『イリヤッド』の検証・・・人類の禁忌について(1)

 先月まで、『イリヤッド』関連の記事は、月2回の『ビッグコミックオリジナル』の発売日の他に、単行本の発売日にも掲載してきました。また、情報整理のための記事や思いつきもたびたび掲載してきましたから、私個人の感覚では、前回の掲載からずいぶんと間隔が空いたような気がします。最終回を読む前までは、連載が終了したらすぐ検証にとりかかり、1話から再度じっくりと読んでいこうと考えていたのですが、最終回を読んですっかり失望してしまい、しばらくは、単行本も『ビッグコミックオリジナル』も、改めて読み直そうという気にはなれませんでした。
 まあそれでも、『イリヤッド』がたいへん面白い作品だとの評価には変りありませんし、もう一度謎解きに取りかかろうという気にもなりましたので、少しずつ検証を進めていき、あるていど記事がたまったら、整理してまとめサイトに掲載しようと考えています。作中における未解決の謎は色々とあるのですが、とりあえず、人類の禁忌を中心に検証を進めていくことにします。

 まず、人類の禁忌について改めて整理します。
●ネアンデルタール人が現生人類に語った、ある「真実」のことと思われる。
●その「真実」は、太古においても現在においても、現生人類を絶望させるものであり、現生人類にとって呪われたものと思われる。また、その「真実」は、進化論的なことをも含むと思われる。
●ネアンデルタール人と現生人類との接触は広範囲で起きたことだが、アトランティス人のみが、ネアンデルタール人の語った「真実」を文字の形ではっきりと残しており、アトランティス文明の後継者たるタルテッソス文明も、アトランティス文明のポセイドンの社を模した地下宮殿内の柱に文字を刻むことにより、その教えを伝えた。
●人類の禁忌の隠蔽をすることを目的とする秘密結社が、アトランティス探索を妨害し続けてきたのは、アトランティス文明を追及すればタルテッソス文明にたどり着き、現在はスペインのドニャーナ国立自然公園内にある、地下宮殿の存在も明らかになるからである。

 まず疑問なのが、なぜアトランティス人のみが人類の禁忌を伝えてきたのかということなのですが、作中では、アトランティス人のみが文字の形ではっきりと伝えてきたからだ、とされています。入矢はストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』を引用し、タルテッソスを築いた人々は、6000年以上前(ストラボンの視点からなので、紀元前6000年以前ということになります)から文字を使用していた、と指摘しています。タルテッソスを築いたのは、イベリア族と生き残ったアトランティス人の一部とが融合した、トゥルドゥリ族だと入矢は指摘していますので、作中では、世界ではじめて文字を使用したのはアトランティス人だ、という設定なのでしょう。
 アトランティス文明は、他の文明よりもずっと早く文字の使用が始まったので、ネアンデルタール人の教えを文字化したのだ、ということなのでしょうが、かりに入矢の推測通り、アトランティス文明(都市国家)の成立が紀元前10000年頃で、それから間もなく文字の使用が始まったとしても、ネアンデルタール人の滅亡からアトランティス文明の成立までかなりの時間が経過しているでしょうから、アトランティス人のみが「真実」を伝えてきた理由としては弱いように思われます。

 もっとも、ネアンデルタール人がいつ絶滅したことになっているのか、作中においては不明なので、作中での設定に取り入れられているかどうかは分かりませんが、イベリア半島はネアンデルタール人終焉の地の有力候補ともされていますし、アトランティス文明の存在したイベリア半島~アフリカ北西部においては、ネアンデルタール人の絶滅年代から文字の発明までの期間が(アフリカにはネアンデルタール人はいませんでしたが)他の地域よりもずっと短く、そのため、ネアンデルタール人の語った「真実」が、アトランティス文明によってのみ文字の形で残されたのだ、というように解釈しておきます。
 あるいは、壁画によって「真実」が語り伝えられたのではないか、とも考えたのですが、それならば、他の地域でも同じようなことがあっても不思議ではありません。けっきょくのところ、アトランティス文明のみが「真実」を伝えてきた理由は、私にはよく分からず、創作物語の常として、あるていどのご都合主義は必要なのだ、と納得するしかないようにも思われます。

 では、人類の禁忌とされたある「真実」とは何なのかというと、私ていどの推理力と読解力では、かなり推測が難しいのは否めません。彼の島が沈んだのは人々が絶望したためであり、人々が絶望した理由は、神が最初に選んだのは「彼ら」であって我々ではなかったからだ、とのグレコ神父の発言(「彼ら」とはネアンデルタール人で、「我々」とは現生人類のことと思われます)は、人類の禁忌の核心に迫るものでしょうが、あまりにも抽象的なので、具体的にどのような教えが禁忌となったのか、これだけではよく分かりません。
 絶望とは、時間という側面に注目して分類すると、過去にたいするものと、未来に向けてのものとがあります。自らの出自や経歴を嘆き忌まわしく思うのは前者ですし、将来の展望に悲観するのは後者です。もう少し具体的に述べると、ドラマなどにおいて、自分が養子であって両親と直接の血のつながりがないことにうちのめされるような場合がありますが、これは前者となります。後者には、貧困のためどうにも生活が成り立ちそうにないとか、虐めにあってこの先には苦痛ばかりしかないと判断したとかいった具体的な事例や、**年に人類が滅亡するとか、末法の世に突入した(ここでは、基本的に日本での末法思想を念頭においています)とかいった宗教的で抽象的な事例があります。

