後期下部旧石器時代のレヴァントにおける石刃生産

 後期下部旧石器時代のレヴァントにおける石刃生産についての研究(Shimelmitz et al., 2011)の要約を読みました。この研究では、イスラエルにある後期下部旧石器時代のクエセム洞窟の石器群について分析されています。クエセム洞窟の後期下部旧石器時代の層は7.5メートルで、年代は40万~20万年前とされています。後期下部旧石器時代のクエセム洞窟は、アシュールヤブルディアン複合文化に分類されていますが、そのほとんどは、石刃の優越するアムッディアンインダストリーとされています。アムッディアンインダストリーは、世界でも最古級の石刃生産技術の一つとされています。

 この研究では、クエセム洞窟の五つのアムッディアン石器群の詳細な分析結果が提示されています。この研究では、石刃の生産過程の詳細な分析結果から、体系的で連続的な石器製作が認められ、革新的で簡潔な技術と言える、と主張されています。こうした石刃生産は、中部旧石器のムステリアンと顕著に異なるわけではない、とも指摘されています。さらにこの研究では、計画性から、人間の行動における大きな変化は、後期下部旧石器時代までに起きたのではないか、と示唆されています。この論文の執筆者のうち二人は、別の論文でもクエセム洞窟の分析結果を提示していますが(関連記事)、いずれも、「現代的行動」の起源を考えるうえで、重要な研究だと言えるでしょう。

 体系的な石刃生産を含む「現代的行動」は、上部旧石器時代もしくは後期石器時代に一斉に始まる、としてきたじゅうらいの後期出現説・創造の爆発説はますます苦しくなり、諸々の「現代的行動」の多くは散発的に登場し、その多くの起源は中部旧石器時代もしくは中期石器時代にまでさかのぼり、この研究で主張されているように、体系的石刃の生産など一部は下部旧石器時代もしくは前期石器時代にまでさかのぼる、という散発的な早期出現説がますます有力になった、と言えるでしょう


参考文献:
Shimelmitz R, Barkai R, and Gopher A.(2011): Systematic blade production at late Lower Paleolithic (400–200 kyr) Qesem Cave, Israel. Journal of Human Evolution, 61, 4, 458-479.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2011.06.003

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