捕食者の侵入により崩壊するトカゲの共存

 捕食者の侵入による在来集団への影響に関する研究(Pringle et al., 2019)が公表されました。島嶼などの孤立していた生態系への捕食者の定着が、人間の活動によって加速しています。しかし、捕食者の侵入による影響については、侵入当初から研究を始めることがほとんどできないため、予測が困難です。この研究は、捕食者の侵入による影響を明らかにするため、在来の最上位捕食者で半陸生のブラウンアノール(Anolis sagrei)により占められているバハマ諸島の16の島嶼において、2種のトカゲを島ごとに異なる組み合わせ(2種もしくは3種)で移入させる実験を行ないました。この研究は、他の2種にたいして捕食者となるキタゼンマイトカゲ(Leiocephalus carinatus)を5~7匹、および/または樹上に生息する競争者であるバハマングリーンアノール(Anolis smaragdinus)を10~11匹移入させ、これら3種のトカゲについて、個体群サイズ・生息場所の利用状況・食餌の構成・食物連鎖上の位置を6年間にわたって測定しました。

 キタゼンマイトカゲが存在しない環境では、バハマングリーンアノールとブラウンアノールは、それぞれ異なる食餌と生息場所のニッチを占め、ブラウンアノールが地上に近い場所に生息していました。ここにキタゼンマイトカゲを移入させると、ブラウンアノールが捕食への恐怖により樹上で生息するようになって、その食餌はバハマングリーンアノールの食餌に近づいた。その結果、ブラウンアノールとバハマングリーンアノールの両方を移入させた4島のうちの2島で、食料源の争いに敗れたバハマングリーンアノールが絶滅しました。この知見は、孤立した生態系に新たな捕食者種が侵入すると、最上位捕食者は必ずしも生物多様性の増大を促進せず、捕食のリスクによって種の共存が不安定化し、異種の共存を容易にしていたニッチの崩壊が起こり得る、と示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【生態学】捕食者の侵入がトカゲの共存を崩壊させる

 捕食者であるトカゲをカリブ海の小島嶼に移入させたところ、在来のトカゲの個体群の行動が変化し、結果として異種のトカゲの共存様式が変化し、個体群の絶滅につながったことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、こうした影響が、全世界の島嶼や湖での捕食者の移入シナリオにも当てはまる可能性のあることが示唆されている。

 島嶼などの孤立していた生態系への捕食者の定着が、人間の活動によって加速している。ただし、捕食者の侵入による影響については、侵入当初から研究を始めることがほとんどできないため、予測が難しい。

 今回、Robert Pringleたちの研究グループは、捕食者の侵入による影響を明らかにするため、バハマ諸島の16の島嶼において、2種のトカゲを島ごとに異なる組み合わせで移入させる実験を行った。バハマ諸島は、半陸生のブラウンアノール(Anolis sagrei)によって占められており、Pringleたちは、ここに5~7匹のキタゼンマイトカゲ(Leiocephalus carinatus、地上に生息する最上位捕食者)および/または10~11匹のバハマングリーンアノール(Anolis smaragdinus、樹上に生息する競争者)を移入させた。そして、これら3種のトカゲについて、個体群サイズ、生息場所の利用状況、食餌の構成、および食物連鎖上の位置を6年間にわたって測定した。

 キタゼンマイトカゲが存在しない環境では、バハマングリーンアノールとブラウンアノールは、それぞれ異なる食餌と生息場所のニッチを占め、ブラウンアノールが地上に近い場所に生息していた。ここにキタゼンマイトカゲを移入させると、ブラウンアノールが樹上で生息するようになり、その食餌はバハマングリーンアノールの食餌に近づいた。その結果、ブラウンアノールとバハマングリーンアノールの両方を移入させた4つの島のうちの2つで、食料源の争いに敗れたバハマングリーンアノールが絶滅した。この知見は、孤立した生態系に新たな捕食者種が侵入すると、異種の共存を容易にしていたニッチの崩壊が起こり得ることを示している。


進化生物学:捕食者に誘導される、ニッチ構造および種の共存の崩壊

Cover Story:群集の危機:導入された捕食者への恐怖が島嶼生態系の種の共存を崩壊させる

 今回R Pringleたちは、島嶼生態系への捕食者導入がどのように他の種に影響を及ぼすか調べている。著者たちは、アノールトカゲの一種である半地上性のブラウンアノール(Anolis sagrei)が在来の最上位捕食者であったバハマの16島嶼において、別のアノールトカゲである樹上性のAnolis smaragdinusと、両者の捕食者となるゼンマイトカゲの一種である地上性のLeiocephalus carinatusを、それぞれ単独で、または共に導入した。その後著者たちは、この3種の個体群サイズ、生息地利用、食物を6年にわたって追跡した。L. carinatusが存在しない島嶼では、この2種のアノールトカゲは共存し、食物と生息地に関して別々のニッチを占めていた。しかし、L. carinatusも導入された4島嶼では、捕食への恐怖によって、ブラウンアノールが樹上に安全を求めるようになり、A. smaragdinusと資源を奪い合って、2島嶼ではA. smaragdinusが絶滅した。著者たちは、この「避難競争」の例は、最上位捕食者は必ずしも生物多様性の増大を促進せず、捕食のリスクによって種の共存が不安定化し得ることを示していると指摘している。



参考文献:
Pringle RM. et al.(2019): Predator-induced collapse of niche structure and species coexistence. Nature, 570, 7759, 58–64.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1264-6

古墳時代中期の会津地方の支配層男性の復元像

 古墳時代中期の会津地方の支配層男性の復元像について報道されました。福島県喜多方市の灰塚山古墳という前方後円墳で、2017年にほぼ完全な男性遺骸が発見されました。この男性は身長158cm、華奢な体型でした。また、この男性は比較的面長で、鼻の付け根が平らな渡来系の顔つきだった、とのことです。この男性には脊椎に癒着があり、腰痛に悩まされていたことが窺えます。死亡時推定年齢は50代後半で、歯のすり減り具合から、固い物は食べておらず、同位体分析から、コメと川魚を食べていた、と推測されています。

 この研究を率いた辻秀人氏は、能登半島などを経由して古墳時代の会津地方に到来した渡来系の集団がヤマト政権の政治的な後ろ盾を得ながら支配し、前方後円墳はその現れではないか、と述べているそうです。研究の進展が楽しみです。上記報道によると、ミトコンドリアDNA(mtDNA)も解析されたとのことですが、詳細は不明で、男性が渡来系と判断された根拠に用いられたのか、分かりません。形態から「渡来系」と判断されたのでしょうか。核DNAを解析すれば、より詳細にこの男性の出自を推測できるでしょうから、今後の研究の進展が期待されます。「縄文人」との関係など日本列島における人類集団の変遷は、今後大きく進展する可能性があり、楽しみです。