 では、人類の禁忌はどちらなのかというと、「神が最初に選んだのは彼らであり、我々ではなかった」、「彼らは狒狒を指差し、次のおまえ達だといった」というグレコ神父の発言からすると、過去にたいするもののように思われます。ただ、現生人類が絶望するのは、多くの場合、過去よりも未来にたいしてだと思われますし、過去にたいする絶望も、未来への悲観につながるから絶望と考えられるのだ、という側面もあります。
 まあそれはともかくとして、進化論の浸透した現代において、レームのような無神論に近いと思われる人物でさえ衝撃を受けるような秘密となると、過去だけではなく未来にたいしても呪われた「真実」であると考えるほうが、説得力があるように思われます。とはいえ、太古の現生人類も現在の現生人類も絶望するような「真実」となると、なかなか設定が難しいのは否定できませんが、ともかく推測を続けていくことにします。

 「神が最初に選んだのは彼らであり、我々ではなかった」とは、現生人類がネアンデルタール人に夢を見る力を与えられ、神との交信が可能になった、ということだと思います。別の表現にすると、人類の特徴とされている「高度な精神性」を最初に獲得したのはネアンデルタール人であり、我々現生人類ではなかった、ということでしょうか。
 現生人類にとって、ネアンデルタール人はいわば大恩人であり、ゆえに、神として崇められるようになり(神として崇められたのはネアンデルタール人だけではありませんが)、アトランティス文明圏では、ネアンデルタール人を模した柱状の偶像(アマゾネス族により、正体が隠されて梟とされました)が作られた、ということなのでしょう。これは、現生人類にとって衝撃的かもしれませんが、多数の現代人が絶望するようなことかというと、違うように思われます。

 では、「彼らは狒狒を指差し、次のおまえ達だといった」のほうはどうでしょうか。入矢はこれを、進化論的な教えだと解釈していますが、進化論の浸透した現在において、いまさら人類が進化論的な内容に絶望するとも思えません。また過去においても、蛇などから人類が進化したと考えている人類集団は少なくなく、進化論的な教えに人類の多数が絶望したとは、考えにくいところがあります。
 ただ、これが進化論的な内容だとしても、未来に向けての警告・宣託でもあると考えれば、将来にたいする絶望につながるかもしれません。ネアンデルタール人が獲得した「高度な精神性・知性」は、現生人類に伝えられたが、その他の動物も、「高度な精神性・知性」を獲得する可能性があり、人類の優位・特別な地位が失われることになるのだ、という意味に解釈すると、将来に絶望することになるかもしれません。

 しかし、そうだとしても、太古も現在も現生人類が絶望するかというと、疑問です。これならば、終末論的な世界観や末法論のほうが、よほど現生人類を絶望させるようにも思われます。もっとも、終末論的な世界観においては、たいていの場合、信仰による救済が提示されています。ここで気になるのは、モーセやイエスなどが、「真相」を知りながら人類を騙してきた、とするグレコ神父の解釈で、人類は将来絶滅するが救済はないのだということになれば、人類が絶望する理由になります。
 そうだとすると、人類が絶滅する理由について、太古においても現代においても現生人類が納得しなければなりませんが、そのような説得力のある教えなどありえるだろうか?との疑問があります。いくら創作ものとはいえ、ネアンデルタール人が環境・人口・大量破兵器の問題を見通していたとすると、『イリヤッド』の作風に合いませんし、人類が絶望するような教えを考えるのは、やはり難しいものです。

 ただ、あえて推測すると、ネアンデルタール人の絶滅こそが、ネアンデルタール人の教えが真実だ、と現生人類に信じ込ませた理由なのかもしれません。現生人類とネアンデルタール人が遭遇したとき、すでにネアンデルタール人は衰退過程にあり、やがてネアンデルタール人は絶滅しました。
 自らの集団の絶滅を悟ったネアンデルタール人は、最初に神に選ばれた(高度な知性を獲得した)我々(この場合はネアンデルタール人のことです)でさえ、絶滅は避けられないことと、ネアンデルタール人や現生人類だけではなく、狒狒(文字通りの「ヒヒ」だけではなく、霊長目全般のことを指すと思われます)もやがては神に選ばれるだろう(がそれでも絶滅は避けられない)、ということを現生人類に伝えました。

 もしこの解釈が妥当だとすると、現生人類がネアンデルタール人の教えに絶望し、その教えを人類の禁忌と考えたのは、
(A)現生人類は元々は神に選ばれた(高度な知性を備えた)存在ではなかったという進化論的な教え。
(B)しかも、最初に神に選ばれたのはネアンデルタール人であり、現生人類ではなかった。
(C)神に選ばれるのはネアンデルタール人や現生人類だけではなく、やがては他の動物もそうなるのであり、ネアンデルタール人や現生人類は特別な存在ではない。
(D)しかし、神に選ばれたとしても絶滅は避けられない。そうしたことも含めて、現生人類にさまざまなことを教えたネアンデルタール人自身が、自らの絶滅をもって、その教えが真実であることを証明した。
といった理由になります。(A)・(B)は過去にたいする絶望であり、(C)・(D)は未来にたいする絶望となります。

