デニソワ洞窟の中部旧石器時代後期~上部旧石器時代初期の年代

 南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)の中部旧石器時代後期~上部旧石器時代初期の年代について、2019年度アメリカ自然人類学会総会(関連記事)で報告されました(Hershkovitz et al., 2019)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P103)。デニソワ洞窟は、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や現生人類(Homo sapiens)と遺伝学的に異なる、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の存在が唯一確認された遺跡として有名です(関連記事)。

 デニソワ洞窟に関しては、今年(2019年)1月に包括的な年代測定結果が報告されています(関連記事)。本報告は、デニソワ洞窟で新たに、中部旧石器時代末期~上部旧石器時代最初期にかけての50点の放射性炭素年代結果を得ました。さらに本報告は、放射性炭素年代測定および光学的年代測定結果と、層序学および遺伝学的推定年代とを組み合わせて、デニソワ洞窟の人類遺骸と人工遺物の推定年代を提示しています。

 デニソワ洞窟では、14万~11万年前には、デニソワ人とネアンデルタール人の存在期間が重なっていました。デニソワ人とネアンデルタール人の交雑第一世代であるデニソワ11(関連記事)の年代は、その期間の後の11万~9万年前頃と推定されました。高品質なゲノム配列が得られているデニソワ3(関連記事)の推定年代は67600~56400年前頃で、放射性炭素年代測定法の限界年代に先行します。これより上の層の歯の装飾品や骨器の年代は48000~45000年前頃で、ユーラシアにおける象徴的思考の指標となる遺物としては古いものとなります。

 本報告は、現時点での考古学的証拠に基づくと、こうした遺物をデニソワ人が製作していたかもしれない、と指摘します。ただ、48000~45000年前頃となると、すでにアルタイ地域に現生人類が存在していても不思議ではないでしょう。しかし本報告は、アルタイ地域ではまだこの時期の現生人類遺骸が確認されていないため、デニソワ洞窟の初期の象徴的遺物に現生人類が関与していたのか否か、断定はできない、と慎重な姿勢を示しています。デニソワ洞窟はもちろんのこと、アルタイ地域の他の遺跡での、中部旧石器時代~上部旧石器時代の移行期にかけての人類遺骸や人工物のさらなる発見が期待されます。


参考文献:
Higham T. et al.(2019): Age estimates for hominin fossils and the onset of the Upper Palaeolithic at Denisova Cave. The 88th Annual Meeting of the AAPA.

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