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zoom RSS 斎藤成也『核DNA解析でたどる日本人の源流』

<<   作成日時 : 2017/12/03 00:00   >>

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 これは12月3日分の記事として掲載しておきます。河出書房新社から2017年11月に刊行されました。本書はまず人類進化史と現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散を、最新の研究成果に基づいて簡潔に概観した後、日本列島の現代人がどのように形成されてきたのか、おもに核DNAの解析結果に基づいて検証しています。もっとも、本書は、核DNAよりは得られる情報が少なくなるものの、ミトコンドリアDNA(mtDNA)とY染色体DNAについてのこれまでの研究も取り上げています。本書で言及されている核DNA解析には、現代人だけではなく、縄文時代の住民のもの(古代DNA)も含まれています。

 本書は、4万年前頃から続く日本列島における人類史を把握するために、「ヤポネシア」という概念を提示しています。本書はヤポネシアを、千島列島・樺太島・北海道を中心とした北部、本州・四国・九州を中心とした中央部、琉球列島弧(南西諸島)の南部に区分しています。本書は、「ヤポネシア人」成立の説明として、近年の遺伝学的知見からも、「二重構造モデル」が大まかには妥当だ、との見解を提示しています。「二重構造モデル」とは、更新世に東南アジア方面から日本列島に移住してきた人々が縄文人となり、弥生時代に北東アジア起源の集団が日本列島に移住してきて先住の「縄文系」と混血し、現代日本人が形成されていった、とする仮説です。「二重構造モデル」では、北部のアイヌ人と南部のオキナワ人は、弥生系渡来人の影響をほとんど受けなかった、とされます。

 本書は、現代アイヌ人の形成においてオホーツク文化集団の影響があったことや、更新世に日本列島に渡来した集団が、東南アジアのみではなく複数の方面に由来するであろうことを指摘し、「二重構造モデル」を修正しています。更新世に日本列島に移住してきて、縄文人の主要な祖先になったと思われる集団は、著者も執筆者の一人となった論文において、現代東ユーラシア系集団とは遺伝的に大きく異なっていたことが明らかになりました(関連記事)。

 本書の見解で「二重構造モデル」との相違点としては、このようなものもありますが、最も大きな違いは、日本列島への移住民集団の第一波である「縄文系」にたいする新たな渡来系の波には二段階あった、とするものでしょう。「縄文系」が居住していた日本列島に、まず4400〜3000年前頃、ユーラシア大陸東部から人々が移住してきました(移住民第二波)。この集団の起源地はまだ不明ですが、朝鮮半島・遼東半島・山東半島周辺から、「海の民」もしくは園耕民が日本列島に移住してきた可能性を本書は指摘しています。また本書は、この渡来集団が日本語の祖語をもたらした可能性も想定しています。

 3000年前頃以降、第二波と遺伝的に近い第三波の移住民が水田稲作を日本列島にもたらしました。本書はこの第三波の移住民を、弥生時代と古墳時代の二段階に区分しています。本書は、まだ一般にはほとんど知られていないだろう縄文人のDNA解析の最新の研究成果も少し紹介しており、今後の研究の進展が期待されます。とくに、西日本の縄文人のDNA解析が進められているとの情報には、東西の違いという観点からも、大いに注目しています。本書は、現代日本人の遺伝学的な起源論に関心のある人にはお勧めの一般書になっていると思います。


参考文献:
斎藤成也(2017)『核DNA解析でたどる日本人の源流』(河出書房新社)

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