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zoom RSS アウストラロピテクス属の出現より前の人類進化をめぐる研究動向

<<   作成日時 : 2014/09/09 00:00   >>

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 人類の進化についてもう6年以上、基本的にはこのブログで個別の研究を取り上げてきただけなので、そろそろある程度まとめも進めて、諸見解を整理していこう、と考えています。そうした意図から、まずアメリカ大陸への人類の移住をめぐる研究動向についてまとめ(関連記事)、続いてドマニシ人をめぐる研究動向(関連記事)、ジャワ島のホモ=エレクトスをめぐる研究動向(関連記事)、ホモ=フロレシエンシスめぐる研究動向(関連記事)についてまとめてみました。

 今回は、アウストラロピテクス属の出現より前、年代でいうと430万年前頃よりもさかのぼる時期の人類進化をめぐる研究動向についてまとめてみます。基本的には、6年以上前のまとめ(関連記事)以降に、このブログで取り上げた研究を取り上げることにします。この問題に関する基本的な情報については、日本語翻訳本では、2年前に刊行された『人類の原点を求めて』(関連記事)や7年前に刊行された『最初のヒト』(関連記事)が今でも有効だと思います。


 20世紀末から21世紀初頭の数年間に、最古の人類候補の化石が相次いで発表され、人類の起源が一気にさかのぼる可能性が出てきました。アフリカ中央のチャドで発見されたサヘラントロプス=チャデンシス、アフリカ東部のケニアで発見されたオロリン=トゥゲネンシス(600万〜570万年前頃)、アフリカ東部のエチオピアで発見されたアルディピテクス=カダバ(570万〜530万年前頃)です(関連記事)。チャデンシスの推定年代に関しては、当初700万〜600万年前頃とされていたものの、理化学的な年代測定ができなかったので、やや曖昧だったのですが、その後、ベリリウム10法により704万±18万年前頃と推定されています(関連記事)。

 これら最古の人類候補の化石が、本当に人類の系統に属するのか、相互に、また後の人類(候補の)化石とどのような系統関係にあるのか、という問題については、化石の少なさもあり、まだ共通認識は形成されていない、というのが現状でしょう。これらは人類系統に近いものの、おそらくは別系統だろう、との見解も提示されています(関連記事)。この問題は、人類の定義とも関わってきます。人類と他の現生および化石霊長目を分かつ最大の特徴は、(恒常的な)直立二足歩行の有無とされているので、直立二足歩行の痕跡を示す霊長目化石は人類の系統とみなされる傾向にあります。

 ただ、人類と大型類人猿を含むヒト上科において、2000万年以上前のモロトピテクス=ビショッピ以降、二足歩行はありふれたものであり、移動に関する形態について、人間が原始的な形態を保持しているのにたいして、ゴリラやチンパンジーのほうがむしろ特殊化したのだ、との見解もあります(関連記事)。この見解では、ゴリラとチンパンジーに見られるナックルウォークは相同ではなく相似であり、平行進化ということになります。

 これはかなり特殊な見解とも言えそうですが、人類系統と考えられてきた中新世〜鮮新世の二足歩行のヒト上科化石が多数発見されているのにたいして、チンパンジーの祖先と考えられるナックルウォークを行なっていた生物の化石が50万年前頃までくだらないと発見されないという謎を、より合理的に説明することができます。さらに、450万〜430万年前頃のアルディピテクス=ラミダスに関する近年の詳細な研究(関連記事)からも、人類・チンパンジー・ゴリラの最終共通祖先の歩行形態はナックルウォークだっただろう、とする有力説には疑問が投げかけられています。

 このラミダスに関する詳細な研究は、2009年の『サイエンス』の科学的ブレークスルートップ10の1位に選ばれるくらいの衝撃をもたらしました(関連記事)。ラミダスに関する詳細な研究では、ナックルウォークの痕跡が見当たりませんでした。このことから、最初期の人類の歩行形態としてナックルウォークを想定してきたじゅうらいの有力説の見直しが提言されています(関連記事)。そうすると、人類・チンパンジー・ゴリラの最終共通祖先の歩行形態は(後の人類ほど特化していないにしても)二足歩行で、チンパンジーとゴリラはそれぞれ独自にナックルウォークへと移行した、という可能性も考えられます。

 初期人類(候補)の化石がまだ少ないことは否定できないので、人類がどのように進化してきたのか、曖昧なところが多々残っているのが現状です。新たな化石の発見が望まれますが、そう簡単に発見できるものではありません。そこで、現代の人類と類人猿のDNA解析・比較が、人類の進化史を推定するうえで重要な手がかりとなります。これに関しては、すでにかなりの研究蓄積があると言えるでしょう。人類の系統とチンパンジーの系統の分岐年代については、500万年前頃というのが分子遺伝学での長い間の有力説でした(関連記事)。

 この年代は、ラミダスが最古の人類とされていた頃までは形質人類学と整合的でしたが、上述したように、人類候補の化石の年代が700万年前頃までさかのぼると、化石記録と分子遺伝学での推定年代との違いが問題視されるようになりました。その後、分子遺伝学でも人類の系統とチンパンジーの系統の分岐年代がさかのぼる傾向にあり、近年では、人類の系統とチンパンジーの系統の間で約1345万〜678万年前頃と推定する見解も提示されています(関連記事)。この見解では、人類・チンパンジーの系統とゴリラの系統の間の推定分岐年代は2000万〜831万年前頃となります。

 チンパンジーと現代人とでは、Y染色体に大きな違いがあることが明らかになっています(関連記事)。チンパンジーの精巣における細胞分裂速度は人間と比較してはるかに速いため、精子に突然変異が起こりやすく、結果としてより多くの変異が子孫に受け継がれるのではないか、とも指摘されています(関連記事)。これは、チンパンジーが乱婚社会を形成していることと関連しているのでしょう。古生物の社会構造を推定するのは難しいのですが、チンパンジーの系統がかなり長期間にわたって乱婚社会を維持してきた一方で、人類の系統ではそうではなかった可能性が高いのでしょう。

 初期人類(候補)の生息環境についても、研究が蓄積されているようです。チャデンシスの生息環境は、草原から森林地帯までさまざまな生息環境を含むモザイク状だった、と推定されています(関連記事)。現時点では、人類は樹上で直立二足歩行を始めたものの、直立二足歩行の定着・特化は森林環境でのみ進展したのではなく、草原環境での活動にもかなりの影響を受けたのではないか、と思われます。初めて樹上生活とほぼ完全に決別した人類は、ホモ=エレクトスである可能性が高そうです。

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