野林厚志「台湾原住民の移動 居住地分布と居住様式の特徴からみる」『人類の移動誌』

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収の論文です。本論文は台湾原住民の移動を考察するとともに、そこでの考察がオーストロネシア語族台湾原郷説と整合的なのか、論じています。本論文は、台湾原郷説で想定されている年代に台湾で航海術が発達していたことを示す考古学的証拠がないことや、とくに日本統治時代以降に、台湾で混血・移住による混在が進んで「民族集団」の特定が難しくなっていることなどから、台湾原郷説に慎重な姿勢を示しています。

 本論文で考察された台湾原住民の居住分布と居住様式の特徴からも、台湾原郷説は必要ではなく、ユーラシア大陸南東部でオーストロネシア祖語が形成されと考えた場合でも、合理的な説明が可能になる、と指摘されています。オーストロネシア語台湾原郷説は、本論文でも言及されている遺伝学的・言語学研究でも支持されており(関連記事)、日本でもかなり浸透しているようです。しかし本論文では、台湾原郷説を否定する遺伝学的研究成果があることも指摘しており、台湾原郷説で確定したとはとても言えない状況のようです。


参考文献:
野林厚志(2014)「台湾原住民の移動 居住地分布と居住様式の特徴からみる」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第2章「アフリカからアジアへ」第5節P109-121

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