スカンジナビア半島の初期人類集団の遺伝的構成

 これは1月12日分の記事として掲載しておきます。スカンジナビア半島の初期人類集団の遺伝的構成に関する研究(Günther et al., 2018)が報道されました。スカンジナビア半島は、ヨーロッパで最後に人類が進出した地域です。27000~19000年前頃となる最終最大氷期(LGM)の期間で、スカンジナビア半島においては23000年前頃に氷床が後退し始め、植物や動物が再度拡散してきました。スカンジナビア半島では、北部でも南部でも、11700年前頃より人類の居住の痕跡が継続的に確認されています。11700年前頃からしばらくは、スカンジナビア半島内陸部には氷床が存在していました。

 スカンジナビア半島の初期人類集団の遺伝的構成は、これまでよく分かっていなかったので、この研究は、スカンジナビア半島の中石器時代の狩猟採集民7人のゲノムを解析しました。放射性炭素年代測定法による較正年代で、最古の個体は9452~9275年前、最新の個体は5950~5764年前となります。ゲノムが解析された7人中、男性は4人、女性は3人です。この7人は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のハプログループではU5aとU4aに、Y染色体DNAのハプログループ(男性3人)ではI2に区分されます。網羅率は、女性の1個体で57.79倍と高いのですが、その他の個体は最大でも4.05倍で、最小の個体は0.10倍です。

 ゲノム解析の結果、スカンジナビア半島の初期人類集団は、西方狩猟採集民集団と東方狩猟採集民集団の混合だと推測されています。考古学的証拠も考慮すると、スカンジナビア半島には、まず西方狩猟採集民集団が南から、その後に東方狩猟採集民集団が北東から到来した、と推測されています。東方狩猟採集民集団は、スカンジナビア半島内陸部の氷床を避けつつ、スカンジナビア半島を北方もしくは南方経由で西部へと進出した、と考えられています。このように、西方狩猟採集民集団と東方狩猟採集民集団との混合により形成されたスカンジナビア半島の初期狩猟採集民集団は、同時代の中央および南部ヨーロッパの狩猟採集民集団よりも遺伝的に多様で、これは現代とは対照的だ、と指摘されています。中石器時代のスカンジナビア半島の狩猟採集民集団の少なからぬ遺伝的多様体が現代では失われてしまった、というわけです。

 注目されるのは、高緯度地帯となるスカンジナビア半島への人類の適応です。高緯度地帯では紫外線量が少なくなるので、ビタミンD合成のために薄い肌の色の方が有利となります。ビタミンDが不足すると、くる病を発症します。逆に低緯度地帯では紫外線量が多いので、肌の色が濃くてもビタミンD合成の妨げにはならず、命に関わるような汗腺の損傷や皮膚の炎症を抑えるためにも、濃い肌の色の方が有利となります。スカンジナビア半島の初期人類集団のゲノムには、低度の色素沈着と関連する多様体が確認されており、高緯度地帯への適応を示しています。また、スカンジナビア半島の初期人類集団は、身体能力と関連する遺伝子領域(TMEM131)において、現代の北部ヨーロッパ人との強い連続性を示しています。


参考文献:
Günther T, Malmström H, Svensson EM, Omrak A, Sánchez-Quinto F, Kılınç GM, et al. (2018) Population genomics of Mesolithic Scandinavia: Investigating early postglacial migration routes and high-latitude adaptation. PLoS Biol 16(1): e2003703.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pbio.2003703

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