新たな方法による人類系統図

 これまでとは異なる方法で、以前からよく知られた17の標本を改めて分析し、人類と類人猿の系統図を作成した研究(González-José et al.,2008)が報道されました。オンライン版での先行公開で、まだ要約しか読んでいませんが、このブログの記事でやや詳しく内容を知ることができました。

 この研究では、長期にわたる頭骨の連続した変化に焦点が当てられました。じゅうらいの系統分析のほとんどが、非連続的で独立した特徴を用いたために、系統発生の標識を無視する傾向にあったのですが、この研究ではそうした欠陥の克服が意図されています。

 この研究で提示された系統図は、これまでの主流の見解と大きく異なるものではありませんが、色々と興味深い点もあります。アウストラロピテクス属は、アファレンシス・アフリカヌスといった華奢型と、エチオピクス・ボイセイ・ロブストスといった頑丈型に区分されることが多く、後者はパラントロプス属と分類されることもあり、古いエチオピクスからボイセイとロブストスが派生したとされます。しかし、パラントロプス属とされるこれら3種は、同一系統ではないとの見解もあります(諏訪.,2006)。その意味で、この研究で提示された系統図において、エチオピクスがボイセイやロブストスよりもアファレンシスのほうと近い関係にあるのは、なかなか興味深いと思います。

 この系統図では、ホモ属の開祖はハビリス(用いられた標本はKNM-ER1813)とされますが、ハビリスという種区分には曖昧なところがありますし、ハビリスと分類される人骨群がホモ属なのか否か、議論になっています。また上記のブログのリンク先にもあるように、KNM-ER1813の年代は190万年前頃であり、この頃にはエレクトスが存在していた可能性もあります。したがってKNM-ER1813自体は、ホモ属の開祖でも現代人の直系祖先でもないかもしれません。しかし、200万年前以前にKNM-ER1813的な人類集団が存在したとすると、彼らがホモ属の開祖または直接の祖先だったと言えるかもしれません。

 この系統図ではホモ=ローデシエンシスと分類され、エレクトスとサピエンスとをつなぐ中間的な人類とされることが多いカブウェ人骨(ハイデルベルゲンシスまたは古代型サピエンスと分類されることもあります)が、サピエンスと疎遠な関係にあるのは意外でした。今後、エチオピアのボド人骨・タンザニアのンドゥトゥー湖人骨・南アフリカのエランズフォンテイン人骨やフロリスバッド人骨など、エレクトスとサピエンスの間を埋めるとされる人骨群についても、この研究で提示された方法による分析が期待されます。


参考文献:
González-José R. et al.(2008): Cladistic analysis of continuous modularized traits provides phylogenetic signals in Homo evolution. Nature, 453, 775-778.
http://dx.doi.org/10.1038/nature06891

諏訪元(2006)「化石からみた人類の進化」『シリーズ進化学5 ヒトの進化』(岩波書店)、関連記事

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