雑記帳

アクセスカウンタ

zoom RSS 日暮泰男「ネアンデルタール人の運動能力は推定できるか?」

<<   作成日時 : 2015/02/08 00:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 西秋良宏編『ホモ・サピエンスと旧人2─考古学からみた学習』所収の論文です(関連記事)。本論文は、化石記録や現代人の身体・運動能力に関するデータから、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の運動能力、とくに投擲能力を推定するための方法論・データを提示しています。投槍や弓矢など飛び道具の有無がネアンデルタール人と現生人類(Homo sapiens)の運命を分けた、とする見解も提示されているので、ネアンデルタール人の投擲能力を推定することは重要と言えるでしょう。

 ネアンデルタール人の体格は、現代人や初期現生人類よりもがっしりとしていたようです。そのため、ネアンデルタール人は現生人類よりも「燃費の悪い」人類種であり、寒冷地帯に居住していたということもあって、1日につき必要な推定カロリー量は現生人類よりも多かったようです。ただ本論文は、これがネアンデルタール人と現生人類との運命を分けた要因になったのかというと、まだ断定できる段階ではない、と慎重です。

 上述したように、ネアンデルタール人の絶滅と現生人類の繁栄の要因として、飛び道具を想定する見解が主張されています。本論文は、ネアンデルタール人も投槍を使っていたとしても、現生人類が投槍器のような効果を高める道具を使っていたら、投槍の効果に差が生じたかもしれない、と指摘します。しかし本論文は、そうした投槍器の出現がネアンデルタール人の絶滅後であれば「交替劇」の要因にはならないし、ネアンデルタール人の投擲能力が現生人類よりも優れていれば、現生人類が投槍器を用いたとしても、現生人類が狩猟効率でネアンデルタール人よりも優れていたとは限らない、と注意を喚起しています。

 また本論文は、現代の槍投げ競技における体格と投擲能力の関連といった研究・データは、ネアンデルタール人の投擲能力の解明に役立つとはしても、遠くに投げることのみを目的とした現代の競技に関する研究・データを、ネアンデルタール人の狩猟にそのまま適用することはできないし、投擲技術の違いが競技結果に大きく影響するとして、慎重な姿勢を示します。それでも、現代人の投槍の実験が狩猟効果の解明に貢献することは期待されます。

 本論文は、ホモ属ではエレクトス(Homo erectus)以降の人類に現代人と同程度の投擲能力が備わっていた、と指摘する研究を引用しています(関連記事)。そうすると、ネアンデルタール人も現代人と同程度の投擲能力を有していた可能性が高そうです。なお、おそらく本論文の脱稿後に公表された研究では、ネアンデルタール人(もしくはネアンデルタール人の祖先かその近縁集団)が日常的に投擲を行なっていた可能性が指摘されています(関連記事)。ネアンデルタール人が何を対象として何を投げていたのか、またどこまで一般化できるか分かりませんが、ネアンデルタール人の投擲能力・行動に関して大いに注目される研究だと思います。


参考文献:
日暮泰男(2014)「ネアンデルタール人の運動能力は推定できるか?」西秋良宏編『ホモ・サピエンスと旧人2─考古学からみた学習』(六一書房)P135-149

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
日暮泰男「ネアンデルタール人の運動能力は推定できるか?」 雑記帳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる