さかのぼるアンデス高地への適応

 アンデス高地への人類の適応がじゅうらいの推定よりもさかのぼることを指摘した研究(Rademaker et al., 2014)が報道されました。ナショナルジオグラフィックでも取り上げられています。『サイエンス』のサイトには解説記事も掲載されています。本論文は、ペルー南部のアンデス山脈にある2つの開地遺跡の調査結果を報告しています。一つは海抜4355mのプクンチョ(Pucuncho)遺跡で、もう一つは海抜4480mのクンカイチャ(Cuncaicha)遺跡です。プクンチョ遺跡では12800~11500年前の、クンカイチャ遺跡では12400~11500年前の人類の痕跡が確認されています。本論文は、人類は南アメリカ大陸へ進出してから2000年以内に高地に適応した、と指摘していますが、人類の南アメリカ大陸への進出年代が今後さかのぼる可能性も考慮しておかねばならないだろう、とも思います。

 クンカイチャ遺跡では人間の頭蓋骨の断片・動物の遺骸・石器などが発見されており、1年中生活していたと断定はできないにしても、数日間の短期狩猟のさいだけに利用されていたのではなく、季節的(おそらく3月~11月頃)に利用されており、それが長期間に亘ったことは確実だろう、と論文の著者の一人であるザラリオ(Sonia Zarrillo)博士は考えています。当時のアンデス高地の人々は、高地に生息するラクダ科のビクーニャやリャマなどの動物を狩っていたのだろう、と推測されています。

 海抜2500m以上の高地への人類の移住は、低温・強い日射量・低酸素などのため困難です。チベットでは15000年以上前の高地遺跡が確認されていますが、海抜3300~3500mとプクンチョ遺跡・クンカイチャ遺跡よりも低く、人間が生活していたのか、短期間の野営場として利用したのか定かではありません。そのため、季節的な利用にせよ、一定期間の居住が長期に亘っていたということで、プクンチョ遺跡・クンカイチャ遺跡の意義が強調されています。

 現代のアンデス高地やチベットの住民には、高地に適応した遺伝的変異が見られます。高地での居住には高地に適応した遺伝的変異が必要だった、との見解が主流ですが、ザラリオ博士の見解は、12000年前のアンデス高地の居住者に高地に適応した遺伝的変異があったのか不明だ、という慎重なものです。当時のアンデス高地の住民の人骨からじゅうぶんな核DNAを抽出・解析することができればよいのですが、難しいことは否定できません。おそらく、すでに当時から高地に適応した遺伝的変異は存在しており、それが高地での生活で広まっていったのでしょう。当時のアンデス高地住民の全員が高地に適応した遺伝的変異を有していたわけではないのかもしれません。


参考文献:
Rademaker K. et al.(2014): Paleoindian settlement of the high-altitude Peruvian Andes. Science, 346, 6208, 466-469.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1258260

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