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zoom RSS 中国北部の212万年前頃の石器(追記有)

<<   作成日時 : 2018/07/12 05:28   >>

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 中国北部の212万年前頃までさかのぼる石器についての研究(Zhu et al., 2018)が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。人類の出アフリカの最古の証拠の年代は、これまで185万年前頃とされていました。これは、ジョージア(グルジア)のドマニシ(Dmanisi)遺跡で発見された人類遺骸・石器群に基づいています(関連記事)。

 ユーラシア東部では、中国で前期更新世の人類の痕跡が発見されています。中国南部の雲南省楚雄イ族自治州元謀(Yuanmou)県では170万年前頃の人類遺骸が発見されており、陝西省藍田県(Lantian County)公王嶺(Gongwangling)の人類遺骸の年代は165万〜163万年前頃と推定されています(関連記事)。河北省陽原県の泥河湾盆地(The Nihewan Basin)にある馬圏溝3(Majuangou III)遺跡と上砂嘴(Shangshazui)遺跡(関連記事)の人工物層の年代は170万〜160万年前頃と推定されています。東南アジアでは、ジャワ島のサンギラン(Sangiran)遺跡の人類遺骸が160万〜150万年前と推定されています。

 本論文は、公王嶺の近くにある尚晨(Shangchen)で発見された石器群の年代を報告しています。尚晨遺跡では96個の石器が発見されており、おもに小さな剥片と礫器の単純な技術で製作されています。尚晨遺跡付近では古代の川が知られていないことから、石器群は本物だ、と研究者たちは確信しています。川の作用による偽石器ではない、というわけです。尚晨遺跡の石器群は、技術的にはアフリカの同年代の石器群と類似しています。発見された石器で接合したものはなかったので、別の場所で剥離した可能性が指摘されています。石材は秦嶺山脈(Qinling Mountains)から南方へ運ばれたと推測されており、石材の場所が特定されれば、当時の人類の行動範囲についてもより詳細に明らかになるのではないか、と期待されます。尚晨遺跡では石器群とともに、ウシ・ブタ・シカの遺骸も発見されています。ただ、石器がこれらの動物の解体に用いられていたのか否か、まだ明らかにはなっていません。

 尚晨遺跡の石器群で注目されるのは、その年代です。地磁気学的な年代測定の結果、尚晨遺跡の年代は212万〜126万年前頃と推定されました。これは現時点では、アフリカ外で最古の確実な人類の痕跡となります。インドとパキスタンの国境付近では240万年前頃とされる石器が発見されていますが、その証拠は尚晨遺跡ほど強力ではないそうです。さらに、尚晨遺跡では現在耕作が活発なこともあり、最下層まで調べられていないので、年代はさらにさかのぼる可能性がある、とも指摘されています。

 尚晨遺跡では人類遺骸が発見されていないので、石器群の製作者は不明ですが、(広義の)ホモ属である可能性が高そうです。エレクトス(Homo erectus)もその候補ですが、240万〜140万年前頃にアフリカにいた、ハビリス(Homo habilis)のようなエレクトス以前の種である可能性も指摘されています。さらに、ホモ属よりも前(一部はホモ属と共存)の人類であるアウストラロピテクス属が製作者である可能性も指摘されています。いずれにしても、人類の出アフリカは200万年以上前までさかのぼり、早期にユーラシア東部まで拡散した可能性が高そうです。


参考文献:
Zhu Z. et al.(2018): Hominin occupation of the Chinese Loess Plateau since about 2.1 million years ago. Nature.
https://dx.doi.org/10.1038/s41586-018-0299-4


追記(2018年7月13日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。また、以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。



【考古学】中国で最古のヒト族の存在を示す証拠となるか

 Shangchen(中国・陝西省)で、人工遺物を含むほぼ連続して累重した地層群が発見され、これらが約210〜130万年前のものであると年代決定したことを報告する論文が、今週掲載される。この研究知見は、これまで考えられていたよりも前からアフリカ以外の地域にヒト族が存在していた可能性を示唆している。

 アフリカ以外の地域にヒト族が存在していたことを示す最古の証拠は、ドマニシ(ジョージア)で見つかったホモ・エレクトス(Homo erectus)の骨と道具で、185万年前のものだった。この他にも初期ヒト族の化石が中国とジャワ島(インドネシア)で見つかっており、170〜150万年前のものとされている。しかし、200万年前よりも昔にヒト族が活動していたことを示す証拠がある、とする主張も度々なされている。

 今回のZhaoya Zhuたちの論文によれば、打ち砕いて加工された石82点と加工されていない石14点が中国黄土高原のShangchenで発見され、更新世前期のものと特定された。これらの石には、石核、剥片、スクレイパー(削器)、ポイント(尖頭器)、ボーラー(穴あけ器)、ピック(尖った部分を持つ石器)が含まれており、初期の道具の証拠であることが示唆されている。また、Zhuたちは、衝撃によって損傷したハンマーストーン2個も見つけた。この遺跡の周辺での発掘調査では、石核器と剥片器と共にシカの下顎骨片が見つかった他、ウシ科動物(偶蹄類の反芻哺乳動物)などの化石骨片も見つかっている。

 Zhuたちは、これらの連続した地層群には人工遺物を含む層が17層あることを明らかにしている。石器は、主として温暖湿潤な気候で形成された11層で見つかったのに対し、人工遺物が発見されたのは黄土層の6層だけだった。黄土はシルト大の細粒性の堆積物で、風で運ばれた塵が蓄積して形成されることから、より寒冷で乾燥した気候であったことが示唆される。Zhuたちは、上記のパターンがタジキスタンで発見された類似の人工遺物を含む地層群と一致しているという見解を示している。さらに、Zhuたちは、この17層が85万年という長い期間をかけて形成されたものであることを指摘し、ヒト族は210〜130万年前の中国黄土高原に、必ずしも継続的でないにせよ、何度も繰り返し生活していた可能性があると述べている。

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