アクセスカウンタ

プロフィール

ブログ名
雑記帳
ブログ紹介
普段考えていることや気になっていることを気軽に書いていきます。文中の赤字の箇所にはリンクが張られています。文中の青字の箇所は引用文です。文中の緑字の箇所は追記です。
当ブログの記事を引用されたり、当ブログの記事へリンクなさったりする場合、とくに通知は必要ありませんが、トラックバックを送信していただければ幸いです。
長文のコメントはできれば控えてください。当ブログの記事へ長文のコメントをなさりたい場合は、ご自身のブログにて述べて、当ブログの該当記事へトラックバックを送信していただければ幸いです。
なお、本・漫画・ドラマを取り上げた当ブログの記事のなかには、内容を詳細に紹介したものも少なくないので、未読・未視聴の方はご注意ください。

メールアドレスは
alksnjdb@yahoo.co.jp
です。スパムよけのため、「@」としていますので、「@」に変更して送信してください。

ホームページのアドレスは
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/index.htm
です。

ツイッターのアドレスは
https://twitter.com/Florisbad
です。

当ブログにおけるトラックバックとコメントの扱いについては、以下の記事をご参照ください。
http://sicambre.at.webry.info/200709/article_16.html
zoom RSS

玉木俊明『先生も知らない世界史』

2017/01/17 00:00
 これは1月17日分の記事として掲載しておきます。日経プレミアムシリーズの一冊として、日本経済新聞出版社から2016年10月に刊行されました。定住生活と農耕の始まりから現代までを対象としていますが、冒頭で述べられているように、西洋中心の解説となっています。アジアやアメリカ大陸についてもそれなりに言及されていますが、本書の主題はあくまでも、ヨーロッパが他地域にたいして優位に立った理由の解明なので、そうした観点からのヨーロッパとの比較が多くなっています。

 本書は、前近代においてヨーロッパはアジアと比較して貧しかった、と強調しています。欧米の研究では、近世前期の時点で豊かさという点でヨーロッパはアジアとほぼ同等であり、その後に大きな差がついた、との見解も盛んとのことですが、本書は、そうした見解の多くは単一の指標に基づいたものであり、妥当ではない、と指摘しています。本書は、欧米の経済史では単一の指標に基づいた根拠の曖昧な見解が受容される傾向にあるとして、欧米の経済史学界にたいしてかなり批判的です。門外漢の私には、本書の見解がどこまで妥当なのか、判断の難しいところです。

 本書は、ヨーロッパの他地域にたいする優位の確立には二段階ある、との見解を提示しています。まず、ヨーロッパにおいて市場の情報が多く出回るようになり、取引のリスクが低下するという経済制度面での優位が確立します。次に、イギリスで産業革命が起きたことで、本書は綿の貿易・綿織物の生産を重視しています。本書は、イギリスこそ世界規模での初のヘゲモニー国家だとして、イギリスの覇権確立過程とその理由にかなりの分量を割いています。

 イギリスの覇権確立とも関連しますが、本書は流通・輸送を重視しています。じゅうらいの経済史ではこれが軽視されていたので、地域あるいは国家間の勢力について妥当な評価がなされていない、というわけです。また、情報を重視するのも本書の特徴で、交通手段の発達(帆船から蒸気船への移行)や電信技術の確立が特筆されています。本書は全体的に読みやすいものの、著者の以前の新書『ヨーロッパ覇権史』(関連記事)の焼き直しといった感は否めず、ヨーロッパ中心の解説だったことも含めて、やや期待外れでした。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


大河ドラマ『おんな城主 直虎』第2回「崖っぷちの姫」

2017/01/16 00:00
 これは1月16日分の記事として掲載しておきます。今回も「おとわ(直虎)」の子供時代が描かれました。主人公の成人役がオープニングのクレジットに載らなかったのは、おそらく2005年放送の大河ドラマ『義経』以来だと思います。第2回後半から主人公の成人役が登場すると予想していただけに、これは本当に意外でした。近年では珍しい構成だけに、新鮮な感があります。ただ、子役中心の話になったため、やや物足りなさもありました。まあそれでも、昔の大河ドラマ、たとえば『独眼竜政宗』と比較すると、子役の演技水準は全体的にかなり向上しているように思います。

 今回も、戦国時代の小領主の悲哀を背景として、「おとわ」・亀之丞(井伊直親)・鶴丸(小野政次)の関係が中心に描かれました。派手なところはありませんが、大きな欠陥はないので、安心して視聴できます。まあ、地味なだけに、新規の視聴者を呼び込むのは難しそうで、平均視聴率は2013年放送の『八重の桜』と2012年放送の大河ドラマ『平清盛』・2015年放送の大河ドラマ『花燃ゆ』の間くらいに落ち着きそうです。大河ドラマ史上最低平均視聴率を記録することはないでしょうが、下から数えて3〜5番目くらいになりそうです。今回は、中世社会の慣行も取り入れられた話にもなっており、歴史ドラマであることを意識した作りになっていて、この点はよいと思います。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


マウスと霊長類で作用の異なる因子Osteocrin

2017/01/15 00:00
 これは1月15日分の記事として掲載しておきます。マウスと霊長類で作用の異なる因子に関する研究(Ataman et al., 2016)が公表されました。脳の発生を促す遺伝子発現ネットワーク研究の多くは、マウスを用いて行なわれてきました。マウスと比較すると、他の動物群、とくに霊長類での発現ネットワークについて得られている知識はわずかで、大脳皮質が非常に発達した霊長類では、マウスモデルと異なる可能性があります。この研究は、マウスの非神経性の分泌因子であるOsteocrinは、霊長類では進化の過程において、神経発生遺伝子としても機能するようになった可能性がある、と指摘されています。Osteocrinは、ヒトやマカクザルの新皮質で特異的に発現しているものの、マウスでは、骨や筋組織に高発現している一方で、脳では発現していません。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化遺伝学:霊長類の脳における神経活動調節性因子としてのOsteocrinの進化

進化遺伝学:Osteocrinは霊長類の脳の発生で働く因子である

 脳の発生を促す遺伝子発現ネットワーク研究の多くは、マウスを用いて行われてきた。マウスに比べると、他の動物群、特に霊長類での発現ネットワークについて得られている知識はわずかであり、大脳皮質が非常に発達した霊長類では、マウスモデルと異なる可能性がある。今回、M Greenbergたちが明らかにしたマウスの非神経性の分泌因子であるOsteocrinは、霊長類では進化の過程で、神経発生遺伝子としても機能するようになった可能性がある。Osteocrinは、ヒトやマカクザルの新皮質で特異的に発現している。マウスではOsteocrinは骨や筋組織に高発現するが、脳では発現していない。



参考文献:
Ataman B. et al.(2016): Evolution of Osteocrin as an activity-regulated factor in the primate brain. Nature, 539, 7628, 242–247.
http://dx.doi.org/10.1038/nature20111
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


アマゾン低地における過去45000年間の水文気候の変化

2017/01/14 00:00
 アマゾン低地における過去45000年間の水文気候の変化に関する研究(Wang et al., 2017)が公表されました。アマゾンの森林は、気候変動と生物化学的変動の大部分にたいして、年々から1000年の時間スケールで応答するとともに、影響も及ぼしています。しかし、この地域における過去の気候変動の分解能の高い記録を手に入れるのは難しく、最終氷期極大期(LGM)において、アマゾンの森林が湿潤だったのか、それとも乾燥していたのかについてすら、これまでよく分かっていませんでした。

 この研究は、アマゾン川流域東部のパライソ洞窟にある方解石堆積物の石筍から、過去45000年にわたる酸素同位体データを集めました。このデータから、降水量は21000年前頃のLGMでは現在の約半分だったのにたいして、6000年前の中期完新世では約50%多く、気温および二酸化炭素の全球的変化と時期的におおむね一致していることが示されました。アマゾン川流域は、氷期には今より乾燥していたものの、熱帯雨林は存続していました。しかし、将来も存続し得るかどうかについては、まだ結論が出ていない、と指摘されています。人類のアマゾン流域への拡散とも関連してくる研究なので、今後の進展が注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


気候科学:アマゾン低地における過去4万5000年にわたる水文気候の変化

Cover Story:潤いを保ち続けるアマゾンの熱帯雨林:アマゾン盆地の水文気候の変化に対する森林の復元力を示す4万5000年間の記録

 表紙は、2016年4月6日に国際宇宙ステーションから撮影されたアマゾン川。アマゾンの森林は、気候変動と生物化学的変動の大部分に対して、年々から1000年の時間スケールで応答するとともに影響も及ぼしている。しかし、この地域における過去の気候変動の分解能の高い記録を手に入れるのは難しく、最終氷期極大期(LGM)においてアマゾンの森林が湿潤だったのか、乾燥していたのかについてすら、これまでよく分かっていなかった。X Wangたちは今回、アマゾン川流域東部のパライソ洞窟にある方解石堆積物の石筍から、過去4万5000年にわたる酸素同位体データを集めている。このデータは、降水量は、約2万1000年前のLGMでは現在の約半分であったが、6000年前の中期完新世では約50%多く、気温と二酸化炭素の全球的変化と時期的におおむね一致していることを示している。アマゾン川流域は、氷期には今より乾燥していたが、熱帯雨林は存続していた。しかし、将来も存続し得るかどうかについては、結論がまだ出ていない。



参考文献:
Wang X. et al.(2017): Hydroclimate changes across the Amazon lowlands over the past 45,000 years. Nature, 541, 7636, 204–208.
http://dx.doi.org/10.1038/nature20787
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


四肢類の指の起源

2017/01/13 00:00
 これは1月13日分の記事として掲載しておきます。四肢類の指の起源に関する研究(Nakamura et al., 2016)が報道されました。陸上哺乳類の手足は魚の鰭から進化したことが明らかになっています。しかし、鰭のどの部分が指や手首になったかは不明でした。この研究は、熱帯魚ゼブラフィッシュの鰭において、四肢類の肢や指の発生で主要な役割を担っているHox遺伝子の細胞系譜解析とノックアウト解析を行ない、鰭と肢におけるHox遺伝子の機能を比較しました。その結果、HoxAとHoxDの遺伝子クラスターを欠損したゼブラフィッシュでは、鰭条が縮小し、軟骨要素が増えることが明らかになりました。この結果は、肢の指と鰭の輻射骨を作り出す発生プログラム間の相同性を明らかにし、四肢類の水中から陸上への移行と進化を解明する上で重要な一歩になる、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化生物学:指と鰭条は共通の発生史を持つ

進化生物学:指と鰭条の発生に関わるHox遺伝子群

 Hox遺伝子群は、四肢類の肢や指の発生において主要な役割を担っていることから、魚類の鰭から四肢類の肢への移行にこれらの遺伝子が関与しているのかどうか、関与しているならばどのようにかという疑問が生じる。今回N Shubinたちは、ゼブラフィッシュの鰭においてHox遺伝子の細胞系譜解析とノックアウト解析を行い、鰭と肢におけるHox遺伝子の機能を比較した。それによって、HoxAとHoxDの遺伝子クラスターを欠損したゼブラフィッシュでは、鰭条が縮小し、軟骨要素が増えることが分かった。この結果は、肢の指と鰭の輻射骨を作り出す発生プログラム間の相同性を明らかにするものであり、四肢類の水中から陸上への移行と進化を解明する上で重要な一歩となる。



