小林敏男『日本国号の歴史』

 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2010年8月に刊行されました。本書では、網野善彦氏に代表される、日本国号の画期性を強調し、日本国号制定以前には「日本人」はいなかった、というような見解は、呼称の変化に本質(実体)を見る観念的言説だとして退けられ、自称としてのヤマトの連続性を強調する見解が提示されています。日本という表記は、倭に代わる国号として7世紀後半~8世紀初頭に定められましたが、倭にせよ日本にせよ、中華の地の諸王朝や朝鮮半島諸国向けの対外的なもので、日本列島(の大部分を覆う政治勢力)内部では、一貫してヤマトが用いられたのだ、と本書では指摘されています。

 本書では、日本という国号の表記の発信源は中華世界にあり、百済や新羅、とくに百済の知識人が倭の別称として用いたのが直接の起源で、それが渡来人などによりヤマトに伝わり、遅くとも天智朝期には、ヤマト朝廷周辺で百済系渡来人や知識人の間で使用されており、正式に対外的な呼称として採用される前提を形成していたのだ、と推測されています。この見解の是非を直ちに判断できるだけの見識は私にはありませんが、なかなか興味深い見解だとは思います。著者の提示する政治史、とくに4世紀以前の政治史については疑問がありますが、全体的にはなかなかの良書なのではないか、と思います。

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