大河ドラマ『風と雲と虹と』第43回「武蔵の風雲」

 将門の所領に出羽から浮かれ人の一家がやって来て、将門は保護することにします。将門は、子供の頃に父の良将から浮かれ人について聞いたことを思い出します。将門は、民人が困窮しているのに、出羽国守は不動倉を開かなかったのだろうか、と疑問・批判を述べます。このような浮かれ人が増えると予想されるなか、国司に報告すると追い返されるということで、この浮かれ人の一家には開墾に従事してもらうとよいのではないか、と民人は提案します。国司に知られると怒られるぞ、と将門が忠告すると、殿が出羽の国府の役人ならば、すぐさま不動倉を開くだろうと言い、将門も笑って、浮かれ人を受け入れることにします。そこへ玄明が現れ、自分もこの浮かれ人の子供のようだった、と言います。

 将門追討使に任じられた貞盛は、将門追討の助力を得るべく、下野の藤太の館を訪れ、藤太と面会していました。藤太の所領は田畑が広がり民人は多く、皆豊かで健やかな様子だが、これは他国では絶えて見られないことだ、と貞盛は言います。すると藤太は、よく浮かれ人がやって来る、浮かれ人の発生の原因はもちろん様々だが、より豊かな土地へと流れ集まってくるということでは同じだ、それが昔は都だったが、近頃は都も当てにならないのだろう、と言って意味ありげに貞盛を見ます。貞盛は、自分が浮かれ人に見立てられているようで、愉快ではありません。この豊かな地を頼りにやって来る浮かれ人をどうするつもりなのだ、と貞盛が尋ねると、叩き出します、と藤太は答えます。自分にはそれほどの力はなく、浮かれ人を受け入れて国司の怒りを買う度胸もない、藤太は言います。藤太はさらに、石井の館の将門なら、あるいは浮かれ人を受け入れるだろうが、自分には将門と張り合う意思はない、と言って笑います。もちろん、これは藤太の本心ではないだろう、と思います。自分に協力するつもりはない、との藤太の意思を聞かされて、さすがに貞盛は穏やかではありません。藤太はにこやかに貞盛に酒を勧めますが、瓶にはもう酒はなく、藤太は手を叩いて家人を呼ぼうとしますが、思い直して自分で取りに行く、と言います。立場の弱い貞盛は、この屈辱にも耐えねばなりませんでした。藤太の真実の心をつかめず、同行してきた常陸介の藤原惟幾は事なかれ主義と、貞盛を取り巻く状況は厳しいので、貞盛の心は暗く、前途多難といったところです。

 権守・介として武蔵国に赴任した興世王と源経基は、朝廷の方針にしたがい、武蔵国で徴税・徴兵に努めていました。興世王の従者は、武蔵国の足立郡の郡司である武蔵武芝の館の様子を探ろうとしますが、番犬に騒がれてあっさりと見つかり、追い返されてしまいます。その興世王は、石井の館に将門を訪ねていました。興世王は板東を気に入り、板東に土着するつもりだ、大地に根を下ろして働くのが真の生き方だ、と語ります。さらに興世王は、都の堕落を批判し、都も公も長くはなく、そのとき強いのは大地に根を下ろした者だ、つまり将門たちだ、と語ります。武蔵は渡来してきた韓人の拓いた国なので、武蔵守には百済王が起用されそうだ、と興世王は将門に語ります。興世王は、新任の守が来る前に片をつける、と言い、片をつけるとはどういうことか、と将門に尋ねられると、公の権威を示すことだ、と言います。興世王は、板東に根を下ろすために、公の権威を利用するつもりなのだ、との意図を将門に話します。将門に権威とは何かと問われた興世王は、少々荒々しいこともするつもりなので、将門の力を借りたい、と言います。興世王は、誰かに訊かれたら、自分が将門の友であると答えてほしいのだ、と言います。将門は、その時が来たら考える、と曖昧な返答をします。

 年が明けて天慶2年(939年)2月、興世王と源経基が、莫大な献上物を目当てに足立郡に入部しようとしたところ、足立郡司の武芝の使者は、先例がないと言って断り、正式の国守が着任してからのことにしてもらいたい、と言いますが、公の権威を軽んじるものだとして、経基は激怒します。興世王は、兵を率いて必ず入部する、と使者を一喝して追い払います。最初が肝心だと考える興世王は、東国でもっとも豊かで信望が篤いとされる武芝を最初の目標としたのでした。

 この知らせを聞いた武芝は、献上物というか賄賂が目的であることから、板東者の意地を見せようとして、興世王の要請を無視することにします。すると、興世王と経基は兵を率いて武芝の倉から略奪し、武芝が私腹を肥やしていたという名目で、運べない武芝の財物を封印します。武芝とその配下は、このまま引き下がるつもりはありません。こうしたことがあって、興世王と経基の評判は板東できわめて悪い、と玄道・玄明が将門に伝えます。ただ、武芝の側も、反逆になるということで、合戦をしかけるには至りません。玄道は、父の古い友ということで、将門に熱心に仲裁を依頼しますが、将門は役人同士の喧嘩の仲裁はしたくない、と断ります。