参考文献:
Nakamura T. et al.(2016): Digits and fin rays share common developmental histories. Nature, 537, 7619, 225–228.
http://dx.doi.org/10.1038/nature19322
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


小原嘉明『入門!進化生物学 ダーウィンからDNAが拓く新世界へ』

2017/01/12 00:00
 これは1月12日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年12月に刊行されました。本書は、現在の進化学の成果とともに学説史を参照し、進化学がどのように成立・展開してきたのか、分かりやすく解説しています。題名に入門とありますが、日本語で読める進化学の最新の入門書としてたいへん優れていると思います。これは、理論的な問題を扱いつつも、本書があくまでも具体的事例を取り上げて解説しようとしているからでもあるのでしょう。近いうちにまた再読したい一冊です。

 本書で強調されている点で私が注目したところはいくつかありますが、まずは、地球の構造上絶滅は進化において珍しくなく、進化の一側面である、ということです。生物史において絶滅が珍しくないことはよく指摘されていますが、本書は、地球の構造上、環境の変化・災害は避けられない、という理由を強調しています。また、発生に関するHox遺伝子群や、コドンとアミノ酸の対応など、進化史において大きく変わらず、厳重に保存されているものがあることも、進化の一側面として強調されています。これと関連して、動物のボディプランはカンブリア紀に定まった後、大きく変わってはおらず、動物の多様化は基本的なボディプランの下で進行したことが指摘されています。

 具体的な事例とともに利他性の進化が大きく取り上げられていることも注目されますが、本書で私が最も感銘を受けたのは、有性生殖の動物の繁殖に関する解説です。有性生殖の動物はじつに多様な繁殖形態を見せており、本書の具体的な事例は本当に興味深いものです。本書は、有性生殖の動物の繁殖においては雌雄の負担の非対称性が大きい、と強調し、それが多様な繁殖形態をもたらしている、と指摘しています。やはり、有性生殖の動物における性差はたいへん重要な問題と言えるでしょう。中立進化説を高く評価しているのも本書の特徴で、中立進化説の学説史における位置づけに関しては、今後も調べていこうと考えています。

 特定の環境への過剰な適応は長期的な観点からは問題がある、との指摘も注目されます。特殊な環境要因は一般的な環境要因より地学的変動の影響を受けて攪乱されやすいので、特殊な環境への特化は絶滅の危険性を高める、というわけです。本書は、特定の食物に依存する動物よりも雑食の動物の方が長期にわたって存続できる可能性が高いことを指摘していますが、その意味では、人間には長期間存続できる重要な条件の一つが備わっている、と言えそうです。また本書では言及されていませんが、特定の環境への過剰な適応の危険性は、優生学との関連でも注目されます。優生学は特定の環境への過剰な適応を目的にしているとも言えるのではないか、と私が考えているためです。


参考文献:
小原嘉明(2016)『入門!進化生物学 ダーウィンからDNAが拓く新世界へ』(中央公論新社)
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


1万年前頃の植物の加熱調理

2017/01/11 00:00
 これは1月11日分の記事として掲載しておきます。1万年前頃の植物の加熱調理関する研究(Dunne et al., 2016)が公表されました。土器は東アジアと北アフリカにおいて、1万年以上前に互いに無関係に発明されたと考えられています。その土器について、牛乳などの動物産品の加工に利用されたことを示す証拠は存在しますが関連記事、植物の調理で果たした役割は明らかになっていませんでした。この研究は、リビアのサハラ砂漠のタカルコリ(Takarkori)・ウアンアフダ(Uan Afuda)遺跡から出土した10200年前頃の合計110個の土器片を調べました。

 土器に残されている脂質付着物の炭素同位体比の分析の結果、土器は多葉植物・種子・穀物・水生植物など、周辺の湖沼およびサバンナで採集された多様な植物の加工に利用されていたことが示されました。これらの土器は、この地域における植物の栽培化・農業に4000年以上先行することになります。この研究は、前期完新世の狩猟採集民が、当時の緑のサハラに存在した穀物などの野生植物により食事の必要を充足させる上で、新たな発見から想定される植物加工技術がきわめて重要だった可能性がある、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


植物の加熱調理には1万年の歴史がある

 今週のオンライン版に掲載される論文によれば、かつて緑のサバンナであったサハラでは、1万200年も昔の新石器時代人が野生の穀物や多葉植物、水生植物を土器で調理していたという。

 人類史の中で、土器は約1万6,000年前の東アジアと、約1万2,000年前の北アフリカの2回にわたって互いに無関係に発明されたと考えられている。その土器について、牛乳などの動物産品の加工に利用されたことを示す証拠は存在するが、植物の料理で果たした役割は知られていなかった。

 Richard Evershedたちは、リビアサハラのTakarkoriおよびUan Afuda遺跡から出土した合計110個の土器片を調べた。土器に残されている脂質付着物の炭素同位体比を分析した結果、その土器は、多葉植物、種子、穀物、および水生植物など、周辺の湖沼およびサバンナで採集された多様な植物の加工に利用されていたことが示された。

 その土器は、この地域での植物の栽培化および農業に4000年以上先行することが分かった。研究チームは、前期完新世の狩猟採集民が当時の緑のサハラに存在した穀物などの野生植物によって食事の必要を充足させる上で、今回の知見によって想定された植物加工技術が極めて重要であった可能性があると結論付けている。



参考文献:
Dunne J. et al.(2016): Earliest direct evidence of plant processing in prehistoric Saharan pottery. Nature Plants, 3, 16194.
http://dx.doi.org/10.1038/nplants.2016.194
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』598話〜601話

2017/01/10 00:00
598話「戦士よ眠れ・新たなる闘い」10
 ボギー殉職の解決編となります。基本的には一話完結の本作では珍しく、二話で完結となります。この点は、ボンの殉職とその次のスニーカーの登場回と似た構成になっています。ただ今回は、新人刑事は登場しませんが。今回はボギーの敵討ちということで、とにかく終盤での一係の熱さが強く印象に残り、かなり楽しめました。各刑事に見せ場があったのも、ボギーが最期に残した手がかりに一係が気づく展開も、ボギーの姉を見送る時のブルースの叫びも、盛り上がりという点でよかったと思います。北條清嗣氏が登場したことはすっかり忘れていましたが、すぐに殺される役だったのは残念でした。そのため、印象に残らなかったのでしょうか。


599話「殺人犯ラガー」5
 ラガーは若い女性と会う約束をすっぽかされ、その女性の家を訪ねますが、女性の父親に怒鳴られて追い返されます。その場面を近所の夫婦が見ていました。その直後、女性の父親の死体が発見されます。近所の夫婦の証言により、ラガーが容疑者として取り調べを受けます。娘は父親が殺された晩に家には戻らず、ラガーは必死に探しますが、見つかりません。捜査が行き詰るなか、窃盗で偶然捕まった女性が薬物中毒で、殺された男性の営むクリーニング店から戻ってくる衣服のなかに入っている覚醒剤を使用していた、と明らかになります。ラガーは、暴力団に狙われていると思われる女性を必死に探しますが、なかなか見つかりません。じつは、殺された男性は偶然、暴力団の出した服から覚醒剤を発見し、そのことに気づいた暴力団から脅迫されて売人をやらされていたものの、娘がラガーと付き合い始め、足を洗おうとして暴力団に殺されたのでした。しかし、暴力団は覚醒剤を見つけられず、その娘を誘拐します。ラガーは女性を発見し、暴力団に監禁されつつも、他の刑事の応援も得て女性を救出しますが、女性はラガーとの別れを決意します。本作では定番の若手刑事の悲恋ものであり、ひどい出来というわけではありませんが、残念ながら、陳腐な題材から予想される予定調和的な展開を覆すような面白さはありませんでした。


600話「七曲署事件No.600」8
 記念作品となります。過去の記念作品は、

100話「燃える男たち」
http://sicambre.at.webry.info/201107/article_5.html

200話「すべてを賭けて」
http://sicambre.at.webry.info/201209/article_6.html

300話「男たちの詩」
http://sicambre.at.webry.info/201211/article_4.html

400話「スコッチ・イン・沖縄」
http://sicambre.at.webry.info/201410/article_18.html

500話「不屈の男たち」
http://sicambre.at.webry.info/201512/article_28.html

です。これまでの記念回は、誰か特定の刑事が主演ではないことが多かったのですが、今回はブルースの単独主演と言えるでしょう。この点では、ゴリさん単独主演の200話「すべてを賭けて」と共通しています。

 さて、今回の話ですが、ブルースが以前逮捕した男性を刑務所に訪ねると、男性は、自分の恋人と同棲しているのか、と言って激昂します。女性には他に好きな人ができて、男性を恐れるあまり、ついブルースの名前を出したのでした。男性はブルースに復讐するために脱獄し、ライフル銃を奪って元恋人とブルースを狙い続けます。けっきょく、女性は男性が強盗で奪った金を手に入れ、新たな恋人と幸せな生活を送り、男性を警察に殺させようとしていたのでした。本作では定番の一つと言える、男女の機微を描いた大人向けの話となっています。ただ、主演がブルースということで、アクションシーンにもかなり力が入れられており、その分、やや男女の機微の描写が弱くなっているように思います。とはいえ、アクションシーンも含めてなかなか楽しめました。


601話「アイドル」8
 アイドルが七曲署の一日署長となりますが、パレードを中止しろと男性から脅迫電話がかかってきます。アイドルのマネージャーは、いたずら電話だと笑い、パレードは実行されます。ラガーとブルースは怪しい男性を見つけますが逃げられ、男性はマネージャーを人質にとって立て籠もります。この男性はアイドルの熱烈なファンで、ファンレターの返事に、助けてくれ、と書かれていたので犯行に及んだ、と打ち明けます。一係は、アイドルの人気が低下してきたことを懸念した所属事務所の社長とマネージャーが、男性に煽るような返事を書き、事件を起こさせて注目を集めようとした、と推理します。しかし、さらに裏があり、犯人とアイドルとはつながっていて、この人質事件にアイドルも積極的に関わっていました。アイドルが男性を説得して事件を解決し、アイドルの人気が回復する、という筋書きなのでした。助けて、と書いた男性へのファンレターはそもそもなく、アイドルの捏造でした。今回も少なくとも一度は視聴しているはずなのですが、まったく話を覚えていなかったので、新鮮な気持ちで楽しめました。正直なところ終盤までは、つまらないなあと思っていたのですが、予想外の展開で楽しめました。今回初めて登場した七曲署の大和田署長を演じるのは、これまでにも何度か別役で本作に出演してきた草薙幸二郎氏です。七曲署の署長というと、長きにわたって出演してきた平田昭彦氏演じる西山署長の印象が強いだけに、違和感はありますが、今回は登場場面がわりと多く、小物感全開でなかなかキャラが立っていたように思います。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2


