本村凌二『競馬の世界史 サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』

 中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年8月に刊行されました。古代ローマ史専攻の著者は競馬ファンでもあり、『優駿』やスポーツ紙などへの寄稿をたびたび読んだことがありますが、最近ではどうなのでしょうか。本書は、基本的にはサラブレッドの近代競馬を扱っていますが、著者の専攻を反映して、ローマ帝国やギリシアなど古代の競馬についても1章割かれています。もっとも、ローマ帝国における競馬とは、基本的には戦車競走でした。

 近代競馬では、やはり発祥の地であるイギリスについての解説が最も詳しくなっていますが、フランス・アイルランド・イタリア・ドイツ・ハンガリー・アメリカ合衆国・オーストラリア・ニュージーランド・日本など、近代競馬を受容した各国の競馬事情についても簡潔に解説されています。イギリス以外では、フランスについてもやや詳しいのですが、アメリカ合衆国と日本については、とくに詳しく解説されています。やはり、日本は自国ですし、20世紀、とくに後半以降のアメリカ合衆国の競馬への影響力を考えると、妥当なところだと思います。

 本書からは、近代競馬の確立期において、現代から見て競馬がいかに不正満ちていて野蛮だったのか、よく窺えます。近代競馬は各国においてしばしば規制・廃止の対象となりましたが、それも理解できます。そうしたなか、競馬関係者の多大な努力で、より公正な競馬への試行錯誤が続き、現代競馬へと至りました。本書を読むと、過去の競馬関係者の多大な努力が窺え、一人の競馬愛好者として敬意と感謝の念を抱きます。

 本書は、近代競馬の全体的な動向を新書一冊にまとめているため、凝縮された内容になっており、あの名馬が取り上げられていない、といった不満を抱く競馬ファンもいるかもしれませんし、体系的な解説よりも挿話的な記述に偏っている傾向もありますが、近代競馬の大まかな成立過程を把握するのに適した一冊になっていると思います。著者の直接的経験も踏まえられており、全体的になかなか興味深く読めました。今後、何度か再読したいものです。

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