二つに区分する見解を主張しています。ルターやカルヴァンのように、一つの政治的領域を単位とする信仰世界を前提とする古プロテスタンティズムと、「洗礼主義」のように、個人の自覚的信仰を要求する、地縁・血縁ではなく信仰による共同体を形成しようとする新プロテスタンティズムというわけです。本書は、古プロテスタンティズムの信仰共同体の在り様がカトリックと類似していることを指摘し、それへの反発として新プロテスタンティズムが成立していく、との見通しを提示しています。本書は、個人主義的な新プロテスタンティズムが、自由・人権・民主主義など近代的価値観の普及に重要な役割を果たした、と指摘しています。

 本書は、古プロテスタンティズムを保守主義、新プロテスタンティズムをリベラリズムと結びつけます。古プロテスタンティズムのルター派は、プロイセン主導の統一ドイツ帝国に道徳的正統性を与え、国家への帰属意識を高めていった、という歴史的経緯が指摘されています。しかし、帝政ドイツ崩壊後のヴァイマール期の不遇とその反動としてのナチス体制にたいする抵抗の弱さを経て、ドイツの古プロテスタンティズムは保守主義に教義を提供しつつ、多くの争いを経験してきたプロテスタンティズムの智慧である多文化共生の道を切り開いてきた、と本書は評価しています。

 もう一方の個人主義的傾向の強い新プロテスタンティズムは、アメリカ合衆国において大きな影響を及ぼしました。新プロテスタンティズムの個人主義・自由主義は、アメリカ合衆国において、自助努力を重んじ、小さな政府を志向する基本的価値観を根づかせました。本書はこのようにプロテスタンティズムを大きく二分し、現代の保守主義・リベラリズムと結びつけます。本書はプロテスタンティズムを一般向けに明快に解説しており、入門書として優れているように思います。ただ、プロテスタンティズムの二分については、かなり類型化されている印象も受けました。また、保守主義とリベラリズムの意味合いが、現代日本社会における一般的な用法とはかなり異なるようにも思われます。まあ、この問題については明らかに私が勉強不足なので、門外漢の素朴な疑問でしかありませんが。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0


続きを見る

トップへ

月別リンク

雑記帳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる