条鰭類の進化

 これは9月20日分の記事として掲載しておきます。条鰭類の進化に関する研究(Giles et al., 2017)が公表されました。現生条鰭類(条鰭亜綱)は、現存する脊椎動物種の約半数によって構成され、グッピーとタラのように多様な魚が含まれています。この分類群は、デボン紀の「魚類時代」の直前の約3億8500年前に起源があると考えられています。その生き残りが構成する小規模な分類群に属するのがビチャー(ポリプテルス科)で、この分類群にはチョウザメも含まれます。

 アフリカで生息が確認されているビチャーは、肉鰭・肺・厚い鱗を併せ持つことから、デボン紀の肉鰭類、さらには両生類とさえ関連づけられることもあり、これまで長い間にわたって分類が困難でしたが、現在では、ビチャーは鱗に覆われたウナギに似た原始総鰭類で、その他の条鰭類の現生姉妹群であることが認められています。しかし、わずかに存在する化石記録がさかのぼれるのは白亜紀までで、クラウン群条鰭類が進化したと考えられているデボン紀との間にはたいへんに長いゴースト系統が残されており、その化石史は1億年しかさかのぼることができません。もしビチャーが他の条鰭類の魚よりも祖先的ならば、その起源が他の条鰭亜綱魚類より古いと予想され、その化石記録に2億5000万年分の空白が生じます。

 この研究は、約2.5~2億年前(原始恐竜が陸上で進化した頃)と年代推定され、広範囲に分布していた化石魚類スカニレピス目に属するFukangichthysの化石の高分解能コンピュータ断層撮影(CTスキャン)の結果を報告しています。これまでスカニレピス目はビチャーに似ているとされていましたが、これまでの研究で指摘されていた類似点は外見上のものでした。この新たなCTスキャンでは保存されていた頭蓋骨を立体的に観察することが可能になり、さまざまな物理的性質と12個の遺伝子のDNA塩基配列の解析と近縁種との比較の結果、ビチャーがスカニレピス目に属することが明らかになりました。

 三畳紀を起源とするスカニレピス目が、ビチャーに最も近縁な化石魚類というわけです。しかし、もしビチャーが本当に原始魚類であれば、現生条鰭類の起源は、これまで考えられていたよりもかなり遅かった可能性が生じます。この研究は、デボン紀から三畳紀に生息していた条鰭類の外観を有する化石の再検討をもたらす可能性があります。以下は『ネイチャー』の日本語サイトから引用(引用1および引用2)です。


【古生物学】謎めいた魚類進化の時系列を解明する手掛かりとなる化石

 このほど化石魚類の分析が新たに実施され、謎めいた原始魚ビチャー(あるいはロープフィッシュ)が正真正銘の条鰭類の魚であることが判明した。この新知見は、魚類進化の解明を大きく前進させるものであり、その詳細が記述された論文が、今週掲載される。

 現生する条鰭類(条鰭亜綱)は、現存する脊椎動物種の約半数によって構成され、グッピーとタラのように多様な魚が含まれている。この分類群は、デボン紀の「魚類時代」の直前の約3億8500年前に起源があると考えられている。その生き残りが構成する小規模な分類群に属するのがビチャー(ポリプテルス科)であり、この分類群にはチョウザメも含まれる。アフリカで生息が確認されているビチャーは、鱗に覆われたウナギに似た原始総鰭類で、これまで長い間にわたって分類が難しかったが、その他の条鰭類の現生姉妹群であることが認められた。ところが、その化石史は、わずか1億年しかさかのぼることができない。もしビチャーが他の条鰭類の魚よりも原始的なのであれば、その起源が他の条鰭亜綱魚類より古いと予想され、その化石記録に2億5000万年分の空白が生じる。

 今回、Sam Gilesたちの研究グループは、約2~2.5億年前(原始恐竜が陸上で進化した頃)と年代決定され、広範囲に分布していた化石魚類スカニレピス目に属するFukangichthysの化石の高分解能コンピュータ断層撮影(CTスキャン)の結果を調べた。これまでスカニレピス目は、ビチャーに似ているとされていたが、これまでの研究報告で指摘されていた類似点は外見上のものだった。この新たなCTスキャンでは、保存されていた頭蓋骨を立体的に観察することが可能になった。そして、さまざまな物理的性質と12個の遺伝子のDNA塩基配列の解析と近縁種との比較が行われた結果、ビチャーがスカニレピス目に属することが実証された。その結果、三畳紀を起源とするスカニレピス目が、ビチャーに最も近縁な化石魚類となった。ところが、もしビチャーが本当に原始魚類であれば、現生条鰭類の起源は、これまで考えられていたよりもかなり遅かった可能性が生じる。今回の研究結果は、デボン紀から三畳紀に生息していた条鰭類の外観を有する化石の再検討をもたらす可能性がある。

 この研究によって得られた知見を裏付けるCTデータと本論文に記述された化石材料の三次元表面ファイルは、本論文の出版によって利用可能となる(https://doi.org/10.6084/m9.figshare.c.3814360)。


進化学:現生の条鰭類魚類の起源がより新しいことを示す「生きた化石」系統の初期の構成種

進化学:ポリプテルス類の起源を紐解く

 ポリプテルス科の魚類(ポリプテルスおよびアミメウナギ)は、極めて原始的な魚類の生き残りであり、現在はアフリカの淡水環境にのみ生息している。肉鰭や肺、厚い鱗を併せ持つことから、ポリプテルス類はデボン紀の肉鰭類、さらには両生類とさえ関連付けられることもあったが、現在は他の全ての条鰭類魚類の現生姉妹群とする説が広く受け入れられている。しかし、硬い鱗に覆われているにもかかわらず、ポリプテルス類の化石記録は疑わしいほどに不足している。わずかに存在する化石記録がさかのぼれるのは白亜紀までで、クラウン群条鰭類が進化したと考えられているデボン紀との間には非常に長いゴースト系統が残されている。ポリプテルス類はまた、三畳紀の原始的な条鰭類であるスカニレピス型類(Scanilepiformes)とも比較されたことがあるが、その類似性は表面的なものでしかなかった。今回、スカニレピス型類の1種であるFukangichthysの化石標本をコンピューター断層撮影法で解析し、さまざまな近縁種と比較した結果、ポリプテルス類が実際にスカニレピス型類に属することが明らかになった。こうした条鰭類の系統樹の書き換えによって、ポリプテルス類の起源はデボン紀から三畳紀へと一気に押し上げられ、さらには、クラウン群条鰭類の進化もデボン紀ではなく石炭紀というより新しい年代に起きたことが示唆された。



参考文献:
Giles S. et al.(2017): Early members of ‘living fossil’ lineage imply later origin of modern ray-finned fishes. Nature, 549, 7671, 265–268.
http://dx.doi.org/10.1038/nature23654

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