大河ドラマ『おんな城主 直虎』第1回「井伊谷の少女」

2017/01/09 00:00
 これは1月9日分の記事として掲載しておきます。いよいよ今年(2017年)の大河ドラマが始まりました。15年ほど前に中世〜近世移行期にはまり、色々と調べたことがありました。今でも中世〜近世移行期への関心はあるのですが、以前よりも優先順位はかなり下がっています。以前ならば、この作品について時代背景も含めて色々と語りたくなったところでしょうが、勉強不足は否めず、歴史的背景について語るのは難しそうです。したがって、史実・通説との比較や歴史ドラマとして適切なのかということよりも、物語として楽しめるのか、という観点で視聴していくつもりです。

 今年の大河ドラマは、知名度の低い井伊直虎(次郎法師)が主人公です。私の観測範囲ではほとんど盛り上がっておらず、期待値はかなり低いように思われ、視聴率は苦戦しそうです。もっとも、これは「声の大きい」大河ドラマ愛好者の意見が目立ちやすいネットでの印象なので、じっさいの予想は難しいところです。大河ドラマの視聴率低迷が続くようだと、近いうちに大河ドラマの廃止論がNHK内部でも本気で主張されるようになるのではないか、と懸念されるだけに、本作には昨年放送の大河ドラマ『真田丸』に匹敵するくらいの視聴率を期待しています。

 さて、初回についてですが、オープニングは、背景の画像がごちゃつきすぎのように思います。もう少しすっきりとした方が私の好みです。音楽は、さほど良いとは思いませんでしたが、聴き続けると印象が変わってくるかもしれません。冒頭で先の出来事を少し描き、その後過去にさかのぼって本格的に物語が始まるという手法は、近年の大河ドラマではすっかり定着したように思われますが、今回は、先の出来事は実質的には描かれず、成人後の主人公がイメージカットでごく短時間登場しただけでした。これは、2012年放送の大河ドラマ『平清盛』と同様です。こうした手法が用いられるようになったのは、遅くとも第2回の後半以降に主人公の成人役を登場させれば、主演を毎回オープニングのクレジットに載せることができるからだろう、と私は邪推しています。

 話の方は、主人公の「おとわ(直虎)」と同年代の亀之丞(井伊直親)・鶴丸(小野政次)との絆を中心に、井伊家の内情と周囲の情勢が描かれ、戦国時代の小領主の物語として、さほど悪くはなかったと思います。ただ、今回の登場人物で有名なのは今川義元くらいでしょうし、狙って笑いを取りに行くようなところがなく、全体的に地味な感じは否めませんでしたから、やはり視聴率の苦戦は否めないでしょう。初回だけで判断するのは時期尚早ですが、まずまず楽しめたので、一年間視聴を続けることになりそうです。ただ、感想記事の執筆は途中で挫折するかもしれませんが。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


渉禽類の社会的に同調されたリズムの多様性

2017/01/08 00:00
 これは1月8日分の記事として掲載しておきます。渉禽類(シギ・チドリ類)の社会的に同調されたリズムの多様性に関する研究(Bulla et al., 2016)が公表されました。生物リズムはあらゆる生物に認められますが、社会性の種では、こうしたリズムを集団内の他の個体と同調させる必要があります。この研究は、あらゆる生物に認められる生物リズムが、社会性の種ではどのように集団内の他の個体と同調しているのか、検証しています。この研究が対象としたのは渉禽類(シギ・チドリ類)32種で、91個体群の729の巣から得たデータが用いられました。その結果、環境条件が類似し、24時間という一様な環境信号があるにもかかわらず、社会的同調により、飼育下の鳥類での研究から推測されたよりもはるかに多様な行動リズムが生じ得る、と明らかになりました。飢餓ではなく捕食のリスクが、生物リズムの多様性の重要な決定要因である可能性がある、と指摘されてます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


社会進化学:渉禽類の社会的に同調されたリズムの意外な多様性

社会進化学:子育ての負担を分かち合う

 生物リズムはあらゆる生物に認められるが、社会性の種では、こうしたリズムを集団内の他の個体と同調させる必要がある。今回M Bullaたちは、共に子の世話に当たっている両親が互いの生物リズムをどのように同調させるのか、という問題に取り組んでいる。両親が互いのスケジュールを同調させて連続的な抱卵を成し遂げる渉禽類(シギ・チドリ類)32種について、91個体群の729の巣から得たデータを用いた研究から、環境条件が類似していても、また24時間という一様な環境信号があるにもかかわらず、社会的同調によって、飼育下の鳥類での研究から推測されたよりもはるかに多様な行動リズムが生じ得ることが分かった。飢餓ではなく捕食のリスクが、生物リズムの多様性の重要な決定要因である可能性がある。



参考文献:
Bulla M. et al.(2016): Unexpected diversity in socially synchronized rhythms of shorebirds. Nature, 540, 7631, 109–113.
http://dx.doi.org/10.1038/nature20563
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


さかのぼるチベット高原高地帯の人間の定住年代

2017/01/07 00:00
 これは1月7日分の記事として掲載しておきます。チベット高原高地帯の人間の定住年代に関する研究(Meyer et al., 2017)が報道されました。チベット高原高地帯における人間の永続的な定住年代については、農耕の始まった3600年前頃以降(関連記事)ではないか、と考えられてきました。この研究は、1998年にチベット高原中央のチュサン(Chusang)村近くで発見された人間の手形や足跡の年代について報告し、チベット高原高地帯への人間の永続的な居住はじゅうらいの推定よりも少なくとも数千年はさかのぼりそうだ、との見解を提示しています。このチュサン遺跡は海抜約4270mに位置します。

 人間の手形や足跡が発見された堆積層の年代測定の結果、下限年代はウラン-トリウム法による7400年前頃、上限年代は放射性炭素年代測定法による較正年代で12670〜8200年前頃と推定されました。さらに、チベット高原低地環境とチュサン遺跡との距離が、ヒマラヤ山脈を通過して少なくとも368kmとなることから、チュサン遺跡は季節単位で利用されるような一時的なベースキャンプではなく、年間を通じて人間が居住していたのではないか、との見解が提示されています。この研究は、チベット高原高地帯における人間の永続的な居住は農耕開始の数千年以上前になる、とチュサン遺跡の意義を指摘しています。

 またこの研究は、チベット高原高地帯への人間の永続的な居住は農耕開始の数千年以上前になる、との新見解は遺伝学的研究とも一致している、と指摘しています。さらにこの研究は、現生人類(Homo sapiens)の高地帯への進出・適応についても言及しています。現生人類の高地帯への進出・適応は、たとえばチベット高原と南アメリカ大陸のアンデス高地のように、生理的・遺伝的・文化的側面において地域間で異なるものだったのではないか、というわけです。現生人類の高地帯への適応は多様なものであり、その柔軟性が現生人類の世界各地への拡散を可能としたのでしょう。


参考文献:
Meyer MC. et al.(2016): Permanent human occupation of the central Tibetan Plateau in the early Holocene. Science, 355, 6320, 64-67.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aag0357
記事へ面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0


能動的に植物を栽培するアリ

2017/01/06 00:00
 これは1月6日分の記事として掲載しておきます。能動的に植物を栽培するアリについての研究(Chomicki, and Renner., 2016)が公表されました。菌類を栽培するハキリアリや甲虫類など複数種の動物は、他の生物を世話して育てるという、栽培する互恵関係を発達させました。この研究は、フィジーの島々にいるアリ(Philidris nagasau)が、少なくとも6種のSquamellaria属植物(体を支えるためにほかの植物や樹木に付着して地上で生育し、栄養素を求めて地面まで伸びることのない着生植物)を能動的に栽培していることを明らかにしました。

 このアリは、Squamellaria属植物の果実から種子を収集し、それを宿主樹木の割れ目に挿入します。割れ目の実生は中空の小室を形成し、アリが絶えずそこを訪れるので、幼植物体は小室内でのアリの排泄物のおかげで栄養素を得られるため、下界の豊かな熱帯土壌から離れたままで生育できます。小室は成長し、一時的に訪れる働きアリおよび定住するアリのコロニーに営巣の場および身の安全を提供します。この研究は、そうした相互作用について、既知のアリ・植物間の相利共生と異なり、条件的ではなく絶対的なものである、と指摘しています。このアリと植物は相互に依存しており、互いの存在なしには生存することができなません。

 また、単独で栽培されたこの植物は、支持体となった樹木の上でアリの道が交互に行き交う営巣ネットワークを形成し、その中心部に女王アリが鎮座することも明らかになっています。こうした栽培行動は、植物が樹皮に着生するための特別な適応を発達させ、アリが播種行動を開始するという共進化により、約300万年前に生じたのではないか、とこの研究は推測しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


人類の農耕のはるか以前にアリは植物を栽培していた

 能動的に植物を栽培し、身を守るためにそれに住み着くフィジーのアリが、今週の掲載論文で報告されている。今回の研究で行われたこの行動に関する進化的解析からは、そのアリが数百万年にわたって植物を栽培しており、人類による農耕をはるかにさかのぼることが示唆されている。

 菌類を栽培するハキリアリや甲虫類など、複数種の動物は、他の生物を世話して育てる、すなわち栽培する互恵関係を発達させた。

 Guillaume ChomickiとSusanne Rennerは今回、フィジーの島々で、Philidris nagasauというアリが少なくとも6種のSquamellaria属植物(体を支えるためにほかの植物や樹木に付着して地上で生育し、栄養素を求めて地面まで伸びることのない着生植物)を能動的に栽培していることを明らかにした。著者は、この昆虫がその植物の果実から種子を収集し、それを宿主樹木の割れ目に挿入することを発見した。割れ目の実生は中空の小室を形成してアリが絶えずそこを訪れ、幼植物体はアリが小室内で排泄を行うおかげで栄養素を得ることができるため、下界の豊かな熱帯土壌から離れたままで生育することができる。小室は成長し、一時的に訪れる働きアリおよび定住するアリのコロニーに営巣の場および身の安全を提供する。著者はこの相互作用について、既知のアリ・植物間の相利共生と異なり、条件的ではなく絶対的なものであることを指摘している。そのアリと植物は相互に依存しており、互いの存在なしには生存することができないのである。単独で栽培されたその植物は、支持体となった樹木の上でアリの道が交互に行き交う営巣ネットワークを形成し、その中心部に女王アリが鎮座することが分かった。

 最後に、著者はアリと植物の両方に関する進化史を推測している。それによれば、この栽培行動は、植物が樹皮に着生するための特別な適応を発達させアリが播種行動を開始するという共進化により、約300万年前に生じたのではないかということである。



