石器の起源

 10年ほど前までは、最古の石器は260万年前頃までさかのぼる、との見解が一般的だったように思います。この最初の石器群はオルドワン(Oldowan)インダストリーと分類されています。エチオピアのディキカ(Dikika)で発見された340万年前頃の大型有蹄類の骨には解体痕(cut marks)と打撃痕(percussion marks)が確認され、人類が石を用いた痕跡ではないか、と推測した研究が2010年に公表されました(関連記事)。石器の起源は340万年前頃までさかのぼるのではないか、というわけです。

 これに関しては疑問が呈され、とても有力説とは言えない状況でしたが、ケニアの西トゥルカナ(Turkana)のロメクウィ(Lomekwi)3遺跡で330万年前頃の石器が発見された、と報告した研究が2015年に公表されました(関連記事)。ロメクウィ3遺跡の石器群は「ロメクウィアン(Lomekwian)」と呼ばれています。この石器群は、オルドワンよりも前に石器が存在した、との見解を裏づけると言えるかもしれません。オルドワンは当初よりかなり完成された石器技術として出現するので、もっと粗放な前段階の石器群が存在したのではないか、というわけです。

 確かに、その可能性はありますが、ロメクウィアンの年代と最古のオルドワンの年代が、現時点では70万年ほど離れていることから、ロメクウィアンからオルドワンが発展したと考えるのは苦しいように思います。もちろん今後、この空白期間を埋める石器群が発見される可能性は低くないと思います。ただ、現時点では、石器は400万年前頃以降に散発的に何度か製作されるようになったものの、まだ使用頻度はオルドワン以降よりも低くたびたび放棄され、ロメクウィアンもオルドワンとは直接的な技術的関係はなく、オルドワンは300万~270万年前頃に製作されるようになった石器群に起源がある、と考える方が節約的かな、と思います。

 これらの最初期石器群の製作者がどの系統だったのか、という問題にも関心が集まっています。じゅうらい、石器の製作はホモ属の出現と関連づけられてきたように思いますが、ロメクウィアンの製作者はホモ属ではなさそうです。現時点では、ホモ属的特徴を有する最古の人類遺骸の推定年代は280万~275万年前頃です(関連記事)。ホモ属的特徴を有する人類の出現が300万年以上前までさかのぼる可能性もありますが、340万年前頃の解体痕と打撃痕のある大型有蹄類の骨が発見されているわけですから、ロメクウィアンが350万年前頃までさかのぼっても不思議ではありません。そうすると、さすがにホモ属とロメクウィアンの起源を結びつけるのは難しいかな、と思います。ただ、オルドワンと技術的に直接つながるような石器群は、ホモ属的特徴を有する人類が開発したかもしれません。現時点ではあまりにも証拠が少ないので、とても断定はできませんが、それだけに現時点での見解が大きく変わる可能性もあるわけで、石器の出現に関する研究の進展は大いに注目されます。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 最古のオルドワン石器とその技術的系統

    Excerpt:  最古のオルドワン(Oldowan)石器とその技術的系統に関する研究(Braun et al., 2019)が報道されました。解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。近年まで.. Weblog: 雑記帳 racked: 2019-06-05 03:04