アイスランドにおける人類集団の遺伝的浮動

 アイスランドにおける人類集団の遺伝的浮動についての研究(Ebenesersdóttir et al., 2018)が報道されました。アイスランドへの人類の移住は紀元後870~紀元後930年に始まり、その担い手はヴァイキングやその奴隷とされた人々だと推測されています。アイスランドの人類集団は、初期の移住後1000年間は人口が1万~5万人と比較的小規模で、孤立していました。現在では、アイスランドには約33万人が居住しています。

 本論文は、アイスランドの27人の遺骸のゲノムを解析し、アイスランドの現代人と比較しました。放射性炭素年代測定により、年代は最初の移住に近い1000年前頃と推定されました。ゲノム解析の結果、初期アイスランド人は古代スカンジナビア人(現在のノルウェーとスウェーデン)とゲール人(現在のアイルランドとスコットランド)から、ほぼ同程度の遺伝的影響を受けている、と明らかになりました。しかし、現代のアイスランド人では、スカンジナビア系の遺伝的影響が70%と強くなっています。これは、1100年間での急速な遺伝的浮動の結果と考えられます。他の動物集団ではしばしば見られる、孤立した集団に起きる遺伝的浮動と同様の結果ではないか、というわけです。

 ただ、別の解釈も提示されています。スカンジナビア半島からの移住、とくにデンマーク人の比較的最近の移住もまた、アイスランド人の遺伝子プールに影響を及ぼした可能性がある、というわけです。他には、アイスランドの初期住民のうち奴隷にはゲール人の遺伝的影響が強く、スカンジナビア系の遺伝的影響の強い支配層の方がより多く子孫を残した(適応度が高い)可能性も提示されています。また、奴隷は支配層よりも丁寧に埋葬されなかったかもしれないので、標本数が少なく偏っている可能性も提示されています。アイスランドは狭く、人口規模が小さくて家系図が充実しているので、今後も人類遺伝学の研究に大きく寄与していくのではないか、と期待されます。


参考文献:
Ebenesersdóttir SS. et al.(2018A): Ancient genomes from Iceland reveal the making of a human population. Science, 360, 6392, 1028-1032.
https://dx.doi.org/10.1126/science.aar2625

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