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zoom RSS 2016年の古人類学界

<<   作成日時 : 2016/12/29 00:00   >>

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 これは12月29日分の記事として掲載しておきます。あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2016年)も古人類学界について振り返っていくことにします。今年の動向を私の関心に沿って整理すると、以下のようになります。

(1)今年も着実に進展した絶滅ホモ属のDNA解析。

(2)現生人類の古代DNAや現代人・現生霊長類のDNA解析も着実に進展。

(3)フロレシエンシスに関する研究の大きな進展。


(1)ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)など現生人類(Homo sapiens)ではない系統の人類である絶滅ホモ属のDNAの解析および現代人との比較は、近年目覚ましい成果をあげている分野であり、今年も注目すべき研究が多数見られました。このブログだけでも今年多くの研究を取り上げてきたので、正直なところ、それらだけでもよく整理できていないような状況です。そこで、数行程度の簡単な内容紹介で関連記事を掲載していき、今後の整理に役立てようと考えています。この問題に関しては、今年公表された総説的な論文がたいへん有益だと思います。
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_21.html

 何といっても注目されるのは、すでにミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析に成功していたイベリア半島北部の43万年前頃の人骨の核DNAの解析結果が公表されたことで、これにより、現生人類アフリカ単一起源説のなかでも完全置換説が優勢だった頃の想定よりもずっと人類の進化が複雑だった、と改めて示されたように思います。
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_17.html

 現生人類と絶滅ホモ属との交雑については、どのような遺伝子が適応度を上げたのか、あるいは下げたのか、という観点からの研究が今年も盛んでした。絶滅ホモ属由来の免疫関連遺伝子は、現生人類がアフリカより世界各地に拡散していく過程で、現生人類にとって新たな土地での適応度を高めることがあったようです。現生人類の急速な拡散の一因として、絶滅ホモ属由来の免疫関連遺伝子は無視できないでしょう。
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_9.html
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_22.html
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_13.html

 一方、絶滅ホモ属由来の遺伝子が現生人類の適応度を下げることも指摘されています。こうした遺伝子が現代にまで残っている一因として、たとえば更新世には無害だったのに、農業革命や産業革命などによる社会の変化で有害になったことが挙げられています。
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_13.html
また、ネアンデルタール人のY染色体の遺伝子に関しても、適応度を下げる可能性があり、それがネアンデルタール人由来のY染色体が現代人に見られない要因になっている、とも指摘されています。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_9.html

 現代人のゲノムに絶滅ホモ属由来の領域が少ない理由としては、ネアンデルタール人の人口規模が現生人類よりも小さかったことが挙げられています。小規模な集団では大規模な集団よりも近親交配の頻度が高まり、弱い有害な(適応度を下げる)遺伝的変異を除去する選択圧が弱まる傾向にある、というわけです。
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_8.html
http://sicambre.at.webry.info/201611/article_10.html


 現代人の各地域集団間で絶滅ホモ属由来のゲノム領域の割合がどの程度異なっているのか、という観点からの研究が今年も盛んでした。こうした地域間の違いから、現生人類の拡散と絶滅ホモ属との交雑の複雑な様相が明らかになりつつあり、交雑の回数・地域などの点で、まだ確定した説があるとは言い難い状況です。
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_19.html
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_31.html

 ネアンデルタール人と現生人類との交雑の推定年代がさかのぼる可能性を指摘した研究も大いに注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_19.html

 ただ、絶滅ホモ属の非アフリカ系現代人への遺伝的影響については、過大評価されているのではないか、との見解も提示されています。
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_26.html

 絶滅ホモ属のDNAの解析から直接明らかになるわけではありませんが、現生人類と絶滅ホモ属との間で、細菌・ウイルス感染があったことを指摘した研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_13.html
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_19.html


(2)現生人類の古代DNAや現代人・現生霊長類のDNA解析も着実に進展しており、このブログだけでも今年多くの研究を取り上げてきました。やはりこちらも、正直なところ、よく整理できていないような状況であり、数行程度の簡単な内容紹介で関連記事を掲載していき、今後の整理に役立てようと考えています。

 現生人類の古代DNAに関しては、研究者の密度と気候の問題から、やはりヨーロッパが中心になっているように思われ、西アジアなども含めて西ユーラシアまで対象が拡大されている研究も多いようです。ブリテン島の古代DNAからは、住民の遺伝的構成の変遷とローマ帝国時代の人的流動性が指摘されています。
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_24.html

 ヨーロッパにおける更新世から完新世にかけての現生人類の遺伝的構成の変遷や、
http://sicambre.at.webry.info/201605/article_4.html
ヨーロッパも視野に入れつつ、西アジアの初期農耕民の地域間の遺伝的違いを指摘した研究が注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_16.html
http://sicambre.at.webry.info/201607/article_30.html

 オーストラリア大陸の先住民に関する遺伝学的研究も進展しており、現代の先住民のY染色体の分析や、
http://sicambre.at.webry.info/201603/article_2.html
ヨーロッパ勢力侵出前の先住民のmtDNA分析や、
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_16.html
パプア人も含めての高精度のゲノム配列結果が公表されました。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_23.html
また、オーストラリア先住民も関係してきそうな問題として、最初のリモートオセアニア人集団の遺伝的構成の研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_5.html

 アメリカ大陸先住民のDNA研究に関しては、現代パナマ人に見られるヨーロッパ系の遺伝的痕跡に関する研究や、
http://sicambre.at.webry.info/201602/article_25.html
先コロンブス期アメリカ大陸の住民のmtDNA分析を取り上げました。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_5.html

 現代人のゲノム解析から、現生人類の出アフリカの回数について検証した研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_24.html

 縄文人の核DNA解析や、
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_3.html
チンパンジーとボノボの交雑の可能性を指摘した研究も注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201610/article_29.html


(3)インドネシア領フローレス島の更新世ホモ属であるフロレシエンシス(Homo floresiensis)の研究は大いに進展し、このブログでも暫定的にまとめてみました。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_16.html

 まず、フロレシエンシスの年代がじゅうらいよりも繰り上がりました。
http://sicambre.at.webry.info/201604/article_1.html

 フロレシエンシスの起源に関わる問題では、フローレス島で中期更新世の人類化石が発見されました。
http://sicambre.at.webry.info/201606/article_10.html

 フロレシエンシスの起源との関連では、フロレシエンシスの起源地ともされるスラウェシ島における10万年以上前の石器の発見が注目されます。
http://sicambre.at.webry.info/201601/article_15.html

 フロレシエンシスの絶滅との関連では、現生人類の関与が注目され、フローレス島で46000年前頃の現生人類の歯が発見されました。
http://sicambre.at.webry.info/201609/article_25.html


 この他にも取り上げるべき研究は多くあるはずですが、読もうと思っていながらまだ読んでいない論文もかなり多く、古人類学の最新の動向になかなか追いつけていないのが現状で、重要な研究でありながら把握しきれていないものも多いのではないか、と思います。この状況を劇的に改善させられる自信はまったくないので、せめて今年並には本・論文を読み、地道に最新の動向を追いかけていこう、と考えています。なお、過去の回顧記事は以下の通りです。



2006年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200612/article_27.html
http://sicambre.at.webry.info/200612/article_28.html
http://sicambre.at.webry.info/200612/article_29.html

2007年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200712/article_28.html

2008年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200812/article_25.html

2009年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/200912/article_25.html

2010年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201012/article_26.html

2011年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201112/article_24.html

2012年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201212/article_26.html

2013年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201312/article_33.html

2014年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201412/article_32.html

2015年の古人類学界の回顧
http://sicambre.at.webry.info/201512/article_31.html

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