2007年の古人類学界

 あくまでも私の関心による整理ですが、今年の古人類学の動向を以下の三つにまとめました。
(1)人類の定義に関わりそうな諸研究が相次いで発表された。
(2)フロレシエンシスをめぐる激論は収束に向かいつつあるのではないか。
(3)ネアンデルタール人についての情報も着実に増加しつつある。

 まず(1)ですが、チンパンジーやゴリラなど現生類人猿の道具使用が相次いで報告されました。
http://sicambre.at.webry.info/200702/article_15.html
http://sicambre.at.webry.info/200702/article_24.html
http://sicambre.at.webry.info/200711/article_29.html
http://sicambre.at.webry.info/200712/article_6.html
この中にはかなり複雑な道具もあり、人類の道具使用の歴史とその意義について、今後さらなる検証が必要だと言えます。

直立二足歩行についての重要と思われる研究も相次いで公表されました。直立二足歩行は人類と類人猿の共通祖先の段階において樹上で始まり、樹上生活での直立二足歩行には利点があったとの指摘があり、
http://sicambre.at.webry.info/200706/article_2.html
直立二足歩行の起源は2100万年前までさかのぼるとの指摘もありました。
http://sicambre.at.webry.info/200710/article_17.html
また、チンパンジーとの比較による直立二足歩行の効率性についての指摘がありました。
http://sicambre.at.webry.info/200707/article_20.html
直立二足歩行は人類の重要な指標とされてきましたが、あるいは今後見直されることになるかもしれません。人類の定義に関わる問題だけに、今後の研究の進展が期待されます。

 次に(2)ですが、インドネシア領フローレス島の更新世の人骨群の発見以降、これが人類の新種フロレシエンシスなのか、それとも発達障害の現生人類なのかという点をめぐって、激論が展開されてきました。今年になって、相次いで新種説を肯定する研究が提示され、この問題については、ほぼ新種説で確定したと言ってよいのではないか、と思います。
http://sicambre.at.webry.info/200701/article_32.html
http://sicambre.at.webry.info/200708/article_19.html
http://sicambre.at.webry.info/200709/article_23.html
現在、フローレス島とその周辺の島で発掘が進められていますので、
http://sicambre.at.webry.info/200701/article_27.html
http://sicambre.at.webry.info/200705/article_23.html
その成果に期待しています。

 (3)ネアンデルタール人については、現在ゲノム解読が進められていますが、昨年公表された途中成果については、試料汚染の可能性が指摘されています。
http://sicambre.at.webry.info/200710/article_21.html
このゲノム解読と関連して、言語能力に関わるとされるFOXP2遺伝子の現代人型の変異が、ネアンデルタール人にもあることが判明した、との研究も公表されました。
http://sicambre.at.webry.info/200710/article_29.html
ただ、試料が現代人のDNAに汚染された可能性もあります。また、ネアンデルタール人がじゅうらい考えられていたよりもずっと東方まで進出していたことも判明しました。
http://sicambre.at.webry.info/200710/article_5.html

 古人類学は不確定要素が多いので、毎年のように重要な研究が公表され、飽きることがありません。来年も、どのような研究が公表されるのか、今から楽しみです。

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