2009年の古人類学界

 あくまでも私の関心に基づいたものですが、今年の古人類学でもっとも注目されたのは、なんといってもアルディピテクス=ラミダスの詳細な研究でしょう。
http://sicambre.at.webry.info/200910/article_3.html
この研究は『サイエンス』で特集が組まれ、2009年度の『サイエンス』の科学的ブレークスルートップ10の1位にも選出されたくらいです。これだけ詳細に分析された人類骨としては最古のものとなり、それだけでも高い価値がありますが、人類進化についての再考も提言されており、ひじょうに意義深い研究でした。

 2004年の『ネイチャー』での報告以来、人類の新種ホモ=フロレシエンシスなのか病変の現生人類なのか、議論が続いてきた、インドネシア領フローレス島の更新世後期~末期の人骨群については、新種説がさらに支持を集めた感があり、大勢は決したように思われます。“Journal of Human Evolution”の特集号でも、フローレス島の更新世後期~末期の人骨群を病変の現生人類とする説は退けられていました。
http://sicambre.at.webry.info/200911/article_19.html

 ネアンデルタール人のゲノム解読も進展し、ドラフトゲノム解析が完了したことが報道されました。
http://sicambre.at.webry.info/200902/article_14.html
これらの報道では、ネアンデルタール人と現生人類との混血のもっとも有力な根拠とされていた、脳の大きさの調節に関わっているとされるマイクロセファリン遺伝子の分析から、ネアンデルタール人と現生人類との混血の根拠が認められなかったことから、ネアンデルタール人と現生人類との混血に否定的な論調がもっぱらでした。しかしその後、ネアンデルタール人のDNAに関する第一人者とも言うべきスバンテ=ペーボ博士は、ネアンデルタール人と現生人類との間の性交渉は確実であり、問われるべきは、両者の間に子供が生まれたのか、生まれたとして、その子供たちがどのていどの繁殖能力を持っており、現代人の遺伝子にどのていど寄与したのかということだ、と考えていることが報道されました。
http://sicambre.at.webry.info/200910/article_29.html
今後の注目は、ネアンデルタール人と現生人類との間の混血の決定的な根拠を提示できるか否か、ということです。

 この他にも、取り上げるべき事柄は多いのですが、今年になってかなり多忙になったこともあり、以前と比較して勉強が停滞しているのは否めず、重要な研究でありながら把握しきれていないものも多いのではないか、と思います。私は古人類学の専門家ではないだけに、時間的制約は厳しいのですが、今後は、できるだけ工夫して、幅広く情報収集に努めていきたいものです。

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  • 2016年の古人類学界

    Excerpt:  これは12月29日分の記事として掲載しておきます。あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2016年)も古人類学界について振り返っていくことにします。今年の動向を私の関心に沿.. Weblog: 雑記帳 racked: 2016-12-28 11:59
  • 2017年の古人類学界

    Excerpt:  これは12月29日分の記事として掲載しておきます。あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2017年)も古人類学界について振り返っていくことにします。今年の動向を私の関心に沿.. Weblog: 雑記帳 racked: 2017-12-28 16:52
  • 2018年の古人類学界

    Excerpt:  あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2018年)も古人類学界について振り返っていくことにします。今年の動向を私の関心に沿って整理すると、以下のようになります。 Weblog: 雑記帳 racked: 2018-12-28 15:58