 (D)の結果、神は存在するのか、神への信仰に意味はあるのか、といった疑問も生じるでしょう。そうすると、人々の信仰心が失われることにもなりかねません。前近代においてはともかく、現代において、ネアンデルタール人の教えが信仰心を失わせるような結果をもたらすかというと疑問なのですが、秘密結社はそのことを懸念しているという設定なのでしょう。
 では、前近代においてはともかくとして、現代においても信仰心の喪失が問題とされる理由は何でしょうか。ある秘密結社の幹部は、結社はいわば人類の護民官だと発言していますし(11巻所収の86話「ソロモンの壺」より)、たんに既存の宗教の既得権の問題だというわけでもないでしょう。そこで、この問題について、以下において私の考えを少し述べることにします。

 前近代においても現代においても、秩序の維持には、権力の暴力装置だけあればよいというものでもなく、人々の規範意識も必要です。だからこそ、社会主義諸国は警察・軍隊に頼るだけではなく、宣伝活動にも力を入れていたわけです。社会主義ではない国々の多くも、社会主義国ほど露骨ではありませんが、人々の規範意識の醸成・維持に配慮しています。
 その規範意識の基盤には、宗教があります。もちろん、それだけではありませんし、社会主義国は宗教を排そうとしましたが、その社会主義国においても、けっきょくのところ宗教の排除には失敗したと言うべきでしょう。進化論の浸透した現代においても、アトランティス人の伝えてきた「真相」は人類の禁忌だと秘密結社が考えているのは、人類の禁忌が明らかになれば、人々の信仰心が失われ、秩序の乱れを招来する結果になりかねない、と懸念しているからなのでしょう。
 4巻所収の30話「運命の人」において、島民が堕落した結果沈んだ島の伝説が語られますが、これはアトランティスのことであり、アトランティス人が絶望した=信仰心を失った=夢を見ないということを意味しているのでないか、と思われます。だからこそ、作中においては、無神論でありながら文明・秩序を維持している日本(社会・人)にこそ、アトランティスの謎を解明する資格があるのだ、とされているのでしょう。もっとも、これは作中での設定であり、本当に日本社会が無神論的なのかどうかということは、改めて検証が必要です。

 以上、長々と述べてきましたが、とりあえず今回はここまでとし、次回は、作中で紹介されたさまざまな伝説や、作中での設定を改めて取り上げて、私見を検証していくことにします。これまで、このブログで『イリヤッド』について色々と予想してきましたが、その多くは外れていたので、今回提示した仮説も、やはり的外れかなという懸念はあります。次回以降の検証で、少しは原作者さんの想定に近づきたいものですが、私の読解力・推理力・知識では、なかなか難しいものがあります。まあ、論文ではありませんし、有料公開というわけでもないので、気楽に続けていくことにします。

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この記事へのコメント

イリヤのファン
2007年07月17日 22:27
管理人さん、待ってました~。
私もコメントさせていただきます。

ラストのちぐはぐ感は、基本的に人類の禁忌を「全人類対象」とした設定が破綻したことに起因すると思います。進化論やイエスへの言及を考えると、やっぱりキリスト教、ユダヤ教にとっての禁忌でしかないようです。
アトランティス人は、進化論を伝え聞き、絶望し、夢を見ない(=信仰心をもたない、神を信じない)民族となったのでしょう。
これだけなら、グレコ達はアトランティスを隠蔽しようとはしないでしょう。ただ、イエスは進化論の真実を知りました。イエス自身が神を信じていなかったことも考えられます。それでも、イエスは人々に神を説いた。この事実が発覚すれば、イエスはペテン師になってしまいます。グレコが恐れたのは、このことではないでしょうか。
2007年07月18日 00:01
これはイリヤのファンさん、いつもお読みいただき、ありがとうございます。

確かに、ユダヤ教やキリスト教に限定すれば、禁忌を想定しやすくなります。

原作者さんの想定ではセム系一神教にとってしか禁忌になりえないのに、風呂敷を広げすぎて、すべての宗教・人類にとっての禁忌としてしまったのではないか、との疑いが正直なところあります。

ただ、ヒンズー教や道教?を信仰している秘密結社の会員も登場しますし、無神論者に近そうなレームも衝撃を受けている描写がありますので、とりあえず、全人類にとっての禁忌という前提のもとに推測を進めていく予定です。

しかしそうなると、禁忌をどう想定すべきか、やはり難しくなってしまいます。
なべってぃ
2007年10月08日 21:45
初めてコメントします。

(1)アトランティス人は信仰心を失った=夢を見ない
(2)無神論でありながら文明・秩序を維持している日本(社会・人)にこそ、アトランティスの謎を解明する資格がある
(3)神に選ばれたとしても絶滅は避けられない。ネアンデルタール人自身が、自らの絶滅をもって、その教えが真実であることを証明した。
(4)上記(3)を知りながらイエスは神の教えを説いた。故にペテン師扱いされる可能性から隠蔽を図った


※上記(1)~(4)は私が勝手に整理しました。


以上のご指摘ですっきりしました!

