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zoom RSS アフリカ東部における中期石器時代の始まりと「現代的行動」

<<   作成日時 : 2018/03/20 00:00   >>

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 これは3月20日分の記事として掲載しておきます。アフリカ東部における中期石器時代の始まりに関する3本の論文が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。これら、中期石器時代の始まりと環境変動の関係についての研究(Potts et al., 2018)と、前期石器時代となるアシューリアン(Acheulean)から中期石器時代への移行年代に関する研究(Deino et al., 2018)と、中期石器時代最初期における「現代的行動」に関する研究(Brooks et al., 2018)は、いずれもオンライン版での先行公開となります。

 これらの研究は、ケニア南部のオロルゲサイリー盆地(Olorgesailie Basin)で発見された、中期石器時代の石器群の年代とその背景を分析しています。オロルゲサイリー盆地における人類の証拠は120万年前頃までさかのぼります。オロルゲサイリー盆地の人類遺骸としては、90万年前頃のホモ属の頭蓋冠が発見されています。この間の石器群はアシューリアン(Acheulean)で、大きな握斧(Handaxe)や掻器(Scraper)が発見されています。

 オロルゲサイリー盆地では、長期にわたってアシューリアン石器が用いられてきましたが、615000年前頃に石器群の変化が見られ始めます(後期アシューリアン)。年代測定にはアルゴン-アルゴン法とウラン系列法が用いられました。この頃、アシューリアン石器群はより小さくなり、携帯が容易になるとともに、石材の選択がより強く見られるようになります。この背景にあるのは、80万年前頃から始まる、乾燥化していく激しい気候変動と、その結果としての草原の拡大だと推測されています。当時のオロルゲサイリー盆地の人類は、激しい気候変動に対応した狩猟戦略を採用し、石器群も変わっていったのではないか、というわけです。このような適応性の延長に、中期石器時代のさまざまな革新があるのではないか、と考えられています。

 615000年前頃に始まったオロルゲサイリー盆地の後期アシューリアンは、4999000年前まで続きます。古代の浸食により、オロルゲサイリー盆地の499000〜320000年前頃の層は失われました。オロルゲサイリー盆地の層が再び確認される32万年前頃、遅くとも305000年前頃には、アシューリアン要素の見られない、比較的洗練された石刃と尖頭器が豊富な、中期石器時代的な石器群が確認されます。これらの石器群のなかには、槍に装着されたものもあるのではないか、と推測されています。これらは、アシューリアン要素のほぼない確実な中期石器時代の石器群としては、アフリカ東部では最古となります。オロルゲサイリー盆地では、499000〜320000年前頃の間に、前期石器時代となるアシューリアンから中期石器時代への移行が起きたと考えられます。

 オロルゲサイリー盆地では、前期石器時代と中期石器時代とで、動物相にも大きな違いが見られます。湿潤と乾燥の周期がさらに激化し、以前に存在した哺乳類の80%以上が見られなくなった一方で、ゾウ・イノシシ・キツネなどの動物が新たに移動してきました。オロルゲサイリー盆地における前期石器時代から中期石器時代への移行は、このような激しい環境変動に対応したものではないか、と推測されています。当時の人類は、大型および小型の獲物を対象とした広範な資源戦略を採用していたのではないか、というわけです。オロルゲサイリー盆地の中期石器時代の石器群には人類遺骸が共伴していないので、これらの石器群を製作した人類を確定できませんが、モロッコで30万年以上前の現生人類的な化石が発見されているので(関連記事)、現生人類かその祖先集団、もしくはその近縁集団である可能性が考えられます。以前には、中期石器時代最初期の石器群は、現生人類の所産と考えるには古すぎる、と考えられていました。

 ただ、この時代のアフリカには、現生人類とはかなり遠い系統関係にあると考えられるホモ属も存在していたので(関連記事)、安易に現生人類の所産と判断すべきではないように思います。しかし、オロルゲサイリー盆地の初期中期石器時代では、象徴的行動や広範な社会的ネットワークなどといった「現代的行動」が見られる、と指摘されているので、それがかなりのところ妥当だとすると、現生人類かその祖先集団、もしくはその近縁集団が担い手という可能性は高そうです。

 オロルゲサイリー盆地の中期石器時代初期における「現代的行動」とは、遠方の石材の調達とオーカーなどの顔料の使用です。顔料の使用は象徴的行動の指標とされます。ただ、オロルゲサイリー盆地の中期石器時代初期において、顔料が何に用いられたのかは不明です。黒曜石などの石材は25km〜50km程度離れた地域から調達されていました。これは長距離ネットワークの存在を示している、とも考えられます。しかし、25km〜50km程度の距離のため、長距離ネットワークの証拠としては確実ではない、とも指摘されています。ケニアの他の遺跡では、20万年以上前までさかのぼる、166km離れた地域からの石材の調達事例が見られます(関連記事)。

 これらの研究は、アフリカの人類が前期石器時代後期の時点で、環境変動に対応して新たな石器を開発するなど狩猟戦略を変えるような適応性を有しており、そうした適応性によるさらなる気候変動への対応として中期石器時代が始まったのではないか、との見解を提示しています。じっさいには、環境変動への対応と技術・社会革新との関係・具体的様相はかなり複雑なのでしょうが、大まかには、人類は60万年以上前、おそらくはそのずっと前より環境変動にたいして柔軟に対応できる能力を有しており、それが技術・社会革新と結びついている、という傾向は認められるのではないか、と思います。


参考文献:
Brooks AS. et al.(2018): Long-distance stone transport and pigment use in the earliest Middle Stone Age. Science, 360, 6384, 90-94.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aao2646

Deino AL. et al.(2018): Chronology of the Acheulean to Middle Stone Age transition in eastern Africa. Science, 360, 6384, 95-98.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aao2216

Potts R. et al.(2018): Environmental dynamics during the onset of the Middle Stone Age in eastern Africa. Science, 360, 6384, 86-90.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aao2200

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