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zoom RSS アラビア半島内陸部における30万年以上前の人類の痕跡

<<   作成日時 : 2018/10/30 17:54   >>

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 アラビア半島内陸部における30万年以上前の人類の痕跡に関する研究(Roberts et al., 2018B)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。アラビア半島は、アフリカからユーラシアへの人類の拡散の最初の拠点として、たいへん注目されています。アラビア半島内陸部は、現在ではたいへん乾燥した気候となっていますが、更新世の人類の痕跡が確認されています。95000〜86000年前頃と推定されている遺跡では、現生人類(Homo sapiens)と分類されている中節骨が発見されています(関連記事)。また、人類遺骸が発見されていないので、どの人類系統が担い手なのか不明ですが、20万年以上前と推定されている石器も発見されています(関連記事)。いずれの場合も、当時のアラビア半島内陸部は現代よりもずっと湿潤だった、と推定されています。

 本論文は、アラビア半島内陸部のティズアルガダー(Ti's al Ghadah)遺跡における人類の痕跡を報告しています。ティズアルガダー遺跡では、石器とともにゾウ・ジャガー・水鳥などの動物が発見されており、その中には確実な確実な解体痕(cutmarks)のある動物遺骸もあります。ティズアルガダー遺跡の年代は50万〜30万年前頃で、アラビア半島内陸部における既知の人類の痕跡よりも少なくとも10万年以上さかのぼることになります。本論文は、ティズアルガダー遺跡で発見された化石哺乳類のエナメル質(21点)に関して、炭素および酸素の安定同位体を分析し、当時の環境を復元しました。その結果、当時のティズアルガダー遺跡一帯は、現在のアフリカ東部のサバンナと類似しており、豊かな草原が広がっていた、と推測されました。また、利用可能な水の量も、ある時期にはかなり豊富だった、とも推測されています。

 そのため本論文は、当時の人類にとって、アフリカからアラビア半島内陸部への拡散は、新たな環境への適応ではなく、それまで適応してきた環境の範囲内でのことだった、との見解を提示しています。これは、人類、とくにホモ属の適応能力に関する議論とも関わってきます。砂漠・熱帯雨林・北極圏・高地帯といった極限環境へと適応したのは現生人類だけで、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)など他のホモ属の地理的拡大は、おおむね適応してきた環境の範囲内に収まっていたのではないか、というわけです(関連記事)。ただ、ネアンデルタール人など現生人類系統ではないホモ属も、新たな環境に柔軟に適応した、との見解は根強くあります。この研究は、ホモ属の各系統における新たな環境への適応能力に関して検証するには、過去の環境の詳細な復元が必要だと指摘しています。この指摘はもっともで、今後の研究の進展が注目されます。


参考文献:
Roberts P. et al.(2018): Fossil herbivore stable isotopes reveal middle Pleistocene hominin palaeoenvironment in ‘Green Arabia’. Nature Ecology & Evolution.
https://doi.org/10.1038/s41559-018-0698-9

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