 玄明は一人で武芝の館に行きますが、その館に見覚えが在るような不思議な感覚を覚えます。玄道の弟だと名乗った玄明は、武芝と面会することができました。武芝は、友であった玄道・玄明の父のことを当然のことながらよく知っているのですが、玄道に弟がいることを知らず、玄明に事情を尋ねます。玄明は山の中で育ち、ずっと父だと思っていた男性に育てられたのですが、その男性が今際の際に、自分は玄明の実の父ではなく、親兄弟について知りたければ、鹿島の神人の玄重を訪ねよ、と言い残しました。その後何年も玄明は一人で暮らし、ある時ふと思い立って玄重を訪ねたものの、すでに玄重は亡くなっていました。こうした事情なので、玄道と玄明が兄弟というのも定かではありません。玄明は、将門に仲裁を頼むよう武芝に勧めますが、火中の栗を好んで拾うような豪族・国司はいない、将門が来たら会おう、と武芝は言います。

 玄明は石井に戻り、坂東の豪族同士が手を結ぶのが一番よいのではないか、と将門に言います。ただし、それは夢物語だと武芝は言っていたが、とも玄明は言います。将門は、武芝に惚れたようだな、と玄明に言います。将門は、武芝が当面している問題は、自身のみならず全坂東のことになるかもしれない、と考えて、武芝の館を訪れることにします。武芝の館に着いた将門は、警戒心の強い番犬を懐かせ、武芝を感心させます。将門は、横暴な国司に屈するわけにはいかないが、田畑を荒らすことになる合戦をするわけにはいかないと言い、双方の歩み寄りを促します。武芝は、番犬が将門になついている様子を見て、将門に仲裁を任せることにします。

 興世王は正直なところこの状況に困っており、自分が悪いとの認識もあったので、将門の仲裁を受け入れることにします。興世王は、板東者は強く、武芝も頼もしい、と言います。何を考えているのだ、と将門に尋ねられた興世王は、自分でも何者なのかよく分からない、何かしてのけたいのだが、大した器量の持ち主ではないので困る、と言って笑います。そんな興世王を、将門はやや困惑したように微笑みながら見ています。興世王は、清和天皇の孫というのが自慢のお坊ちゃんである経基を説得するのは大変だろう、と言って笑います。将門は、譲り合うよう経基を説得しますが、自ら非を認めることになるではないか、と経基は和解に消極的です。すると、板東では力のある者が勝つのであり、経基が和解に反対なら合戦になるし、自分も将門も手を引く、と興世王は脅し、経基も仕方なく和解に同意します。

 武芝は興世王と経基を訪ね、興世王と経基が入部したさいに出迎えなかった非礼を詫び、興世王と経基は武芝から略奪した財物を返還することになりました。しかし、経基は不満気にその場を立ち去ります。経基が戻らないことを将門は心配しますが、すぐに戻って来るだろう、と興世王は楽観的です。そのとき、玄明の笛の音が聞こえてきて、武芝はその音に聞き覚えがあるようです。将門が、経基が未だに戻らないことに不安を抱いている、というところで今回は終了です。

 今回は、武蔵武芝という重要人物が新たに登場しました。演じる宮口精二氏の好演が印象に残りますが、玄道と深い関係にある人物という設定なので、これまでに何度か登場場面を用意しておいてもよかったのではないか、と惜しまれます。経基は、気位が高いだけの情けない人物として描かれていますが、誇張されているだろうとはいえ、『将門記』でも「いまだ兵の道に練れず」と評されるくらいですから(ちなみに、この一節は『将門記』の成立年代を推定する根拠の一つとされます)、史実での経基も、この時期まではこんな感じだったかもしれません。興世王には何を考えているのか分からない不気味さがあり、自身も自分のことをよく分かっていないような発言がでるところが、不気味さを強調しています。

 何を考えているのか分からないと言えば、藤太にもそういうところがありますが、さまざまな言動から、藤太にはしっかりとした信念があり、それを表には出していないだけだ、というのが分かるだけに、それほど不気味な感じは受けません。その藤太と貞盛との対面はたいへん面白いもので、普通の人ならば、あれだけ屈辱的な扱いを受けたら、藤太を不倶戴天の敵とみなすところでしょうが、人として重要なものが欠けており、それを自覚している貞盛であればこそ、後に藤太と組むこともできた、という話の構造になっているのでしょう。こうしたところも、この作品のよく出来たところだな、と思います。藤太は、貞盛を討てなかった将門に従うことはしませんでしたが、かといって、明らかに力の劣る貞盛の要請も婉曲に否定しました。これまでの描写からも窺えるのですが、やはり藤太は慎重な人物のようです。

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