私もず~っと愛読して最後にもやもやを残してしまったのですが、鋭い分析のおかげでかなりすっきりしました。
2007年10月08日 23:58
なべってぃさん、はじめまして。今後ともよろしくお願い申し仕上げます。

自分なりの推測を一応まとめてみましたが、自信があるというわけではありません。

続編を期待したいところですが、無理でしょうねぇ・・・。
私の見解
2011年12月07日 02:32
はじめまして(^^
イリヤッド15巻から自分なりの整理ができたので他の人に聞いてほしくて来ました
。私もなべってぃさんと、ほとんど同じですが
①ヌビア聖書「彼らは狒狒を指差し…」はネアンデルタール人から狒狒への進化の交代
②神の子と偉大な預言者達は「祝福されてるのは人類ではなく夢を見れる(神と交信)狒狒」を知りながら人類をペテンにかけた
と解釈しました
2011年12月07日 06:44
はじめまして。『イリヤッド』にまだ関心を持っている人がいるのは、まとめサイトを作成した人間としては嬉しいものです。
タプリーン中毒
2016年09月05日 01:09
最近読み終わった者です、イリヤッド連載中私は学生時代でした。
とても気になっていた作品なのですが、何でも「楽しみは後に取っ
ておこう」という性格が災いし読み終わるまで数年もの年月が経っ
てしまいました(;´Д`)
さて、私の「無神論者すら絶望させる人類規模の禁忌」の考察なの
ですが。
自信は無いですが一応思い浮かんだ仮説を書き殴っていきます。

可能性① 古代核戦争説
つまり「不思議の海のナディア」や「スプリガン」みたい
な事が過去に実際に起こった。
これは真っ先に浮かびましたが絶対に有り得ないですね。
推理小説でクローズドサークルを否定する様なものです。
外部侵入者の犯行だった!とか悪い冗談ですね。

可能性② デマ説
教会や山の老人による壮大な八百長という事です。ペテン
合戦を繰り広げる事で宣伝効果による神秘性の獲得を狙っ
ているというもの。
だって、今更ミッシングリンクを証明する類人猿の化石(若
しくはそれに類する考古学的遺物)を山の老人が秘匿してい
た事が世間に露見したとして一体、現代社会の誰が絶望する
のか?それより全て八百長と考えれば辻褄が合う。
タプリーン中毒
2016年09月05日 01:11

可能性③ 夢=超能力説
では、無神論者すら絶望させる禁忌とは一体何なのか?
今更ミッシングリンクが証明された所でNYや東京の唯物論
バリバリなビジネスマン達は「あっそう、だから何?」
「ふーん、やっぱりね」という反応しか示さないでしょう。
どうにかして無神論者を絶望させる方法は無いのか?
あります。それは、「死ぬ事」です。
誰しも夢を叶えられずに死ぬのは嫌です。
でも、死ぬ運命が変えられないモノだと決まっていたら?
例えばネアンデルタール人が予知能力を持っていたとします。
つまり作中の「夢を見れない云々」の夢とは超能力の事です。
かつてネアンデルタール人は超能力を使えたが、クロマニョン
等の新人と混血した事によって超能力が失われた。
絶望して滅んだのはその為でしょう。
では、そのSF話のどこに現代無神論者を絶望させる要素がある
のか?
実は、ネアンデルタール人は滅ぶ前にその衰えた超能力で最後
の予言を残していた。
その予言は人類の未来に関する予言で今まで100%的中している。
そして近い将来人類が滅亡する事も記されている。

