榎原雅治『シリーズ日本中世史3 室町幕府と地方の社会』

 これは8月28日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年5月に刊行されました。すでに第1巻第2巻はこのブログで取り上げています。本書が扱うのは、鎌倉幕府の崩壊から明応の政変までとなります。「地方」の情勢を詳しく取り上げているのが本書の特徴ですが、「中央」の政治情勢の解説にもかなりの分量が割かれています。地域社会の変容・新たな文化的動向・「国際」情勢などにも一定以上の分量が割かれており、南北朝時代~戦国時代の始まりの頃までの一般向け通史に相応しい内容になっているのではないか、と思います。

 本書は、南北朝時代~戦国時代の始まりの頃までにかけて、現代まで続くような日本社会の構造と文化が形成された、と主張しています。もっとも、本書も指摘するように、地域差があるので、「全国」一律に同様の変化が進行した、というわけではありません。また、現代にまで続く日本社会の形成期としての南北朝時代~戦国時代の始まりの頃までとはいっても、本書も指摘するように、高度経済成長期以降、そうした構造が大きく変容していることも否定できません。

 そうした社会の変容期としての南北朝時代~戦国時代の始まりの頃までの特徴として本書が挙げているのは、室町幕府の成立により荘園制は崩壊したわけではなく、変容しつつも新たな枠組みとして維持されていた、ということです。この時代に現代(もしくは高度経済成長前)まで続く村社会の構造が形成されていくのですが、当時はまだ荘園単位で地域が把握されることが多く、近世以降と比較すると、村の法人としての性格は弱かったそうです。こうした枠組みは、戦国時代の始まりの頃にはかなり崩壊しており、近世の地域社会へと連続していきます。

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  • 村井章介『シリーズ日本中世史4 分裂から天下統一へ』

    Excerpt:  これは8月30日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年7月に刊行されました。すでに第1巻と第2巻と第3巻はこのブログで取り上げています。本書は戦国時代~.. Weblog: 雑記帳 racked: 2016-08-29 18:55