歯の分析から想定されるネアンデルタール人と現生人類の分岐年代

 これは10月24日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)の分岐年代についての研究(Gómez-Robles et al., 2013)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究はネアンデルタール人と現生人類の最終共通祖先([N-MH]LCA)について検証していますが、大きな目標として、人類の進化について検証困難な記述的分析ではなく、検証可能な定量的・客観的な枠組みを提示することを挙げています。

 この研究は歯の形態に注目し、“[N-MH]LCA”の歯がどのようなものだったのか、再構築しています。次に、予想される“[N-MH]LCA”の歯と既知の化石の歯を検証しています。その結果、ネアンデルタール人と現生人類の出現前の化石で、“[N-MH]LCA”の候補に適したものはありませんでした。ヨーロッパの前期および中期更新世の人類の歯はネアンデルタール人のそれと似ていて、両者が同系統であることを示唆しており、その起源は100万年前頃までさかのぼりそうです。つまり、ネアンデルタール人と現生人類の分岐年代は100万年前よりもさかのぼりそうだ、ということです。

 この研究では、得られた結果が分子遺伝学の提示するネアンデルタール人と現生人類の推定分岐年代(80~30万年前頃と幅がありますが、おおむね40万年前頃との見解が多いようです)と大きく異なることから、三つの仮説が提示されています。
(1)ヨーロッパの前期~中期更新世の人類および“[N-MH]LCA”は、選択的に原始的な歯の特徴を維持しました。
(2)分子遺伝学の提示するネアンデルタール人と現生人類の推定分岐年代は過小評価されています。
(3)ネアンデルタール人および現生人類間の表現型の分岐は、少なくとも歯の形態においては、種分化に先立つ独立した表現型の特殊化でした。

 では、この研究の主張するようにネアンデルタール人と現生人類の推定分岐年代が100万年前をさかのぼるとしたら、どの人類種が“[N-MH]LCA”なのか、という問題が生じます。これまではホモ=ハイデルベルゲンシスが“[N-MH]LCA”の候補でしたが、この研究が妥当だとしたら、歯の形態がネアンデルタール人と類似しているという問題もありますが、ハイデルベルゲンシスは年代が新しすぎて該当しません。上記報道では、100万年以上前のアフリカにいたホモ=エレクトスとされている人骨のなかに、“[N-MH]LCA”の候補がいる可能性を指摘しています。それはエレクトスではなく、まだ適切に分類されていない未知の種ではないのか、というわけです。

 以上、この研究についてざっと述べてきましたが、この研究の推定する“[N-MH]LCA”の歯の形態については、まだ検証が必要だろうな、と思います。したがって、ネアンデルタール人と現生人類の分岐年代についても、この研究の推定値までさかのぼるのか、まだ確定したとはとても言えない状況だと思います。この問題の解決には、人骨の形態をもっと総合的に分析・比較しなければならないでしょうし、何よりも、新たな人骨の発見が望まれます。


参考文献:
Gómez-Robles A. et al.(2013): No known hominin species matches the expected dental morphology of the last common ancestor of Neanderthals and modern humans. PNAS, 110, 45, 18196–18201.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1302653110

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