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zoom RSS 人類の直立歩行の起源と大型類人猿

<<   作成日時 : 2007/10/13 16:01   >>

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 現存種と絶滅種のあわせて250種以上の哺乳綱(哺乳類)の骨(分析対象とした絶滅種の骨は、2億2千万年前までさかのぼります)を分析し、人類の二足歩行の起源について言及したフィラー博士の研究が発表され、報道されました。この研究では、直立歩行を示唆するような一連の変化が、現生大型類人猿の祖先にとって、標準的だったかもしれない、とされています。つまり、人類と、チンパンジーやゴリラやオランウータンのような大型類人猿の祖先は、人類のような祖先から進化したのではないか、というわけです。

 フィラー博士は、直立姿勢のみに適した形態はかなり古くに現れ、現在のところ確認できる最古の直立姿勢の哺乳綱は、2100万年前頃にウガンダにいたモロトピテクス=ビショッピだ、と指摘しています。またフィラー博士は、フクロテナガザルの赤ん坊は直立二足歩行をするが、それは彼らにとって自然な歩き方なのだ、とも指摘しています。フィラー博士の見解は、近年有力になってきた、人類の直立二足歩行が樹上で始まったとする見解とも整合的です。

 これは、人類の直立二足歩行こそが原始的行動形態なのであって、ゴリラやチンパンジーのようなナックルウォーク(手を丸めて手の甲の側を地面に当てつつ移動する歩き方)は、派生的特徴に基づく行動形態なのだ、ということです。しかし、ゴリラはチンパンジーと人類が分岐する前に三者の共通祖先から分岐していますから、ゴリラとチンパンジーは別々にナックルウォークを発展させていったことになります。


 以上、ざっとフィラー博士の研究についての報道を見てきましたが、直立二足歩行のほうがナックルウォークよりも古いという見解は、革命的なものと言えます。そういう見解もあり得るという噂は聞いたことがありますが、こうして具体的に論じられると、やはり驚きを隠せません。

 直立二足歩行のほうがナックルウォークよりも新しいと考えられたのは、人類にもっとも近縁な現存生物であるチンパンジーとゴリラが、ともにナックルウォークをしているからなのですが、チンパンジーとゴリラは原始的形態を維持しており、人類のほうが特殊化しているのであって、直立二足歩行こそが、人類と他の生物を分かつ最重要の基準なのだ、という大前提(思い込み)がその背景にあったとも言えます。

 もっとも、ナックルウォークが直立二足歩行よりも先んじていたと考えられたのには、じゅうぶんな根拠もありました。分子系統学の進展により、上述したように、人類・チンパンジー・ゴリラの共通祖先からまずゴリラが分岐し、次に人類とチンパンジーが分岐したことが判明しましたが、そうすると、人類とチンパンジーの共通祖先の段階まで、直立二足歩行ではなく、ナックルウォークが行なわれていたと考えるほうが合理的です。そうでないと、上述したように、チンパンジーとゴリラが別々にナックルウォークを発展させていったことになります。

 これは、進化のうえではあまりなさそうなことなのですが、フィラー博士はもちろんそれを承知の上で、直立二足歩行が先行していた、と論じているわけです。もし、フィラー博士の見解が妥当だとすると、人類の再定義も必要になってくるわけで、フィラー博士の研究はたいへん大きな問題を提示したと言えます。また、500万年前よりもさかのぼる、人骨とされている化石(サヘラントロプス=チャデンシスやオロリン=トゥゲネンシスなど)も、現代人とつながるのか、そもそも人類に含まれるのか(チンパンジーよりも現代人に近いのか)、怪しいことになりかねません。

 フィラー博士の研究は、チンパンジーとゴリラで別々にナックルウォークが発展してきたことを意味しますから、私はすぐには全面的に賛同できません。しかし、チンパンジーとゴリラのナックルウォークが、どのように似ていてどのように異なっているのか、形態学・遺伝学から研究が進み、チンパンジーとゴリラのナックルウォークは相似であって相同ではない、との見解が導かれれば、フィラー博士の研究を支持することになるでしょう。ともかく、今後の研究の進展に期待しています。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
『類人猿を直立させた小さな骨―人類進化の謎を解く』
 アーロン=G=フィラー著、日向やよい訳で、東洋経済新報社より2008年に刊行されました。昨年10月13日分の記事で取り上げた論文(Filler.,2007)の著者である、フィラー博士による一般向けの単行本です。直立二足歩行の起源は2000万年以上前までさかのぼる、とするフィラー博士の見解は衝撃的だったのですが、私の学識ではじゅうぶん理解できたとは言いがたいだけに、フィラー博士の見解への理解を深めるには最適の一冊だと思い、迷うことなく読んでみました。 ...続きを見る
雑記帳
2008/11/16 00:01

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 フィラー博士の見解なかなか面白いと思います。結局、ゴリラ、チンパンジー、人間の共通の先祖は直立歩行をしていのであり、その中で、ナックルウォークを発展させた種はゴリラ、チンパンジーへと進化し、直立歩行を維持した種が人間に進化する道を歩んだことになるのでしょうか?
子欲居
2007/10/13 19:19
そうなる可能性もあるとは思います。

ただ、本文中でも述べたように、解決すべき問題があるので、かりに定説になるとしても、ずいぶんと先のことでしょう。

もしフィラー博士の見解が真相に近いとすると、中新世と鮮新世においては、直立二足歩行のヒト上科の生物が多数いて、そのなかのごく一部が現代人へとつながっていたのでしょう。

そうすると、現在のところ人類と分類されている中新世と鮮新世の化石のなかには、現代人の祖先とはかなり遠い関係にあるものも含まれているのかもしれません。
劉公嗣(管理人)
2007/10/14 15:56

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