参考文献:
Chomicki G, and Renner SS.(2016): Obligate plant farming by a specialized ant. Nature Plants, 2, 16181.
http://dx.doi.org/10.1038/nplants.2016.181
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


関連していなかった人類の脳と歯の進化

2017/01/05 00:00
 これは1月5日分の記事として掲載しておきます。人類の脳と歯の進化に関する研究(Gómez-Robles et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現代人も含む後期ホモ属の重要な特徴として、犬歯の縮小と脳サイズの増大が挙げられます。人類は、より大きな脳により道具の製作が可能となり、道具の使用により大きな歯を持つ必要性が減少した、というように両者を関連づける見解もありますが、この研究は、各人類系統における犬歯の縮小と脳サイズの増大の速度を定量的に検証し、この問題について論じています。

 その結果明らかになったのは、人類の犬歯は比較的一貫して中立的速度で変化してきた一方で、脳サイズの変化は人類の各系統において異なる速度で変化した、ということです。脳サイズの増大はホモ属の系統において強く見られ、急速なものだった、と指摘されています。こうした知見から、人類の脳と歯の進化に関しては、単純な因果関係は認められず、異なる生態学的および行動学的要因が影響を及ぼしたのではないか、と推測されています。犬歯の縮小に関しては、雄の間の闘争が抑制的になったことと関連しており、繁殖形態を中心とする社会構造に起因するのではないか、とも思うのですが、まだ思いつきにすぎません。

 また、人類は、より大きな脳により道具の製作が可能となり、道具の使用により大きな歯を持つ必要性が減少した、というような見解に反する知見も指摘されています。人類は、犬歯が大きく縮小する前に脳サイズが増大し、脳サイズが増大する前に石器の製作を始めた、というわけです。人類の進化は複雑であり、単純明快な見解は要注意と考えるべきなのでしょう。たとえば、現生人類(Homo sapiens)の進化および異なる系統との交雑の問題はそうで、一時期、単純明快な見解(現生人類アフリカ単一起源説のなかでも完全置換説)が通説として認められそうになったとも言えそうですが、今ではそうした見解はほぼ否定されています。


参考文献:
Gómez-Robles A. et al.(2016): Brain enlargement and dental reduction were not linked in hominin evolution. PNAS.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1608798114
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


尾本恵市『ヒトと文明 狩猟採集民から現代を見る』

2017/01/04 00:00
 これは1月4日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2016年12月に刊行されました。本書は人類史の概説とも言えますが、著者の問題意識は現代社会への強い危機感にあり、現代人への警鐘と受け止めるべきなのかもしれません。ただ、本書は著者の自伝的性格も強いので、人類史の概説にしても、現代社会の危機の指摘にしても、やや雑然としているというか、体系的ではないところがあります。もっとも、著者の少年時代からの話は研究史にもなっているので、興味深く読み進められました。

 現生人類(Homo sapiens)の出アフリカまでの解説については、簡略なので単純化されたところもありますし、5万年前頃を大きくさかのぼらないとされている出アフリカの年代をはじめとして疑問もありますが(関連記事)、新書での一般向けの解説ですから、大きな問題というわけではないように思います。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)だけではなく、種区分未定のデニソワ人(Denisovan)や現生人類ではない更新世フローレス人(Homo floresiensis)といった絶滅ホモ属への言及もあればよかったと思いますが、本書の主題ではないので仕方のないところでしょうか。

 本書の主題である現代社会への強い危機意識については、妥当なところが少なくないとは思います。確かに、地球資源の大規模な利用を前提とした広範な地域・階層での「高度な生活水準」は、数百年以内に破綻する可能性もあります。しかし、狩猟採集民・先住民族の問題を強く訴える本書は、環境・人権など多くの深刻な問題を抱える現代社会が学ぶべき対象だとして、狩猟採集民・先住民族をかなり美化しているようにも思われます。本書は、狩猟採集民・先住民族社会における争いの少なさや自然との共存を強調しているのですが、それは、著者の理想・規範を狩猟採集民・先住民族に過剰に投影しているのではないか、とも思います。もっとも、本書は多文化主義の問題点も指摘してはいますが。


参考文献:
尾本恵市(2016) 『ヒトと文明 狩猟採集民から現代を見る』(筑摩書房)
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


5本指の四肢動物の進化

2017/01/03 00:00
 これは1月3日分の記事として掲載しておきます。5本指の四肢動物の進化に関する研究(Kherdjemil et al., 2016)が公表されました。肢が4本の陸上脊椎動物のほとんどは、肢1本につき指趾が5本あり、この数が変異によって変動する場合には例外なく、典型的な5本からの減少が起きます。しかし、「五指性」と呼ばれるこの状態は初めから四肢動物の典型だったわけではなく、初期の四肢動物には、肢1本当たり指趾が6〜8本存在しました。このような「多指性」は、現在では希少な変異でしか見られません。この研究は、5本の指趾を持つ肢の形成にはHoxa11とHoxa13の相互排他的な発現が必要であることと、Hoxa11遺伝子のイントロンでは転写エンハンサーが進化しており、その機能が五指性状態の維持に必要であることを明らかにしました。そのため、絶滅したステム群四肢類での多指性から現生四肢類の五指性への移行には、Hoxa11調節の進化が寄与していたのではないか、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


Cover Story:指趾の編成:5本指の四肢動物の多指祖先からの進化にはHox遺伝子の調節が重要な役割を果たしている

進化発生生物学:五指性状態と関連付けられた、脊椎動物におけるHoxa11調節の進化

 表紙は、Rosa26Hoxa11/Hoxa11; prx1Cre変異マウスの手の骨格画像を加工したものである。この変異はHoxa11遺伝子の遠位肢芽での発現を引き起こし、これは鰭芽での発現に似ていて過剰な指趾の形成を引き起こす。現生四肢類、つまり肢が4本の陸上脊椎動物のほとんどは、肢1本につき指趾が5本ある。この数が変異によって変動する場合には例外なく、典型的な5本からの減少が起こる。しかし、「五指性」と呼ばれるこの状態は初めから四肢類の典型だったわけではなく、初期の四肢類には、肢1本当たり指趾が6本、7本、あるいは8本あるものすら存在した。このような「多指性」は、現在では希少な変異でしか見られない。五指性はどのようにして定着したのだろうか。M Kmitaたちは今回、5本の指趾を持つ肢の形成にはHoxa11とHoxa13の相互排他的な発現が必要であること、Hoxa11遺伝子のイントロンでは転写エンハンサーが進化していて、その機能が五指性状態の維持に必要であることを明らかにした。研究チームは、絶滅したステム群四肢類での多指性から現生四肢類の五指性への移行にはHoxa11調節の進化が寄与していたのではないかと考えている。



参考文献:
Kherdjemil Y. et al.(2016): Evolution of Hoxa11 regulation in vertebrates is linked to the pentadactyl state. Nature, 539, 7627, 89–92.
http://dx.doi.org/10.1038/nature19813
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


古人類学の記事のまとめ(30)2016年9月〜2016年12月

2017/01/02 00:00
 これは1月2日分の記事として掲載しておきます。2016年9月〜2016年12月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2016年9月〜2016年12月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、このブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。


●ホモ属登場以前の人類関連の記事
ルドルフェンシス化石のより正確な年代
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_20.html

鮮新世〜更新世の移行期のアフリカ東部の人類の食性
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_20.html

アファレンシスの樹上生活への適応
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_2.html

アファレンシスの新たな足跡と社会構造
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_16.html


●ネアンデルタール人・現生人類以外のホモ属関連の記事

『地球ドラマチック』「洞窟に眠る新種の人類」
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_22.html

ナレディの進化系統樹における位置づけと推定年代
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_15.html

人類最古の右利きの証拠
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_28.html

ドマニシ遺跡の初期ホモ属に関する会議
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_26.html

植物を食べていた中期更新世の人類
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_8.html

ヨーロッパの初期人類の食性と火の不使用
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_17.html

絶滅ホモ属から現生人類への適応的遺伝子移入
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_25.html


●ネアンデルタール人関連の記事

シャテルペロニアンの担い手
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_20.html

ネアンデルタール人と現生人類との耳小骨の形態および聴力の比較
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_30.html

ネアンデルタール人やデニソワ人から現生人類へと感染した発癌性ウイルス
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_19.html

ネアンデルタール人との交雑に起因する現代人の免疫反応の違い
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_22.html

現生人類と古代型ホモ属との交雑の見直し
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_26.html

寒冷な草原地帯におけるネアンデルタール人の食性
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_5.html

現生人類においてネアンデルタール人由来の遺伝子が除去された理由
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_10.html

古代型ホモ属との交雑により新たな環境に適応した現生人類
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_13.html

ネアンデルタール人とされていたイタリアの化石の再検証
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_3.html

ネアンデルタール人による持続的な土地の利用
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_22.html


●フロレシエンシス関連の記事

フロレシエンシスに関する研究の進展
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_16.html

リアンブア洞窟の後期更新世の現生人類の歯
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_25.html


●現生人類の起源や象徴的思考に関する記事

オーストラリア先住民のゲノム史
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_23.html

現生人類の出アフリカの回数
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_24.html

現生人類の拡散と気候変動の関係
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_7.html

ネアンデルタール人やチンパンジーよりも劣る現生人類の煙への耐性
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_13.html

アフリカ東部における中期更新世の大規模噴火
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_2.html

南コーカサスにおける中部旧石器時代〜上部旧石器時代の移行年代
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_7.html


●その他の記事

縄文時代の人類の核DNA解析
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_3.html

6000年間ほとんど遺伝的に変わっていないオオムギ
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_9.html

島泰三『ヒト―異端のサルの1億年』
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_11.html

Ian Tattersall『ヒトの起源を探して 言語能力と認知能力が現代人類を誕生させた』
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_29.html

人間の致死的暴力の起源
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_2.html

最初のリモートオセアニア人集団の遺伝的構成(追記有)
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_5.html

アルゼンチンにおけるクローヴィス文化以前の人類の遺跡
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_6.html

自然信仰
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_9.html

タンザニアの後期更新世の人間の足跡
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_16.html

更科功 『爆発的進化論 1%の奇跡がヒトを作った』
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_18.html

ヒゲオマキザルが「作った」石器と類似した剥片(追記有)
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_21.html

チンパンジーとボノボの交雑
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_29.html

さかのぼるオーストラリア内陸部への人類の移住(追記有)
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_6.html

Robin Dunbar『人類進化の謎を解き明かす』
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_9.html

チンパンジー社会におけるストレスと仲間の関係
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_16.html

縄文時代の妊娠・出産回数の地域的違い
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_19.html

クジラを食べていた古代グリーンランド人
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_24.html

カナダ先住民の免疫関連遺伝子の進化
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_11.html

男女平等と病原体の罹患率の関係
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_14.html

2016年の古人類学界
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_29.html



過去のまとめ一覧

古人類学の記事のまとめ(0)
http://sicambre.at.webry.info/200709/article_29.html

古人類学の記事のまとめ(1)
http://sicambre.at.webry.info/200707/article_29.html

古人類学の記事のまとめ(2)
http://sicambre.at.webry.info/200712/article_31.html

古人類学の記事のまとめ(3)
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(4)
http://sicambre.at.webry.info/200807/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(5)
http://sicambre.at.webry.info/200811/article_3.html

