日本列島最古の石器?

 島根県出雲市の砂原遺跡で、12万年前頃の石器が20点発見された、と報道されました。
http://www.asahi.com/culture/update/0929/OSK200909290054.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090929-00000103-jij-soci
http://www.jiji.com/jc/p_archives?id=20090929183630-8505292

 日本列島における人類の痕跡がいつまでさかのぼるのかという問題については、いわゆる旧石器捏造事件以降、マスコミも含めて慎重な姿勢が強くなっている、との印象があります。それだけに、この報道は衝撃的と言えるでしょう。今回の発表にどれだけの信頼性があるのかというと、報道だけではなんとも判断できませんが、もしこれが本当に人類の加工による石器で、年代が妥当だとすると、たいへん興味深い発見であることは間違いありません。石器は火山灰層の下にあったとのことですから、後世の嵌入がなければ、12万年前頃との推定年代に無理はないでしょう。報道によると、スクレーパーもあるとのことですが、石器に詳しくない私には、他の地域のどの時代に類似した石器があるのか、どうもよく分かりません。

 12万年前頃に日本列島に人類がいたとすると、どの人類種だったのか、気になるところです。ホモ=エレクトスの末裔なのか、もっと後の時代に出アフリカを果たしたホモ=ハイデルベルゲンシス的な人類の末裔なのか、それともホモ=サピエンス(現生人類)なのか、色々と可能性を考えるのは楽しいものです。12万年前頃に日本列島に現生人類がいたとの見解は、荒唐無稽と言われそうですが、ジャワ島で発見された125000年前頃の歯は、現生人類のものと推定されています(Morwood, and Oosterzee.,2008,上巻P115)。

 これは、まだ確定した説とは言えませんし、今後さらなる検証と類例の発見が必要となるでしょうが、125000年前頃に現生人類がジャワ島まで進出していた可能性は真剣に考慮されるべきだと思います。その意味で、12万年前頃に日本列島に現生人類がいた可能性も考えられます。ただ、その頃日本列島に現生人類がいたとしても、現代の日本人にその遺伝子が継承されている可能性は低そうです。少なくとも、父系・母系の単系統遺伝(Y染色体・ミトコンドリア)では、現代日本人は「12万年前頃の日本列島人」の系統を継承していないでしょう。


参考文献:
Morwood M, and Oosterzee PV.著(2008)、馬場悠男監訳、仲村明子翻訳『ホモ・フロレシエンシス』上・下(日本放送出版協会、原書の刊行は2007年)
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この記事へのコメント

kuroneko
2009年09月30日 22:22
12万年という年代がじつに、思わせぶりですね。これで、あちこちで12万が出れば信憑性も増すのだろうが。ところで、長崎の報告書って出てるんでしたか?同じ先生ですよね。記者発表や記者会見でなく、双方の比較もあわせた分析結果が待たれます。
2009年09月30日 22:44
色々とご教示いただくことが多く、感謝しております。

長崎の遺跡は入口遺跡のことでしょうか?日本人でありながら、更新世の日本列島の遺跡のことはよく知らないので、報告書が出たか否か、まったく知りません。恥ずかしい限りです。

自分の関心にしたがって色々と読んでいると、更新世についてはどうしてもアフリカ・西アジア・ヨーロッパ中心の知識に偏ってしまうので、なんとかしないといけないな、とは思うのですが。

この記事へのトラックバック

  • 砂原遺跡の石器の年代

    Excerpt:  島根県出雲市の砂原遺跡で発見された石器は、日本列島では最古となるだろう12万年前頃のものだ、との報道を以前このブログで取り上げましたが、 http://sicambre.at.webry.info.. Weblog: 雑記帳 racked: 2010-05-28 06:51
  • 砂原遺跡をめぐる議論

    Excerpt:  日本列島では最古となるだろうと報道された、島根県出雲市の砂原遺跡で発見された石器については、このブログでも取り上げたことがありますが、 http://sicambre.at.webry.info/.. Weblog: 雑記帳 racked: 2010-07-07 06:30