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zoom RSS 石野裕子『物語 フィンランドの歴史 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年』

<<   作成日時 : 2018/02/04 00:00   >>

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 これは2月4日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年10月に刊行されました。本書はフィンランドの通史で、基本的にはスウェーデンの支配下以降の時期が対象となっています。新石器時代や更新世についてもわずかに言及されており、フィンランド西部で4万年以上前のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の痕跡が1980年代に発見された、との興味深い記述もあるのですが、北緯53度よりも北方では明確なネアンデルタール人の遺跡は発見されていないので(関連記事)、本書で紹介されているフィンランドのネアンデルタール人も、広く認められているわけではないのでしょう。

 本書の特徴は、フィンランドがスウェーデンおよびロシアの支配下にあった時代の記述もそれなりに分量があることです。スウェーデンの統治期間は長かったこともあり、知識層の主要な言語はスウェーデン語で、フィンランドはスウェーデンの影響を大きく受けたようです。19世紀初めにフィンランドの支配国はスウェーデンからロシアに変わり、約100年間フィンランドはロシア帝国の一地域でした。ヨーロッパで近代化が進展するこの時期に、フィンランド人という意識が形成・確立されていきました。言語・国民意識の形成という近代国家成立のさいの各地の苦悩はフィンランドでも見られ、当然ではありますが、近代化が多大な苦労・犠牲のうえに進展したことを改めて認識させられます。

 ロシアのフィンランド統治は、19世紀後半までは比較的緩やかだったようで、フィンランド史にもロシア史にも詳しくない私にとっては、やや意外でした。しかし、19世紀後半にはロシアによるフィンランドのロシア化が進められていきます。この背景として、統一ドイツ出現への警戒がロシアにあった、と指摘されています。1914年に第一次世界大戦が勃発し、1917年にロシア革命が起き、10月革命後にフィンランドは独立を宣言し、ロシアに新たに成立したボリシェヴィキ政権はフィンランドの独立を承認します。しかし、独立後のフィンランドの歩みは苦難の連続で、独立前からの左右勢力の対立は内戦に発展しますが、外国勢力の干渉がありつつも、内戦は長期化することなく終結します。

 この内戦を経て、フィンランド社会は次第に安定していき、政党政治も確立します。しかし、ドイツとロシア(ソ連)の二大勢力に挟まれたフィンランドは大国の思惑に翻弄されていき、第二次世界大戦勃発後、ドイツと不可侵条約を締結したソ連に攻め込まれます。この冬戦争でフィンランドは圧倒的に国力が上のソ連相手に善戦するものの、けっきょくは講和します。その後、ドイツが不可侵条約を破ってソ連に攻め込むと、フィンランドはドイツに協力するようになります。フィンランドでは、冬戦争から独ソ戦でのドイツとの提携によるソ連との戦いは一連の祖国防衛戦争として認識されていましたが、独ソ戦以降のソ連との戦いでは、フィンランド側に領土拡大の意図があった、と指摘されています。

 独ソ戦がドイツに不利な状況となると、フィンランドはソ連との講和を余儀なくされ、第二次世界大戦後はソ連の影響を強く受けるようになります。しかし、東ヨーロッパ諸国とは異なり、フィンランドはソ連支配下の社会主義国にはなりませんでした。ソ連に配慮しつつ、決定的な内政干渉を避けてきた、冷戦期におけるフィンランドの現実主義的で巧みな外交には感銘を受けます。冷戦崩壊以降、フィンランドは西側世界に接近してEUにも加盟し、先進国の一員としての地位を確たるものとします。本書は政治史に重点を置いており、文化史への言及は見られるものの、経済・社会問題への言及は少なく、その点はやや残念でした。しかし、気軽に読めるフィンランド通史の入門書として、文句なしにお勧めの一冊になっているのではないか、と思います。

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