古人類学の記事のまとめ(6)
http://sicambre.at.webry.info/200812/article_26.html

古人類学の記事のまとめ(7)
http://sicambre.at.webry.info/200905/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(8)
http://sicambre.at.webry.info/200909/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(9)
http://sicambre.at.webry.info/200912/article_26.html

古人類学の記事のまとめ(10)
http://sicambre.at.webry.info/201005/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(11)
http://sicambre.at.webry.info/201009/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(12)
http://sicambre.at.webry.info/201012/article_28.html

古人類学の記事のまとめ(13)
http://sicambre.at.webry.info/201105/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(14)
http://sicambre.at.webry.info/201109/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(15)
http://sicambre.at.webry.info/201112/article_28.html

古人類学の記事のまとめ(16)
http://sicambre.at.webry.info/201205/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(17)
http://sicambre.at.webry.info/201209/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(18)
http://sicambre.at.webry.info/201301/article_3.html

古人類学の記事のまとめ(19)
http://sicambre.at.webry.info/201305/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(20)
http://sicambre.at.webry.info/201309/article_5.html

古人類学の記事のまとめ(21)
http://sicambre.at.webry.info/201401/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(22)
http://sicambre.at.webry.info/201405/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(23)
http://sicambre.at.webry.info/201409/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(24)
http://sicambre.at.webry.info/201501/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(25)
http://sicambre.at.webry.info/201505/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(26)
http://sicambre.at.webry.info/201509/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(27)
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_2.html

古人類学の記事のまとめ(28)
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_1.html

古人類学の記事のまとめ(29)
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_1.html
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


謹賀新年

2017/01/01 00:00
 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。毎年元旦には同じような記事を掲載しており、たまには変わったことを述べようと思うのですが、これといって思い浮かびません。今年も色々と不愉快なことが起きそうですが、人生には楽しみも多いのだ、と開き直ってしぶとく生きていき、古人類学を中心としてさまざまな分野で勉強と情報収集を地道に続けていくつもりです。数年間愛読してきた『天智と天武〜新説・日本書紀〜』が昨年で完結したのは残念ですし、今年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』に関しては、とても『真田丸』ほどには期待できそうにありませんが、『ヒストリエ』の最新刊が1月末に刊行予定なので楽しみです。

 その他の楽しみとしては競馬や相撲などがあるのですが、競馬の方は、日本ではとくに思い入れのある馬がおらず、昨年と同じくやや冷めた感じで見ることになりそうです。海外では、トラヴァーズSを圧勝して、BCクラシックでカリフォルニアクローム(California Chrome)との一騎討ちを制したアロゲート(Arrogate)に注目していますが、そもそも4歳になった今年も現役を続けるのか、ということもよく知りません。相撲では、照ノ富士関がどこまで復調するのか、注目しています。現在、三横綱が全員30代なので、大関陣で唯一素質では横綱に相応しい照ノ富士関が復調しないと、白鵬関の引退後は、大混乱となりそうです。その白鵬関は衰えてきましたが、まだ何回か優勝できる力は残っていると思いますので、何とか40回まで優勝回数を伸ばしてもらいたいものです。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2


年末の挨拶

2016/12/31 04:05
 いよいよ2016年も終わりが近づいてきました。ブログを始めてから10年半以上経過し、ほぼ毎日更新してきたものの、相変わらずの過疎ブログです。やはり、ある程度以上の人気ブログになるには、更新頻度もさることながら、有益な情報を提供するか、面白い記事を執筆しなければならないのでしょう。もちろん、多くの人が関心を持つような話題を取り上げることも重要になります。このブログでも多くの人が関心を持つような話題を取り上げることはありますが、有益な情報を提供できているわけでも、面白い記事を執筆できているわけでもないので、現状ではほぼ自分にとっての備忘録としてしか機能していない、と残念ながら認めざるを得ません。

 とまあ、昨年の大晦日の記事をコピペして一部だけ修正したわけですが、どうも現在の能力・見識・気力では、今年を振り返って何か的確で有益なことを言えそうにありません。年金問題やイギリスのEU離脱など関心のある問題も多くあるのですが。この状況を劇的に改善できる見込みはまったくないのですが、来年も古人類学関連の情報を中心として地道にブログの更新を続けていくつもりです。一年間この過疎ブログをお読みくださった方、さらには有益な情報を寄せてくださった方には感謝申し上げます。皆様よいお年を。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 1


東京大賞典結果

2016/12/30 00:00
 これは12月30日分の記事として掲載しておきます。大井では東京大賞典が行なわれました。近年ではブログを始めた頃よりも競馬についての記事が激減しているのですが、有馬記念と東京大賞典だけはブログを始めてから毎年必ず取り上げてきました。今年も、それほど思い入れの強い馬が出走しているわけではなく、わりと冷静に見られますし、一年の終わりを感じさせるレースでもあるので、区切りのためにも感想を述べることにしました。残念ながら外国馬は出走してきませんでしたが、サウンドトゥルーやアウォーディーやコパノリッキーが出走してきたので、GIとしてまずまずの出走馬構成になったと思います。

 レースは、チャンピオンズカップで直線失速して完敗したコパノリッキーが逃げ、アウォーディーが差のない2番手で進みました。直線ではアポロケンタッキーが抜け出して完勝し、アウォーディーがわずかにサウンドトゥルーを抑えて2着に入りました。3着のサウンドトゥルーと4着のノンコノユメとの間の着差は4馬身で、アポロケンタッキーは人気薄でしたが、人気馬3頭は2〜4着で実力を発揮していますから、ここは素直にアポロケンタッキーの強さを認めるべきだと思います。ただ、アポロケンタッキーが来年のダート路線の主役になれるかというと、もう1戦様子を見る必要があるかな、とも思いますが。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


2016年の古人類学界

2016/12/29 00:00
 これは12月29日分の記事として掲載しておきます。あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2016年)も古人類学界について振り返っていくことにします。今年の動向を私の関心に沿って整理すると、以下のようになります。

(1)今年も着実に進展した絶滅ホモ属のDNA解析。

(2)現生人類の古代DNAや現代人・現生霊長類のDNA解析も着実に進展。

(3)フロレシエンシスに関する研究の大きな進展。


(1)ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)など現生人類(Homo sapiens)ではない系統の人類である絶滅ホモ属のDNAの解析および現代人との比較は、近年目覚ましい成果をあげている分野であり、今年も注目すべき研究が多数見られました。このブログだけでも今年多くの研究を取り上げてきたので、正直なところ、それらだけでもよく整理できていないような状況です。そこで、数行程度の簡単な内容紹介で関連記事を掲載していき、今後の整理に役立てようと考えています。この問題に関しては、今年公表された総説的な論文がたいへん有益だと思います。
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_21.html

 何といっても注目されるのは、すでにミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析に成功していたイベリア半島北部の43万年前頃の人骨の核DNAの解析結果が公表されたことで、これにより、現生人類アフリカ単一起源説のなかでも完全置換説が優勢だった頃の想定よりもずっと人類の進化が複雑だった、と改めて示されたように思います。
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_17.html

 現生人類と絶滅ホモ属との交雑については、どのような遺伝子が適応度を上げたのか、あるいは下げたのか、という観点からの研究が今年も盛んでした。絶滅ホモ属由来の免疫関連遺伝子は、現生人類がアフリカより世界各地に拡散していく過程で、現生人類にとって新たな土地での適応度を高めることがあったようです。現生人類の急速な拡散の一因として、絶滅ホモ属由来の免疫関連遺伝子は無視できないでしょう。
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_9.html
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_22.html
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_13.html

 一方、絶滅ホモ属由来の遺伝子が現生人類の適応度を下げることも指摘されています。こうした遺伝子が現代にまで残っている一因として、たとえば更新世には無害だったのに、農業革命や産業革命などによる社会の変化で有害になったことが挙げられています。
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_13.html
また、ネアンデルタール人のY染色体の遺伝子に関しても、適応度を下げる可能性があり、それがネアンデルタール人由来のY染色体が現代人に見られない要因になっている、とも指摘されています。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_9.html

 現代人のゲノムに絶滅ホモ属由来の領域が少ない理由としては、ネアンデルタール人の人口規模が現生人類よりも小さかったことが挙げられています。小規模な集団では大規模な集団よりも近親交配の頻度が高まり、弱い有害な(適応度を下げる)遺伝的変異を除去する選択圧が弱まる傾向にある、というわけです。
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_8.html
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_10.html


 現代人の各地域集団間で絶滅ホモ属由来のゲノム領域の割合がどの程度異なっているのか、という観点からの研究が今年も盛んでした。こうした地域間の違いから、現生人類の拡散と絶滅ホモ属との交雑の複雑な様相が明らかになりつつあり、交雑の回数・地域などの点で、まだ確定した説があるとは言い難い状況です。
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_19.html
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_31.html

 ネアンデルタール人と現生人類との交雑の推定年代がさかのぼる可能性を指摘した研究も大いに注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_19.html

 ただ、絶滅ホモ属の非アフリカ系現代人への遺伝的影響については、過大評価されているのではないか、との見解も提示されています。
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_26.html

 絶滅ホモ属のDNAの解析から直接明らかになるわけではありませんが、現生人類と絶滅ホモ属との間で、細菌・ウイルス感染があったことを指摘した研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_13.html
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_19.html


(2)現生人類の古代DNAや現代人・現生霊長類のDNA解析も着実に進展しており、このブログだけでも今年多くの研究を取り上げてきました。やはりこちらも、正直なところ、よく整理できていないような状況であり、数行程度の簡単な内容紹介で関連記事を掲載していき、今後の整理に役立てようと考えています。

 現生人類の古代DNAに関しては、研究者の密度と気候の問題から、やはりヨーロッパが中心になっているように思われ、西アジアなども含めて西ユーラシアまで対象が拡大されている研究も多いようです。ブリテン島の古代DNAからは、住民の遺伝的構成の変遷とローマ帝国時代の人的流動性が指摘されています。
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_24.html

 ヨーロッパにおける更新世から完新世にかけての現生人類の遺伝的構成の変遷や、
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_4.html
ヨーロッパも視野に入れつつ、西アジアの初期農耕民の地域間の遺伝的違いを指摘した研究が注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_16.html
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_30.html

 オーストラリア大陸の先住民に関する遺伝学的研究も進展しており、現代の先住民のY染色体の分析や、
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_2.html
ヨーロッパ勢力侵出前の先住民のmtDNA分析や、
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_16.html
パプア人も含めての高精度のゲノム配列結果が公表されました。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_23.html
また、オーストラリア先住民も関係してきそうな問題として、最初のリモートオセアニア人集団の遺伝的構成の研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_5.html

