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zoom RSS 現代人のゲノムに確認されるデニソワ人およびネアンデルタール人との交雑の痕跡

<<   作成日時 : 2016/03/30 00:25   >>

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 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のデニソワ人(Denisovan)由来のゲノム領域が、現代人の各地域集団にどのような割合で継承されているのか、世界規模での全体像を検証した研究(Sankararaman et al., 2016)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。今では、現代人のゲノムにデニソワ人およびネアンデルタール人由来の領域が確認されることは広く認められています。

 しかし、その割合は地域間では大きく異なります。アフリカ(ここではサハラ砂漠以南を指します)ではデニソワ人およびネアンデルタール人由来のゲノム領域がほとんど確認されていません。一方、非アフリカ系現代人のゲノムでは、おおむね似たような割合でネアンデルタール人由来の領域が確認されています。しかし、おおむね似たような割合とはいっても、地域間で有意な差が確認されています。デニソワ人由来のゲノム領域に関しては、オセアニアで突出して高く、東アジアでわずかながら確認される一方で、ヨーロッパではほとんど確認されていません。

 本論文は、120の地域的に多様な現代人集団における257人の高精度のゲノム配列を用いて、現代人の各地域集団に見られるデニソワ人とネアンデルタール人由来のゲノム領域の違いについて検証しています。どの地域集団についても言えるのが、常染色体よりもX染色体の方で、デニソワ人およびネアンデルタール人由来のゲノム領域の割合がずっと少ないことです。たとえば、ネアンデルタール人に関しては、西ユーラシアでは、常染色体で1.06±0.12%、X染色体で0.18±0.19%となり、東アジアでは、常染色体で1.39±0.11%、X染色体で0.32±0.28%となります。デニソワ人に関しては、オセアニアでは、常染色体で0.85±0.43%、X染色体で0.18±0.17%となり、東アジアでは、常染色体で0.06±0.02%、X染色体で0.00±0.01%となります。

 このように、現代人のX染色体において現生人類(Homo sapiens)ではない系統由来のゲノム領域の割合が低いことは、ネアンデルタール人に関して以前より知られていました(関連記事)。さらにその研究では、X染色体だけではなく、精巣に関わる遺伝子領域でも、ネアンデルタール人由来のものが現代人において排除されていることが指摘されていました。デニソワ人に関しても同様に、X染色体と精巣に関わる遺伝子領域では、現代人にデニソワ人の痕跡がひじょうに少ないと確認されました。そのため本論文は、50万年以上前に分岐した人間集団の間での交雑では、男性の繁殖力が減少することが一般的特徴だったかもしれない、と指摘しています。

 もちろん、現代人のゲノムにデニソワ人およびネアンデルタール人に由来すると推定される領域が確認されているわけですから、デニソワ人やネアンデルタール人から現生人類に継承された遺伝子には、(少なくともある時点では)有益だったものもあるでしょう(関連記事)。これにより、現生人類は新たに進出した地域での適応度を高め、世界に拡散することができたのではないか、というわけです。有害な遺伝子が負の選択により排除された一方で、有益な遺伝子は継承されたと考えられます。もっとも、有害と有益という観点も固定的なものではなく、環境変動に伴う流動的なものでもありますが(関連記事)。

 本論文は、現生人類とデニソワ人との交雑の年代も推定しています。これまで、ネアンデルタール人と現生人類との交雑の年代については推定されてきましたが(関連記事)、デニソワ人と現生人類との交雑の推定年代の研究は進展していませんでした。本論文は、デニソワ人由来のゲノム領域の断片の平均的サイズと、ネアンデルタール人由来のそれとを比較し、前者が後者より大きいことから、デニソワ人と現生人類との交雑の年代は、ネアンデルタール人とまだ各地域集団に分岐していない出アフリカ現生人類集団との交雑から約1000世代後の、54000〜44000年前頃と推定しています。

 本論文はまた、現代人の各地域集団におけるデニソワ人由来のゲノム領域の割合について、新たな発見を報告しています。これまで、上述したように、デニソワ人由来のゲノム領域に関しては、オセアニアで突出して高く、東アジア(の一部)でわずかながら確認されることが報告されていましたが、本論文では、南アジア(の一部)においても、デニソワ人由来のゲノム領域の割合が東アジアの一部と同程度であることを発見しました。

 南アジアにおいて、デニソワ人由来のゲノム領域の割合がとくに高い集団はシェルパです。そのため、これはチベット人でも見られる、デニソワ人由来の高地適応に関連した遺伝子EPAS1(関連記事)が正の選択により継承されてきた結果ではないか、とも考えられます。しかし本論文は、EPAS1のある2番染色体以外でも、シェルパのゲノムにおけるデニソワ人由来の領域の割合が高めであることを指摘し、現生人類とデニソワ人との交雑が複数回起きた可能性を指摘しています。

 南アジア(の一部)においても、デニソワ人由来のゲノム領域の割合が東アジアの一部と同程度であることは、デニソワ人と現生人類とが交雑した場所と、デニソワ人の生息範囲を推測する手がかりとなりそうなので、注目されます。これまで、デニソワ人と現生人類との交雑の場所に関しては、東アジアや東南アジアが有力視されていたと思いますが(関連記事)、それ以外の場所も考慮する必要がありそうです。この研究でも改めて示唆されましたが、ホモ属の進化は異なる系統間の交雑が一定頻度以上起きた複雑なものだったのでしょう。


参考文献:
Sankararaman S. et al.(2016): The Combined Landscape of Denisovan and Neanderthal Ancestry in Present-Day Humans. Current Biology, 26, 9, 1241–1247.
http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2016.03.037

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