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zoom RSS 島泰三『ヒト―異端のサルの1億年』

<<   作成日時 : 2016/09/11 00:00   >>

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 これは9月11日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年8月に刊行されました。霊長類とその下位区分である類人猿の進化史のなかに人類の進化を位置づけているのが本書の特徴で、大規模な環境変動を重視していることとあわせて、広い視野での考察になっていると思います。私は霊長類・類人猿の進化に疎いので、この点では有益でした。しかし、類人猿の起源地はアフリカではない、との本書の見解は一般的ではないと思います。この点については、今後も調べていく必要があります。

 現代人の祖先系統とチンパンジーの系統とが分岐した後の人類の進化史については、率直に言って本書の見解にはかなり疑問が残りました。そのすべてに突っ込みを入れる気力・見識は今の私にはとてもないので、いくつか気になった本書の見解について以下に述べていきます。

 アウストラロピテクス属の繁栄は骨食によって支えられていた、と本書は主張します。確かに、アウストラロピテクス属は動物の骨を食べていたでしょうが、それが主食だったかというと、疑問が残ります。本書は、形態的特徴から食性を推測できる、という前提で議論を進めていますが、確かにそれは有効な方法論ではあるものの、高度に派生した形態が特化した食性を反映しているとは限りません(関連記事)。また、本書はアウストラロピテクス属でもアファレンシス(Australopithecus afarensis)の性差は大きかった、との見解を採用していますが、否定的な見解も提示されています(関連記事)。

 ホモ属の進化では、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の石器文化は長期間ほとんど変わらなかった、とされていますが、この見解には疑問が残ります(関連記事)。また、ネアンデルタール人の推定絶滅年代を旧説に基づいて3万年前頃としていることも、疑問が残ります(関連記事)。

 人類がいつ「裸」になった(薄毛化した)のか、という問題は著者が長年論じてきたことで、本書でも、人類進化史で現生人類(Homo sapiens)において初めて「裸」になったとされ、その意義が強調されています。しかし、人類が「裸」になった時期については、遅くとも100万年以上前と考えるのが妥当なように思われます(関連記事)。現生人類が人類史において初めて海産資源を食し、それが現生人類の認知能力の向上の一因になった、との見解も疑問で、ネアンデルタール人も海産資源を食していたことが明らかになっています(関連記事)。

 日本列島の人類史について、竹岡俊樹氏の見解(関連記事)に依拠して、現生人類ではない系統の人類が存在した、との見解にも疑問が残ります。現代人のような言語の起源について、イヌの家畜化との関連を重視する見解も、オーストラリア大陸には現生人類が移住してから少なくとも数万年以上経過してイヌが持ち込まれたことを考えると、かなり疑問です。縄文時代を称揚するかのような見解にも疑問が残ります。この他にもいろいろと疑問が残るのですが、とりあえずここまでにしておきます。


参考文献:
島泰三(2016)『ヒト―異端のサルの1億年』(中央公論新社)

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