 アメリカ大陸先住民のDNA研究に関しては、現代パナマ人に見られるヨーロッパ系の遺伝的痕跡に関する研究や、
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_25.html
先コロンブス期アメリカ大陸の住民のmtDNA分析を取り上げました。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_5.html

 現代人のゲノム解析から、現生人類の出アフリカの回数について検証した研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_24.html

 縄文人の核DNA解析や、
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_3.html
チンパンジーとボノボの交雑の可能性を指摘した研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_29.html


(3)インドネシア領フローレス島の更新世ホモ属であるフロレシエンシス(Homo floresiensis)の研究は大いに進展し、このブログでも暫定的にまとめてみました。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_16.html

 まず、フロレシエンシスの年代がじゅうらいよりも繰り上がりました。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_1.html

 フロレシエンシスの起源に関わる問題では、フローレス島で中期更新世の人類化石が発見されました。
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_10.html

 フロレシエンシスの起源との関連では、フロレシエンシスの起源地ともされるスラウェシ島における10万年以上前の石器の発見が注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_15.html

 フロレシエンシスの絶滅との関連では、現生人類の関与が注目され、フローレス島で46000年前頃の現生人類の歯が発見されました。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_25.html


 この他にも取り上げるべき研究は多くあるはずですが、読もうと思っていながらまだ読んでいない論文もかなり多く、古人類学の最新の動向になかなか追いつけていないのが現状で、重要な研究でありながら把握しきれていないものも多いのではないか、と思います。この状況を劇的に改善させられる自信はまったくないので、せめて今年並には本・論文を読み、地道に最新の動向を追いかけていこう、と考えています。なお、過去の回顧記事は以下の通りです。



2006年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200612/article_27.html
http://sicambre.at.webry.info/200612/article_28.html
http://sicambre.at.webry.info/200612/article_29.html

2007年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200712/article_28.html

2008年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200812/article_25.html

2009年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200912/article_25.html

2010年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201012/article_26.html

2011年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201112/article_24.html

2012年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201212/article_26.html

2013年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201312/article_33.html

2014年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201412/article_32.html

2015年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201512/article_31.html
記事へ驚いた ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


2億7000万年前頃にさかのぼる昆虫の葉への擬態

2016/12/28 00:00
 これは12月28日分の記事として掲載しておきます。昆虫の葉への擬態に関する研究(Garrouste et al., 2016)が公表されました。キリギリスの現生種については葉の擬態がよく知られており、それにより捕食者の目の前で身を隠すことができます。これまで、葉の擬態の最古の証拠は中生代(2億5200万〜6600万年前頃)のものであり、キリギリス類自体の起源が、中生代のジュラ紀(2億100万〜1億4500万年前頃)だと考えられていました。この研究は、フランス南東部で出土した、ペルム紀中期となる2億7000万年前頃のキリギリス類の新種(Permotettigonia gallica)化石について報告しています。

 この化石の前翅を分析したところ、葉を擬態する模様があり、キリギリスの現生種のものに非常によく似ていることが明らかになりました。植物の化石記録が充分に得られていないため、このペルム紀のキリギリスが擬態していた植物種を同定することはできませんが、この研究によって得られた知見からは、太古のキリギリスが現生種と同じように捕食者の脅威にさらされており、植物擬態がこれまで考えられていたより古い時代から進化していたことが示唆されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【化石】昆虫の葉への擬態は太古の昔からあった

 葉のように見える昆虫種が約2億7000万年前に生息していたことを明らかにした論文が、今週掲載される。この新知見により葉の擬態を示す化石記録が1億年以上も時代をさかのぼることになった。

 キリギリスの現生種は、葉の擬態がよく知られており、それによって捕食者の目の前で身を隠すことができる。葉の擬態の最古の証拠は、中生代(約2億5,200万〜6,600万年前)のものであり、キリギリス類自体の起源が、中生代のジュラ紀(約2億100万〜1億4,500万年前)だと考えられていた。

 今回、Romain Garrouste、Andre Nelたちの研究チームは、フランス南東部で出土した化石から見つかったキリギリス類の新種Permotettigonia gallicaについて説明している。この化石は約2億7,000万前(ペルム紀中期)のものと年代決定された。その前翅を分析したところ、葉を擬態する模様があり、キリギリスの現生種のものに非常によく似ていることが明らかになった。

 植物の化石記録が十分に得られていないため、このペルム紀のキリギリスがまねていた植物種を同定することができないが、今回の研究によって得られた知見からは、太古のキリギリスが現生種と同じように捕食者の脅威にさらされており、植物擬態がこれまで考えられていたより古い時代から進化していたことが示唆されている。



参考文献:
Garrouste R. et al.(2016): Insect mimicry of plants dates back to the Permian. Nature Communications, 7, 13735.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms13735
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


溪内謙『現代社会主義を考える―ロシア革命から21世紀へ―』第3刷

2016/12/27 00:00
 これは12月27日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より1988年12月に刊行されました。第1刷の刊行は1988年1月です。本書は、社会主義革命の理想と現実の社会主義政治体制との乖離の理由を、冷戦末期(だということは冷戦後だからこそ分かるわけで、本書のはしがきが執筆された1987年12月9日時点ではまだ不透明だったわけですが)の時点で考察し、社会主義の再生を模索しようとしています。著者はソ連政治史の専門家であり、冷戦末期における専門家の認識の一例を知ることができそうなので、読んでみました。

 本書は、社会主義圏の諸国が1980年代後半の時点においてそれぞれ国内に深刻な問題を抱えていることを認めていますが、「近い将来、内部崩壊することはありそうもない」との見通しを提示しています。専門家といえども、近未来の激変を見通すことは難しかったと言うべきなのか、イデオロギー的な問題でもあるので、自らの信念・心情に囚われすぎてしまい、近未来の見通しを誤ったと言うべきなのか、比重はともかくとして、そのどちらの要素もあったと言うべきなのか、私にはなかなか判断の難しいところです。

 本書は、社会主義圏の諸国が1980年代後半の時点において抱える問題の根源として、さらには社会主義の再生を図るにさいして、ナショナリズムの問題が重要だと指摘します。元々、レーニン主義というかレーニンの構想、またソ連の最初期の指導層においても、さらにさかのぼってマルクスの構想においても、「世界革命」というか、ナショナリズムを前提としない社会主義革命が想定されていました。社会主義からさらに共産主義へと進んでいくなかで、ナショナリズムは必要ではないというか、溶解していくものとして構想されていました。

 ところが、10月革命後のヨーロッパにおける「革命の不発」・ソ連(ボリシェビキ勢力)の国際的孤立という状況もあり、スターリンの主張する一国社会主義論が社会主義体制の公的教義として確立していきます。一国社会主義論は、新経済政策などによるソ連体制の安定化もあって、広範な支持を得るようになります。ナショナリズムがソ連社会主義体制に組み込まれたわけです。この時スターリンは、一国社会主義論がレーニン主義を継承するものだ、と強弁というか捏造することにより、一国社会主義論を正当化しました。

 本来、一国社会主義論を正当化するならば、レーニン主義、さらにはマルクス主義にさかのぼって社会主義理論の根本的見直しが必要だったのに、そうはせず逆にレーニンやマルクスに根拠を「見出して」一国社会主義論を正当化したことにより、大きな歪みが生じてしまった、というわけです。本書は、その後の社会主義圏の諸国が抱える問題の根源にこの歪みがあることを指摘し、その歪みを是正することに、社会主義再生の希望を見出しています。それ故に、レーニンに留まらずマルクスに立ち返って社会主義を見直そうとする動向に、本書は好意的なように思われます。

 本書が1980年代後半の社会主義諸国の問題点の根源としてもう一つ指摘しているのは、国家権力の肥大化です。元々、マルクスだけではなくレーニンも、長期的には国家権力の消滅を想定していました。しかし、スターリン体制下での(過酷な弾圧・抑圧を伴う)経済成長もあり、国家権力の存在と社会主義建設とが不可分の如く密接に結びついていきます。社会主義革命前夜〜当初にかけて想定されていた、国家から社会へという流れとは逆に、あたかも社会は国家により無力化されてしまったかのようでした。もっとも、これは大恐慌を経験して以降の資本主義諸国にも見られる問題だ、とも本書は指摘しています。社会主義諸国における、政権交代を想定しない一党独裁制の成立・支配政党と国家権力との一体化も、そうした歴史的文脈で解されます。しかし、スターリン批判後に社会は再び国家にたいして自律性を主張するようになり、そこに社会主義諸国の危機の一因がある、と本書は指摘します。

 上述したことも含めて、本書の見解を改めて簡潔にまとめてみます。社会主義体制の転機はスターリン主義体制の確立と、スターリン死後の「非スターリン化」にあります。スターリン主義体制が工業化などで一定以上の成果を収めたことは確かですが、社会主義体制の発展を大きく阻害し、人々を抑圧していることも否定できません。「非スターリン化」においては、こうしたスターリン主義体制の弊害を除去しようとする試みが続けられてきましたが、確立したスターリン主義体制の枠組みがあまりにも強固なので、(本書執筆時点で)現在進行中のゴルバチョフ政権のペレストロイカも含めて、じゅうぶん成功しているとは言い難いところがあります。社会主義体制の再建には、スターリン主義体制以前の古典、レーニンやマルクスなどにまで立ち返らねばなりませんが、もちろん、それはレーニンやマルクスなどの見解をそのまま(本書執筆時点での)現代社会に適用せよ、ということではありません。

 本書はこのように主張し、上述したように、レーニンやマルクスなどのスターリン主義体制以前の古典に立ち返り、社会主義を再建しようとする試みに好意的です。しかし、レーニンやマルクスなどの見解をそっくりそのまま現代社会に適用するべきではない、と本書は断っているものの、世界革命、少なくともヨーロッパにおける国際的革命や、短期間の強圧的政治指導体制と、その後の国家権力の溶解を想定していたような古典的見解には、本書が想定する以上の大きな欠陥があったのではないか、とも思います。著者が専門家でありながら短期的な予測を大きく外してしまった要因は、社会主義の古典的見解への過大評価にあったのではないか、というのが私の考えです。もっとも、これは冷戦崩壊後四半世紀経過した時点での後知恵かもしれず、私程度の見識で著者を強く批判することはおこがましい、と言うべきかもしれません。

 本書の短期的な未来予測は大きく外れましたが、門外漢の私には、社会主義体制の問題点とその歴史的な形成過程の分析など、現代でも参考になる見解が多かったように思います。本題とは関係ないところで気になったのは、10月革命についての解釈の多様性についての言及で、フランス革命などのブルジョワ革命の解釈にはそうした多様性が見られない、と指摘していることです。フランス革命の評価について1960年代以降に激しい議論が展開された、ということは門外漢の私でも認識しているくらい知られていると思うのですが・・・。それとも、10月革命にたいする評価と比較すると、解釈が大きく異なっているわけではない、ということでしょうか。こうしたフランス革命への評価は、社会主義への思い入れの強さの現れなのかな、と邪推したくなります。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


