ネアンデルタール人の狩猟戦略

 後期中部旧石器時代の動物化石の同位体分析から、動物の行動パターンとネアンデルタール人の狩猟戦略の解明への手がかりを提示した研究(Britton et al., 2011)の要約を読みました。この研究では、フランスにある後期中部旧石器時代のジョンザック遺跡で出土した動物(3頭のトナカイと1頭のバイソン)のエナメル質のストロンチウム同位体が分析されました。要約を読んだ限りでは、人骨の共伴には言及されていないのですが、フランスの後期中部旧石器時代の遺跡ということから、ネアンデルタール人の所産という前提で議論が進められています。

 ストロンチウム同位体の分析の結果、バイソンには定住的傾向の可能性が高いことが認められた一方で、3頭のトナカイには、季節的な移住パターンを示唆する値が認められました。さらに、3頭のトナカイのうちの2頭のパターンはとくに類似していることから、この2頭は同じ群れにおり、回遊中に同じ場所で殺されたと考えられるが、それはある一回の狩猟でのことか、短期間の複数回の狩猟でのことではないか、と指摘されています。さらにこの研究では、同位体分析により、動物考古学のデータを補足し、古生態学・古環境・ネアンデルタール人の狩猟戦略の推定が可能になる、と指摘されています。おそらくネアンデルタール人は、狩猟対象である大型動物の季節的な移住パターンについて、把握できていた可能性が高いのではないか、私は考えているのですが、この問題については、今後検証例を積み重ねていく必要があるのでしょう。


参考文献:
Britton K. et al.(2011): Strontium isotope evidence for migration in late Pleistocene Rangifer: Implications for Neanderthal hunting strategies at the Middle Palaeolithic site of Jonzac, France. Journal of Human Evolution, 61, 2, 176-185.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2011.03.004

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