可能性④ 人類祖先奴隷説
ズバリ、人類はネアンデルタール人の奴隷だった!という説。
それもただの奴隷ではなくて、家畜を扱うような感じの屈辱的な
モノだった。
何故かと言えば、作中に登場したドルメンですが、あれは本来は
牢獄だったという説があるんです。
タプリーン中毒
2016年09月05日 01:14
確かにドルメンの入口には丸い穴がある物が多く、それを塞ぐ石
の蓋がある物も有ります。
アマゾネスに反乱を起こされたというのも彼女達を性奴隷みたい
に扱っていたから復讐されたという事なのかも知れません。
女だけの部族ってのも何か引っかかりますし彼女等は元々はネア
ンデルタール人の奴隷だったのでは?
もう一つの謎は進化論、そこにどんな形で進化論が絡んで来るのか?
これも推測ですが、ネアンデルタール人によって捕獲されたクロマニョ
ン人とチンパンジーを家畜の様に交配させて誕生したのが現生人類だっ
たのでは無いでしょうか?
腕力と知力で圧倒するネアンデルタール人ならば不可能では無いかも
知れません。
人類の起源は進化論ならまだ許せるが家畜論だったというのは流石に
無神論者でもショックかもしれませんね。
タプリーン中毒
2016年09月05日 01:15
可能性⑤ 人類退化説
つまり種のアポトーシスです。
有名陰謀論者のハローバイバイ関暁夫は「チンパンジーと混血すれば人類
のY染色体の劣化を食い止められる」という独特な主張を繰り広げています。
現実的な真偽は別として、作中設定としては十分に有り得ます。
アクア説というものがあるんですが、人類は水中で高度な知能を手に入れた
というものです。
確かに、水掻きの名残や臼歯の形など人類の体には独特な部位がありアクア
説を持ち出せば容易に納得できます。
アトランティス人(ネアンデルタール人)は人魚(アクア原人)を神と崇め
ていた。
何故なら人魚と交われば天才児(クロマニョン人)が産まれるから。
だけども天才児は実は凶暴でアトランティス人や人魚を滅ぼしてしまった。
アトランティス人は「人魚と混血しなくなったら狒狒に退化してしまうぞ!」
と必死で警告したが、傲慢な天才児は二つの種族を滅ぼしてしまった。
山の老人のケースの中にはホモフローレスよりも更に退化した現生人類の化石
が入っているのだろう。
チンパンジーやオランウータンやゴリラは人魚との混血を止めてしまった旧人
や原人(ジャワ原人や北京原人)の成れの果てなのだから。
まさかの猿の惑星は実話だったというオチ!?これが絶望感ではトップですね。
無神論者でも、築き上げた地位や名誉を子孫に残したいものです。でも、その肝
心の子孫が猿になってしまうのだから絶望しか無いでしょう。
実は私はこの説が一番気に入っています('∀`)
2016年09月05日 19:26
多くの人類を絶望させるということでいえば、死・滅亡に関わることではないかな、と思います。続編はないので、もはや読者が想像するしかありませんが。
タプリーン中毒
2016年09月17日 19:27
あれだけ居た原人や旧人は一体何処へ行ってしまったのか?
何故チンパンジーやゴリラは生き残ったのか?
もしかして人類の手に入れた高度な知能は種としての獲得形質では無く、危ういバランスの上に成り立つ借り物の能力なのでは無いか?
アトランティス人は一体何に気付いたのか?
私の想像ですが、アトランティス島にはウイルス進化種との交配によって知能を獲得した生命が数多く存在したのでは無いか?
オーストラリアの有袋類の様な。
そして、それらは知性種としての寿命を迎えると知能を失って動物に戻っていった。
それらをアトランティス人は見ていて知能の本質を知っていたのでは無いか?
ホモフローレスは本当に孤島適応進化した人類なのか?
ボノボチンパンジーがアトランティス人の末裔である様に、ホモフローレスも猿に回帰した人類では無いのか?
と推測した次第です。

妄想ですが、イリヤッドはあれこれ考えて楽しめるインスピレーションを与えてくれますね。
2016年09月17日 19:58
『イリヤッド』連載完結後、人類進化史の研究は大きく進展し、とくにネアンデルタール人と現生人類との関係については、じゅうらいの有力説から大転換があったと言えますので、想像の余地が膨らむと思います。
山のサボー
2019年10月06日 01:54
初めてまして。 イリヤッドを連載以来何度も読み直し、その度に頭をモヤモヤさせていた者です。
こちらのサイトは以前から大変興味深く拝読させて頂きました。
この度、イリヤッドについて諸々、断定出来ない仮定と推論ばかりではありますが、主に作劇上の構造の観点から、私なりの解釈を書き込ませて頂きたく、キーを叩いた次第であります。

秘密結社 山の老人とはなんであったか
作中で語られる数々の伝説から、アトランティス人は歴史の末期において堕落していたと示唆されます。
赤穴博士が若い頃に出雲で赤兎心理実験を行いますが、あれは沈みゆくアトランティスから脱出し、逃げ延びた人々の恐怖と悪夢を暗喩したものかと想像します。
イソップのウサギとフクロウの寓話によれば、アトランティス人は神を敵に差し出します。
神の姿を忘れており、神が身を投げて死んだと思い込み、慌てふためきます。 さらにその直後、文字通り国が沈んで無くなってしまいます。
彼らは、神が自分たちの堕落に怒り、呆れて絶望し、見放したのだと思ったのではないでしょうか。
生き延びた人々の中には、死んだ神が冥界で人間を呪っており、いつか自分たちを復讐しにやってくるのではないかと恐れた人達もいたかも知れません。
で、彼らの一部はアトランティス滅亡のトラウマを改竄・隠蔽し、封印して安心を得ようとする。
私には、これが山の老人の起源、原型ではないだろうかと思えるのです。
エノクの書によれば、神の命令で人間を監視した天使たちをグリゴリと呼ぶそうです。 彼らはヘルモン山に集まり、全員で神に背くことを誓い合ったのだとか。

人類の祖が取り返しのつかない失敗をした。神に見捨てられ、自殺されてしまった。きっと今でも神は人間を呪っているに違いない、
という深層心理下の悪夢の記憶は、イリヤッドの物語において人類の禁忌となり得るのではないかと思うのです。
各エピソードを読み返すと、改めて同じテーマが何度も繰り返されていることに気付きます。イリヤッドの登場人物はほぼ全員が悩みを抱えており、中には極めて重篤な人もいます。
主人公であるイリヤが彼らと接し、癒し励まし、勇気付けて救済するという構造を持っています。
イリヤ自身が過去に挫折し絶望したのちに、復活した人物でもあります。 イエスは神の力によって復活しましたが、イリヤは周囲の人々の支援によって立ち直りました。
イリヤッドがこういう物語ならば、最初の山の老人もまた挫折し絶望した人々だったのだろうと思えるのです。