有馬記念結果

2016/12/26 00:00
 これは12月26日分の記事として掲載しておきます。久々というか、年末になって今年(2016年)初の競馬レース関連の記事の更新となります。昨年でゴールドシップが現役生活を終えたので、今年はずっと競馬をやや冷めた感じで見ていました。アメリカ合衆国で、トラヴァーズSを圧勝したアロゲート(Arrogate)が、BCクラシックでカリフォルニアクローム(California Chrome)との一騎討ちを制したことや、香港国際競争での日本馬の活躍など、ブログに書こうと思ったレース関連の話題はそこそこあるのですが、ゴールドシップの引退で競馬への情熱をかなり失ってしまい、どうもこのブログで言及する気にはなりませんでした。しかし、有馬記念と東京大賞典だけはブログを始めてから毎年必ず取り上げてきたので、今年もこのブログに掲載することにしました。

 今年の有馬記念には、天皇賞(春)とジャパンカップを勝ったキタサンブラックや宝塚記念を勝ったマリアライトや菊花賞を勝ったサトノダイヤモンドなどが出走してきました。豪華絢爛とは言えないでしょうが、GIとしてまずまずの出走馬構成になったと思います。レースは、マルターズアポジーが逃げ、キタサンブラックがやや離れた2番手につけて進みました。キタサンブラックは直線に入って先頭に立ったものの、サトノダイヤモンドがしぶとく伸びてきてキタサンブラックを鼻差交わして勝ちました。サトノダイヤモンドは秋になって3歳世代で最強との評価を確立したと言えるでしょうが、古馬一線級相手にも勝ち、来年は海外での活躍も期待されます。キタサンブラックの敗因は、ゴールドアクターに早めに寄ってこられるなど、ジャパンカップほどには楽な展開にならなかったことだと思います。年度代表馬争いは、これで混沌としてきました。古馬のモーリス・キタサンブラックと3歳のサトノダイヤモンドの争いになるでしょうか。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


絶滅ホモ属から現生人類への適応的遺伝子移入

2016/12/25 00:00
 これは12月25日分の記事として掲載しておきます。絶滅ホモ属から現生人類(Homo sapiens)への適応的遺伝子移入に関する研究(Racimo et al., 2016)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)といった絶滅ホモ属との交雑により獲得した遺伝子のなかには適応度を高めるものもあり、現生人類のアフリカからの拡散に寄与したのではないか、との見解は今では広く認められていると思います。もっとも、絶滅したとはいっても、ネアンデルタール人やデニソワ人のDNAは現代人にわずかながら継承されているわけで、より正確には、ネアンデルタール人やデニソワ人の形態的・遺伝的特徴を一括して有する集団は現在では存在しない、と言うべきかもしれません。

 この研究は、現代人とネアンデルタール人やデニソワ人のゲノムデータを改めて比較し、遺伝子移入と正の選択の両方を含むモデルを検証しています。そこからこの研究は、絶滅ホモ属から現生人類へと継承された適応的遺伝子の候補について議論しています。そうした候補遺伝子のなかには、たとえばTBX15やWARS2があります。以前の研究(Fumagalli et al., 2015)では、これらの遺伝子の多様体がグリーンランドのイヌイットに見られる、と指摘されています。これらの遺伝子は、体脂肪の特定タイプから熱を発生させることで、イヌイットの寒冷適応に貢献しているのではないか、とも言われています。

 この研究は、イヌイットに見られるTBX15やWARS2の配列がデニソワ人とよく合致しており、他の現代人と異なることを指摘しています。この多様体はユーラシアにおいて低〜中頻度で見られ、イヌイットやアメリカ大陸先住民集団においてとくに高頻度で確認されています。そのため、イヌイットに見られるTBX15やWARS2の多様体はデニソワ人に由来するのではないか、と考えられます。また、この領域において、デニソワ人のメチル化パターンはネアンデルタール人や現代人とは大きく異なることも明らかになりました。

 しかしこの研究は、絶滅ホモ属と現生人類との複雑な交雑史を想定せず、単純な1回の交雑モデルを採用したことと、現時点では絶滅ホモ属の高精度なゲノム配列の利用には限界があることから、慎重な見解を提示しています。イヌイットに見られるTBX15やWARS2の多様体をはじめとして、現代人に見られるネアンデルタール人やデニソワ人に由来すると考えられるゲノム領域のなかには、ネアンデルタール人やデニソワ人の亜集団か、まだDNAが解析されていないアフリカもしくはユーラシアの遺伝学的に未知の絶滅ホモ属集団に由来するかもしれない、というわけです。今後、絶滅ホモ属の高精度なゲノム配列の確定がさらに蓄積されていき、研究が進展することを期待しています。


参考文献:
Fumagalli M. et al.(2015): Greenlandic Inuit show genetic signatures of diet and climate adaptation. Science, 349, 6254, 1343-1347.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aab2319

Racimo F. et al.(2016): The Evolution and Functional Impact of Human Deletion Variants Shared with Archaic Hominin Genomes. Molecular Biology and Evolution.
http://dx.doi.org/10.1093/molbev/msw216
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


大河ドラマ『真田丸』の記事のまとめ

2016/12/24 00:00
 これは12月24日分の記事として掲載しておきます。大河ドラマ『真田丸』が終了したので、関連記事をまとめてみました。

2016年の大河ドラマは『真田丸』
http://sicambre.at.webry.info/201405/article_15.html

大河ドラマ『真田丸』の主演は堺雅人氏
http://sicambre.at.webry.info/201406/article_21.html

来年の大河ドラマ『真田丸』の配役発表
http://sicambre.at.webry.info/201507/article_14.html

来年の大河ドラマ『真田丸』の第二次配役発表
http://sicambre.at.webry.info/201509/article_25.html

平山優『真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実』
http://sicambre.at.webry.info/201511/article_25.html

丸島和洋『真田四代と信繁』
http://sicambre.at.webry.info/201512/article_18.html

第1回「船出」
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_11.html

第2回「決断」
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_18.html

第3回「策略」
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_27.html

第4回「挑戦」
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_34.html

第5回「窮地」
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_8.html

第6回「迷走」
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_15.html

第7回「奪回」
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_22.html

第8回「調略」
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_29.html

第9回「駆引」
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_7.html

第10回「妙手」
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_14.html

第11回「祝言」
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_21.html

第12回「人質」
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_29.html

第13回「決戦」
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_4.html

第14回「大坂」
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_11.html

第15回「秀吉」
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_18.html

第16回「表裏」
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_25.html

第17回「再会」
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_2.html

第18回「上洛」
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_9.html

第19回「恋路」
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_16.html

第20回「前兆」
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_23.html

第21回「戦端」
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_30.html

第22回「裁定」
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_6.html

第23回「攻略」
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_13.html

第24回「滅亡」
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_20.html

第25回「別離」
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_27.html

第26回「瓜売」
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_4.html

第27回「不信」
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_11.html

第28回「受難」
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_18.html

第29回「異変」
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_26.html

第30回「黄昏」
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_33.html

第31回「終焉」
http://sicambre.at.webry.info/201608/article_8.html

第32回「応酬」
http://sicambre.at.webry.info/201608/article_15.html

第33回「動乱」
http://sicambre.at.webry.info/201608/article_22.html

第34回「挙兵」
http://sicambre.at.webry.info/201608/article_29.html

第35回「犬伏」
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_5.html

第36回「勝負」
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_12.html

第37回「信之」
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_19.html

第38回「昌幸」
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_27.html

第39回「歳月」
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_3.html

第40回「幸村」
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_10.html

第41回「入城」
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_17.html

平山優『真田信之 父の知略に勝った決断力』
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_23.html

第42回「味方」
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_24.html

第43回「軍議」
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_31.html

第44回「築城」
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_7.html

第45回「完封」
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_14.html

第46回「砲弾」
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_21.html

第47回「反撃」
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_29.html

第48回「引鉄」
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_5.html

第49回「前夜」
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_12.html

第50回(最終回)
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_19.html

全体的な感想
http://sicambre.at.webry.info/201612/article_21.html
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


本村凌二『競馬の世界史 サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』

2016/12/23 00:00
 中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年8月に刊行されました。古代ローマ史専攻の著者は競馬ファンでもあり、『優駿』やスポーツ紙などへの寄稿をたびたび読んだことがありますが、最近ではどうなのでしょうか。本書は、基本的にはサラブレッドの近代競馬を扱っていますが、著者の専攻を反映して、ローマ帝国やギリシアなど古代の競馬についても1章割かれています。もっとも、ローマ帝国における競馬とは、基本的には戦車競走でした。

 近代競馬では、やはり発祥の地であるイギリスについての解説が最も詳しくなっていますが、フランス・アイルランド・イタリア・ドイツ・ハンガリー・アメリカ合衆国・オーストラリア・ニュージーランド・日本など、近代競馬を受容した各国の競馬事情についても簡潔に解説されています。イギリス以外では、フランスについてもやや詳しいのですが、アメリカ合衆国と日本については、とくに詳しく解説されています。やはり、日本は自国ですし、20世紀、とくに後半以降のアメリカ合衆国の競馬への影響力を考えると、妥当なところだと思います。

 本書からは、近代競馬の確立期において、現代から見て競馬がいかに不正満ちていて野蛮だったのか、よく窺えます。近代競馬は各国においてしばしば規制・廃止の対象となりましたが、それも理解できます。そうしたなか、競馬関係者の多大な努力で、より公正な競馬への試行錯誤が続き、現代競馬へと至りました。本書を読むと、過去の競馬関係者の多大な努力が窺え、一人の競馬愛好者として敬意と感謝の念を抱きます。

 本書は、近代競馬の全体的な動向を新書一冊にまとめているため、凝縮された内容になっており、あの名馬が取り上げられていない、といった不満を抱く競馬ファンもいるかもしれませんし、体系的な解説よりも挿話的な記述に偏っている傾向もありますが、近代競馬の大まかな成立過程を把握するのに適した一冊になっていると思います。著者の直接的経験も踏まえられており、全体的になかなか興味深く読めました。今後、何度か再読したいものです。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


ネアンデルタール人による持続的な土地の利用

2016/12/22 00:00
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)による持続的な土地の利用に関する研究(Shaw et al., 2016)が報道されました。この研究が検証したのは、多くの石器や動物の骨が発見されている、英仏海峡に位置するチャンネル諸島のジャージー島にあるラコットドサンブリレード(La Cotte de St Brelade)遺跡です。この研究で検証対象となったのは、おもに海洋酸素同位体ステージ(MIS)7〜6の各層で、温暖期から寒冷期へという大きな気候変動がありました。

