西ヨーロッパのネアンデルタール人の遺伝的多様性

 西ヨーロッパのネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の遺伝的多様性についての研究(Dalén et al., 2012)が報道されました。この研究では、ネアンデルタール人13個体分のミトコンドリアDNA配列が解析・比較されましたが、それらは既知のものだけではなく、スペイン北部のネアンデルタール人骨から得られた新たなものも含まれています。この解析・比較の結果が示唆しているのは、48000年前以降の西ヨーロッパのネアンデルタール人は、東ヨーロッパや48000年前よりも古い年代のヨーロッパのネアンデルタール人と比較して、ミトコンドリアの遺伝的多様性が低い、ということです。

 このことから、西ヨーロッパのネアンデルタール人の減少は、ホモ=サピエンスである解剖学的現代人の西ヨーロッパへの到着の前に起きていたのではないか、と指摘されています。つまり、西ヨーロッパのネアンデルタール人は、解剖学的現代人が西ヨーロッパへ進出する前に、すでに絶滅の危機を迎えていたのではないか、というわけです。ネアンデルタール人のミトコンドリアの遺伝的多様性が減少した時期は、寒冷期の海洋酸素同位体ステージ3と一致しており、その影響は西ヨーロッパでとくに大きかったのはないか、とも指摘されています。

 つまり、寒冷化により西ヨーロッパのネアンデルタール人は減少し、遺伝的多様性が乏しくなったのではないか、というわけですが、一方で、西ヨーロッパのジブラルタル半島南部のようなより温暖なヨーロッパ南部へと退避して生き延び、再び西ヨーロッパで一時的に居住範囲を拡大したのではないか、とも推測されています。この研究の結論自体はそれほど意外なものではないとありませんが、ミトコンドリアDNAの比較に基づいており、重要で興味深い研究だと思います。ただ、まだ試料数が少ないことは否定できず、今後さらにネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの採取・解析例を増やしていき、比較する必要があるでしょう。


参考文献:
Dalén L. et al.(2012): Partial genetic turnover in neandertals: continuity in the east and population replacement in the west. Molecular Biology and Evolution, 29, 3, 1893-1897.
http://dx.doi.org/10.1093/molbev/mss074

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