父の遺志を継ぎ、アトランティスを探すユリの持つ時計ドクサは、根拠なき盲信という意味でもあり、純化された愛情の意味でもあります。
私にはこの言葉が、教会や聖人や山の老人の意志を背負うグレコ神父にもかかっているのではないかなあと思えるのです。
山の老人の首領であるグレコ神父にとっての「人類の禁忌」であって、現代の山の老人や、民族主義者であるヒトラーやレームにとっては、
わざわざ公表しても既存の宗教の権威を貶め、社会不安を煽るだけ、人々が知る必要の無い暗黒史だった、ということではないかなと。

細かいとこ辻褄が合わない感じは残るんですけど、劇構造の方向性として、こういった解釈に気付いた時、
私なりにイリヤッドという物語を読み込めた気がするので、まぁようやく、胸のつっかえが取れた思いがいたします。
2019年10月06日 09:50
当時、私も色々と考えましたが、作中の全描写を整合的に説明できる解釈を提示するのはなかなか難しいかな、とは思います。人類の禁忌が明示されなかったのは残念ですが、アトランティスの場所は明かされたので、終わり方に不満はあるものの、全体的には満足しています。
山のサボー
2019年10月07日 00:08
イイ話の集合ですよねイリヤッドって。謎はモヤモヤするけど。

管理人さんがかつてご指摘されたように、太古に絶滅したネアンデルタール人の教えは、極めて長期に渡り口伝だったと考えられます。アトランティスが1万2千年前に文字を発明して書き記したとして、原典をどれほど正確に伝えているのかは怪しい。
またアトランティス滅亡後のタルテッソス神殿の柱がどれほど正確な転写であるか、これも怪しい。コイ族の民話に、ウサギが人間に間違って月の言葉を伝えてしまった話がありましたね。

バチカンに残るヌビア聖書断片には、神が進化論風の教えを説く記述があり、グレコ神父のスーツケースの秘密文書によると、その進化論風聖書こそは、ノアから歴代の預言者たちに受け継がれてきた真のエノクの書だということが記されている。
しかしバチカンのヌビア聖書断片の記述が、原典エノク書の意味をどこまで正確に表現しているのかはよく分からない。
その真のエノクの書の継承者であるソロモン王自身もアトランティスに興味を持って調べ始めてしまうので、スーツケースの中身だけを読んでも恐ろしい禁忌がそのままハッキリ書いてあるわけではないのかもしれない。

ルスティケロは山の老人に先んじてアーサー王と始皇帝の墓にあった2つのソロモンの玉(聖杯と地図)を手に入れました。イリヤの期待が正しく、聖杯=心臓=器=書であるならば、ルスティケロはタルテッソスの柱を解読出来たはずです。(エンタメ作品的に考えればイリヤの期待は正しいでしょうから、きっと解読したのでしょう)
逆に、聖杯を手に出来なかったグレコ神父は、タルテッソスの柱の言葉が実は解読出来ていなかったのかも知れない。微レ存ですが。

アトランティスの禁忌は問題を抱えた聖職者か無神論者でなければ耐えられないとの触れ込みでしたが、高貴な精神を追う聖杯の探究者は、柱の文字を読んでも山の老人に屈することはなかったわけです。(殺人ウサギってアーサー王絡みのネタなんですね)
つまりルスティケロだけがタルテッソスの柱の言葉を理解した上で、それでもアトランティス(アヴァロン?)を後世の騎士たちに託したわけです。きっと。
彼はタルテッソスの柱の言葉が人類を絶望させてしまう絶対の禁忌だとまで思わなかったかもしれないのです。多分。

どこまで行っても断言できないので、結局のところ読者がどう捉えようとするかになるのですけど。部分と全体が実は同じ表現をしてるような構造って、面白いなと思うんです。

どうにも理解できないのはやはり「神は御自分にかたどって人間を創る前に、山の老人に彼の島を沈めさせた」ですかね。
神はネアンデルタールの熊神 山の老人は絶滅したネンデルタール人達 神にかたどられた人間とはイスラエルの祖アブラハム、とかなのかな やっぱわかんないですね。
長々と書き込みさせて頂き、ありがとうございました。
2019年10月07日 03:20
『ヌビア聖書』の一節は、私も色々と考えましたが、けっきょくよく分かりませんでした。連載完結時にはいつか「解決編」が描かれることを期待していましたが、今では、想像の余地を残した終わり方も悪くはなかったかな、とも思います。
山のサボー
2019年11月05日 18:52
度々すみません ちょっと思い付きましたので追記を
プリツェルが語るヌビア聖書の言葉「神は御自分に似せて人間を作る前に、山の老人に命じて彼の島を沈めた」についてです。
この問題は、イリヤが最終的に推理したアトランティスの歴史や、グレコ神父が語った話と、全く辻褄が合わないことなんですね

