岩明均『ヒストリエ』4巻発売(講談社)

 21世紀になってからというもの、ほとんど漫画を読むことのなくなった私ですが、『イリヤッド』とこの『ヒストリエ』だけは熱心に読んでいます。『イリヤッド』は123話で完結しましたが、『ヒストリエ』のほうはまだ連載が続いています。『イリヤッド』のほうは、途中から掲載誌も買っていましたが、『ヒストリエ』のほうは、単行本のみ購入していますので、単行本を読むまで内容は知りません。風景の描写は『イリヤッド』のほうが丁寧なのですが、岩明氏はアシスタントを用いないという方針のようなので、仕方のないところでしょう。しかしだからといって、『ヒストリエ』から手抜き感や雑な感じを受けるわけではありません。
 『ヒストリエ』の主人公は、エウメネスというたいへん頭の切れる男性です。どうも、アレクサンドロス大王配下で、後継者戦争においても重要人物だったエウメネスのことらしいのですが、3巻の時点では、まだアレクサンドロスに仕えるところまではいっていません。エウメネスの前半生はよく分かっておらず、おそらくはほとんど創作だろうと思われます。

 物語は、エウメネスが故郷(生地ではないのですが)のカルディアに帰還する直前から始まります。アリストテレスと遭遇したり、そのアリストテレスのせいでアケメネス朝の官憲に追われたりしつつ、なんとかエウメネスはカルディアに帰還します。そのカルディアはマケドニア軍に包囲されていましたが、エウメネスはなんとか城内に入ります。かつての自宅を訪れたエウメネスですが、自宅は廃墟になっていました。その廃墟にて、エウメネスはカルディア時代のことを想起し、物語は時間をさかのぼってエウメネスの少年時代に移ります。
 たいへんに賢明なエウメネスは、裕福な家の次男として恵まれた生活を送っていましたが、父のヒエロニュモスの殺害後、じつはスキタイ人であることが暴露され、奴隷身分になってしまいます。かつて、ヒエロニュモスは奴隷の買い付けに出向き、スキタイ人の一家を奴隷にしようとしたのですが、一家が抵抗したため斬り合いになりました。エウメネスの母親は奮闘しましたが、ついに殺され、まだ幼いエウメネスは捕らわれてしまいました。母親の死体を見ても動じないエウメネスを見たヒエロニュモスは、エウメネスの資質を高く評価し、実子同然に育てていたというわけです。

 奴隷身分となったエウメネスは奴隷商人に購入され、オルビアへの航海の途中に船が難破し、パフラゴニアのボアという村へと漂着します。ここでエウメネスは、ある一家のもとで暮らすことになり、ともに耕作したり剣術を学んだりして、すっかり村での生活に馴染んでいました。このボアという村は、ギリシア人の町ティオスに作物を納めることで、その庇護を受けていたのですが、ある日、輸送中の村の作物がギリシア人風の兵士に略奪され、村人が殺害されるという事件がおきます。
 あるいは、ティオスがこの略奪事件に関わっているのではないかという、村の住民の疑念のなか、作物を奪われた弁明と盗賊調査・警備強化の依頼のために、エウメネスたちはティオスを訪れます。一行は、ティオスの名家であるフィレタイロス家に釈明に向かいますが、フィタイロス家が襲撃に関わっているのではないか、との疑念を深めます。一方、フィレタイロス家の当主の長男ダイマコスは、村を訪れて許嫁のサテュラと対面し、3巻はここで終了となります。

 4巻は、30~35話「パフラゴニアにて・7~12」、36話「オデュッセウス」、37話「レスボス島-生物学研究所・1」、38話「レスボス島-生物学研究所・2」の9話が収録されています。1~3巻の表紙はエウメネスだったのですが、4巻の表紙はバルシネという女性です。バルシネはアケメネス朝トロイアス州総督の妻で、1話に登場してアリストテレスを追っていましたが、後にアレクサンドロス大王の愛妾になる女性と同一人物のようです。バルシネは、37話にて1話以来久々に登場することになります。今回は、『ヒストリエ』の3巻までの紹介にとどめ、後日改めて、4巻についての雑感を述べていくことにします。

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