栗田伸子・佐藤育子『興亡の世界史03 通商国家カルタゴ』

 講談社の『興亡の世界史』シリーズ19冊目となります(2009年9月刊行)。カルタゴの歴史を扱っていますが、フェニキア史としての性格も有しています。フェニキア・カルタゴ史の知識に乏しい私にとっては、新鮮な見解が多く提示されていたということもあり、なかなか面白く読めた一冊でした。とくに、前5世紀前半のシチリアでの敗戦がカルタゴにとって転機となった、との見解は興味深いものでした。カルタゴの運命を知っている後世の人間にとって、カルタゴ史の通読は、読み進むにつれて陰鬱な気分になりがちですが、悪い意味ではなく淡々とした筆致のためか、後半もそれほど気分が滅入らずにすみました。

 本書のもう一つの楽しみは、『イリヤッド』の世界観と関連した記述を多数読めたことです。『イリヤッド』におけるフェニキア人は、アトランティス文明を間接的に継承し、ソロモン王の命によりアトランティスを探索し、ついにはアトランティスにまつわる重要な秘密をつかんだ民族でした。メルカルトとヘラクレスとの関係や、テュロスのメルカルト神殿の2本の柱など、『イリヤッド』におけるフェニキア人にまつわる設定が、歴史的事実を時として改変したり都合よく利用したりしたものであることがよく分かり、改めて『イリヤッド』における世界観の奥深さを感じ取ったしだいです。

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