大河ドラマ『風と雲と虹と』第18回「氏族放逐」

 将門は伯父の良兼とともに源護の館を訪れ、同じく将門の伯父の国香・叔父の良正も集まり、土地問題を話し合う会議が開かれます。源護の館に赴く途中、良正が護の次女定子に恋をしていることが判明します。会議の始まる前、良兼は想いを寄せている詮子に楽しそうに話しかけ、舞い上がっていますが、詮子の方は冷淡とも見える態度をとります。詮子のほうも良兼を嫌っているわけではないにしても、両者の関係が良兼側からの一方通行になっていることがうかがえます。

 護の館は豪勢な造りになっていて、護が常陸大掾を勤めていた間、民人からずいぶんと搾り取っていたのだろうな、と将門は考えます。都での暮らしにより、素朴な将門にも世の中の仕組みというものがだんだんと分かるようになっていたわけで、将門の成長が見てとれるという意味で、なかなか話の構成がしっかりしているな、と思います。会議では、酒を飲んだ勢いもあって、良正が将門に激昂し、将門を罵倒しますが、国香と良兼が制します。

 護は、将門の父である良将から土地譲り受けた証である手形と、それが正規の手続きを踏んだものであることを示します。しかし将門は、日付が父の死後になっていることに疑問を呈します。それにたいして国香は、手続きが後日になっただけだと説明し、良将からの手紙を将門に見せますが、土地のことに触れられていない、と将門は疑問を呈します。国香は、公的文書ではなく私信であり、はっきりと土地と書かれているわけではないが、お取り計らいくだされし条々が土地のことなのだ、と説明します。

 将門は、土地は坂東人にとって命・体そのものであり、そのような大切な土地を父が揉め事の取引のために譲ったことが信じられない、と言います。良兼は、将門の気持ちも分かると言いながら、それ故に、良将は護に土地を譲ったことを将門に言えなかったのであり、良将の気持ちに配慮して、国香もこれまで言い出せなかったのだ、とじつに巧妙な説明をします。いかにも親切そうに見えながらも、相手を騙そうとする腹黒い良兼を長門勇氏が好演しています。

 ところが、それでも国香や良兼の説明が信じられない、と将門は言い、怒りあきれ果てた護は、後は一族の問題だと言って退席します。護の機嫌を損ね、一族の恥をさらしたということで、良正は激怒しますが、国香と良兼は必死になだめます。しかし良正の怒りはおさまらず、良正護の館の前では刀を抜いて将門に斬りかかります。国香と良兼の自分にたいする殺意を見てとった将門は、良正に同心するなら相手をしよう、と国香・良兼に言い放ちます。さすがに護の館の前での斬り合いはまずい、と国香・良兼は良正を制します。そこへ護と三人の娘が現れ、将門は小督と久し振りに再会しますが、すでに小督への想いは自分の中では終わっていることを、改めて自覚します。

 護の館から去った将門は、以前筑波の歌垣の帰りに立ち寄った、老人の自宅を再訪します。その老人は国香に長く仕えたことがあり、源護と平氏一族の土地が複雑に入り組んだその一帯の事情に精通していました。老人はかつて将門に、この近辺は良将の土地で、国香が預かっているのだ、と将門に語ったことがありました。そのことを証言してもらいたいと頼む将門に、老人はうなずきます。そこへ、外から矢が射掛けられ、ここはあなたの領地だ、と言い残して老人は亡くなります。おそらく、国香の命により将門をつけていた佗田真樹の仕業なのでしょう。第3回
http://sicambre.at.webry.info/200909/article_23.html
に登場した老人がここで重要な役割を果たすことになるとは予想していなかったのですが、今になってみると、あのときの会話が伏線だったのだ、と分かります。こうしたところがこの作品の優れているところで、一度だけではなく複数回見るに耐える名作なのだろう、と思います。

 その後、問題となっている所領が護の名義になった日付のすこし後に、伯父たちが護から少しずつ所領を譲り受けていたことを将門は知ります。伯父たちは、良将の所領を押領し、その証拠隠滅のために、押領した土地を護名義にした、というわけです。しかし将門は、伯父たちへの怒りを働くことで忘れようとします。その年の秋、良兼は詮子を後妻に迎えましたが、将門は祝いの宴に招かれませんでした。翌年2月、良正が定子を第二夫人に迎えます。いずれの時も、将門からの祝儀は突き返されました。将門の弟である将頼(三郎)は、これは我々を平氏一族から追放するということなのだ、と言います。ならば、我々は自分たちだけで立っていこう、と言う将門ですが、一族の助けを受け入れられないことの辛さを自分は味わってきた、と将頼は言います。それでも自分はやってみせる、と将門は力強く宣言し、皆に苦労をかけてすまないが、自分を信じてついてきてほしい、と言い、その場の者全員が肯きます。

 将門の一族での立場が悪くなるなか、貞盛が帰郷して将門を訪ねます。父の国香から相談があると言われて一時的に戻ってきたのだ、貞盛は言います。貴子のことを頼むという将門にたいして、貞盛は素直に詫びるものの、将門が急に都からいなくなるから悪いのだ、と弁明します。しかし、嘘をつくなと将門に言われた貞盛は、またしても素直に詫びるものの、お前がはやく自分のものにしないから悪いのだ、とあくまでも自己弁護に終始します。怒っているのか、と貞盛に問われた将門は、そうではない、ただ貴子を不幸にしてくれるな、と言い、貞盛は肯きます。ひどい裏切りのようにも思われますが、恋ではなく坂東の一族郎党・民人・土地とともに生きること強く決意している将門にすれば、恋の裏切り(と断言できるのか疑問の残るところではありますが)があってもなお、貞盛への友情のほうが大切だ、ということなのでしょう。対照的なこの両者の関係は本当に面白いものです。

 貴子についての話はこれで終わり、貞盛は本題を切り出します。貞盛は、都で身を立てるつもりではあるものの、坂東に所領があるいじょう、坂東でも妻を迎えることが必要だと父の国香に進められたこともあり、小督を妻にするのだ、と将門に語ります。これを聞いた将門は、さすがに複雑な表情を見せます。貞盛の結婚の話を聞いた将門の母親は、誰か結婚を考えている相手がいるのか、と将門に尋ねます。そのとき将門の脳裏に浮かんだのは、良兼の娘である良子でした。今回はこれで終了ですが、国香・良兼という伯父たち、さらには護の腹黒さと愚直な将門との対照性が鮮やかに描かれ、今後の将門の進むべき道が見えてきたという意味で、重要な転換点になった回ではないか、と思います。見所も多く、もちろんこれまでの17回も面白かったのですが、さらに楽しめる内容になっていて、今後の視聴も期待できそうです。

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