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zoom RSS ネアンデルタール人の接着技術

<<   作成日時 : 2017/09/02 00:00   >>

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 これは9月2日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の接着技術に関する研究(Kozowyk et al., 2017)が報道されました。骨や石に柄をつけて武器や道具を作り出す着柄技術は、ネアンデルタール人と初期現生人類(Homo sapiens)の認知能力と技術力に関する論争の焦点になっています。着柄技術は30万〜20万年前頃より確認されており、50万年前頃までさかのぼる可能性もあります。

 着柄にタールなどの接着剤を用いた証拠は、ヨーロッパではドイツの8万〜4万年前頃の遺跡と12万年前頃の遺跡で確認されています。これらはネアンデルタール人の所産と考えられています。一方、アフリカにおいては、接着剤の使用は7万年前頃までさかのぼります。しかし、更新世において陶器を使わずにタールがどのように製造されたのか、まだ明らかになっていませんでした。これまでにも無陶器技術または旧石器時代の技術を用いてタールを製造する実験が行なわれてきましたが、着柄を効果的に行なうにはタールの収量が少なすぎる、と指摘されていました。

 この研究は、実験考古学的手法により、ネアンデルタール人がどのようにタールを製造したのか、またそれはどれだけ効率的だったのか、ということを検証しています。この研究は、ネアンデルタール人に利用可能な道具・技術を・材料用いて、収量(得られたタールの量とそれに要する時間およびエネルギーの費用)・温度(タール生成のために必要な温度制御の程度)・複雑さ(タール生成のための手順数)の3観点から、ネアンデルタール人のタール生産を検証しています。

 その結果、ネアンデルタール人が存在した中部旧石器時代のヨーロッパで利用可能なカバノキの樹皮のロールを熱い灰の中に入れることで、乾留により有用な量のタールを製造ができる、と証明されました。そのさい、容器は不要で、火の温度の制御はさほど重要ではないことも明らかになりました。ネアンデルタール人の利用可能な道具・技術・材料だけで有用な量のタールを得られる、というわけです。中部旧石器時代にはすでに、ネアンデルタール人は木も火も使用していました。また、ネアンデルタール人はカバノキの樹皮からタールを得るさいに、当初は簡単な方法を用い、後に増量のため複雑な方法を開発した可能性も指摘されています。

 ただ、こうした手法ではタールを用いた考古学的痕跡が現代までほとんど残らないので、ネアンデルタール人が着柄に接着剤を用いたのがいつからなのか、証明は難しくなっています。遅くとも20万年前頃以降、アフリカには現生人類(Homo sapiens)が出現していましたが、接着剤使用の証拠は、現時点ではアフリカよりもヨーロッパの方が早いことになります。この一因として、カバノキの樹皮がタール生産に適しており、アフリカには存在しないことが挙げられています。この研究は、ネアンデルタール人の認知能力が、現生人類アフリカ単一起源説でも完全置換説が圧倒的に優勢だった頃(1997〜2010年頃)の想定よりも高かったことを改めて証明している、と言えるでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【考古学】ネアンデルタール人によるタール製造プロセスの進化

 ネアンデルタール人がタールを製造する能力が進化した過程について1つの仮説を示した論文が、今週掲載される。

 柄付け(骨や石に柄をつけて武器や道具を作り出す作業)に用いられる接着剤の製造と使用が、ネアンデルタール人と初期現生人類の認知能力と技術力に関する論争の焦点になっている。接着剤は、現在知られているものの中で最初期の変革技術の1つであり、タールの製造には、少なくとも20万年の歴史がある。しかし、更新世(約258万8000年前から1万1700年前まで)に陶器を使わずにタールがどのように製造されたのかは明らかになっていない。これまでにも無陶器技術又は旧石器時代の技術を用いてタールを製造する実験的な試みがあったが、道具の柄付けを効果的に行うにはタールの収量が少なすぎた。

 今回、Paul Kozowykたちの研究グループは、旧石器時代のものと考えられる技術の数種類のバリエーションを用いて、カバノキの樹皮の乾留によってタールを製造する試験を行った。その結果、ネアンデルタール人が生きていた時代に適合した無陶器技術によってタールを製造することができ、樹皮のロールを熱い灰の中に入れる方法によって小型の道具の柄付けに十分な量のタールが得られることが明らかになった。そして、この製造プロセスを数回繰り返すことで考古学的記録に示される収量を達成できると考えられている。Kozowykたちは、タール製造の進化過程を示し、製造プロセスの改良によってタールの収量効率が高まったという仮説を提示している。この仮説は、中期旧石器時代のネアンデルタール人が利用できた技術と資源とも矛盾しない。

 今後も研究を続けてタール塊の組成と性質を調べることは、タール技術の開発史を詳しく解明する上で役立つ可能性がある。



参考文献:
Kozowyk PRB. et al.(2017): Experimental methods for the Palaeolithic dry distillation of birch bark: implications for the origin and development of Neandertal adhesive technology. Scientific Reports, 7, 8033.
http://dx.doi.org/10.1038/s41598-017-08106-7

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