グレコ神父もプリツェルも、キリスト教異端派が収集したヌビア聖書を旧約聖書以前の神の教典であるといいます
ユダヤ民族の神話が発生したのはモーセの時代になりますから、3500~3300年前頃でしょうか。実際のモーセ五書はもっとずっと後の時代らしいですが、伝承はあったでしょう。
ヌビア聖書はそれよりも前の時代からあった神話伝承だということになります。ヤハウェのすごく古い神話ではなくて、ヤハウェより古い別の神様の話、と捉えることが出来ます。
グレコ神父がいうヌビア聖書はエノクの書です。アトランティス滅亡が4500年前だとして、エノクはそれ以前のアトランティス時代の人物の可能性があり、ノアは沈没するアトランティスから逃れた人だったかもしれない

一方、大英博物館所有のシャバカ石は、既に当時(2700年前頃?)には失われてしまった創造神プタハの神話を集めて記したものだそうです。プタハは言葉から世界を創造した神だそうです
ググるとヌビアは3800年前頃には都市があったらしく、またヘロドトスによると5000年前のナルメル王がメンフィスにプタハ神殿を建てたとあるそうです
プリツェルがいうヌビア聖書は、旧約聖書の創世記によく似た、旧約聖書よりも古い別の神の神話ですから、多分プタハ神の経典なのでしょう
だとするとプリツェルとグレコ神父はまぎらわしくも似たような事を言っていますが、出典が異なるわけです
エノクの書はノアの一族の預言者たちに秘密として受け継がれたので、原書自体はヌビアには入らなかったんじゃないかと考えられます。
バチカン所蔵のヌビア版エノクの書断片がいつどうして作成されたのかはちょっと不明ですね。アトランティス時代~滅亡時の混乱期とかなのでしょうか

想像ですが、アトランティス文明が周辺の地域に影響した際に彼らの神話も伝わった。その神話伝説はそれぞれの土地や王権に合わせて変形していき、細部の異なる内容のエピソードとして残ったのではないでしょうか
プリツェルのヌビア版創世記は、アトランティス沈没事件の後で、伝わっていた歴史や神話をプタハ信仰が取り込んで、プタハ神の人類創造神話に挿入した物語、と考えることが出来るのではないでしょうか。
「プタハ神は御自分に似せて人間を作る前に、山の老人に命じて彼の島を沈めた」 ここでいう山の老人は、プタハ神の下位の魔神とか精霊みたいなポジションでしょうか。「我々プタハ人類はアトランティスと全く関係ないよ」という話となります。
そもそもエノクの書に創世記の記述自体が入っていたのか、またはプタハ神話を参考にして後にユダヤ神話も作られたという流れなのかもしれません。

まとめますとプリツェルとデメルの意味深な会話は、終盤でグレコ神父が語るエノクの書とは別件で、「山の老人という名前はすごく昔から人々に知られていた」というだけの情報なのかも知れない、という思い付きでした。
改めて読み返すと、解説が途中に入ったり、背景の画が聖書っぽかったり、デメルは如何にもなセリフ言うしで、ミスリードを誘ってたんですかね・・・。後で説明を入れるつもりだったけど、紙面が足らなくなったのでしょうか。
まあ、この解釈自体も私の想像ですのでなんとも言えませんが
ちなみにフロイトは、エジプトのアマルナ改革によるアテン信仰を元にして、モーセが唯一神ヤハウェを考案したのではないかと言っております。イリヤッドでは特に触れられませんでしたけども

長文失礼いたしました
2019年11月06日 02:59
作中の全情報を整合的に解釈するのは難しいと思います。どの情報がどこまで真実を語っていて、それはいかなる経緯で伝えられたのか、ということまで考えさせられるという意味では、読みごたえのある作品だったと思いますし、じっさい楽しめました。
山のサボー
2019年11月18日 00:22
またちょっと思いついたので、自分なりにまとめてみました。何度もすいません。

エノクの書の由来ですが、書の内容はエノクの後の時代のノアの洪水の物語です。エノク自身はアトランティス時代の人物かも知れませんが、エノクの書が物語として編纂されたのはノアの時代以降となります。グレコ神父は書がノアにも受け継がれたと言ってますから、実際はたぶんノアがまとめた聖書なのでしょう。であれば、グレコ神父がエノクの書らしき言葉を引用した「神は山の老人(すでに滅びたネアンデルタール人)に命じて、彼の島を沈めた」とは、歴史的事件を文学的に表現したものと素直に読むことが出来ます。
また、イリヤはアトランティスを女神信仰の母系社会と考えていますから、エノクの書の内容は今ある男性原理宗教、洪水伝説を含み、男神による文化創造神話を持った宗教の正統性にダメージを与える禁忌であることが想像できます。

