選ばれなかった無数の進化の道

 これは10月25日分の記事として掲載しておきます。あり得た進化の道筋に関する研究(Starr et al., 2017)が公表されました。歴史に別の展開があり得たのかどうかは、無数の「たられば」論の核心的問題ですが、実験で取り扱うことができないため、ほとんど推測することしかできていません。この研究は、特性が充分明らかにされている祖先的ホルモン受容体のDNA結合特異性に着目し、このタンパク質がとり得た可能性のある膨大な数の進化的道筋をマッピングしました。

 再構成した50万のバリアントについて「deep mutational scanning法」の適用により、きわめて多様な生物物理学的解決法に依存し、派生機能を歴史的進化の帰結と同等またはそれ以上の能力で果たすことのできる、別のタンパク質配列が数百通り発見されました。この知見は、生物学的な現実世界は進化のサイコロが何度も振られた中で出た一つの帰結にすぎず、現在の世界にはおそらく特段の理由がないことを物語っています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


分子進化学:古代タンパク質の配列空間における選ばれなかった別の進化史

分子進化学:選ばれなかった無数の道ブックマーク

 歴史に別の展開があり得たのかどうかは、無数の「たられば」論の核心的問題であるが、実験で取り扱うことができないため、ほとんど推測することしかできていない。J Thorntonたちは今回、特性が十分に明らかにされている祖先的ホルモン受容体のDNA結合特異性に着目し、このタンパク質がとり得た可能性のある膨大な数の進化的道筋をマッピングした。再構成した50万のバリアントについてdeep mutational scanning法を適用することにより、極めて多様な生物物理学的解決法に依存して派生機能を歴史的進化の帰結と同等またはそれ以上の能力で果たすことのできる別のタンパク質配列が数百通り発見された。今回の結果は、我々が生きている生物学的な現実世界は進化のサイコロが何度も振られた中で出た1つの帰結にすぎないこと、そして、今この現在があることにはおそらく特段の理由がないことを物語っている。



参考文献:
Starr TN, Picton LK, and Thornton JW.(2017): Alternative evolutionary histories in the sequence space of an ancient protein. Nature, 549, 7672, 409–413.
http://dx.doi.org/10.1038/nature23902

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