松本晶子「ヒヒはなぜサバンナへ移動したか?」『人類の移動誌』第1章「人類の移動を考える」コラム1

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収のコラムです。本コラムは、森林からサバンナへと進出した初期人類の生活様式のモデルとして、ヒヒを取り上げています。ヒヒはサバンナに現生する人類以外の霊長類でもっとも体が大きく、初期人類に近いからです。サバンナに進出した霊長類の捕食者対策としては、体の巨大化・速く走れるような体の構造・集団サイズの巨大化が考えられます。ヒヒの被捕食率は地域によりかなり違うそうで、集団サイズが大きいほど被捕食率は小さくなるそうです。本コラムは、初期人類も、体のサイズと集団サイズの巨大化により捕食者に対抗したのではないか、と推測しています。

 現生ヒヒの観察からは、ヒヒの集団単位での1日の行動も判明しています。ヒヒの移動範囲は雨期よりも乾期の方が広く、ヒヒの2つの集団の遊動域はかなり重なるそうです。興味深いのは、ヒヒの2つの集団が水場近くの泊り場を同じくしながら、朝に出発して夕方に戻るまでは一度も遭遇しないことです。本コラムは、捕食者の危険性の高い水場近くの泊り場では集団サイズを大きくすることで捕食者に対抗しつつも、泊り場を離れると、食物やメスをめぐる争いを避けるために、お互いに遭遇しないような行動をとったのではないか、と推測しています。果実が少なくイネ科の草本類が一様に分布しているサバンナではそうした離合集散が可能であり、人類の祖先もまた同様だった可能性がある、と本コラムは推測しています。


参考文献:
松本晶子(2014)「ヒヒはなぜサバンナへ移動したか?」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第1章「人類の移動を考える」コラム1 P48-53

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