アマゾクの地下墓地には天を支える牝牛神ネート、メドゥーサ、アテナの像が並び、壁にはウサギが羊に向かって海を渡る絵が描かれていました。バシャはそこでヘロドトスの言葉「アトランティス族は動物の肉を食さず(草食性のうさぎ?)、決して夢を見ない(瞬きしない蛇?)」とイリヤに答えます。
アトランティス族はウサギであり蛇でもあるという解釈が正しければ、イソップ柱の王国寓話と重ねることが出来ます。柱の神(牝牛神ネート)-メドゥーサ(ウサギの国)-アテナ(フクロウの国)。
ワードさんの所有する牝牛神ネート像は蛇を絡ませた造形をしており、始皇帝の墓には神農の他に蛇神夫婦の女媧と伏羲が描かれていました。グレコ神父はサン・ルーカルでルーキアと呼ばれるフクロウの柱(ネアンデルタール??)からルキフェルを連想します。ルキフェルはサタンであり、イブを唆したヘビ。出雲編でグレコ神父はウサギを神と人の橋渡し、文明の伝達者、とても賢い存在とも表現しました。そういえば神社のしめ縄は蛇を表すとか聞いたような覚えがあります。
細かいところ不明瞭なのですが、ネアンデルタール(牛)-クロマニオン(蛇)-人類イベリア族(ウサギ)-人類アマゾネス族(フクロウ)くらいにも考えられるのかもしれません。

赤穴博士はかなり早くから、昔話が人類共通の古い記憶であり、人類の文明の起源と関りがあると考えていたようです。また時の王権は歴史書を都合よく改竄することも指摘していました。
作中でアトランティスを見つけるのは文明人かつ無神論者である日本人だという話があり、管理人さんは日本人がホントに無神論者であるだろうかと疑問を抱いておりました。或いは、原作者は出雲神話をひっくり返したような世界をアトランティスとして話を組み立てたのではないでしょうか。だからこそ作品の主人公が日本人であり、最もアトランティスに近いという、メタなメッセージでもあったのかなぁと。ちょっと強引ですが。
山のサボー
2019年11月18日 00:25
人類の古い神話が共通の起源であるなら、旧約聖書と出雲神話を補完し合えばアトランティス-エノクの書に近づけるはずです。旧約聖書では神が独力で世界を創造した。出雲神話ではイザナギとイザナミが国生みを行った。そしてこれらの歴史書は改竄されたものと考えます。
出雲神話の国生みではイザナギ・イザナミ夫婦が天の御柱を周り、初めにイザナミが言葉を発したが上手くいかず、イザナギから言葉を発することで正しく世界が生まれたとあります。イリヤ論でいくと始まりは女神ですから、正しくは「始めに女神が言葉を発して世界を創造した」となるのでしょう。
イザナミは出産の際に命を落とし、悲しんだイザナギは生まれた子を殺して、イザナミを連れ戻しに黄泉の国へ向かいますが、結局離別してしまいます。

旧約聖書の神ですが、創世記によるとご自分に似せて土から人間の男女を作っています。この二人はアダムとリリスであると言われます。聖書には万物の創造神である唯一の神しかいないわけですから、欠けているのはリリスを作った「妻である女神」となるわけです。
モーセ以前のユダヤ人は牡牛神を信仰していたとあり、レバノン出身のフェニキア人の神バアルは牡牛の角を象徴とするとあります。イリヤッドにおいてバアルはヘラクレスでもある。ヘラクレスは妻子を殺した罪に苦しむ男です。アントン氏の説によるとバアルの角-ヘラクレスの柱は恐ろしい世界との境界だった。牡牛神の妻は牝牛神でしょうから、ひょっとしたらエノクの書には牛神の夫婦による世界創造と、その後の決別が記されていたのかも知れません。
また、リリスはアダムと別れた後に神の怒りを買い下半身を蛇にされます。彼女もイブを唆したヘビと言われるようです。リリスを説得しに来た天使との会話は、イザナギとイザナミの断絶の会話を髣髴とさせる言葉があります。或いはエノクの書には文化創造神である蛇女神あたりも書いてあったのかも知れません。ついでに聖書の神を偽神だとするグノーシス思想も、元はプラトン哲学からなのだそうです。

世界中の洪水伝説を持った宗教の起源がこんな感じなのであれば、男神による文化創造神話を持つ宗教はその正統性を疑われはするでしょう。そういう意味では世界中で大小様々な混乱・分断・対立が起こる可能性は否定できないのかも知れません。
ただ、グレコ神父がこだわっていたのはエノク書の中の進化論っぽい記述です。「彼ら(山の老人)は狒々を指差し、次のお前たちだといった」
グレコ神父はバトラー神父と対の役であり、二人が苦しんだのは「神は人間を愛しているのだろうか?」という不安だったかと思います。バトラー神父はイリヤとの会話で開眼し、ついには教会の教えに背いて柱の神の慈悲に倣います。グレコ神父は最後まで主(神の子イエス?)への信仰を貫いた人物ですから、山の老人の言葉は何より許せなかったのかも知れません。
グレコ神父や張先生ら山の老人たちには、日本人がへんてこな生き物に見えるのでしょうか。日本人からすると逆にムズカシイ話のように感じますね。
2019年11月18日 03:58
グレコ神父たち秘密結社が何を隠したかったのかは、作中では明示されなかったので、議論があるのは当然だと思います。進化論的な言い伝えは私も気になりましたが、すっかり進化論の定着した21世紀に命をかけて守るほどのものかとも思いますし、結局のところよく分かりませんでした。

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