乃至政彦『平将門と天慶の乱』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2019年4月に刊行されました。本書は、平将門の怨霊譚など、将門が後世においてどう語られてきたのか、という問題も取り上げつつ、天慶の乱を中心に将門の生涯を解説していきます。やや個人の心情に踏み込みすぎているかな、とも思うのですが、将門の怨霊譚にもそれなりに分量が割かれており、一般向け書籍であることを強く意識した叙述なのでしょう。将門が祖父の平高望に始まる坂東の平氏一族の争いに巻き込まれた要因として、将門およびその父である良持と源護との間に姻戚関係がなかったことを、本書は重視しています。

 見逃していたのは、平貞盛の母が藤原秀郷の姉もしくは妹だということです。これまでそれなりに平将門というか天慶の乱関連本を読んできましたが、記憶にありませんでした。天慶の乱においてこの姻戚関係はかなり重要になってくるので、これまで読んだ本で取り上げられていながら見落としていたとすると、なんとも恥ずかしい限りです。まあ、江戸時代末期に編纂された『系図纂要』が典拠とのことですから、どこまで信用できるのか、門外漢には判断の難しいところですが。

 本書は、将門の生年は通説より遅く910年頃と推測しています。その根拠として、将門は「少年」時に藤原忠平に仕えており、父の位階が従四位下だったことから21歳に従七位上に叙されるはずなのに、生涯無位無官だったからです。将門は21歳になる前に父の死のために931年頃に帰国し、一族間の所領争いに巻き込まれた、と本書は推測しています。もちろん、この問題に関して決定的な根拠を提示することはできませんが、本書の見解はなかなか興味深いと思います。新皇即位前後の時系列など、本書の見解を直ちに全面的に受け入れるべきではないでしょうが、今後の議論の叩き台になっていくのではないか、と思います。

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