 この研究は、石器の密度・石器の再加工・石材から推測される石器の輸送などといった観点からラコテドサンブリラデ遺跡の石器を分析し、遅くとも24万〜4万年前頃まで、ネアンデルタール人が持続的にこの地を利用していた、と指摘します。この研究が強調しているのは、MIS7〜6において、気候が大きく変動し、景観も変わったと考えられるのに、遺跡が持続的に利用され、そのやり方に変化が見られる、ということです。この研究は、ネアンデルタール人が環境変動に適応できていたことと、そこから窺えるネアンデルタール人の認知能力について言及しています。

 具体的には、温暖なMIS7のE層では、石器一式を運ぶ人々が短期的な利用を繰り返している様子が窺えました。MIS7〜6へと移行し寒冷化していくA層では、石器一式が輸送されて再加工され、20kmを超える移動もあったことが窺えます。この移動にどの程度の時間を要したのか、証明不可能ですが、この研究は数日だと推測しています。MIS6の寒冷期となる第5層では、地元の石材が利用され、長期間ラコテドサンブリラデ遺跡周辺にいたことが窺えます。寒冷期には、現在では海面下の広大な陸地が出現しました。

 このように、気候変動とそれに伴う景観の変化にも関わらず、ネアンデルタール人は持続的にラコテドサンブリラデ遺跡とその周辺を利用していた、とこの研究は指摘します。この研究は、こうした持続的な土地の利用とより大きな社会的集団の出現との関連を指摘しており、その考古学的指標として、ルヴァロワ(Levallois)技法の広範な採用といった30万年前頃からの明らかな技術的変化を挙げています。同様に、この頃から、より効率的な選択的狩猟へと移行していったことも指摘されています。

 この研究は、そうした変化の背景として認知能力の発展を想定しており、気候・景観の大きな変化にも関わらず、ラコテドサンブリラデ遺跡で見られるような長期間の持続的な利用が可能となったのは、地図化などの地理的能力の発展があったからではないか、との見解を提示しています。ネアンデルタール人の柔軟性や適応能力は、現生人類(Homo sapiens)との比較で低く見られることが多いようにも思われますが、ネアンデルタール人の系統は大きな気候変動にも関わらずヨーロッパで数十万年存続してきたわけで、少なくとも一定以上の柔軟性や適応能力を有していた、と考えるべきなのでしょう。


参考文献:
Shaw A. et al.(2016): The archaeology of persistent places: the Palaeolithic case of La Cotte de St Brelade, Jersey. Antiquity, 90, 354, 1437–1453.
http://dx.doi.org/10.15184/aqy.2016.212
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


大河ドラマ『真田丸』全体的な感想

2016/12/21 00:00
 本作は、放送開始前から大きな期待が寄せられていたように思います。近年、大河ドラマの視聴率が低迷するなか、人気の高そうな真田ものが大河ドラマの視聴率を回復させるのではないか、と制作者側のみならず、少なからぬ視聴者も期待していたのではないか、と思います。近年の日本社会において、本作の主人公の真田信繁(幸村)は歴史上の人物では人気上位を争うでしょうし、武田家の滅亡直前(本能寺の変の直前でもあります)から豊臣政権と関ヶ原の戦いを経て大坂の陣までは、とくに人気の高い時代だと思います。視聴率を取りやすいとされる三傑のうち、織田信長は序盤だけの登場でしたが、豊臣秀吉・徳川家康は重要人物として描かれました。主演の堺雅人氏は、近年では異例の高視聴率ドラマにも主演していました。

 おそらくは制作者側が強く意識して、高視聴率を取れる要素をそろえてきた感のある本作ですが、視聴率という観点からは、期待外れと言えそうです。おそらく制作者側は、平均視聴率20%前後を狙っていたのではないかと思いますが、平均視聴率は17%を下回り16.6%でした。これは、近年の戦国時代を舞台とした大河ドラマと比較すると、2014年放送の『軍師官兵衛』の15.8%を上回ったものの、2011年放送の『江〜姫たちの戦国〜』の17.7%を下回りました。序盤の視聴率の推移から、『軍師官兵衛』以上『江〜姫たちの戦国〜』以下になりそうだな、と予想していたのですが、その通りの結果となりました。大河ドラマで低視聴率が続けば、大河ドラマ不要論がNHK内でも検討されるようになるかもしれないので、その意味では、本作の視聴率が16.6%に終わったのは残念でした。

 おそらく、本作の平均視聴率は放送開始前の(制作者側や関心のある視聴者層の多くの)期待値ほどではなかったでしょうが、だからといって低水準だったとか、質が低かったとかいうことはなく、過去10年では2012年放送の『平清盛』と2007年放送の『風林火山』に次いで楽しめました。本作の最大の魅力は人物造形で、真田昌幸など主要人物だけではなく、登場場面の少ない人物の多くもしっかりとキャラ設定されており、見せ場が用意されていました。個人的には、石川数正と清韓がとくに強く印象に残りました。主要人物では、やはり昌幸と徳川家康が期待通りの存在感を示してくれました。

 ただ、昌幸が序盤の実質的な主人公とも言えそうな分、主人公の存在感が後半まで薄くなってしまった感は否めません。これは、信繁を主人公としたことから、放送開始前より少なからぬ人が懸念していたことでしょうが、大坂の陣の前まで、信繁には大きな実績がなく、その動向にも不明なところが少なくないので、仕方のないところでしょう。それでも本作は、あくまでも信繁を主人公とし、その視点で話を進めていったように思いますが、その分、主人公の功績横取り・美化・著名人との絡みの(おそらくは)実態以上の増加といった、近年の大河ドラマの主人公にたいするネットでの「大きな声の批判」がかなりのところ当てはまってしまった感は否めません。とはいえ、信繁を主人公とした物語とする以上、かなりのところ仕方がないとは思います。

 娯楽ドラマとしては、深刻な場面と喜劇調の場面とをなかなか上手く混ぜてきて、視聴者を飽きさせないような工夫がなされていたと思います。深い主題が作品全体を貫いていた、というわけではないと思いますが、娯楽ドラマとしてはこれでよいのではないでしょうか。歴史ドラマとしては、近年の研究成果もよく取り入れつつ、中世から近世への移行期がなかなかよく感じられるようになっていた、と思います。中世〜近世移行期にはまっていた十数年前ならば、もっと色々と調べてさらに楽しめたのでしょうが、今は中世〜近世移行期の優先順位が下がってしまったので、感想はここまでにしておきます。
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』594話〜597話

2016/12/20 00:00
594話「十年目の誘拐」6
 新たな指紋認識法の導入により、一部しか容疑者の指紋の残っていなかった、10年前の誘拐事件の容疑者が特定されます。一係は容疑者の行方を追いますが、なかなかつかめません。捜査の最中、10年前に誘拐された少年が再度誘拐され、脅迫電話がかかってきます。少年の両親は離婚調停中で別居していました。10年前の誘拐事件の容疑者は逮捕されましたが、今回の誘拐事件に関してはアリバイがありました。けっきょく、この誘拐事件は、両親を復縁させたいという少年の狂言でした。少年一家とトシさんの家庭とを対比させつつ話が進み、まずまず面白くなっていましたが、やや先の読みやすい話だったのは残念でした。まあ、少なくとも1回は視聴しているはずなので、わずかに記憶が残っていたのかもしれませんが。10年前の誘拐事件の回想で、ボスから長さんやゴリさんの名前が出て、懐かしくもあり、切なくもありました。


595話「マミー激走!」5
 銀行強盗事件が発生して犯人二人は自動車で逃亡し、警察が追跡しますが、犯人たちは高い運転技術で逃げ切ります。最近起きた銀行強盗事件でも、同様に高い運転技術で犯人は逃げ切っていましたが、襲撃した犯人は違っていました。マミーは、運転手は銀行を襲撃した犯人とは別人だと考え、有力な容疑者を見つけますが、逃げられてしまいます。話自体は、さほど面白くなかったのですが、カーアクションは見ごたえがありました。マミーの、というか演じる長谷直美氏の特技を活かし、それに特化した、ということなのでしょう。


596話「戦士よ翔べ!」9
 公園で刑事の江田が西川という男に襲われ、拳銃を奪われた、と証言します。その拳銃で竜神会の人間が相次いで殺害されます。西川は、かつて竜神会の組員の身代わりとなって懲役刑を受けたものの、竜神会に冷遇され、その恨みから犯行に走った、と考えられました。ところが、一係が捜査を進めると、警察に竜神会へ情報を流していた人物がいる疑惑が生じ、江田が真犯人ではないか、と一係は推理します。江田を信じたいボギーですが、西川が殺されてしまい、江田が真犯人だと確信します。ボギーは江田を呼び出して問い質しますが、江田は否定します。ボギーは竜神会の会長から強引に江田との取引場所を聞き出し、江田と対決します。ボギーは窮地に陥りながら、江田を射殺します。話自体は、さほど謎解き要素がなく、ミステリーとしてはあまり楽しめませんでしたが、ボギーの熱いキャラを活かした暴走と江田役の綿引勝彦氏の好演により、見ごたえのある内容になっていました。


597話「戦士よさらば・ボギー最期の日」10
 ついにボギーが殉職となります。ボギーの登場期間は1年7ヶ月ほどで、長いとは言えないのですが、たいへん強く印象に残り、好きなキャラでした。それだけに、たいへん寂しいものです。人物造形の点で成功したレギュラー刑事の一人と言えるでしょう。話の方は、直情径行というボギーのキャラを活かし、謎解き要素もあって面白くなっていました。これまでにもさんざん暴走してきたボギーですから、辞職覚悟での暴走は不自然ではなかった、と思います。本作では二人目となる刺殺での殉職で、この点は、演者の芸歴からしてもマカロニを強く意識したキャラだったのは確かでしょうから、マカロニの最期を踏襲した、ということでしょうか。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2


大河ドラマ『真田丸』第50回(最終回)

2016/12/19 00:00
 これは12月19日分の記事として掲載しておきます。ついに最終回を迎えました。全体的には、これまで描かれてきたキャラと人間関係を活かして、なかなか上手くまとめてきたのではないか、と思います。合戦場面は、幸村(信繁)最大の見せ場ということで、なかなか迫力のあるものになっていました。このために大坂の陣の前までの合戦場面の予算を抑えていたのかもしれません。あまり登場場面の多くない人物もキャラが立っていて、見せ場があるのが本作最大の魅力だと思いますが、今回は大角与左衛門が強く印象に残りました。上手く話を作ってきたと思います。

 全体的にはなかなか楽しめましたが、幸村と家康との対峙は、一種の心象風景と解釈するにしても、やり過ぎだったかな、とも思います。家康と幸村の立ち位置・役割の違いを語るにしても、三谷幸喜氏ならもっと上手くやれたような気もしますが。幸村の最期は明確には描かれず、上手いともずるいとも言えるかもしれません。素直に自害だと考えると、介錯したのは佐助でしたが、幸村と佐助の関係はそれほど深く描かれてきたわけではないので、この点では『真田太平記』と比較して盛り上がりに欠けた感は否めません。ともかく、一年間なかなか楽しみに視聴し続けてきたので、何とも寂しいものです。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2


続きを見る

トップへ

月別リンク

雑記帳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる