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zoom RSS 地域により異なる新石器時代以降の不平等化の進展(追記有)

<<   作成日時 : 2017/11/17 00:00   >>

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 これは11月17日分の記事として掲載しておきます。新石器時代以降の地域間の不平等化の進展に関する研究(Kohler et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、北アメリカ・メソアメリカ・ユーラシアを対象として、考古学的遺跡からジニ係数を推定して富の不平等化の進展の指標とし、新石器時代以降の地域間の不平等化の進展の違いと、その要因を検証しています。

 一般的に、ジニ係数は狩猟採集社会では低く、農耕が発達していくと高くなります。遊動性の狩猟採集社会では、世代を超えて富を蓄積していくことが困難だからです。大まかなジニ係数は、狩猟採集社会では0.17、規模が小さく素朴な栽培段階の社会では0.27、大規模で本格的な農耕社会では0.35となります。狩猟採集社会よりも農業社会の方が不平等性は高い、というわけです。しかし、この研究は、農耕社会でも、ユーラシアと北アメリカおよびメソアメリカでは、不平等化が異なることを明らかにしています。ユーラシアでは不平等化が上昇していったのにたいして、北アメリカおよびメソアメリカでは不平等化は停滞していた、というわけです。

 この研究はその要因として、大型動物の家畜化を挙げています。ユーラシア大陸ではウマやウシなど大型動物の家畜化が発達したのにたいして、アメリカ大陸では大型動物の家畜化はほとんど進みませんでした。大型動物の家畜化により、耕作地の拡大と新たな土地への進出が進み、不平等化が進展したのではないか、との見解をこの研究は提示しています。また、ユーラシアにおける大型動物の家畜化、とくにウマの場合、移動・軍事での利用により、アメリカ大陸ではヨーロッパ勢力の侵出前には困難だっただろう、大規模な政治組織の結成・維持を可能としたことも、不平等化を進展させたのではないか、と指摘されています。富の不平等は一般的に、植物の栽培化と動物の家畜化および増大する社会政治的規模と共に上昇していく、というわけです。

 この研究は、不平等な社会の危険性を指摘しています。不平等な社会では健康状態が悪化する一方で、平等な社会では平均寿命や社会への信頼性や他者への関心が高く、他者を助けようという利他的な意欲を有しています。しかしこの研究は、社会の平等化がたいへん困難であることも指摘しています。社会の平等化は多くの場合、伝染病・革命・大規模な戦争・国家崩壊により実現するからです。社会の平等化という観点からの研究は、さらに対象地域を拡大して進展していくことが期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【考古学】富の不平等はどのように生まれたのか

 新石器時代以降の旧世界の社会は、新世界の社会よりも富の不平等が拡大していたことを明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究は、この新知見を植物の栽培化と動物の家畜化が盛んになったことと関連付けており、不平等の起源を解明する上で役立つ。

 今回、Timothy Kohlerたちの研究グループは、家屋の大きさ(面積)を富の代理指標として用いて、考古学上明らかになっている北米とヨーロッパ、アジアの63の社会とアフリカの2つの社会の数千軒の家屋を分析した。これらの社会によって、狩猟採集民の集落、古代都市など、過去1万1000年間にわたるさまざまな経済システムが網羅されている。富の不平等は時とともに拡大し、この点は予想どおりだったが、北米よりもユーラシアではるかに顕著に拡大したことは予想外だった。非常に都会的な新世界の社会でも家屋は同じような大きさだった。

 こうした貧富の格差が生じた理由について、Kohlerたちは、大型の家畜(ウマ、ウシ、ブタなど)がユーラシアに存在し、北米にほとんど存在していなかったことを挙げる。これらの家畜は、畑を耕し、物資を輸送するために利用でき、戦闘時の乗り物として使える可能性があるため、エリート騎馬兵士の養成につながり、その結果、ユーラシアの社会が領地を拡大し、より多くの富を獲得できたと考えられている。



参考文献:
Kohler TA. et al.(2017): Greater post-Neolithic wealth disparities in Eurasia than in North America and Mesoamerica. Nature, 551, 7682, 619–622.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24646


追記(2017年11月30日)
 本論文が『ネイチャー』本誌に掲載されたので、以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。



考古学:ユーラシアでの新石器時代以後の貧富の差は北米およびメソアメリカよりも大きかった

考古学:富の不平等の拡大の歴史

 好況や不況などの経済的変動に関する数々のニュースの裏には、富の不平等というさらに根深い問題がある。しかし、その歴史はどのようなもので、さまざまに異なる富の分配を決定付ける、より大きな社会的要因とは一体何なのだろうか。今回T Kohlerたちは、家屋のサイズを代理指標として用いて富の不平等の指標となるジニ係数を算出し、約1万1000年前の新石器時代以降の世界的な不平等の進化を調べている。その結果、当然ではあるが、富の不平等は全体として拡大してきたことが分かった。しかし意外にも、不平等の拡大は、旧世界(ヨーロッパおよびアジア)の方が新世界(北米および中米)よりもはるかに大きかった。新世界では、都市部の遺跡でも家屋のサイズは概して似通っており、旧世界の都市状況から連想されるような巨大な宮殿は存在しない。著者たちは、そうした不均衡は、大型の家畜によってもたらされる必然的な富によって説明できると示唆している。例えば、馬の家畜化は、それを乗り回して他者から富を獲得することを可能にした。

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